ビクターのスピーカーシステムBLA155、BLA205、BLA255、BLA305、BLA405の広告
(スイングジャーナル 1970年8月号掲載)
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トリオ KL-5060
菅野沖彦
スイングジャーナル 8月号(1970年7月発行)
「SJ推薦ベスト・バイ・ステレオ」より
トリオのスピーカー・システムKLシリーズが発表された時、その音の方向が従来の方向と全く変ったという感想が多かった。たしかに、KL5060に代表される明るく開放的な音、豊かで力強い低音から充実した中音域の魅力は、それまでのトリオのスピーカー・システムにはなかった音だ。変った変ったといわれることはトリオにしては迷惑なことかもしれないが事実だから致し方がない。そしてまた、音の傾向が変るということはそんなに恥じることでもない。大衆の好みも変化するし、音楽も時代とともに大きく変動する。スピーカーが忠実な音楽変換器としての動作に加えて、個性的ファクターの介在を無視するわけにはいかない製品である以上、むしろ当然といってもよいのである。
KL5060は30cmウーハーをベースに16cmスコーカー、ホーン・トゥイーターの3ウェイ・システムだが、ウーハーとスコーカーのつながりは実にスムースで音色的な不連続感がまったくない。ただ、スコーカーからトゥイーターへの連りにやや音色的な不統一がちらちらと顔を出すのが気になってきた。これはパルシヴなパーカッションなどよりも、弦楽器の合奏などでより明瞭に現れるようで、欲をいえば、このトゥイーターにもう一つ検討を加えられることだ。しかし、これはかなりぜいたくな要求で、一般的にいえば、欠点というものではない。むしろ、市販システムの中では全帯域のつながりは優れているといってもよく、特に高域のパワーに余裕があることはジャズ・ファンには大きな魅力である。KL5060はジャズのプログラム・ソースで試聴がくりかえされたと聞くが、トゥイーターを2本使ったことには必然性があると思う。高音域のエネルギー密度の高いジャズにおいて、しかも、フル・パワーで鳴らすのが好きなジャズ・ファンの要求にこたえるためには高音域のパワー・ハンドリングには充分注意しないと、耐久性で問題がでるのである。私が自宅でテストするスピーカー・システムのいくつかが、1〜2か月テストしているうちにトゥイーターが破損するもの続出である。どんなによい音でも、すぐこわれてしまったのではなんにもならない。ジャズ向きのスビーカー・システムの第一条件は大入力に耐えることだといってもよいのである。スコーカー・ウーハーの受持つ帯域が入力過大で歪みはじめればすぐ気がついて音量を下げる人でも、トゥイーターの受持帯域の歪、特に打楽器のパルシヴな波形の歪にはやや鈍感で音量にマスクされて聴いてしまう傾向があり、こういう状態を長く続けるうちにトゥイーターがこわれてビリ始めるということになる場合が多い。この点、KL5060では、スコーカー、ウーハーとバランスした許容入力とエネルギー密度の再現力をもったデュアルトゥイーター方式を採用しているから安心で、この7か月、自宅のテスト製品もSJ試聴室のものも全くトラブルレスである。また、2つのトゥイーターを使うということは音色的にも変化が現れるもので、こっちは、必ずしも良くなる場合ばかりではないが、使い方によってはトゥイーター独特の刺戟音を柔らげることでも役立つことがある。
KL5060はこのようにジャズ・ファンにとっては安心して使え、しかも音の表情が一点の曇りのない力強いものだけにハード派には打ってつけのシステムといってよい。ベストバイとするにふさわしい製品である。しかし、今後のトリオにもう一つ期待したいのはソフト派の高い感覚性にこたえる品位の高いスピーカー・システムの出現である。ただし、品のいい音は脆弱になる危険性もある。これはジャズには絶対不向きである。大入力に耐え、しかも、繊細なニュアンスと高いセンスをもつ音、つまり抜群のリニアリティをもつハイコンブライアンス・スピーカーが理想である。
テクニクス SB-500
パイオニア CS-770
アルテック Malaga
サンスイ SL-5, SL-7, SP-10, SP-70
フォスター G-1000, G-1010, G-3000, G-3010, G-5000, FN-7000
アルテック Malaga
サンスイ SD-7000, SP-2002, AU-999
サンスイ SL-7
ビクター BLA-405, GB-1B, MCA-105, MCP-105, MCM-105, MCT-105, SRP-B30b, MTR-10M, LCU-5
アルテック Malaga
アカイ CSS-8, CR-80
サンスイ SP-10, SP-70
Lo-D HS-1400W
タンノイ IIILZ, Autograph, GRF
Lo-D HS-500
菅野沖彦
スイングジャーナル 6月号(1970年5月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
もう1年前くらいの話だが、内外スピーカーを何種頼も集めて比較試聴をしたことがあった。その時、テストに使ったレイ・ブラウンのベースが一際鮮やかに、張りと豊かさをもって鳴ったシステムがあった。音程が明瞭で、ベースのもつサブ・ハーモニックスも十分再生し豊麗なレイ・ブラウンのサウンドが決して鈍重にならない。一体どのスピーカー・システムが、こんな魅力的な低音域特性をもっているのかとたどってみると、これが、日立のHS500であった。
HS500から出た低音は、実に自然で生命感溢れるものだったのである。しかも、このシステムに使われているウーハーL200は20cm口径で、決して大口径ウーハーではないし、箱の容積もそんなに大きいものではない。一定容積の箱に入れる場合は口径の大きいものより小さいもののほうが低域の再生は周波数特性上有利ではあるが、実際には口径の小さなウーハーからは十分に量感、音圧感のある低音を得ることは難しいのである。それにも関わらず、このシステムは、20cmウーハーの常識を破った低音の魅力を聞かせてくれる。ここで、このウーハーについてちょっとふれておくことにしよう。低音域用ユニットL200は、先に述べたように口径は20cm、半頂角の小さい浅いコーンに、ギャザード・エッジという日立独特のエッジを採用している。たくさんのヒダをもった、ちょうど、チョコレート(板チョコではなく、丸いチョコレート・キャンディという奴?)の受皿に使われているヒダの入った紙のような具合に加工され、これが実に巧妙に円周に張りつけられ、コーンのピストン・モーションを全く自由にしている。コーン紙はかなり剛性の高いがっしりしたもので、不規則なたわみやしなりが出にくい。つまり、コーンの分割振動を極力防いでいるらしい。しかし、このウーハーの受け持つ帯域は3kHzまでとかなり高いので、高域のモーションには問題がありそうな気もする。
そのために、最近3ウェイの新製品がでたが、私としては、このHS500により大きな魅力を感じる。話が横道へそれたが、この独特のウーハーは、日立の高い技術水準と、よくオーガナイズされた音響の基礎研究から生れたもので、一朝一夕には出来るものではない。設計から仕上加工に至るまで、明確なポリシーと綿密さのうかがわれる抜群のユニットである。
このウーハーに配する高域ユニットはホーン型のトゥイーターで、これまたピストン・モーションの理想を追求した大変ロジカルな設計理論に基いたもの。14mm径のマイラー・ドームにアルミの削り出しのホーン、独特なハの字型ディフューザーでアッセンブルされた高級トゥイーターである。これと先のウーハーとを3kHzでクロスさせて2ウェイ構成をとり、エンクロージュア一にはダンプドバスレス型のブックシェルフタイプを採用している。バスレフのダクトはパイプ型で、グラス・ウールによってダンプされている。材質、加工共に高度なエンクロージュアーで、あの低音のすばらしさはもちろんこのエレクロージュア一によって生かされているわけだ。
このスピーカー・システムについて、あえて難点をあげれば、音があまりにも素直でおとなしいことだろう。この辺がいつも云うオーディオの問題点であって、日立の卓抜な技術水準がいかにソフトウェア一に結びつき、理論的に優れたものが、どう美学と結びついてくるかが楽しみである。
ジャズファンでもソフト派、知性派にはぴったりの最高級システムとして推薦したい。























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