マッキントッシュ XR5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 マッキントッシュといえば、私たちの頭の中にはやはり栄光の高級機メーカー、というイメージがまだ強い。そういうマッキントッシュに、決して安ものを作って欲しくないという気持があるせいか、このXR5というスピーカーを、あのマッキントッシュが、いったいどういう意図で世に送り出しているのかが、どうもよく解しかねる。たしかに相対的なバランスは決して悪くない。やや大きめのパワーを放り込んで、ベートーヴェンの序曲やブラームスのP協など鳴らしても、国産のスピーカーによくありがちの中~高域の硬く出しゃばったり、低域がどろどろになったりするような明らかな弱点がなく、とくにカートリッジを4000D/IIIなどにすると(意外にMC20や455Eがよくない。音がくすんで、こもる傾向)、音の粒立ちはほどよく、明るい良い音が一応は聴ける。が、やはりマッキントッシュのアンプで音作りをしているせいか、CA2000やラックス・クラスのアンプでも、どこか貧血症的な、あるいは力不足という印象が強い。それにしてはスピーカー自体の音のふくらみや脂気があまり感じられずどこかかさかさした肌ざわりで、楽器の上等の質感が鳴りにくい。適当に絞ってバックグラウンド的に鳴らしておくに悪くないが、それには高価すぎる。しかもこの価格なのに外装がビニールプリントときては、相当に失望させられる。

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