Monthly Archives: 1月 1970

JBL D130

岩崎千明

スイングジャーナル 2月号(1970年1月発行)
「私とジムラン」(サンスイ広告)より

 私はその部屋に入るなり思わず立ち尽くした。目もくらむような鮮かなフル・コンサートの音でその部屋は満たされていた。
 何分たったろうか、視線をめぐらしてスピーカーの存在を確かめるまで、それが再生された音であるとは信じられないぐらい鮮烈であった。
 私とJBLの最初の出合いは、その音と共に強烈な印象を脳裏に刻み込まれたのである。
 なんと幸運にも、その音を出していたJBL・D130はこの直後、私の部屋のメイン・スピーカーとなって、鮮かな音で再生音楽に息吹を与えることとなったのだ。13年も前のことである。

 JBLという名が米本国のハイファイ業界において大きく伸び、広い層に知られるようになったのは、前大統領リンドン・B・ジョンソンの時期であったといわれる。ジョンソンのイニシアルであるLBJにひっかけて、JBLという呼称で、最高級ハイファイ・スピーカーのイメージを広く一般層にアピールした作戦があたったためであろう。

 私がJBLを使い出した頃、米国マニアの一般の通例として、ランシング・スピーカーといういい方で知られていたが、すでに最高級マニアのみが使い得る最高価格のスピーカーとしての定評は、米本国内では確固たるものであった。
 ランシング・スピーカーと呼ばれる商品はJBLのほかにアルテックの製品があるが、アルテックが業務用ということで知られていることをはっきり狙った製品だ。業務用が信頼性と安定性をなによたも重要視するのにくらべて、ハイファイ用はまず、音楽の再生能力そのものを意識する。
 JBLが独立した戦後間もない初期の製品は、アルテックのそれと外観、機構ともよく似ている。しかし音自体はかなり差があって、JBLの方がより鮮明度が高い、ということができた。このことは現在でも少しも変らずにJBLの音に対する伝統となっている。

 D130が1本しかなかったため、私はステレオに踏み切るのがかなり遅かったが、他のスピーカーによるステレオ以上に、D130のモノーラルの方がずっと楽器そのものを再生した。よく、どぎつい音がするとか、派手な音がするとかいわれたが、装置の他の部分、例えばアンプとか、カートリッジとかがよくなればよくなるほど、私のD130はますます冴えて、本物の楽器のエネルギーを再現してくれた。
 私は最近、ジャズをよく聴くが、アドリブを重視するジャズにおいては、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再生することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
 音色、バランス、クオリティー、パターン、いろいろ呼び方の音の再生能力の中で、ジャズでは音の変化の追随性というか、過度特性という点が、もっとも重要なファクターであるといえる。
 その点でJBLのスピーカーは、最も優れた能力を秘めていると思える。長い間、私はいろいろなスピーカーを使ったが、結局、最近はJBLを最も多く聴くようになってしまった。

 いま私の部屋にはレコード試聴用のSP-LE8Tとは別に、C40リアー・ホーン・ロード・バッフルに収められたD130が2本、それにオリジナル175DLHのクロスオーバーを下げた強力型のLE85が2ウェイを構成し、ステレオ用としてのメイン・システムとなっている。

 時代が変っても、社会の急速な進歩と共に、再生芸術の狙いも変ってくる。毎月聴いている新譜も、鮮かな音のもが増えているが、JBLのスピーカーはますます冴えて、その限りない真価を深めつつある。

JBL D130

JBLのスピーカーユニットD130の広告(輸入元:山水電気)
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

JBL1

マイクロ MR-411, MC-4100

マイクロのアナログプレーヤーMR411、カートリッジMC4100の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

MR411

ビクター MCP-105

ビクターのコントロールアンプMCP105の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

MCP105

パイオニア T-6000

パイオニアのオープンリールデッキT6000の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

T6000

ビクター TD-694

ビクターのオープンリールデッキTD694の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

TD694

グレース F-8C

グレースのカートリッジF8Cの広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

F8C

オンキョー Integra 713

オンキョーのプリメインアンプIntegra 713の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

integra713

テクニクス SC-1600

テクニクスのシステムコンポーネントSC1600の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

Technics

スコッチ No.150, No.202

スコッチのオープンリールテープNo.150、No.202の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

Scotch

サンスイ SP-2002

サンスイのスピーカーシステムSP2002の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

SP2002

サンスイ SR-2020, SR-3030

サンスイのアナログプレーヤーSR2020、SR3030の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

SR3030

ビクター MCA-105, MCP-105, MCM-15

ビクターのプリメインアンプMCA105、コントロールアンプMCP105、パワーアンプMCM15の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

MCA105

フォスター G-55, G-66

フォスターのスピーカーシステムG55、G66の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

foster

パイオニア CS-5, SX-45, PL-11

パイオニアのスピーカーシステムCS5、レシーバーSX45、アナログプレーヤーPL11の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

Pioneer

トリオ KL-63, KR-33, MX-1000

トリオのスピーカーシステムKL63、レシーバーKR33、パワーアンプMX1000の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

Trio

富士フィルム FM

富士フィルムのオープンリールテープFMの広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

fuji

ティアック LS-80

ティアックのスピーカーシステムLS80の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

Teac

ラックス SQ507

ラックスのプリメインアンプSQ507の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

SQ507

パイオニア CS-05

パイオニアのスピーカーシステムCS05の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

CS05

パイオニア CS-500, CS-700

パイオニアのスピーカーシステムCS500、CS700の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

CS700

シュアー M75E/2, V15 TypeII

シュアーのカートリッジM75E/2、V15 TypeIIの広告(輸入元:バルコム)
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

Shure

オーディオテクニカ AT-35X, AT-VM3

オーディオテクニカのカートリッジAT35X、AT-VM3の広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

audio-techinica

TDK SD

TDKのカセットテープSDの広告
(スイングジャーナル 1970年2月号掲載)

TDK

パイオニア TX-70

岩崎千明

スイングジャーナル 2月号(1970年1月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 新聞の片隅の「東京地区の新らしいFM局に春早々に予備免許がおりる」ことを報じた記事が目に止った。
 もっとも、この新局は現在の唯一つのFM民間局、FM東海が合併されるとのことであったから、東京地区で新局開局によってすぐFM放送局が増すというわけではないらしい。
 しかし、新局は現在のFM東海にくらべて放送電力がかなり大きいことが予想されるから、サービス・エリアはぐっと拡がるだろう。それに東京ではさらに4局ぐらいは増すことになると伝えられているから、FM放送もテレビなみに番組によりいくつかの放送の中から選んで聞けるという日ももうすぐである、
 しばしばいわれるように、米国ではFM民間局が極端に発達していて、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロスアンジェルスといった主要都市では、大小さまざまの20から40局ものFM局がダイアルいっぱいにひしめいている。日本でもそれほどではないにしても、FM多局時代がやってくることはまちがいなく、今やFM全盛時期を目前に控えた準備時期ともいえるようだ。
 このFM多局時代をはっきりと感じさせる製品、それがパイオニアの最新型チューナーのTX70である。
 放送局サイドの開局準備が着々と進んでいるのと平行して、聴取者も来たるべきFM花ざかりの時代に応じた意識を、今から植えつけることは決して無意味なことではない。
 テレビ全盛の今日、聴取者側のあり方といったものが日ごとのようにジャーナリズムをにぎわしているのをみるとき、新らしいマスコミとしてのFM放送の受けとり方といったものも論じられるのは当然であろうし、それ以上に必然性をもっていよう。そして、その最低条件として、物理的な意味での、質のよい電波とその受けとり方自体がまず問題となる。
 特に音楽番組に重点を置いた場合、周波数レンジ、ダイナミック・レンジ、雑音とあらゆる点において優秀性を示すFM電波の特長を十分発揮するために、この点が一層重要な問題となるのである。
 放送電波の質については、生放送、高速テープなど放送局側に期待せねばならないが、受信側の不完全により、せっかくの良質の内容を見逃がし、あるいは損なっては、大きな損失であろう。特に音楽ファンにとって借痛にちがいない。
 FM電波をより良く受信するには大きなアンテナと並んで「正しい同調」が大切だ。FM電波はテレビの音声と同じように、同調点が正しく合っていないと音は小さく、そして歪む。しかも、この正しい同調点はダイアル面上で針を突いたようなただ一点しかないのである。
 そこで、FM放送を正しく同調させるためにSメーターや、中央指針の同調メーターが必要となり、それは高級チューナーでは、アクセサリーとしてより、それ以上に重要な必需品となっている。高価なチューナーでは、正しい同調のためのオシログラフさえ組み込まれているのだ。
 そこで実用性の高い押ボタン同調機構が注目される。
 FM放送にあって、押ボタン同調方式(プリセット式)はカーラジオなど中波におけるよりはるかに重要な意味を持っているのである。単に「便利」というのではなく、めんどうなFM受信の「正確な同調点が容易にキャッチできるという点が注目されるのだ。
 バイオニアのTX70は製品としては日本で初めての押ボタン式同調機構を採用したチューナーだ。
 FMの押ボタン同調メカニズムは電波が超短波のために大きく深い幾多の問題点をかかえてきた。それを克服しなければ製品化はでき得ない。この簡単な、素人にも正確なFM受信を可能としたメカニズムには、しかし最新のエレクトロニクスと高度の精密技術と、新らしい高周波材料とが秘められている。
 この新らしい機構にかえて、技術的良心の行きとどいた回路は、高級な音楽マニアも納得するFM再生を可能にする。それはこのTX70をT社の最高級チューナーと切換スイッチにより、SJ試聴室で音を確かめたとき裏付けされた。
 まったく驚いたことに、切換えたことが判別できないほどにすばらしいものであった。