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テクニクス EPC-205C

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1971年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 すべてのオーディオ機器は、今や、趣味嗜好の対象として考えられている。中でも、カートリッジは、ユニバーサル・トーン・アームが普及して、シェルの交換が当然のことになり、あれこれと取換えて再生するという使われ方が定着しているのを見ても、嗜好品としての色彩が濃い事がわかるだろう。本来的にはカートリッジの振動系というのは、アームを支点として動作するものなのだから、アームと一体となって設計されるべきだし、使われるべきものなのである。それが、このような使われ方が一般化したことの理由は、一つに、いろいろな音のするカートリッジがあることによる。それらは、それぞれに正しい設計、周倒な製造がなされながら、個性的な音質をもっていることによるといえるだろう。現在市場にあるカートリッジの変換方法、つまり、レコード溝の振動を拾いあげて電気エネルギーに変える方法にも実に多種多様のものがある。MM型、MC型、IM型、MI型などのマグネチック系の多くのヴァリエインョンに加えて、光電型や静電型、圧電型などがそれである。そして、これらの変換方式のちがいが音質に差をもたらすと考えられたり、あるいは、変換方式のちがいそのものは音質には影響がなく、それぞれの変換方式のちがいによって生じる振動系のちがいが音質をかえると考えられたりしている。私はカートリッジの専門家ではないから断定的なことはいえないが、その両方だという気が体験的にもする。そして、さらに、その両方だけのファクターではなく他にも無数のファクターが集積されて、音質を決定していると思うし、使用材料の物性面まで考えたら、ちがうカートリッジがちがう音を出すことは当然だと思うし、その音のちがいを楽しんで悪い理由は見つからない。とはいうものの、エネルギー変換器としてのカートリッジの理論の追求や、その現実化の理想については明解な目標と手段とがあるわけで、ただ闇雲に、こんな音が出来ましたというのではお話しにならない。現在のカートリッジの改善のポイントは、振動系を軽量化しながら剛性を保つこと、振動系が理論通りに動作する構造を追求することにより機械的歪を減らすこと、電気的、磁気的な変換歪を最少にすることなどに置かれ、各メーカーが、その構造上、材質上、製造上の改善に一生懸命努力をしているのである。
  ここにご紹介する松下電器のテクニクス205Cという新しい製品は、最も新しい技術で振動系を改良した注目すべき新製品である。その特長のいくつかをあげてみると、まず、振動系の主要部分であるカンチレバーが飛躍的に軽量化され、しかも高い強度が維持されていることだ。材質にチタンを使って、これを直径0・35ミリ、20ミクロン厚のパイプ状カンチレバーに圧延加工し、これに0・4ミリグラムという実効質量の軽いソリッド・ダイアモンド・チップを取りつけ、振動系のナチュラルが、きわめて広い周波帯域を平担にカバーし、精巧無比な加工技術で支点とダンパーを構成し、小さな機械インピーダンスでトレース能力を確保、きわめて忠実な波形ピックアップをおこなう。そして、これに直結されるマグネット振動子には高エネルギーの白金コバルト磁石を使い、この優れた振動系の特質をさらに高めている。ワイヤー・サポートにより支点は明確にされ、リニアリティとトランジェントに高い特性を得ている。製品は、全機種に実測の特性表がつけられるというから、カートリッジのようにデリケートな構造をもつ製品に心配されるムラの不安がない。このように、205Cのフューチャーは、テクニクスの高い設計技術と、材質そのものの開発、優れた加工技術が結集したもので、マニアなら一度は使ってみたい気持になるだろう。在来のテクニクス200Cの繊細きわまりないデリカシーと高い品位の再生音に加えて、強靭さと豊かさが加わった音質は最高級カートリッジといってよいすばらしいもので、一段とスケールが大きくなった。歪が少いことは一聴してわかるし、パルスに対するトランジェントのよさは実にクリアーな響きを聴かせてくれた。特性を追求するとこうなるのかもしれないが、私としては、もう一つ熱っぽいガッツのある体温のある音がほしい。それは歪によるものだと技術者はいうかもしれない。しかし私はそうは思わない。それは、たくまずして滲み出る体質のようなものである。この205Cで再生した本田竹彦のトリオの世界はあまりにも美しく透明過ぎた。やや硬質に過ぎた。冷かった。しかし、これはきわめて欲張った話しであって、現時点で最高のカートリッジとして205Cを賛えたい。

パイオニア DN-110S, DN-120S, DN-130S

パイオニアのネットワークDN110S、DN120S、DN130Sの広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

DN130

ヤマハ MS-5B

ヤマハのシステムコンポーネントMS5Bの広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

Yamaha

TDK SD

TDKのオープンリールテープSDの広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

TDK

テクニクス RS-262U, RS-270U, RS-275U, RS-715U, RS-720U, RS-732U, RS-736U, RS-740U

テクニクスのカセットデッキRS262U、RS270U、RS275U、オープンリールデッキRS715U、RS720U、RS732U、RS736U、RS740Uの広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

RS715U

マイクロ MR-611

マイクロのアナログプレーヤーMR611の広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

Micro

テクニクス SB-100, SB-300, SB-500, SU-3100, SU-3400, SU-3404, SU-3600, ST-3100, ST-3400, ST-3600, SL-30, SL-40, SH-1010, SH-3400

テクニクスのスピーカーシステムSB100、SB300、SB500、プリメインアンプSU3100、SU3400、SU3404、SU3600、チューナーST3100、ST3400、ST3600、アナログプレーヤーSL30、SL40、4チャンネルコントローラーSH1010、SH3400の広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

SB500

ダイヤトーン DS-301

ダイヤトーンのスピーカーシステムDS301の広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

DS301

スタントン 681

スタントンのカートリッジ681の広告(輸入元:原田産業)
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

Stanton

ナガオカ NM-66

ナガオカのカートリッジNM66の広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

NM66

コーラル FLAT-8S, FLAT-10S

コーラルのスピーカーシステムFLAT8S、FLAT10Sの広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

Coral

ヴァイタヴォックス CN191 Corner Horn, AK154, S2, CN157, NW500

ヴァイタヴォックスのスピーカーシステムCN191 Corner Horn、ウーファーAK154、ドライバーS2、ホーンCN157、ネットワークNW500の広告(輸入元:今井商事)
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

Vitavox

アルテック A7-8, Valencia, DIG, エレクトロ・アクースティック Miracord 50H

アルテックのスピーカーシステムA7-8、Valencia、DIG、エレクトロ・アクースティックのアナログプレーヤーMiracord 50Hの広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

ALTEC

フィリップス N-4450

フィリップスのオープンリールデッキN4450の広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

Philips

ビクター CCR-661, TD-450, QTD-400, CHR-250A

ビクターのカセットデッキCCR661、オープンリールデッキTD450、QTD400、8トラックデッキCHR-250Aの広告
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)

CCR661

トリオ KA-3002

岩崎千明

電波科学 10月号(1971年9月発行)
「電波科学テストルーム」より

 トリオが全段直結アンプの新シリーズアンプの戦列に、4万円級の主力製品を加えた。
 この5万円前後という価格は、コンポーネントステレオにおけるアンプの手頃なレベルを意味し、商品としてこれから大いに売りまくりたい層をねらったクラスである。つまり、中心商品なのである。
 私はつい3カ月ほど前、本誌でほぼこのクラスと同じレベルのオンキョー・インテグラ725を、このクラスのベストアンプとして紹介したばかりである。
 KA3002にみられるトリオの商品企画のうまさは、この4万5千円のアンプが、倍近いアンプEKA7002とまったく同じ寸法の、同じデザインポリシーのパネルデザインに統一されていることにある。
 逆にいえば、KA7002は半値近いアンプとほぼ同じ外観的イメージでとられてしまうおそれがある。
 商品、KA3002に対して、メーカー側は、より多くのウエイトをかけているということを、明白に物語るのが、このKA3002のデザインであるのだ。
 僅か数カ月で、紹介し賞賛したオンキョーと肩をならべ、少なくとも、私がいつも愛聴するジャズをプログラムとする場合はオンキョーのインテグラ725にまさるアンプが出現したのだ。
 さらに、ルックスの点では、おそらく、多くのオーディオファンが、今回のトリオKA3002の方に、より魅力を感ずるであろうことは間違いない。
 ルックス、外観上の魅力は、コンポーネントアンプにとってかなりの重要性を意味する。信頼感、融和性というものは、まずその商品に対する外観的な好みから出発するからだ。
 慎み深い第三者的な立場と、コンピュータ的な冷たい限で比較したとしても、トリオの新製品KA3002の方により魅力を感じてしまうのは、外観的な企画のうまさがまず物をいっているのだ。
 しかし、こういう話の進め方をすると、何か、外観以外の内的な性能において、いいわけがましく聞きとられてしまうように思われよう。しかし、これはただひとつの点だけとってみてもトリオKA3002がジャズを聞くに適しているということができ得る。
 このただかとつの点というのは、ほかならない低音のサウンドである。
 ジャズサウンドという再生音があるとしたら、それは、ひとつひとつの楽器の音を、生演奏を間近かで聴くときのエネルギーを感じさせるということにつきる。ここで必要なのはクラシックの場合とはやや要求されるサウンドに違いがある。
 というのは、クラシックではストリングを中心としたオーケストラのハーモニーこそ目的であって、楽器のひとつひとつのエネルギーではない。
 要求されるサウンドが違う以上ジャズに対して低音の音量というか、迫力がまず第一に望ましい。
 この点がある故に、ジャズの再生はクラシックのそれよりむずかしいとし、うのが通念だ。
 トリオのアンプは、他社に先駆け、トランジスタアンプを手がけて以来、常に、このサウンドの迫力、特に低音のエネルギーを再現するのに非常に優れたキャラクターを示してきた。それは、この新形KA3002においてもはっきりと再確認できたのである。
 私はオンキョーのインテグラ725を試聴して、やはり同じことを感じとったのだが、2台を並べて切替えて試聴してみるとトリオの方に、より分があるのを認めないわけにはいかない。
 この違いはさらに使用してみて、オンキョーにおいてのプリアンプにあるということと、オンキョーに低音および中高域のソフトな音色を感じることを申しそえておこう。
 トリオのこのサウンドの迫力は、価格において倍に近いKA7002と同じ線上にあるものであり、さらに新シリーズのスピーカKL5060AマークIIにおけると、共通のサウンドポリシーにあるのも事実だ。
 トリオというメーカーは、どうも製品に対して、正直すぎるようである。
 それは、ステレオ専門メーカーの中でもひときわ技術的レベルが高いという一般的な見方が、そのままうらがえしされて映る面なのである。
 常に、新らしい技術を他社に先駆けて開発しながら、その商品的な巧妙さの点でいつもあとを追い上げるメーカーに一歩退れをとってしまう。そんな技術屋メーカー的体質が、いつも商売の面にちらつくようだ。
 くり返されてきたこういう商売に対する正直さが、今度の普及形アンプにおいては、大きなプラスとなるに違いない。
 それは、サウンドのクォリティーが物語る。
 回路構成の、おそらく簡略化が、かえって各ステージの設計、特にレベルダイアグラム上の構成に大きな利点をもたらしたのであろう。
 普及度といっても質的には高級機との差のない直結アンプでは、トリオの正直さがプラス面のみに作用したとみるべきだ。
 トーンコントロール、アクセサリー回路の充実などという月並みなことを今さらここで述べる必要はない。
 ただ、はっきりいっておきたいことは、最近の直結アンプすべてに共通していえるのだが、スピーカ側に事故がある場合、または、突然の過大入力によるショックなどが、大きすぎる場合スピーカの事故を誘発し、次の瞬間、アンプ出力段が破壊するというトラブルが発生しやすいというウィークポイントが、直結アンプにつきものだ。
 当然出力段保護に万全の対策が講じられていなければならない。
 この保護回路に関して、私はKA3002の回路がどう対策を立てているかを見きわめたわけではない。
 しかし、実際、2週間の使用においては、かなりの過大入力にもびくともしなかったし、むろん、オーバーヒートなどの出力段のトラブルもまったくみられなかった。
 スピーカ端子のショートや、過大入力がつづくと音が一瞬止まるが、すぐにもと通りの音を出してくれ、この時チェックさえすれば、あとはいかなるトラブルの心配もない。
 最後にひとこと誤解をといておきたい。KA3002が、ジャズ再生においてのみ優れた性能を示したからといって、それがクラシック音楽ファンには適していないというわけではない。
 ジャズの苛酷な使用状態に十分威力を発揮すれば、それは最近のクリアーな録音の迫力に満ちたマルチマイク録音を駆使したクラシック再生に際しても、今までより以上に好ましい結果を得られるに違いない。
 ジャズのみを聞いたのは、私個人の好みの問題であって、KA3002が適しているからでは決してない点だ。

〈試聴に用いた横種〉
 トリオ KA7002
 トリオ KT8001
 トリオ KL5060
 トリオ KL3060
 エレクトロボイス エアリーズ
 JBL ハークネス
 フィリップス EL3120カセットデッキ
 トーレンス TD124+SME 3009アーム
 カートリッジ シュアV15/II
 エンパイア 888PE
 フィデリティ・リサーチ FR5E
 グレース F8C
 オルトフォンM15, SL−15

米CBS サンタナ/天の守護神
米RCA プレスリー/オンステージ
米コンテンボラリー シュリーマン

テクニクス SU-3404

岩崎千明

電波科学 10月号(1971年9月発行)
「電波科学テストルーム」より

 4チャンネル用と銘うった市販アンプは’71年8月未現在では、市場にそう多くはない。
 さて、テクニクスSU3404は、パワーアンプは2系統つまりステレオ用のみで、4チャンネル用としてはもう一組のパワーアンプを必要とする。
 だが、しかし、というこのことばはあまり好きではないのだが、テクニクスSSU3404は、4チャンネル用と、はっきり受けとって然るべき長所を実に明確に具えている。というのは44チャンネル用としてのボリウムコントロールと、実に効果的で高品質のデコーダを内蔵している点にある。
 ボリウムコントロールだけについていえば、トリオの、新シリーズアンプも同様の特長を持っているのだが、デコーダは内蔵していない。
 4チャンネルへの変換用デコーダは、山水もトリオも単独形で製品化しており、これは他社でも大体それにならっているようだ。
 テクニクスSU3404のデコーダ回路は、これら独立形デコーダと品質の上では対等のものであるし、音質にしぼれば、市販製品中でもベストのものといい得る。このことは、もっと大きい声でいうべきだし、このテクニクスSU3404の4チャンネル用アンプとしての価値を大いに高めている点でもある。
 SU3404のパネル面の右下にあるMODEつまみ、これがデコーダ回路である。2CHステレオ、マトリクスA、マトリクスB、ディスクリート4CHの4段スイッチに集約された、この見かけの上ではちっぽけな部分は、どうして、どうして中々の本格派だし、中味の濃い高性能ぶりを発揮する
 ステレオから4チャンネル変換の、いわゆる2−2−4方式という、もっとも手ごわい再生における音場の自然さ、SU3404の再生品位はこの自然感という点で、市販デコーダの中でもおそらく最高のものだ。
 しかし、考えてみれば当然かも知れない。テクニクスが、すでに発表したデコーダ、たしかSH3400という製品として独立したアダプタは、いかなるエンコーダ(録音側変換装置)にも、応じ得られるように細心の配慮がなされている点において、他を圧倒している優秀機器だ。
 その音場の自然な再生ぶりは、耳の良いマニアであればあるほど不自然でなくひずみの少ないのにほれ込んで、4チャンネル否定派だったその立場を変えたくなるほどであったのだ。
 さらにつけ加えるなら左右のステレオの合成信号の位相角に対してのいたれりつくせりの配慮が、これほどまでに十分になされている点にもマニアの心理をよく知りつくした設計を思い知らされるのだ。
 音が悪かろうはずがない。
 この優れた変換回路と基本的に同じものが、SU3404のアダプタとして内蔵されているのである。
 SU3404が4チャンネル用と銘うったことに対して、十分にその価値を認めたいのは、実にこのアダプタにあるのだ。
 このデコーダ回路は、マトリクスAにより2−2−4方式の変換回路となるが、これがテクニクスのみのきわめて自然なプレゼンスが得られる。さらにマトリクスBにより現在、市販されているマトリクス4チャンネルレコードやFMステレオ放送を4チャンネルとして復元してくれる。さらにディスクリート44チャンネルのポジションではディスクリート4チャンネルのテープや8トラックマガジン用として用いられる。
 SU3404は私のリスニングルームにはかなり早い時期こお眼見えした。つまりSU3404と同時にである。それは市場にSU3400が発売される直前であった。
 この両者のアンプは外観上からもちょっと見別けがつかないくらいよく似ていたが、音質の点でも、使ってみた所でも全然変ることがない。
 それもそのはずで、SU3404は、ステレオ用のSU3400を4チャンネル化した製品なのである。
 テクニクスSU3404を聞いて、私はこのアンプを居間にあるエレクトロボイスの新形スピーカシステムエアリーズに接続して使うことに決めた。
 それは、テクニクスSU3404の音が、実に品がよく、ふくよかな豊かさに満ちていたからだった。
 エアリーズも豊かな音ののぴを感じさせるスピーカであったから、この良さを発揮するにはSU3404が多くの意味でマッチするであろうと考えたからであった。
 このエアリーズは、エレクトロボイスの伝統をよく表わして低音の豊潤な響きが国産品にない、つやとなめらかさを実に感じさせるが、それにしてもSU3404でドライブしたときに、このふくよかさは一段と増して、スピーカの箱がひとまわりも、ふたまわりも大きくなったような感じさえしたのだ。
 いくら音量を上げても、音のりんかくのくずれることのないのは、見かけによらずSU3404の出力が非常に大きいためだろう。35W/35Wという規格は、おそらくゆとりを十分持っているに違いなく、ハイパワーのまま何時間も鳴らし続けてもびくともしなかったのには、他社の製品でにがい思いをしたことのある私にとっては、実に嬉しかったことを特筆したい。
 それでいて、ローレベルの音に対してもクリティカルな反応を示し、ピアニシモでも音は少しもボヤけることがないのは、低レベルでの低ひずみ特性の良さをも物語る。
 その音はちょっと聞くと、ややソフトタッチで品が良いけれど、力強さが物足りないのでは……と懸念するが、フォルテのときにも、ジャズのソロの強烈さを堂々と再現してくれるのには驚いた。SU3404にも注文をつけたくなるような点がないわけでもない。
 それはプリセットと称するボリウムコントロールのまわりの2重つまみだ。カメラのシボリにおけるプリセットからとったのだと思われるこの機構は、ただ単に見ばえのための飾りでしかない。便利さというよりも、高級品としてのメリットを考えてのメカニズムであろう。使ってみて、プタセットの良さは、いささか納得し難い。
 それからスイッチだJBLアンプのスイッチそっくりのやわらかいタッチの切れ味は、中々の魅力ではあるが、しかしこのスイッチのパネルのカットが角形であるのはなんとなく、パネル面の感じをどぎつくさせているように思う。若者向きということを強く意識したパネルデザインということであれば、もっと他のやり方があったのではという気がする。しかしこの角形の穴は、テクニクスSU3404だけのものであるし、デザインの個性という点ではひとつのポイントになっていることは認めよう。