瀬川冬樹
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
弟分のBCIIがたいへん出来が良いものだから、それより手のかかったBCIIIなら、という期待が大きいせいもあるが、それにしてはもうひとつ、音のバランスや表現力が不足していると、いままでは聴くたびに感じていた。たった一度だけ、かなり鳴らし込んだもので、とても感心させられたことがあってその音は今でも忘れられない。今回何とか今までよりは良い音で聴いてみたいといろいろ試みるうち、意外なことに、専用のスタンドをやめて、ほんの数センチの低い台におろして、背面は壁につけて左右に大きく拡げて置くようにしてみると、いままで聴いたどのBCIIIよりも良いバランスが得られた。指定のスタンドを疑ってみなかったのは不明の至りだった。ただ、本質的にはやはりモニターとしてのいくらかまじめで渋い音なので、EMTのXSD15にKA7300Dというように、やや個性の強い個性をしてみると、艶も乗ってかなり上質の音が鳴ってきた。どちらかといえばほの暗い感じの音色で、イギリス紳士的なとり澄ました素気なさもあるし、ディットン66の打てば響くというような弾みのある鳴り方はしない。バルバラの歌でも、声の暖かさや色っぽさがもうひとつ不足して、中~高域の一部にわずかに(BCIIより)不連続な面も感じられる。しかし総体にはかなりクォリティの高いスピーカーであることが今回よくわかった。
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