Monthly Archives: 11月 1969 - Page 2

テクニクス SC-1600

テクニクスのシステムコンポーネントSC1600の広告
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

SC1600

アルテック Malaga

アルテックのスピーカーシステムMalagaの広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

ALTEC

ビクター MCA-105, MCP-105, MCM-105, ICM-105M, MCT-105, CF-105

ビクターのプリメインアンプMCA105、コントロールアンプMCP105、パワーアンプMCM105、ICM105M、チューナーMCT105、エレクトリッククロスオーバーネットワークCF105の広告
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

Victor

グレース F-8C

グレースのカートリッジF8Cの広告
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

F8

オンキョー Integra 713, Integra 613

オンキョーのプリメインアンプIntegra 713、パワーアンプIntegra 613の広告
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

integra713

シュアー M75E/2

シュアーのカートリッジM75E/2の広告(輸入元:バルコム)
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

Shure

ラックス SQ503, SQ507

ラックスのプリメインアンプSQ503、SQ507の広告
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)

Lux

オーディオテクニカ AT-3M

菅野沖彦

スイングジャーナル 12月号(1969年11月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 ジャズのレコードに限ったことではないが、モノーラル時代の名演奏の再発売ものには見逃せない名盤がたくさんある。レコードというものの本質からいっても、記録性ということは大変重要なもので、特にジャズのような瞬間性の大切な、二度と再び同じ音楽がこの世に存在し得ないものについては、きわめて貴重なものだ。資料としてはもとより、かけがえない音楽体験として、モノーラルのレコードを、ただ局面的なオーディオ観で、ステレオ録音ではないからというだけで、遠ざけてしまうとしたら、その音楽的損失は計りしれないほど大きい。しかもモノーラルにも、ステレオ顔負けの素晴しい録音のものさえあるのだから、なおさらのことである。特にジャズ・サウンドは、空間サウンド以上に楽器音そのもののリアルな再現が好まれるという美的観念があるから、モノーラル録音はクラシックの場合ほどの制約にはならないともいえる。クラシックとジャズとの間には、音楽的な音そのものについての美学の差があることは否めない。ジャズのステレオ録音に、マルチ・モノ的な音が多いものもそうした理由による。荒々しいタッチ、生々しい触感、激しい圧迫感をもった音を明確に把握しながら、しかもステレオフォニックなプレゼンスを2チャンネルの再生から得ようとすることは容易ではないし、これは、ジャズ録音にたずさわる私たちの抱える大きな課題なのである。
 ところで、モノーラルのレコードが現時点で再発売される時に、いわゆる擬似ステレオ化されているというケースがあるが、これについては、クラシックもジャズも、心ある人々が大反対しているようだ。しかし、先に述べたようなジャズ・サウンドの美的観念からして、ジャズの疑似ステ化についての反対はクラシックとは比較にならないほど強烈で、ついに、近頃では、ほとんどのレコード会社がモノーラルのまま再発するようになった。
 こうなってくると、もう一つ問題となるのが再生のシステムであって、ステレオ・カートリッジで、モノーラル・レコードを演奏することには一考する必要が生じるというものだ。つまり、ステレオ・レコードとモノーラル・レコードとでは、溝を切刻するカッター針の曲率半径が異り、溝の形はちがう。また本来、モノーラル・レコードには縦振動の成分は含まれていないし、それを再生するカートリッジも縦の振動成分に対しては感度をもたないように設計されている。ステレオ・カートリッジでも、左右チャンネルの出力をシリーズ結合して縦成分をキャンセルして使えばまだよいが、そのままの状態で使ったのではかならず不都合が生じる。一般にいわれることは、モノのカートリッジでステレオ・レコードはかけられないがステレオ・カートリッジでモノーラル・レコードをかけても差支えない……というのだが、それはレコードに対する保護の面からであって、そのレコードを理想的に再生することに関しては問題がある。モノ・レコードはモノ・カートリッジでかけるのが本来である。そこで、このAT3Mは貴重な存在である。ステレオになってカートリッジの振動系は大幅な進歩を遂げているが、このAT3Mもモノ当時のカートリッジとは格段の性能をもつ。欲をいえば、現時点でカートリッジ・メーカーの技術をもってすれば、さらに理想に近いモノ・カートリッジが出現するはずだが、モノ・レコードを聞く人には、広くこの製品を推薦したい。ステレオ・カートリッジで聞くよりも、はるかに腰の入った、がっしりとした音の再生ができるのである。今さらモノ・カートリッジをと思われる人もいるかもしれないが、ジャズ・ファンならばぜったいに聞き逃せないモノーラルの名盤のよりよい再生のために、このカートリッジを今月のベスト・バイ商品として選んでみた。

タンノイ IIILZ MKII

菅野沖彦

スイングジャーナル 12月号(1969年11月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 タンノイのモニターIIILZといえば、伝統的な英国の名スピーカーとして有名である。英国には、スピーカー・メーカーが多く、グッドマン、ワーフェデール、KEF、ローサー、リチャード・アレン、クヮド、ヴァイタ・ボックス、そして、このタンノイなどの有名スピーカーがある。これらの英国製スピーカーは日本でもファンが多く、それぞれ独自の個性をもった音がファンを獲得している。しかし、それらのファンは圧倒的にクラシック・ファンが多く、英国スピーカーはジャズの世界では全くといってよいほど冷遇されてきた。何故だろうか? それにはそれなりの理由がたしかにあったのかもしれない。その理由を証明するにはスピーカーというものが、一連の電気音響機器の中で特別にソフトウェアーとしての性格の濃いものであるということから話しはじめなければなるまい。電気音響機器は、大きく二分して、変換系と伝送増幅系とからなっていることは、本誌の愛読者ならすでにごぞんじのことと思うが、変換系、つまり、あるエネルギーを、異った性格のエネルギーに変えるものの代表的なものが、マイクロフォン、カートリッジ、スピーカーである。
 この変換系の中でも、直接、空気の波動を扱うマイクロフォンとスピーカーには特に問題が多い。変換能率、周波数レスポンス、歪特性などの特性のよいものをつくること自体大変難しいことだが、もっとも問題になるのは、そうした、いわば解析ずみの特性データによって完全に把握しきれない問題である。これが、結果的な音色に及ぼす影響がきわめて大きく、これらの製品の最終判断は聴覚によらなければならないのである。例えば、振動体にはなんらかの物質を使わなければならないが、この物質自身の個有の特性は必らず音色として現れてくるものである。聴感覚によって判定するとなると、当然、そこには制作者の音への好みが反影せざるを得ないのであって、同じような物理特性をもった二つの製品のどちらかをとるというようなギリギリの場合だけを考えてみても、音への嗜好性、音楽の好みなどがはっきりと現われてくることになろう。スピーカーがソフトウエアーとしての濃い製品だというのはこのような意味であって、スピーカーほど、この点で厄介な、しかし、面白いものはないのである。
 音への好みは単純ではない。年令、体質、教養、性格などの綜合されたものが音の嗜好性を形成する。当然、人種の差、文化水準の差、伝統といった条件も必らずまつわりついてくるものだ。
 そこで、英国系のスピーカーには、どうしてもクラシック音楽のイメージが強いとされてきた理由もなんとなくわかるのではあるが、今や、英国も、ビートルズを生み、ミニスカートをつくる現代国家であるし、特に輸出によってお金を嫁ぐことに熱心なことは先頃の英国フェアでもよく知っておられる通りである。英国がその古い伝統と、高度な産業技術を、クラフトマンシップを生かしてつくり上げた製品は、筋金入りの名品が多く、しかもお客の望みを十分に叶えてくれるサービス精神にもとんでいる。タンノイはいぶし銀のような艶をもつスピーカーだと評されていたが、このIIILZのニュータイプのIIILZ MKIIは、さらに明るさが加ってきた。重厚明媚を兼備えた憎い音を出す。これでジャズを聞くと、実に新鮮な迫力に満ちた音だ。MPSのジャズのように、最近はジャズの音も多様性をもってきた。アメリカ録音に馴れていた耳には大変新鮮な音のするヨーロッパ録音ではある。再生系も、英国スピーカーはクラシック向と決めこまないでチャンスがあったら耳を傾けてみてほしい。

サンスイ AU-777D

菅野沖彦

スイングジャーナル 12月号(1969年11月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 AU777Dは、従来のAU777を改良した新機種で、信頼度の高い、高いグレードをもったアンプである。AU777はベスト・セラーと呼ばれた製品で、サンスイのトランジスタ・アンプの評価を固めたアンプだが、このD型になって、一段と音楽的にもよくなった。試聴してみても、従来、やや気になった高音域のザラザラした荒さが大きく改良されていて、より滑らかにふっくらとした音を出すようになった。そして、中音域のバンド・パス・パターンをコントロールできるトリプル・トーン・コントロール方式の採用は、ルーム・アコースティックの調整に役立つのみならず、ジャズの再生にもっとも充実性を要求される中音域のコントロールに大きな威力を発確するものだ。一般に、迫力ある音にするというと、低音と高音を増強するような傾向がなきにしもあらずだがこれは本来正しくない。低高音を増強することは、中高域をやせさせることになり、決して迫力のある音にはならず、うるさい音になる。かといって、低、高音を落して中音域をクローズ・アップさせたのでは、切角のワイドレンジが泣く。この辺の微妙なコントロールは音づくりの妙味であるが、そう簡単にはいかないものだ。このトリプル・コントロールは中音域を1デシベル・ステップで、+−5db調整できるようになっているが、これが大変上手い特性曲線に設定されていて効果的であった。決して極端な増減ではないし、選択帯域を曲線が適切で、あらゆるレコードに、まともな効果をあげることができるのである。もちろん、併用スピーカーの特性を補うこともできるし嗜好に合わせるという使い方にもつながるものだろう。
 例のブラック・パネルのメカニカルなデザインと、機能的なレイアウトはかつてのAU777をそのまま踏襲している。細かい特長を捨い上げてみると、接続カートリッジ間の入力回路が二つあるが、そのうち一つは、入力インピーダンスを30kΩ、50kΩ、1100kΩの三段に切換えることができる。これは、カートリッジの出力インピーダンスのマッチングをとるという目的だが、適確なインピーダンス整合を計るという考え方から発展して、インピーダンス・マッチングによって変化する音帯の相違をトライするというマニア意欲を満たすサンスイらしい配慮であると見た。入力回路は、この他、チュ−ナー、AUX、テープ・ライン、テープ・モニターなどと豊富であり、高級プリ・メイン・アンプとしての機能をよく備えている。また、入力感度3・5mVのマイク入力端子をもっていて、喫茶店などの使用には便利だが、これがピン・ジャック端子であることは考えもの。これは是非、マイク用として一般的なミニ・ジャックとすべきであろうし、できればフロント・バネルに出して欲しかった。出力回路としては、まず、プリ・アンプ出力が、かなりのハイ・レベルであることが、マルチ・アンプ・システム発展の時には大変便利である。そして、二系統のスピーカー出力端子が扱いやすいターミナルで出ている。フロント・パネルには、20dbのミューティング・スイッチ、ハイ、ロー・カット・フィルター、ボリューム・コントロールと同軸になったレバー式バランス・コントロールなどが整然と並んでいる。いかにもマニア好みのメカニカルな雰囲気ではあるが、素人には、馴れないと、あまり整然と並びすぎていて、かえって戸惑いを感じるようだ。特に、左右独立の六つのツマミからなるトリプル・トーン・コントロールとなったので、余計にぎやかな印象を与えるのであろう。
 このアンプは、価格的には中級プリ・メイン・アンプであるが、サンスイの現役プリ・メイン・アンプを代表する製品で、その再生音の品位はかなり高い。定格30W+30Wの出力は、現行商品の中では決して大パワーではないが、ジャズの再生に向く能率のよいスピーカーには十分な出力である。試聴に使ったアルテックのA7が堂々たる迫力を再現してくれたし、ブックシェルフ・タイプの数種のスピーカー・システムでも、特に不満は感じられなかった。従来のタイプの発展型だけに特に目新しさこそないが、それだけよく練られた、信頼度の高い製品だと思う。