菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
LMシリーズは三機種あり、この011はその中での最小のもの。LMは、リニアー・モーションをとってつけられたもので、独特の構造のリニアリティの高いトゥイーターが特長である。小径のウーファーは16・5CMで、トゥイーターとのつながりは理想的。のびのびとした明るい音を再生する傑作である。
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
LMシリーズは三機種あり、この011はその中での最小のもの。LMは、リニアー・モーションをとってつけられたもので、独特の構造のリニアリティの高いトゥイーターが特長である。小径のウーファーは16・5CMで、トゥイーターとのつながりは理想的。のびのびとした明るい音を再生する傑作である。
井上卓也
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
サンスイからは、さきに自社開発の水晶制御フォノモーターを使ったプレーヤーシステムSR929が発売されているが、今回、これに続くシリーズ製品として、水晶制御型フォノモーター採用のシステムSR838とPLLサーボ型フォノモーター採用のSR636が発売された。
この二機種の製品は、基本的にはフォノモーターの制御方式、ターンテーブルが異なるのみで、発表された特性上の差は少ない。モーターはDC型20極ブラシレス方式で、制御用にシャフトに取り付けたストロボスコープ上に480本のスリットを持つ円板と、発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせ、回転数に比例したパルスを発生する光電型ジェネレーターが組み込まれている。SR838はこれあ水晶発振によるPLL制御方式とし、SR636はCR発振によるPLL制御方式として使っている。なお、ワウ・フラッター特性を向上するため、シャフトはセンターレス精密仕上げ、焼入れを施した特殊ステンレス鋼を、スラント軸受部は二硫化モリブデン配合の66ナイロン材を使用している。
トーンアームはスタティックバランス型だが、軸受部分がSR929の一点支持方式ではなく、横方向のスパンを広くとった方式に変わっている。このタイプはピボット部分の遊びに対しねじれ方向の影響が少ない利点があり、アームの支点部分に重量を集中し音質を向上するために、上下方向の回転軸には85gの重量をもつ真鍮製のシリンダーが採用されている。アームベースは亜鉛ダイキャスト製でプレーヤーベースと確実に固定するために、裏側に厚さ4mm、重量250gの大型ワッシャーが、SR838では2枚、SR636では1枚使用されているのが目立つ。パイプアームは内部の空洞にテフロン系のダンプ材が採用され、ヘッドシェル取付部分のコネクターはSR929同様にテーパ材で取付けたときの機械的強度が高い。また、付属カートリッジは角型マグネットを持つMM型で、音像定位を明確にするために薄いダンパーを採用してあるとのことだ。
プレーヤーベースは40mm厚のソリッド材使用のピアノ仕上げで、ステンレスのスプリングと緩衝ゴムを組み合わせた新開発のインシュレーターが付属し、ダストカバーは厚さ4mm、重量1・4kgのサイド・フィルムゲート式のアクリル製である。ターンテーブルは、デザインは異なるが、ともに外径318mmのダイキャスト製で、レコードとの接触面積を大きくするために内側に向かって350分の1の勾配が付いている。
ともにプレーヤーシステム基本から忠実に製作されているため低域から中域にかけて粒立ちがクリアで緻密さがあり、とかくこのクラスのシステムでは使い難いエンパイアやピカリングの高級モデルの本来の音を素直に引き出すだけの十分のクォリティの高さがある。音の良いプレーヤーを目指した成果が聴きとれる製品である。
井上卓也
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
海外市場では、以前よりサンスイはカセットデッキを販売しているが、このSC−3は、同社初めての国内販売に踏みきったカセットデッキである。5万円台のデッキは、比較的に実力をもつ製品が多いが、適度に帯域コントロールしたこのデッキの音は、使いやすく、それでいてかなりの活気もある。
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
607の上級機として開発されたこの製品は、607のところで述べたように、音の質感では、やや異なる。より充実したソリッドな音の質感であり、さすがにパワーの大きさを感じる。しかし、透明な抜け、しなやかさ、空気感の再現では、607に一歩を譲るようだ。しかし、これはやはり優れたアンプで、まず、いかなるスピーカーをもってきても、大きな不満は生れまい。持つ喜びが感じられる力作だと思う。
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
サンスイの新しいシリーズで、ブラックパネルは同社の一貫したデザインだが、レイアウトが一段と洗練され、魅力的になった。607、707はシリーズで、パワーの差だけだといいたいが、やはり音質はちがう。このシリーズの特長である、音の透明度、空気感の再現ではむしろ607のほうが光る。キメの細かい再生音の純度は高く評価したい製品なのである。機能はさすがにやや簡略化されているものの、優れた製品。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
TU707は、中価格帯の製品としてはかなり本格的に仕上がっている優秀なチューナーといえる。意匠的には、AUとTUとでもう少し見た目の一体感を表現できればよかったのに、と思うが、感度、S/N比、安定度などの物理データはもちろん、操作のフィーリングの面からも、よく練り上がった製品。
井上卓也
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
デザイン的には上級機のSR−929を踏襲しているが、開発当初より性能の高さと、音質の良さのバランスに置いているだけにシステムとしてのクォリティは上級機以上のものがある。トーンアームは長方形の回転軸受使用の一般型に変わり、ベースと結合をリジッドにしているのが音質向上に効いている。
菅野沖彦
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
AU607のところで、空気感の再現のよさを指摘したと同時に、音が空芯だという表現を使った。この707では、この音の感触がぐっと密度が高くなり、いうならば、空気圧が上ったという充実感がある。それだけに607ほど、他のアンプと異った特徴というものは感じられなくなったけれど、音のよさ、品位は明らかに一枚も二枚も上手である。フィッシャー=ディスカウの声の気品と重厚、柔軟な風格はちゃんと再現するし、弦楽四重奏の美しさは特筆してもよい。高弦のフォルテで破綻がなく、それでいて弦の色彩感は色あせることがない。オーケストラのfffも音くずれがないし、弦管打が遊離せず、がっしりとハーモニーを聴かせる。相変らずの黒パネルは、より洗練されて、昇華され、品のいいメカニックなイメージで好ましい。立体感のあるアンプの姿に共通した、充実した音の優れたアンプである。欲ばれば、もう一つさわやかなプレゼンスがほしい。
菅野沖彦
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
このアンプの音質は、音が空間に浮遊する様を感じさせる点では出色のものだ。空間感とか、プレゼンスとかいう表現に近いことになるのだが、それら音場を連想させるイメージに加えて、ここで感じられるのは、音像(音源でもよい)そのものの実在感に空芯のイメージがあるとでもいいたいのである。これは、決して数多くのアンプが可能にしてくれるものではないし、スピーカーでも、このイメージが出るものとそうではないものとがあると私は思っている。概して、この感覚が得られるオーディオ・コンポーネントは、かなり練りに練られた高級品にしか見当らないものなのだ。BCIIが、空気を一杯にはらんで鳴り響いているような素晴らしいソノリティが楽しめたし、4343による、ピアノやベース、そして、ドラムスの実感も相当なものであったが、欲をいえば、この空芯感と、さらに充実したソリッドな実感が調和すれば、理想的といえる。一線を超えたアンプだ。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
外観はひと世代まえのシリーズの系統だが、内容は607や707の新シリーズのグレイドアップモデルだそうで、そのことは音の上にもはっきりとあらわれている。607が中高域に独特の艶と張りをもたせて表情をくっきりさせ、707はそこに密度が加わって安定感のある音を聴かせる。607ではやや目立った中高域が、ここでは逆に中低域の厚みにすっぽりくるみこまれた感じで、音に浮わついたところの全くない、坐りのよい音で聴き手をくつろがせる。プログラムソースの中でも、アン・バートンのしっとりした色気や、八城/ベーゼンドルファーの打鍵の音の芯のしっかりした、しかもえもいわれない艶を、かなりのところまで聴かせてくれた。ただ、クラシック系で、ことにスペンドール系のソフトなスピーカーを鳴らしてみると、中低域の厚みがやや鈍重すれすれという感じに近くなる。トーン及びフィルターのONでの音質の曇り方が相当に目立つのはうれしくない。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
AU607とこの707とで、サンスイのアンプは永い間の不調から完全に立直ったばかりでなく、同クラスの優秀製品を明らかに追い越す見事な出来栄えをみせた。707と607の音は基本的には同じ延長線上にある。ひと言でいえば音のクリアーなこと。しかも、一聴してクリアーなアンプの中に、えてして硬質で弦やヴォーカルなどを硬く鳴らすのがあるが、サンスイの新シリーズではそういう欠点がなく、たとえばピアノの打鍵音やパーカッションの力強さを、芯をしっかり失わずにしかも艶めいて実に美しく鳴らしながら、弦や女声でのしっとりした感じも十分に聴きごたえがある。607では中〜高域の音の艶がいくらか過剰すれすれに鳴ることもあったが、707では中低域から重低音域にかけての基音の支えがしっかりしているために、どんな曲でもバランス上の破綻もなく見事に鳴らす。新デザインも音と同じくとてもシックな出来栄えだと思う。
井上卓也
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
サンスイの新製品、AU707、AU607は、現時点動向にマッチした、DCアンプ化したパワーアンプや左右チャンネル独立電源方式の採用などの技術的内容をはじめ、音質、一新されたデザインにより注目を集め、好評のうちに市場に迎えられているが、今回、ペアチューナーとして、TU707が発売された。
プリメインアンプと共通なマットブラックのプレーンなパネルには、白いワイドなダイアルが設けられ、とかく、画一的になりやすい、この種のチューナーのなかでは個性的なデザインとしてまとめられている。
機能面では、IF増幅段の帯域2段切替、FMエアチェック用のキャリブレーション発振器の内蔵をはじめ、ミューティング、ノイズキャンセラーがあり、また、新しく採用された同調メカニズムにより、選局のフィーリングは、滑らかで気持ちよい。
回路面での特長は、フロントエンドにはエアギャップの広い4連バリコンの採用により周波数安定度を向上し、IF部には、リミッター特性の優れたICにより合計10段の差動回路を構成し、不安定な到来電波に対して安定な受信を可能としている。また、検波段には広帯域レシオ検波回路を採用して歪を低減し、MPX部には、PLL方式、オーディオアンプには、2段直結NFアンプとエミッターフォロワー1段を組み合わせ、低歪化がはかられている。なおオプションとして、パネル両側には取手、BX7が取付可能である。
菅野沖彦
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
艶と油気の多い充実したサウンドは、ジャズやポップスには大変魅力的な再生をしてくれる。音のクォリティは高く、ソリッドな密度の高い手応えのあるものだ。アン・バートンは、このアンプが今まで聴いた中ではベストといってよいほど、声の魅力が生き生きとしてくるし、「サイド・バイ・サイド」のピアノの音も大変満足した。演奏の所作とでもいえる、ちょっとしたニュアンスがアンプによってずい分変るのだが、このアンプで聴くといかにも人間味豊かな八城一夫らしいタッチの妙が生かされる。反面、フィッシャー=ディスカウの声は少々粘り、エッシェンバッハのピアノの中低音も不明瞭な感じになる。空間のレゾナンスガ中低域で強調される傾向だ。JBLを鳴らすと、実に巧みにコントロールがきいて中高域がスムーズである。弦楽四重奏には軽妙な味や品のいいデリカシーの再現が少々不満であった。トーン・ディフィートでは大きく音の鮮度が変るアンプだ。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
価格順に下からずっと聴いてきて、ここから一拠にランクが7万円に近づいたためばかりでなく、やっと本格的に聴き込める音のアンプが出てきた、というのが第一印象だ。まず、くっきりと彫りの深い美しい艶の乗った音が、とても新鮮な印象で聴き手を惹きつける。ジャズのベースの低音弦でも、土台のしっかりした、うわついたところのない豊かな音が聴ける。オーケストラのトゥッティで、エネルギー・バランスがいくらか中〜高域に集まりがちな傾向が聴きとれたが音の空間的な広がりと奥行きをしっかりと鳴らす点、これまで出てきた製品の中では明らかにひと味違う再現能力を持っている。音楽の表情がとても生き生きと豊かに聴こえるが、従来のサンスイの製品のような華やいだ派手さは抑えられ、どこかしっとりと潤いを感じさせる。音の土台を支える中低音域に、もうひと息の密度があれば申し分ないが、この価格帯ではとくに目立つ新製品だ。
瀬川冬樹
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・サンスイ」
「私のサンスイ観」より
サンスイ、といえばブラックフェイスのアンプのパネルと組格子のスピーカーグリル、ということになるのだろうが、私にとってのサンスイはもうひと世代古くブルーの鋳物のカヴァーのついたあの特徴あるトランスから始まる。「トリパイサンスイ」とか「御三家」などという業界のことばが使われる以前の話で、トリオは〝高周波屋さん〟としてコイルやIFTや通信機用パーツのメーカーで、パイオニアはスピーカー屋さんで、山水(いま「サンスイ」と片カナ書きするがその昔は漢字で読んでいた)は低周波トランスのメーカーだった。ラジオやアンプの組み立てに夢中だった昭和20年代後半……古い話だなアと言わずに、まあガマンしてつきあってください。
学生の身ではアンプを組み立てる小遣いも十分ではない。その資金をかせぐ手っとり早い方法は、親せきや知人の家を廻っては、ラジオの注文をとって組み立てるアルバイトだった。日本が敗戦の痛手からようやく立直った頃で、家庭にラジオ一台、満足なのがなかった時代だから、秋葉原でパーツを買い集めてきて、当時流行の〝5球スーパー〟(それにマジック・アイを加えて〝6球スーパー〟と詐称するやつがいたようなころのこと)を組み上げると、材料費が2~3千円で、うまくゆくとそれは同じくらいの組立手間賃がもらえて、それが研究費の足しにもなれば、ラジオ一台組むたびに腕の方も少しずつ上達するという一挙両得で、手あたり次第に注文をとっては、5球スーパーを組み立てた。
同じものを何台も作るのはつまらないから、一台ごとに回路をくふうもするし、外観も、キャビネットやダイアルをそのたびに変えてみる。キクスイのダイアルが、ことに証明が美しくて見栄えがいい。ダイアルの穴のないキャビネットを売っていて、廻し挽きの鋸でエスカッション用の孔を抜く。そのうちにクライスラー電気が、KAK(編注=デザイン事務所名)のデザインで外観のモダーンな、シャーシつきの便利なキットを発売して、のちには専らこれのお世話になった。クライスラーがスピーカーでヒットしたのはもっとずっと後の話だ。
で、かんじんの中味だが、注文主の予算に応じて、パーツのグレイドをきめる。安くあげるには二流メーカーのパーツを使うが、豪華版に使うパーツの相場はだいたいきまっていて、バリコンがアルプス、コイルとIFTはトリオかQQQ(スリーキュー)、真空管は東芝でスピーカーがオンキョーの黒塗りフレームのノンプレスコーン(これを書くと〝別冊オンキョー号で書くネタが無くなりそうだが)〟そして電源トランスに例の特徴あるブルーの山水を使う、というのが定石のようになっていた。その他抵抗・コンデンサーやソケット、ボリュームやスイッチ類まで、好きなメーカーがきまっていたが、さすがに今になると、小物パーツのメーカー名は、すぐにはなかなか思い出せない。しかしこの本はサンスイ号なのだから、トランスの話が出たところで山水の路線に乗ることにしよう。
*
物資不足の折、あやしげなメーカーのトランスを使うと、レアショートしたり焼き切れたりするのがある中で、山水の作るトランスは、ラックスのようなスマートさは無くてどこか武骨であったけれど、質実剛健というか、バカ正直といいたいくらいきちんと作られていた。とうぜん、作ってあげたラジオも故障知らずで、結局製作者の信用もつくことになる。そんなわけで山水のトランスには、ずいぶん研究費を助けてもらったことになる。
それでいながら、そうしてかせいだ小遣いでいざ自分用のアンプを組もうという段になると、どういうわけか山水のトランスをあまり使った記憶がない。というのも、いまも書いたようにこの会社の製品は良心的であっても外観がいまひとつ洗練されているとはいいがたく、その当時の競合メーカーの中では、ラックスやマリックのどこか日本ばなれしたスマートな仕上げや、タムラのプロ用やサウンドマスターの出力トランス等の無用の飾りのない渋い外観の方に魅力を感じていたからだ。つまり私は昔からメンクイだったわけで、山水の山の字とSの字がトランスのコアとコイルを象徴したマークが太く浮き彫りされた、あの個性の強いブルーの鋳物のカヴァーが、自分のデザインしたアンプのシャーシの上に乗るのを、どうも許せなかったのだ。
*
ステレオ時代に入って、サンスイはブラック・パネルのアンプと組格子のスピーカーで大ヒットを飛ばし、一時は日本じゅうのアンプとスピカーのデザインの流れを、大きく変えさせた。が私個人の感覚でいえば、これらの意匠の強い個性には、ちょっとついてゆきにくかった。むしろそれより少し前に作られた、SM-30やSM-10などの一連のレシーヴァーのデザインの方が、洗練されていてとても好きだった。しかし長い流れの中でふりかえってみると、昔のトランスと同じように、頑丈で武骨で実質本位で、その結果アクの強い外観をそなえた製品が、サンスイの主流をなしていたという印象が残る。このことは、製品の実質を理会する少数の人たちに支持されるとしてもいまの世の中で商売をしてゆくには損をしやすい体質だといえる。損得というような言い方がよくないとすれば、国際的に一流として通用する製品は、武骨ではいけないということになる。良い内容を、国際的な感覚でスマートに表現しなくては、どんなに実質が優れていても多くの人に理解されない。
実質本位──と書いたが、しかしここ数年来のサンスイの製品が、本当に実質も優れていたかどうか。差し出がましいかもしれないが、お世辞ぬきで言わせて頂くなら、かつてSP-100やAU-777で大ヒットしたころの製品にくらべると、その後のアンプやスピーカーが決して順調に発展してきたとは思えないし、そのことはサンスイ自身がよく知っている筈だ。しかし、それなら、なぜ、なのだろうか。社内の事情は知らないからこれは外側からの勝手な憶測にすぎないので、間違っていたらお許し頂きたいが、ひと頃のサンスイは、あのAU-777とSP-100のヒットで、少しばかり良い気持になっていた時期が長すぎたのではあるまいか。たしかにAU-777は、当時のアンプの中でズバ抜けて良い音がした。しかしその後の4桁ナンバーの一連のアンプに至るまで、ステレオサウンド誌20号(内外53機種のプリメインアンプ・テスト)あたりからあとの最近号までのアンプ特集号を読み返してみても、競合他社の同格品とくらべてみても、もうひと息、という感じで、一時期のあの意欲や技術力や勢いが感じとりにくかった。
が、先日来、最新作のAU-607、AU-707等の一連の新シリーズを試聴してハッとした。おや? サンスイが久々に意欲的な音を鳴らしはじめたな、と思ったのだ。音がとてもみずみずしく新鮮だ。この感じは、AU-777以来久しく耳にしえなかった音だ。これなら、現代の最新の水準に照らしてもひけをとらないどころか立派に第一線に伍してゆける。デザインにもスマートさが出てきた。そのことはプレーヤーの最新作SR-929についてもいえる。スピーカーのSP-G300は、まだ本格的な試聴をしていないが、少なくともその機構からしても今までのものと全然違っている。サンスイの体質が大きく変りはじめたように思われる。そしてそれは期待のできる方向であることが感じとれる。
さんざん悪態をついて申し訳ないが、終りにひとつだけ、AU-777以来、アンプ・パネルのブラックフェイスを貫き通した意地を高く評価したい。最近になって、マーク・レビンソンなどの影響で再び各社がブラックフェイスを復活させはじめた。サンスイにとってはそれは復活でなく、昔からのサンスイの〝顔〟なのだから、大手をふってブラックパネルをいっそう完成度の高い、洗練された製品に仕上げて欲しい。
菅野沖彦
スイングジャーナル 2月号(1977年1月発行)
「SJ選定新製品」より
ジャズをリアルにきいて、音楽的実体験をするのが私の理想である。音楽的実体験とは自分が、音楽する行為であって〝今、レコードを聴いている〟などというさめた、なまぬるいものではない。自分の頭の中、心の中、身体中にみなぎる音の表現が、スピーカーから出てくるそれと完全に同化し一体化することといっていいかもしれない。コルトレーンのレコードをかける時はコルトレーンになりきり、ロリンズではロリンズになりきるのだ。八城一夫が弾くピアノは自分が弾いているのである。こうなりきれるには、その演奏表現が自分と同化できるものでなくては駄目で、異質な表現、異なる呼吸、くい違うリズムが演奏されるとこの行為は破壊され、私は音楽から完全にはずれ、おいてけぼりを喰い、しらける。趣味のあわないセンスも決定的に、この行為を不可能にする。好きなアーティストや好きなレコードとは、この行為を可能にしてくれるものだと思っている。音楽の理解とは、こういうことなのではないかと思うのだ。嫌いだ、合わないという断を下す前には、自分自身が、その音楽の次元に至っていないことをも謙虚に内省すべきであるし、努力してその音楽と一体になるべく自分を磨くぺきだとも思う。しかし、どうしても自分に合わないものは必らず存在するものだろう。
レコードは反復演奏が可能なために、こうした一体行為への努力をするには都合がいい。もちろん、一度も聴いたことのないアーティストの演奏会で、初めての出合いで一体化し得ることもまれにあるし、そんな時の喜びは、もう筆舌に尽し難い。
レコードをかけて、この一体化の行為を営む時に、私にとって再生装置のクォリティや録音制作の質と性格は大変に重要なのである。それがジャズである場合、私は、どうしても、高い音圧レベル、大きな耐入力をもった余祐あるスピーカー・システムが必要なのだ。ちょっとパワーを入れると歪んだり、危っかしくなるようなスピーカーは、せっかく、好きなアーティストと素晴しい録音であるにもかかわらず、私のしたい一体化の行為、つまり、音楽的実体験に水が注がれてしまう。私が使うリアルとか、リアリティとかいう言葉は、この音楽的実体験という意味であって、決して、生と似ているという狭い範囲の意味ではない。生と似ていることそのものは結構であるがたとえ、生と比較して違いがあっても、この実体験が出来れば、私はレコードと再生装置に100%満足する。むろん、この実体験の基本的な感覚は生の音楽を聴くことにより、下手ながら楽器を弾くことにより育ったものであるが……。
このサンスイの新しいスピーカー・システムは、私に、この実体験をさせてくれた。抜群の許容入力と堂々たる音圧レベル。まず、この最低条件をよく満たしてくれた。いくら、この条件が満たされたからといって、アンバランスな帯域特性や、耳障りな音色の癖がひどくてはやはり白けるが、この点も、まず、私の感覚に大きな異和感を生じさせない。小レベルのリニアリティーもよく、敏感にピアニッシモに反応するしスタガーに使われているという2つのウーハーとツイーターのつながりもスムースで快い。難をいえば、低音に、もう一つ、柔軟さと軽やかさがほしい。ツイーターとのつながりからも感じられるのだが、このウーハーの中音から高音へかけての質と、ネットワークによるコントロールは見事であって、それだけに、低音に欲が出るのである。実体験をしている最中に、いい意味で一体化からはぐらかされることがある。それは、あまりにも素晴しい音がスピーカーから出る時だ。聴きほれるというのだろう。このサンスイSP−G300には、そこまでの魅力はない。幸か不幸か、私の音感覚のほうが、このスピーカーよりちょっぴり洗練されているらしいと思いながら、しかし、全く白けることなくジャズを体験することが出来たのである。
岩崎千明
音楽専科 1月号(1976年12月発行)
「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より
サンスイのアンプが、この秋大きく変った。変ったといってもその特長たるブラック・パネルはそのまま踏襲され重量級の風格は変ることがない。しかしよくみると、その仕上げは、艶消しのソフトな感触に変り、今までの鋭どさがぐっとやわらいだ。つまみも角を丸くおとしてまろやかなタッチで、つまみの数も、いままでにくらべてずっと抑えて、全体にシンプルだ。こうした一段とソフトな感じがこの新シリーズ、607、707の大きな特長であることは、その音を聴くと、一層はっきりすることになる。従来、サンスイのアンプは「中音が充実し、やや華麗な中に、鮮明な迫力一ぱい」として受けとられて来た。
人気絶頂の米国JBL・スピーカーの総代理店たるサンスイの特典が、アンプにいかんなく発揮されている、ともいえそうな鮮度の高い迫力ある音がブラックパネルのサンスイのアンプの共通的な特長であり、さらに中音から中高音にかけてのクリアーな力強さが感じられてきた。
ところが、今度の新シリーズは今までのこうした特長からははっきりと変化を知らされる。路線が変ったというよりも、今までのすべてを突き破ったといえる。鮮明さは少しも失わずに、しかも、全体に受ける印象は、まろやかな音だ。どぎつさが全然なく、すべてに落ち着きとゆとりを感じさせる、高い水準の完成度が見事なほどだ。
外観のイメージから受けることのできる、大人っぽい高級感は、音の方にもはっきりと感じることができるのが、今度の新シリーズ、607、707なのである。
サンスイのアンプは今までもハイクラスのマニアの愛用者が多い。逆にいえば、高価格のアンプがよく売れる。1年前のAU7700といい、2年前のAU9500といい価格的には一般的平均よりもずっと高い高級品であった。こうした高価なアンプであれば、内容的には当然優れているわけで、それを十分使いきり、生かせることのできるファンが、サンスイの愛用者に多いといえる。
新シリーズはこうした点をもっとはっきりと意識して、製品の企画に反映した、といえるだろう。初心者やレベルの低いファンにとっては今までのサンスイのアンプにくらべ物足りないと思われるほど、おとなしい音、おとなしいデザインにまとめられているのは、実はこいうした、大人のファンのための高級品だからであろう。
607は65/65Wの、家庭用としては十分にして無駄のないパワーをもち、機能面でも、余り使うことのないものを整理し、しかも、若いファンのための必要なアクセサリーともいうべきテープ録音再生の端子は2台分を用意してあり、その使いやすい切換つまみでまとめたパネルつまみは、新製品にふさわしく、便利で有効だ。
707は出力を一段と上げて80/80Wと強力でしかも機能面はマニア、音楽ファンの愛用者のあらゆる望みをかなえてくれるに違いないほどいっぱいだ。
最近のアンプはかなり技術志向が強くて、「DCアンプ」「電源左右独立」といったアンプの内部を理解していないとつかみにくい面が強調されることが多い。サンスイの新シリーズもむ論、この面で同様の新技術を採用しているが、要はそうした技術が、サウンドにいかに生かせるか、である。サンスイの707、607、デビュー早々若い音楽ファンが熱いまなざしをもって迎えられているというのも本当の理由は、こうした実質的な、真の良さのためだろう。
井上卓也
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ブラックフェイスのパネルに、対数圧縮目盛をもつ、実効値指示型の2個のパワーメーターがあり、1mW〜150Wのパワーを読みとることができる。パワーは、110W+110Wで、現代アンプらしい、低歪率、高SN比設計のモデルである。回路構成は、カレントミラー付差動増幅を初段にもつ、パラレルプッシュプル出力段の全段直結純コンプリメンタリーOCLである。電源部は、左右チャンネル独立巻線をもつトロイダルトランスと12000μF×4の電解コンデンサーの組合せである。
保護回路は、パワートランジスター用に電流制御回路、スピーカー用に、直流検出と温度検出回路があり、高信頼性設計である。また、ヒートシンクは、包絡体積12000ccの新しい対流放熱器を4個使用し、チムニー型で高い放熱効率がある。
内部構造は、ドライバー段、出力段、電源部を完全に分離したブロック別の機構設計で、相互干渉や影響を防止している。
CA2000とBA2000を組み合わせた音質は、デザインが上級機種と同じだけに、共通のトーンポリシーを想像しがちであるが、設計が新しいだけに、オーバーな表現をすれば、まったく異なった現代アンプらしい、帯域が広く、滑らかでクリアーな音といえよう。とくに、ステレオフォニックな左右の拡がりが、パッと視界が開けたように感じられる。音色は、明るく軽いタイプで、ある種の反応の早さ、表情のナチュラルさがこのペアの特長である。中域がしっかりしているサンスイのアンプの特長は、受け継いでいるが、従来のものにくらべ、表面的に感じられないのが、全体の質的向上を意味している。
井上卓也
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
サンスイのセパレート型アンプ、コントロールアンプCA3000を中心に、2機種のハイパワーアンプBA3000/5000でラインナップをつくっているが、今回、ジュニアタイプとして2機種の製品が加わり、製品群としての厚みが一段と加わった。
CA2000は、標準的なコントロールアンプに要求される、多機能とセパレート型アンプらしい高い物理的性能を備えた、オーソドックスなコントロールアンプである。
イコライザー段は、動特性重視の差動1段を含む7石構成で、終段は純コンプリメンタリーA級プッシュプルで、入力感度3段切替、最大許容入力は、入力感度8mVのとき1000mVである。ボリュウムコントロールは、4連ディテント型で残留ノイズを抑え、実用上のSN比を向上させている。トーンコントロールは、サンスイ独特の中音コントロールをもつトリプルタイプであり、低域フィルターは、2石構成のアクティブ型である。このトーンコントロールとフィルターは、機能を必要としないときにはディフィートスイッチで、信号系から完全にバイパスすることができる。
井上卓也
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
現在プリメインアンプの需要の中心は数量的には5万円未満のモデルであるが、オーディオ敵に質的・量的のバランスを考え、プログラムソースであるディスク側のダイナミックレンジの拡大を含めれば、やはり6〜9万円台のモデルが魅力あるプリメインアンプとして、本来の中心機種の座にあるといってよい。
新しいサンスイのプリメインアンプは、この価格帯に投じられた専門メーカーらしい製品で物理的データの高さと現代アンプらしい音質、それに、新しいブラックフェイスのデザインをもつ、意欲作である。
AU707、606のパネルフェイスは、サンスイが初期の管球プリメインアンプAU111以来一貫して守ってきた伝統的なブラックパネルであるが、色調はマットブラックで統一され、簡潔でダイナミックな印象としている。このパネルは、サイドにハンドルをつければ標準ラックパネルにセットすることができる。
AU707の回路構成上の特長は、イコライザー段が初段カレントソースつき差動1段、バッファー、アクティブロードつきA級増幅1段、純コンプリメンタリーSEPP出力段の8石構成で、1kHzの許容入力300mV、RIAA偏差±0・2dB、SN比77dBを得ている。パワーアンプは、初段デュアルFET差動2段、カレントミラーつき電流差動プッシュプル(特許申請中)、3段ダーリントン接続のDCアンプであり、電源部は左右チャンネル独立型、電解コンデンサーは、15000μF×4である。
機構設計上の特長は、入力端子、イコライザー、トーンコントロール、パワーアンプと、信号経路を合理的に配置しシールドカバーの併用で物理性能の向上をはかっている。また、パワー段の放熱板は、チムニー型で放熱効果が高く、信号経路のコンデンサーは、低雑音タイプのBRN電解コンデンサーとマイラーコンデンサーをセレクトして採用している。
AU607は、出力が65W+65W(707は85W)である点と、トーンコントロール段のバッファーアンプの省略、電源部の電解コンデンサーの容量が、12000μFに変更されたあたりが、基本的に、AU707と異なった点である。
AU10000は、コントロールアンプCA2000とパワーアンプBA2000を一体化して、プリメインアンプとした新製品で、デザインは高級機に準じている。
AU707/607は、サンスイのアンプとしては音質的にCA2000、BA2000の系統である。各ユニットアンプの性質が素直なためか、歪感がなく、滑らかで静かだが、それでいて充分に力もある音だ。とくに、AU607のハーモニーの美しさと、表情の豊かさは見事で、音楽を楽しく聴かせてくれる。
井上卓也
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より
新しい価格帯に登場したフロアー型スピーカーシステムである。構成は、ユニークな、同口径で異った性質の2本のウーファーを並列駆動する低音、本格的なコンプレッション型ドライバーユニットと音響レンズつきホーンを組合せた高音を採用した2ウェイ・バスレフ型である。
低域、高域ともに、充分に伸びた聴感の帯域は、近代型モニターシステム的であり、とくに低域の音の姿、かたちをナチュラルに表現し、スケール感が大きいのは、フロアー型ならではの魅力である。また、ホーン型ユニットが受持つ帯域は、いわゆるホーン的な感じが皆無で、特定のカラリゼーションがないのは珍しい。音でなく、音楽を楽しむスピーカーである。
井上卓也
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
サンスイのフロアー型システムには、現在バックロードホーン型エンクロージュア採用のSP707J、バスレフ型エンクロージュア採用のSP505Jがあるが、いずれも使用ユニットは米JBL製のフルレンジユニットであり、そのシステムをベースとしてマルチスピーカー化する可能性を残した、いわば基本型といった性格が強い製品である。
今回、新しく発売されるSP−G300は、最初から自社開発のユニット使用を前提として企画されたコンプリートなフロアー型システムで、開発にあたっては、かなりJBLのモニターシステムの影響を受けていることが、そのユニット構成、規格からも知ることができよう。
トールボーイ型をしたエンクロージュアは、バスレフ型で西独ブラウンのスピーカーシステムと同様に、コーナーが大きくRをとってあるために、全体の印象は穏やかな感じがあり、SP707Jなどとはかなり異なっている。
ユニット構成は、2ウェイ・3スピーカー方式で、ウーファーは、30cm口径のユニットを2個並列使用、トゥイーターは音響レンズ付のホーン型が採用されている。
ウーファーは、ちょっと見には、単純なパラレル駆動と思われやすいが、それぞれコーン紙の形状が異なっており、性質の違ったユニットであることがわかる。タテ位置に2個取りつけてある下側のウーファーは、低域共振周波数が低く、振動系の質量が重いタイプで、本来のウーファーとしての低音を受持ち、上側のウーファーは、やや低域共振周波数が高く、振動系の質量が軽いタイプで、低音の高いパートから、トゥイーターにクロスオーバーする帯域を受持っている。このユニットは、いわばスコーカー・ウーファーと考えてもよいものだ。
一般的には、ウーファーは重低音を要求すれば中低域に欠点が生じやすく、中低音を要求すれば重低音不足となりやすい傾向があるが、逆の声質をもつ2個のウーファーをコントロールして並列駆動として使う方法は、大変に興味深いものがある。
考え方を変えれば、38cmウーファー1個を追い込むよりは、実効的なコーン面積がそれと等しい異なった種類の30cmウーファー2個をコントロールするほうが、ある場合には、むしろ好結果が得やすいのかもしれない。この場合にはその成功例といえる。
トゥイーターは、本格派のハイフレケンシーユニットで、ショートホーンとスラントタイプ音響レンズの組合せで、SP6000で使用されたユニット発展型と考えてもよいのかもしれない。
このシステムは、表情が豊かで、伸びやかな音である。ややウォームトーン型だが、低域が安定しよく響き、よくハモる。中域以上は、ホーン型とは思われないほどの細やかさと滑らかさがある。小音量でもバランスを保つのは実用上の利点で、JBLと異なった音であることが好ましい。
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1976年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
プレイヤー・システムはレコードを演奏する装置であり、コンポーネントの中でも、きわめて重要な存在だ。それは、その微細なディスクに刻まれたミクロの振幅を拾い上げ、電気エネルギーに変換するというデリケートきわまりない作業をやってのけるのだ。この作業を直接果すのはカートリッジだが、いくら優れたカートリッジでも、トーンアームやターンテーブル、そして、それらを支えるプレイヤー・ペースが完全に補佐しない限り、その性能を発揮することは不可能である。ディスクの溝に刻まれた振動は、それ自体は、うねうね曲りくねったパターンに過ぎないが、これを回転させ、その溝に針を垂下させることによって、針先を動かす機械的エネルギーが生れる。針先の僅かな動きは全て電気エネルギーになってアンプへ送られ増幅され、スピーカーから育として再生される。こんな当り前のことを今さらあえていうのも、この当り前のことをちゃんと行なうことが、どうしてなかなか難しいからなのだ。つまり、針先に加わる機械振動が全部音になるというわけだから、レコードの溝に刻まれた波形が針先を動かす以外に、もし、なんらかのエネルギーが針先に加わることは、余計な音をスピーカーから出すことになる。たとえば、モーターの振動だ。これは絶対に禁物だ。最近のモーターは大変優秀で、静かな回転が得られるようになった。しかもDD式でモーター自体の回転を遅くすることによって振動がずっと少なくなったも回転速度も正確に、かつ滑らかに絶
えずコンスタントな速度で回らなければならない。毎分33 1/3回転といっても、1分間で33 1/3回転すればいいわけではない。一定速度で回転しなければ、音のピッチがゆすられて音程が保てないし、音質の劣化という現象につながる。これも、最近は、いろいろ優秀なものが登場した。バランスのとれた重いターンテーブルの慣性と、モーターの速度の僅かな誤差を検出して制御するサーボ機構の組合せ、しかも、モーターを回転させる発振源に水晶を使うという時計なみの精度をもったクォーツ・ロック・システムなどである。こうした新兵器はたしかにプレイヤー・システムの性能向上に役立っているが、実は、もっと、一見単純でしかも重要な問題がある。
それは、プレイヤー・ベースの構造である。この土台がしっかりしていないと、絶対に音のいいプレイヤー・システムにはならない。しっかりしていなければならないといっでも、ここのところが難しい。前の針先の振動は、カートリッジのダンパーでは全部吸収されず、アームに伝わる。アームの共振はベースに伝わる。したがって、アームやベースの特性は必らずカートリッジの振動系と一体となって、一つの音色傾向を持つことになる。そんな馬鹿なという人がいるとしたらそれは体験不足というものだ。プレイヤー・システムは、全てが音に影響のある振動体なのだ。 シェルの指かけや、ターンテーブルのラバー・マットなどについても最近はやかましくいわれ出しているが、その割には、カートリッジ自体のボディーの材質や構造、ベースのそれと音の関係がまだ煮つめられているとはいえないようだ。ハウリングという、プレイヤー・システムの最も恐るべき現象に対してさえも、まだまだ、実際には配慮の足りないものもある。こうした背景の現時点で新しく登場したSR929は、かなり集中的に、これらプレイヤー・システムの諸問題が追求され成果々上げたものだと思う。勿論、回転系は、最新型のクォーツ・サーボ・システムのDDターンテーブル。トーンアームのナイフエッジとワンポイント・サポートはフィーリングとしてもう一つ不満だが、音質のよいものだ。そして、肝心のベースが力作である。コンクリートとウッドの二重構造で、フィニッシュが黒の艶出し。ピアノと同じ鏡面仕上げである。これは、プレイヤー・システムのもつべき条件を、物理的に、共振と制動の両面から追求し、感覚的には、ディスクの質感とぴったりくるピアノ塗装でまとめたという熱意の溢れた製品だと思う。きわめて品位の高い風格と音質を持っている。インシュレーターのバネ定数と総重量とのバランス、その制動をもう一つ自動車工学からでも学んでくれたら、完壁な線までいっただろうに。ハウリングにはもう一息の努力が欲しかった。
井上卓也
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
サンスイから普及型のプリメインアンプが2モデル発売された。2機種ともに、共通のフラットフェイスのパネルをもち、ブラック仕上げになっている。
AU−3500は、35W+35Wのパワーをもつモデルである。フロントパネルの機能は、プッシュボタンによるフォノ、チューナー、AUX3系統の入力切替、テープモニター、それに、モード切替があり、レバースイッチによるミューティング、ラウドネス、高音と低音フィルターをもつほかにマイクミキシング回路を備えていることが、このクラスのアンプに応わしいところである。
回路構成上のイコライザー段は、最大許容入力が2・5mV感度で230mV(1kHz)あり、RIAA偏差は±0・5dB以内に調整してある。トーンコントロール段は、2段直結アンプによるCR型であるのが珍しい点だ。ボリュウム及びトーンコントロールは、クリックステップ型ボリュウムを採用している。パワーアンプは、初段にデュアルトランジスターを採用した全段直結型ピュアコンプリメンタリーOCL方式で、電子回路とリレーを使ったスピーカー及びパワートランジスターの保護回路が備わっている。なお、プリアンプの電源も、±2電源タイプでスイッチ切替時のクリックノイズを抑えている。
AU−1500は、パワーが22W+22Wとなり、機能が2つ少ない。
菅野沖彦
スイングジャーナル 6月号(1976年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
サンスイから新たに発売されたプリ・メイン・アンプAU7700は、一聴して歪のない快よい音が印象的であった。どこかうつろといってもよいような、それは、空胴感をもっているのである。私には、よくも、あしくも、これがこのアンプの音の特長に感じられる。だいたい、従来から、メカやエレクトロニクスのプロセスを通った録音再生音は、あまりにも音の存在感があり過ぎたように私には感じられてならない。色でいえば、不透明な顔料とでもいえるのだろう。一種特有の壁のように私の前に立ちふさがるのである。音には、それが自然音の場合、どんなに衝撃的な迫力のある音であっても空中を浮遊する美しい透明感と、突きあたりのない奥行、つまり立体感に満ちている。このアンプが私に与えた空胴感というのは、いわば、一種、この感覚に近いものであって、これは歪の多いアンプには絶対にないものだと思う。しかしである。自然音の魅力は、そうした透明感、空胴感は、確個とした実体感とバランスを保ったものであって、決して最近の低歪率音響機器と称せられる製品の多くが持っている弱々しい虚弱さとは異るのである。こう書いてくると、いかにも生の音とそっくりの再生音……つまり一頃よく云われた原音再生こそ理想だといっているようにとられる危険性を感じるが、私のいわんとしているのは、それが生であろうと、再生音であろうと、美しい音ならばいいわけで、現状では、自然音のもつ美しさに匹敵する再生音がまだ得られていないというだけのことである。透明感が得られたと思うと力がなくなり、力があると思うと歪感があるといった具合で、なかなか思うようにはいかないのである。このサンスイのAU7700というアンプも、どちらかというと、少々力が足りない。やや歪の多いスピーカーを鳴らしたほうがガッツのある音がする。スピーカーは未だ歪だらけだから、それを鳴らすアンプとしては今の所、解析されている歪は出来るだけ減らしていったほうがいいのである。しかし、問題は歪感のある音……つまり、元々、とげとげしい音、荒々しい音まで、ふんわりと鳴らしてしまうことである。残念ながら、現在の音響機器から、理解されている歪をどんどん減らそうと局部的に改善を重ねていくと、どういうわけか、そんな傾向へいってしまうようなのだ。その証拠に、現在、測定データで歪のもっとも少ないとされるスピーカーは、まるで無菌状態のように、ふぬけの音がするのである。改善が局部的というか片手落ちというか、トータルでのバランスをくずす結果の現象と推察する以外にない。
このアンプは従来のサンスイのアンプのもっていた馬力というものより、むしろ、よく抜けたすっきりとした音というイメージが濃いが、この辺にサンスイのアンプの進歩を明らかに見出すと同時に、一抹の不安を感じさせられるのである。その不安は、このアンプそのものにあるのではなく、そういう傾向に進んだとしたら……ということだ。サンスイは音の専門メーカーとして、聴感上のコントロールを重視しているので、その心配はないかもしれないが……。音に関する限り、それが研究所内での実験ならいざしらず、テクノロジーだけに片寄っていくとそうした危険を伴う。そういった現状での電気音響技術の不完全性が商品に現われてしまうという事実を認めざるを得ない。現時点での最高のテクノロジーといえども、目的である音(感覚対象としての)を100%コントロールすることは出来ないのである。AU7700は、この点、両者がよくバランスしたアンプであって、商品としての実用性が高い。20Hz〜20kHzの帯域で両チャンネル駆動で50W+50Wの出力が保証され、高周波歪、混変調歪率0・1%以下に収められているが、合理的な設計が随所に見られる最新鋭器である。惜しむらくはデザインで、内容を充分に象徴するところまでには至っていない。リアの入出力ターミナルのパネルがリ・デザインされ便利になっているし、努力の跡は大いに認められるのだが、未消化な面取や無理なスタイリングが高級品に必要なシンプリシティを害している。電源の安定化(±2電源)、配線を極力排した基盤と直結のコネクター類、一点アースなどオーソドックスな技術面での追求によって得られた音質は、このアピアランスを上廻っているのである。初めに書いたように、力強さから、品位の高い透明感に近づいたサンスイの新しいサウンドは、音の美しさを一歩高い次元で把えるマニアに喜ばれるものだろう。
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