フィデリティ・リサーチのカートリッジFR5の広告
(スイングジャーナル 1970年8月号掲載)
Yearly Archives: 1970 - Page 15
フィデリティ・リサーチ FR-5
アコースティックリサーチ AR-2ax, AR-3, AR-4x, AR-5, AR Amplifier, AR Turntable
スコッチ No.202, No.203
サンスイSL-5, SL-7
ビクター MTR-10M
オンキョー MC3400
Lo-D HS-201F, HS-250F, HS-500
ビクター CHR-250A
ソニー QR Stereo
ナガオカ NR-1
東芝 KT-43D
パイオニア PL-41A, PC-20, PP-301
アイワ TP-102S
岩崎千明
スイングジャーナル 8月号(1970年7月発行)
「SJ推薦ベスト・バイ・ステレオ」より
ズバリいおう。このカー・ステレオなら、本当のカー・マニアでも自分の車に搭載するのにためらうことがないだろうし、もしカー・マニアにしてジャズマニアなら、それこそ本当にカー・ライフにジャズがふんだんに取り入れられるに違いない。大いなる可能性が溢れているのである。
つまりカセットが実用的に使い得るし、自動逆転(オート・リバース)により今までの8トラックのカートリッジと同様に併用できるのだ。
さて、このことがどんな意味もをっているのか、今までのカー・ステレオをよく知っている者や、すでに8トラック・カー・ステレオを搭載しているカー・オーナーならばよく判っていただけるに違いない。つまり8トラックはたしかにカー・ステレオ用とし、車載を条件としたテープ・メカニズムを基に開発されたステレオなのである。これはこの目的範囲ですでに完成されている。とはいうものの、それを使ってもっとも不便を感じるのはマガジンの大きいことである。軽自動すなわち360c.c.クラスの日本の大衆車にとっては、このマガジンを10本ものせると1人分のシートが分捕られてしまう点である。さらに経済的な理由、つまり音楽テープが1巻2、600円前後と高価なため、ふんだんにというほど新譜をいつも買入れるわけにはいかないのも8トラックの大きなマイナス面だ。
テープ・メカニズムが今日のように大きく発展普及したのは、いつでも自分自身ですきなプログラムを録音でき得る点にあるのだが、8トラック・カー・ステレオだけはごく最近まで、録音するためのデッキが製品として市販されていなかったし、また現在市販されていても3万円以上で、かなり高価である。つまり8トラック・カー・ステレオは、プログラムとして必ずミュージック・テープをレコード1枚分よりぐんと高価であるにもかかわらず購入せざるを得なかったわけだ。
カー・ステレオにカセットが採用される可能性を論ぜられてすでにまる2年かなりの期間が経った。しかし、この2年の間にもカセット併用のカー・ステレオが製品として出たには出たが、実用価値は低く、使いものにならないような価値の認められないといってもよいものだった。つまりカセットでは往復動作が必要であり、左→右が終れば裏がえして左→右をもう1度プレイしなければならない。片面が終ったときテープはストップしたままであり、内部メカニズムを破損に導き得る危険があった。これをカーステレオではカセットを飛び出させるか、終了標示ランプで示すまでしかなかった。
アイワの新製品TP102Sは片面演奏終了と同時に自動逆転して、カセットを裏返すことなくプレイバックしてくれるのである。そして両面終了と同時にカセットが飛び出し、メカニズムは終了停止してくれる。
むろん8トラック・マガジンについては従来通りに自動演奏するし、自動チャンネル切換えや手動切換えもできるので変るところはない。
もう1つ注目してよいのは、8トラックのマガジンとカセットの挿入カ所がひとつであり、わかれていない点だ。当り前といえば当り前であるが、この当り前が今までなおざりにされていた点で、それを実現したアイワのテレコとカー・ステレオを作ってきたキャリアと技術を見ることができる。
手持ちのカセット・レコーダーでFMから録音したカセット・テープが、そのままカー・ステレオで聞ける。これこそ新しいカー・ライフを開くと評してよかろう。
製品の質的な優秀さもアイワの永いカー・ステレオのキャリアがあってこそ到達したものに違いない。力強い低音とシャキッとした歯切れよい高音、やや華やかであるが快適なサウンドもカー・マニアライクな明快さで快よい。
トリオ KL-5060
菅野沖彦
スイングジャーナル 8月号(1970年7月発行)
「SJ推薦ベスト・バイ・ステレオ」より
トリオのスピーカー・システムKLシリーズが発表された時、その音の方向が従来の方向と全く変ったという感想が多かった。たしかに、KL5060に代表される明るく開放的な音、豊かで力強い低音から充実した中音域の魅力は、それまでのトリオのスピーカー・システムにはなかった音だ。変った変ったといわれることはトリオにしては迷惑なことかもしれないが事実だから致し方がない。そしてまた、音の傾向が変るということはそんなに恥じることでもない。大衆の好みも変化するし、音楽も時代とともに大きく変動する。スピーカーが忠実な音楽変換器としての動作に加えて、個性的ファクターの介在を無視するわけにはいかない製品である以上、むしろ当然といってもよいのである。
KL5060は30cmウーハーをベースに16cmスコーカー、ホーン・トゥイーターの3ウェイ・システムだが、ウーハーとスコーカーのつながりは実にスムースで音色的な不連続感がまったくない。ただ、スコーカーからトゥイーターへの連りにやや音色的な不統一がちらちらと顔を出すのが気になってきた。これはパルシヴなパーカッションなどよりも、弦楽器の合奏などでより明瞭に現れるようで、欲をいえば、このトゥイーターにもう一つ検討を加えられることだ。しかし、これはかなりぜいたくな要求で、一般的にいえば、欠点というものではない。むしろ、市販システムの中では全帯域のつながりは優れているといってもよく、特に高域のパワーに余裕があることはジャズ・ファンには大きな魅力である。KL5060はジャズのプログラム・ソースで試聴がくりかえされたと聞くが、トゥイーターを2本使ったことには必然性があると思う。高音域のエネルギー密度の高いジャズにおいて、しかも、フル・パワーで鳴らすのが好きなジャズ・ファンの要求にこたえるためには高音域のパワー・ハンドリングには充分注意しないと、耐久性で問題がでるのである。私が自宅でテストするスピーカー・システムのいくつかが、1〜2か月テストしているうちにトゥイーターが破損するもの続出である。どんなによい音でも、すぐこわれてしまったのではなんにもならない。ジャズ向きのスビーカー・システムの第一条件は大入力に耐えることだといってもよいのである。スコーカー・ウーハーの受持つ帯域が入力過大で歪みはじめればすぐ気がついて音量を下げる人でも、トゥイーターの受持帯域の歪、特に打楽器のパルシヴな波形の歪にはやや鈍感で音量にマスクされて聴いてしまう傾向があり、こういう状態を長く続けるうちにトゥイーターがこわれてビリ始めるということになる場合が多い。この点、KL5060では、スコーカー、ウーハーとバランスした許容入力とエネルギー密度の再現力をもったデュアルトゥイーター方式を採用しているから安心で、この7か月、自宅のテスト製品もSJ試聴室のものも全くトラブルレスである。また、2つのトゥイーターを使うということは音色的にも変化が現れるもので、こっちは、必ずしも良くなる場合ばかりではないが、使い方によってはトゥイーター独特の刺戟音を柔らげることでも役立つことがある。
KL5060はこのようにジャズ・ファンにとっては安心して使え、しかも音の表情が一点の曇りのない力強いものだけにハード派には打ってつけのシステムといってよい。ベストバイとするにふさわしい製品である。しかし、今後のトリオにもう一つ期待したいのはソフト派の高い感覚性にこたえる品位の高いスピーカー・システムの出現である。ただし、品のいい音は脆弱になる危険性もある。これはジャズには絶対不向きである。大入力に耐え、しかも、繊細なニュアンスと高いセンスをもつ音、つまり抜群のリニアリティをもつハイコンブライアンス・スピーカーが理想である。
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