マッキントッシュのコントロールアンプC29の広告(輸入元:ヤマギワ貿易)
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)
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マッキントッシュ C29
最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その13)
瀬川冬樹
ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より
かつてC22とMC275の組合せの時代にしびれるほどの思いを体験したにもかかわらず、マッキントッシュの音は、ついにわたくしの装置の中に入ってこなかった。その理由はいまも書いたように、永いあいだ、音の豊かさという面にわたくしが重点を置かなかったからだ。そしてマッキントッシュはトランジスター化され、C26、C28やMC2105の時代に入ってみると、マッキントッシュの音質に本質的に共感を持てないわたくしにさえ、マッキントッシュの音は管球時代のほうがいっそ徹底していてよかったように思われて、すますま自家用として考える機会を持たないまま、やがてレビンソンやSAEの出現以後は、トランジスター式のマッキントッシュの音がよけいに古めかしく思われて、ありていにいえば積極的に敬遠する音、のほうに入ってしまった。
MC2205が発売されるころのマッキントッシュは、外観のデザインにさえ、かつてのあの豊潤そのもののようなリッチな線からむしろ、メーターまわりやツマミのエッジを強いフチで囲んだ、アクの強い形になって、やがてC32が発売されるに及んで、その音もまたひどくアクの強いこってりした味わいに思えて、とうていわたくしと縁のない音だと決めつけてしまった。
C29が発売されて、MC2205との組合せで、全く久しぶりに、ましてわたくしの家では本誌3号以来十数年ぶりに、マッキントッシュを聴いた。そして認識を新たにした。というよりも、マッキントッシュの音に、再びあのC22+MC275時代で築いた確固たる豊かさが蘇った。もう少し正確な言い方を心がけるなら、C22時代のあのいくぶん反応の鈍さとひきかえに持っていた豊かさ、あるいはC32で鳴りはじめた絢爛豪華で享楽的なこってりした味わい。そうした明らかな個性の強さ、というよりアクの強さが、ほどほどに抑制されて、しかも音に繊細な味わいと、ひずみの十分に取り除かれた滑らかさが生かされはじめて、適度に鮮度の高くそして円満な美しさ、暖かさが感じられるようになってきた。
レビンソンのアンプが、発売後も大幅に改良されていることはすでに書いたが、マッキントッシュのアンプもそれほどではないにしてもやはり、発売後も少しずつ改良されているらしいことは、ずっと以前から推測できた。たとえばMC2105でも、初期のモデルと後期のそれとでは多少音質が違っているし、プリメインのMA6100に至っては、発売当初はひどく歪みっぽい音がしたのに、後期のモデルではすっかり改善されていた。
MC2205を久々に聴いて、同じような印象を持った。あるいはそれはC29との組合せの結果であったのかもしれないが、以前に試聴したモデルにくらべると、弱音でのディテールの表現にわずかに感じとれた粗さがなくなって、管球時自体に築いた音の豊かさに、現代のトランジスターアンプならではの音の鮮度の高さや解像力の良さがほどよくバランスして、ひとつの新しい魅力を表現しはじめた。マッキントッシュは確かに蘇った。
マッキントッシュ C29, MC2205
菅野沖彦
ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか 最新セパレートアンプ32機種のテストリポート」より
製品としての完成度の高さの点で、現在、マッキントッシュのアンプの右に出るものはないといってよかろう。デザインのオリジナリティと、そのクォリティ、コンストラクションなどの総合的なバランスのよさは、まさに、専門メーカーとしてのキャリアと風格を証明し、アマチュアに毛の生えたような製品の多い昨今、ますます、その存在が輝きを放っている。仕上げの高さ、創りのよさといった見地からみると、アンプに関して、いまや国産の高級機を凌ぐ外国製品の数は、それほど多くはない。前述した、アマチュアに毛の生えた程度の作りの粗さや未熟さは、メーカー製にはあってはならないものだろう。真に価値のあるものは、中味にふさわしい外観、外観にふさわしい中味の各々相まって然るべきである。音さえよければそれでいいという考え方は未熟である。それも、買い手がいうのならまだしも、作り手や、売り手が口にすべきことではない。ましてや、作りの粗さや雑なところが、いかにも専門メーカーの小量生産品らしくてよいなどというのは、詭弁以外のなにものでもない。外観の風格は、中味の充実からくるものであるし、その品位と重みといった雰囲気は一朝一夕に出来上がるものであるはずがない。マッキントッシュの製品は、こういう観点から見た時、真の一流品、高級品といえる数少ない現役製品のひとつだ。
このC29、MC2205という製品は、現在のマッキントッシュのラインアップのなかでは最も新しい設計による矢野で、一貫したマッキントッシュの風格は、その外観にも音にも堅固に生き続けている。
C29の特徴と音質
C29コントロールアンプは、価格的にみればC32の下のクラスということになるが、必ずしもC32の普及モデルというのではなく、むしろ、C28の新型が、このC29で、C32は新しいコンセプションによるニューモデルと考えるのが妥当であろう。それは、コントロールアンプとしての機能や、音の上からも肯定できるところであって、C32の豊潤な艶は、従来のマッキントッシュのサウンドとはやや異質だし、コントロールアンプとしてはコンセプトの異なるものだ。また、多分割のバンド型トーンコントロール機能も、マッキントッシュ伝統のものとはいえない。その点、このC29はオーソドックスで、シンプルなコントロールアンプで、必要なファンクションは完備したマッキントッシュ伝統のコンセプトを反映しているものである。グラスパネルのイルミネーションは、いまさらいうまでもなく、ユニークで美しく、機械の精度の高さをよく表現し、かつ、マッキントッシュのガウ社長のいう「エモーショナルレスポンス・フォー・ミュージック」を感じる心に豊かに呼応するフィーリングである。従来の同社のコントロールアンプは、いわゆるS(スイッチ)付ボリュウムを使っていたが、新シリーズから、パワースイッチとボリュウムは分けられ、プッシュ式の角型スイッチで電源のオン・オフをおこなうようになったのは好ましい。S付ボリュウムというのは、たしかに普及品のイメージに連なることは否定できない。パワースイッチにふれたついでだが、このプッシュボタンの色は、あまり好ましいとはいえない。新シリーズの出始めの頃は、他の一群のプッシュボタンと同じ、黒であったが(私が現用しているC32はそれだ)、見分けにくいということで、現在の色にしたらしい。しかし、この赤茶のような透明感のない色の質感は、マッキントッシュにしては、少々不満なクォリティであると思う。
そして、音は、充実した質感……いかにも中味がつまっているといったソリッドネス……力と重みのある堅固な造形感をもった音像再現の見事さといった、マッキントッシュ・サウンドに、明るい陽光が射し込んだような、透明さが一段と冴え渡るようになったフレッシュなものなのである。
MC2205の特徴と音質
新しいマッキントッシュのアンプに共通していえることだが、コンストラクションの確かさは、その精選されたパーツとのコンビネーションで最新のエレクトロニクステクノロジーをオーディオ的に洗練し、見事な再生音楽のリクリエイトに成功している。その伝統ゆえに、古い世代のアンプという偏見をもつ人がいるが、愚かな認識である。確かに、マッキントッシュは、実験的な突飛なパーツや回路は採用しないが、これは、同社が、製品の信頼性と、音楽の豊かな情緒的再現を重視しているからである。ポルシェが、市販車にターボチャージャーを装備したのは、大変な実験とレース実績の積み重ねをしてからであった。BMWが、それより先にターボチャージャーを装備した車を売り出し、そのレスポンスのタイムラグや故障のために生産を中止した事実とは対照的である。マッキントッシュのプロダクションの考え方には、これと一脈通じるものがある。やれDCアンプだ、サーボアンプだと大さわぎをしてはいるが、はたして音はどうなのだ? はたしてオーディオにとって本当に有効な技術進歩かどうか? そんなことは半年やそこいらで結論が出るものではないだろう。往年のマランツやマッキントッシュほどのものになると、10年前の製品でも、オーディオ機器として最新の製品と堂々と比肩する性能をもつものである。人によっては、昔のもののほうを高く評価するという事実もある。
MC2205は、こうした音とテクノロジーの関連を、マッキントッシュらしい慎重さと、豊かな想像力で検討し、有能なエンジニア達が、古くからの体験に基づき、よいものを大切に、新しいテクノロジーの中から厳重に選択したポイントを盛り込んで作り上げられただけあって、外観も、お供、まさに威風堂々の充実感を覚える力作である。これらのすべてが、今回のテストで改めて如実に確認できた。
最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その14)
瀬川冬樹
ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より
ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万五を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
けれどこんにちのマッキントッシュは、決して大河小説のアンプではなくなっている。その点ではいまならむしろ、マーク・レビンソンであり、GASのゴジラであろう。そうした物量投入型のアンプにくらべると、マッキントッシュC29+MC2205は、これまほどの昨日と出力を持ったアンプとしては、なんとコンパクトに、凝縮したまとまりをみせていることだろう。決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても、C29+MC2205は、その音もデザインも寸法その他も含めて、むしろQUADの作る簡潔、かつ完結した世界に近くなっているのではないか。というよりも、QUADをもしもアメリカ人が企画すれば、ちょうどイギリスという国の広さをそのまま、アメリカの広さにスケールを拡大したような形で、マッキントッシュのサイズと機能になってしまうのではないだろうか。そう思わせるほど近ごろ大がかりな大きなアンプに馴らされはじめた目に、新しいマッキントッシュは、近ごろのアメリカのしゃれたコンパクトカーのように小じんまりと映ってみえる。
*
ところで、音の豊かさという点で、もうひとつのアンプについて書くのを危うく忘れるところだった。それは、イギリスの新しいメーカー、オースチンの、管球式パワーアンプTVA1の存在だ。
管球式のアンプが、マランツ7を最後に我が家のラインから姿を消してすでに久しい。その後何度か、管球アンプの新型を聴く機会はあったにしても、レビンソンは別格としても出来のよいトランジスターの新しいアンプたちにくらべて、あえて管球式に戻りたいと思わせるような音には全くお目にかからなかった。わたくし自身は、もうおそらく半永久的に管球に別れを告げたつもりでいた。
そういうつもりで聴いたにもかかわらず、TVA1の音は、わたくしをすっかりとりこにしてしまった。久しく耳にしえなかったまさにたっぷりと潤いのある豊かな響き。そして滑らかで上質のコクのある味わい。水分をたっぷり含んで十分に熟した果実のような、香り高いその音を、TVA1以外のどのアンプが鳴らしうるか……。
仮にそういう良い面があったにしても、出力トランスを搭載した管球式パワーアンプは、トランジスターの新型に比較すれば概して、音の微妙な解像力の点で聴き劣りすることが多い。そういう面からみれば、TVA1の音は、レビンソンのように切れこんではくれない。それは当然かもしれないが、しかし、おおかたの管球式の、あの何となく伸びきらない、どこかで物が詰まっているかのような音と比較すると、はるかに見通しがよく、音の細部の見通しがはっきりしている。
中音域ぜんたいに十分に肉づきのよい厚みがある。かつてのわたくしならその厚みすら嫌ったかもしれないが。
TVA1は、プリアンプに最初なにげなく、アキュフェーズのC240を組合わせた。しかしあとからいろいろと試みるかぎり、結局わたくしは知らず知らずのうちに、ほとんど最良の組合せを作っていたらしい。あとでレビンソンその他のプリとの組合せをいくつか試みたにもかかわらず、右に書いたTVA1の良さは、C240が最もよく生かした。というよりもその音の半分はC240の良さでもあったのだろう。例えばLNPではもう少し潤いが減って硬質の音に鳴ることからもそれはいえる。が、そういう違いをかなりはっきりと聴かせるということから、TVA1が、十分にコクのある音を聴かせながらもプリアンプの音色のちがいを素直に反映させるアンプであることもわかる。
今回の試聴では、この弟分にあたるTVA10というのも聴いた。さすがに小柄であるだけに、兄貴の豊かさには及ばないにしても、大局的にはよく似た傾向の音を楽しませる。オースチン。この新ブランドは、近ごろの掘り出しものといえそうだ。
マッキントッシュ XR7
菅野沖彦
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より
マルチウェイ・マルチユニットの行き方をしたスピーカーとして、地味ながら聴くほどによさのわかるスピーカーといえる。優れた指向性と平均したエネルギーバランスの良さが素晴らしい。
マッキントッシュ MC275
菅野沖彦
ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞」より
マッキントッシュが世界のアンプメーカーの雄として君臨することになったのは、多分このMC275によるといってよいではなかろうか。このアンプが発売されたのは一九六一年待つであるから、もう18年前のことである。六一年といえば、ステレオレコードがようやく本調子になって普及した頃であり、このMC275は、業務用としても最高級のステレオアンプとして、多くのレコード会社でカッティングにも使用された。マッキントッシュ社の創業は一九四九年(前3年は準備期間とみてよい)だから、このアンプが出るまでに、すでに10数年を経ている。同社独自の高能率で、優れた特性をもつB級動作のアンプ技術は、バイファイラーワインドトランスとともに磨きをかけられ、その設計開発、製造技術の頂点に達した絶頂期の傑作なのである。そしてまた、管球式アンプの最後の最高の作品としても、オーディオ誌上に不滅の存在といってよいアンプであろう。その堂々たる風格は、アンプの造形美といってよいもので、全くの必然性からのみ構成された一つのオブジェだ。その質感とフィニッシュの高さは内に秘められた優れた動作特性、そして、それらの印象といささかの違和感をも感じさせない緻密で重厚な風格をもつサウンドと相まって、理解力のある人には、見ているだけで最高のオーディオの世界を感じさせずにはおかない魅力的な芸術品といってもよいだろう。10年以上にわたって製造され続けたが、残念ながら今はない。
マッキントッシュ C32
菅野沖彦
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
マッキントッシュ社は、一九四六年に創立以来、アンプリファイアーの王者としてこの世界に君臨してきたメーカーである。それも、当時としては大変にユニークな低歪率のトランスの特許を獲得し、それを前面に打ち出した製品を開発してきただけではなく、アンプリファイアーというものを、オーディオの好きな人たちに、その物としての芸術的な香りさえも感じさせるほどの素晴らしいデザインと高い仕上げで見せてくれたメーカーとして、マランツと並んでオーディオ史上に燦然たる不滅の輝きをもつ名門なのである。
その名門マッキントッシュの最新の最高級コントロールアンプが、このC32である。マッキントッシュといえば歴史の長いメーカーだが、いまだにパワーアンプには頑強に出力トランスを搭載しているということから、ついつい古いメーカーのイメージ、あるいは古い技術というように最近では思われている。しかし、これは大変な誤解である。マッキントッシュの技術開発は、常に前向きの姿勢で行なわれ、常にその時点での最新のテクノロジーを追求しているのである。ただ、いまアメリカにおいては新しいメーカーが雨後のタケノコのように生まれつつあり、そして新しい製品を発表しているわけであるが、そうしたメーカー間の兢争ということでみれば、確かにマッキントッシュは古いといって押しのけるには都合がいい。しかし、だからといってそれを鵜呑みにすることは、私は非常に浅はかなマッキントッシュに対する理解だと思うのである。
私の理解する限り、マッキントッシュのテクノロジーは、最新メーカーの若いエンジニアのテクノロジーに比べて、いささかも古いとは思わない。むしろ、マッキントッシュは、商品として世に送り出すときに、技術の新しさだけを売物にして、あるいは製品に神話を結びつけて売る、などということをしないメーカーなのである。お客様に対して、音楽を聴く上において豊かな満足感の得られる、そして完成度の高い美しい製品を提供するという姿勢をもっているのだと思うのである。そういう意味で、私はどうも最近のマッキントッシュに対する理解は、少し付和雷同型の人たちによって過小評価されつつあるような気がするのである。
このC32にしても、使用されているパーツ、素子、ディバイスなどは、選り抜かれた新しいものが使われているのである。回路にしても従来からの伝統は踏襲しているが、歪率ひとつとっても確実に従来のモデルから一ケタ減らしているのだ。したがって、決してテクノロジーのニューウェーブに立ちおくれているものではないと思うのである。
そして、このC32のもっている魅力は、マッキントッシュ伝統の美しい、しかもユニークなグラスイルミネーションのりパネルデザイン、音の重厚な風格 そしてさらに洗練された透明感が加わった音にあるのである。
最近のマッキントッシュは、このコントロールアンプC32のあとに、従来のC26の後継機種ともいえるコントロールアンプC27を発表したが、最新のテクノロジーを駆使したアンプシリーズをまとめようとしているようである。このC32は、そのニューシリーズのコントロールアンプにふさわしく、従来のマッキントッシュのアンプにあった重厚な音に、非常に透明度の高い、スムーズな美しい輝きが加わった製品である。そういう意味で、音の点からいっても、独特なイルミネーションパネルの重厚なデザインや仕上げからみても、私は現在のコントロールアンプの最高峰として、このC32は、当然〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれるものであろうと思うのである。
実際に音を聴いてみても、自分の家に持ち込んでもうずいぶん長い間使っているが、実際に使ってみても、製品を手にしてみても、現在の数多くのコントロールアンプリファイアーの中で、このC32はやはり最高のコントロールアンプというに値する製品ではないかと私は思うのである。
マッキントッシュ XR6
菅野沖彦
最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より
マッキントッシュのスピーカーとして、一番新しい製品で、構成は4ウェイ4スピーカーからなっている。トゥイーターとスーパー・トゥイーターがドーム型、ミッド・パスが20cmコーン型、30cmウーファーが使われている。
マッキントッシュのスピーカーは日本ではポピュラーな存在ではないが、最初のシリーズからすでに5〜6年のキャリアを持つものである。基本的な開発の思想は旧シリーズと同じでトータル・ラジエ−ション、指向性をできるだけ均一に各周波数帯域にわたり等しいエネルギーをラジエートするという考えで作られている。さらに本機は、各ユニットからの放射される音の到達時間をコントロールすべくネットワークに工夫がある。つまりタイム・アラインメント・ネットワークの採用だ。
今までのマッキントッシュのスピーカーは、どうも中域が薄く、素晴しい、品位のある音だが、中音域の再現が不満だったが今日の試聴ではそういうことは全くなくて、非常に高品位のガッチリと締った素晴しい音が得られた。デザイン的には、昔のデザインから見ると確かにさりげなくなってしまって、私も個人的にあんまり好きな形ではないが、しかし音を聴いてみて、音くずれのない、非常に定位のいい、普通のスピーカーでは分からないような定位がハツキリ出てくることを認識した。位相特性が素晴しいので、自分の録音したレコードを聴いてみると、録音時に使用するモニター・スピーカー以上にマイク・アレンジの細かいところが出てくるのには驚かされた。これは、モニターとしても大変優れていると思う。マッキントッシュの言うように、非常に忠実な変換器として、音響パワーが各周波数帯域にわたって均一であるということが、この素晴しいフェイズ感による定位の良さ、パースペクティブが得られる原因なのだろう。
これは、今の日本での評価が(XR6については、これからだろうと思われるが)今までの評価をくつがえしてもしかるべきだと感じる。今まで何回か聴いてはいたが、これほどのいい音を聴いたことは今回初めてだ。その意味でこのXR6という製品が特別優れているのか、あるいは今までのものはじっくり聴いたわけでないので、デザインからくる印象があまり良くなかったという点と、値段が非常に高いということで、一般にはあまり推められないなという印象によってマイナスの評価が強かったのであろう。今日このスピーカーを聴いてみて、こういう印象が全く改まり、やはりさすがにマッキントッシュらしい最高品位のスピーカーだなという感じが強くした。とにかく音がソリッドで強固で、そして物理的に素晴しい特性を持っている。レコードの細かいマイク・アレンジの全てまで分かるということは、これはスピーカーとしていかに優秀であるかの証明だと思う。このスピーカーの値段は約30数万円というところだろうと予想できるが、十分その値段に値するものではないかと思う。
ただアンプリファイアーのデザインなどから見ると、デザインと仕上げに関してもうひとつ、マッキントッシュに期待するものが大きいだけに少々失望させられざるを得ない。この辺が魅力的なアピアランスに仕上っていたら最高の製品といえるのだが……。
組合せはいろいろと考えられるが、やはりせっかくのマッキントッシュのスピーカーだから、アンプリファイアーはマッキントッシュを使いたいということで、最近の新しいプリアンプのC27という製品ということにしよう。C32を最高とするシリーズの中でマッキントッシュとしては、廉価版ということだが、各種機能をシンプル化し、基本性能は明らかにマッキントッシュのプリアンプとしての面目を保った素晴しい性能の製品だ。
このスピーカーは最大許容入力200Wということだが、私の経験からしてもスピーカーの最大許容入力以下のアンプを使ってもそのスピーカーの能力は100%出てこない。200Wの許容入力のスピーカーなら最低200Wのアンプ、300Wくらいのアンプで鳴らしたいということからマッキントッシュのMC2300が望しいが、値段が相当高いので、ここては、アキュフェーズのM60を2台使うことにしよう。
プレイヤーは、デンオンのDP7700を使うことにして、カートリッジはこれくらいのクラスになると実際に鳴らしてみて決めるべきだと思う。エラックSTS455Eで鳴らしてみたが、ここで聴く限りでは、大変素晴しいと思う。STS455Eとか555EとかフィリップスGP412II㈵とかオルトフォンのM20FL Super、MC20といったクラスのカートリッジを付けて自身の好みに合わせて選ぶべきで、これひとつがベストだという域の組合せではないと思う。
マッキントッシュ C27
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
現代アンプの純度とは異なった、井戸水の自然さを感じさせる音だ。
マッキントッシュ MR78
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
高周波部門に長いキャリアをもつ同社らしい最高級チューナー。
マッキントッシュ MC2205
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
伝統の技術が新しいテクノロジーでリファインされた美しい製品。
マッキントッシュ MC2300
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
大出力アンプの範となった王者的風格。
マッキントッシュ C32
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
磨き抜かれた伝統技術とサウンドが高次元で一致した製品。
マッキントッシュ MC2300
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
実質的に600Wを感じさせるパワー感は、現在の高出力機の王者だ。
マッキントッシュ C32
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
音のひと粒ひと粒が、一種豪華な味わいのブリリアントな力に支えられているという感じがする。旧マッキントッシュでは、音をおおづかみにとらえて細部にこだわらないこせこせしない良さの反面、ディテールをいくらか塗りつぶして不鮮明にする弱点があったが、C32はさすがにこんにちの最新のソリッドステートらしく、反応がシャープでディテールもよく再現する。いかにも血色の良い享楽的でゴージャスな音で、これを耳にした後ではマーク・レビンソンがどこか禁欲的で貧血症にすら聴こえかねない。ただ個人的にはこういう音を毎日の常用として身辺に置こうという気持にならない。あまりにも積極的に音を彩るので、おそらく飽食してしまいそうだから。
マッキントッシュ MC2205
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
音のたっぷりして豪華な味わいのあるところはいかにもマッキントッシュだが、新シリーズになってからは、高域の聴感上のレインジを広げ、解像力を上げようとしていることが聴きとれて、音に新鮮な輝きが加わったが、反面、以前から持っていた性格でもある音の掴み方がやや粗い面が、解像力の増した分だけ表面に露出してきたという印象があって、旧シリーズの方が適当に脂肪太りしているところへうまく化粧していたため小皺もうまく隠れていたことがいまになって想像できる。また、今回の新シリーズの方が内在する力をストレートに表面に出すが、力を底に抑制して露に出さなかった旧シリーズの方に、むしろ好ましさを感じさせる部分もある。
マッキントッシュ C32
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯510Mのソリッドでやや硬質なキャラクターを巧みにカバーして、豊かでしなやかなクォリティの高い音になる。
聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びきっており、充分にローエンドまでのびた低域をベースとして、緻密で粒立ちが適度にクッキリとして芯がある中域、ハイエンドが少し抑えられた高域と、安定感のあるバランスを保っている。音色は明るく、好ましい重さがあり、音への反応もアクティブで、活気が充分にある。ストレートな音の表現力も見事で、エネルギー感はタップリとある。ステレオフォニックな音場感の広がりは、従来より一段と優れ、音像もシャープである。
マッキントッシュ MC2205
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、予想よりもソリッドで硬質な面が顔を出し、マッキントッシュらしい、豊かさ、力強さが充分に音として出ているとは思われないようだ。
聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には、低域は量感があるが、重く、鈍さもあり、中域は量的にはタップリとし、厚みもあり密度も濃いが、やや硬質な面があり、音の粒子が少し粗粒子型である。コントラストは充分につくが、細部をクリアーに引き出せず、やや大柄な印象となる。ステレオフォニックな音場管は適度に広がり、音像はかなりクッキリと定位をするが、輪郭は粗いタイプだ。
マッキントッシュ C32 + MC2205
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
C28やMC2105までの製品とくらべると、デザイン上からもツマミやメーターまわりに太いふちどりがアクセントとして加わったことが、音質の傾向をも象徴している。たとえばマークレビンソンなら、面相(毛筆)か細書きのペンで慎重に繊細に描写するであろうところも、マッキントッシュの手にかかると、もっと大胆に、いくぶん荒々しく大掴みに、太い線でこってりと描き出す。従前のシリーズよりはディテールもはるかによく浮き彫りする解像力が加わったが、その描線はコンテかパステルの質感のようで、味わいも濃いが反面どこまで細部を描き込んで行っても、輪郭がどこかケバ立ってペン書きのような繊細さには至らない。だが色彩感はこちらの方がはるかに豊かだ。この豊かさは旧型以来のマッキントッシュの伝統だが、新型ではそこにいっそうの輝きと鮮度の高さ、そして華麗で豪華な味わいが増してきた。この濃い味を毎日の食卓で飽食しないなら、かなり器の大きな人というべきだろう。
マッキントッシュ XR5
黒田恭一
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ
カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは、鮮明だが、遠くでひびく。
❷低音弦のひびきはなめらかさが足りず、妙にがさつく。
❸一応の音色的な特徴を示すにとどまる。
❹ここでのピッチカートは、幾分ふくれがちだ。
❺もうひとつきりっとした力が望まれる。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はかなり大きくふくれる。
❷音色的な対比を一応は示すものの、鮮明さに不足する。
❸室内オーケストラのひびきのさわやかさが足りない。
❹第1ヴァイオリンのフレーズは太くひびく。
❺もう少しさまざまなひびきがあってほしい。
J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像は大きめだが、強調感のないのがいい。
❷接近感はかなりなまなましく示す。
❸声よりオーケストラのひびきの方がめだつ。
❹はった声がかたくならないのはいいが、のびやかさがない。
❺さまざまなひびきのバランスがいいとはいえない。
「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像はふくれがちながら、横一列に並んでいるのがわかる。
❷ひびきが重いので、言葉は鮮明になりきれない。
❸残響をかなりひきずっている。言葉のたち方が不充分だ。
❹バリトンが強調されがちで、各声部のからみに問題がある。
❺ひきずりがちなひびきがぽってりと残る。
浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンとポンの音色対比はくっきりとついている。
❷奥へのひきはいいが、音質的に問題がある。
❸浮遊感に欠ける。ひびきが重いためだろう。
❹示される空間がとうしても狭くなる。
❺ピークで刺激的なひびきになってしまう。
アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶奥へひいているが、ひろがりが示せているとはいえない。
❷ギターの音像はかなり大きく、せりだし方がはっきりしない。
❸一応はききとれるものの、効果的とはいえない。
❹妙にきわだってきこえる。一応のアクセントはつける。
❺きこえなくはないが、特にめだつということもない。
ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのハイコードの特徴は示す。
❷サウンドの厚みは明らかにするが、さらにくっきりしてほしい。
❸ハットシンバルのひびきは、乾き方が足りない。
❹ドラムスは、音像が大きくなった分だけ、シャープさがない。
❺声は総じてひっこみがちになり、物たりない。
ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶なにかの入れものの中でひびいているかのようだ。
❷きこえなくはないが、かなりききとりにくい。
❸音の消え方を示すものの、それが効果にはつながらない。
❹こまかい音の動きに対しての対応はよくない。
❺音像的、音量的、音質的対比は好ましい。
タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスのアタックには弱々しさがある。
❷ブラスのつっこみにしても、鋭さが足りない。
❸大きくはりだすものの、力が不足している。
❹音の見通しがよくないので、トランペットの効果はでない。
❺さらにリズムがくっきり刻まれないとめりはりがきかない。
座鬼太鼓座
❶不思議なことに、天井のあるところで吹かれたようにきこえる。
❷尺八の枯れたひびきからは少なからずへだたっている。
❸きこえるものの、実体をきき定めがたい。
❹音の消え方を示しはするが、力強さに欠ける。
❺きこえるものの、効果を発揮しているとはいいがたい。
マッキントッシュ XR5
瀬川冬樹
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
マッキントッシュといえば、私たちの頭の中にはやはり栄光の高級機メーカー、というイメージがまだ強い。そういうマッキントッシュに、決して安ものを作って欲しくないという気持があるせいか、このXR5というスピーカーを、あのマッキントッシュが、いったいどういう意図で世に送り出しているのかが、どうもよく解しかねる。たしかに相対的なバランスは決して悪くない。やや大きめのパワーを放り込んで、ベートーヴェンの序曲やブラームスのP協など鳴らしても、国産のスピーカーによくありがちの中~高域の硬く出しゃばったり、低域がどろどろになったりするような明らかな弱点がなく、とくにカートリッジを4000D/IIIなどにすると(意外にMC20や455Eがよくない。音がくすんで、こもる傾向)、音の粒立ちはほどよく、明るい良い音が一応は聴ける。が、やはりマッキントッシュのアンプで音作りをしているせいか、CA2000やラックス・クラスのアンプでも、どこか貧血症的な、あるいは力不足という印象が強い。それにしてはスピーカー自体の音のふくらみや脂気があまり感じられずどこかかさかさした肌ざわりで、楽器の上等の質感が鳴りにくい。適当に絞ってバックグラウンド的に鳴らしておくに悪くないが、それには高価すぎる。しかもこの価格なのに外装がビニールプリントときては、相当に失望させられる。
マッキントッシュ C26
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
マッキントッシュの音を必ずしも好ましく思えない私からみても、このアンプに灯が入って漆黒のガラス面に金色の文字がグリーンに変って浮かぶ美しいパネルは、鳴らさなくてもいいから欲しいぐらいの魅力だ。ましてこの厚みのある豊かなマッキントッシュトーンの好きな人には、こたえられない嬉しさだろう。
マッキントッシュ MC2300
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
超弩級のステレオアンプである。このアンプで鳴らすと、音の次元がちがうという表現が一番ぴたりとくる。レコードの溝が、ぐんと太くなって密度が増したように感じられる。とてもレコードとは思えぬ、たくましさなのだ。それでいて、細やかな再現もちゃんと果す。ちゃちなスピーカーはすぐ吹飛ぶ。
マッキントッシュ MC2205
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
マッキントッシュの新製品であるが、基本的には伝統的なマッキントッシュのパワーアンプである。ややデザインも変更を受けているが、イメージは一貫したもので、モデルチェンジとはいえない。つまり、マッキントッシュはマッキントッシュであり、マッキントッシュの敵はマッキントッシュなのである。磨きぬかれた充実した音は王者の風格。
マッキントッシュ MC2105
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
アメリカのマッキントッシュはオーディオメーカーの鑑として然るべき、技術姿勢と、製品開発ポリシーを貫いている。出される製品に、その風格が滲み出てあまりある。出力トランスのついたパワーアンプは、頑丈さでは絶対的信頼性があるし、その重厚な音質、見事なパネルのイメージは持つものの誇りだ。
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