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トリオ KT-9700

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオらしいチューナー技術のリファインされた傑作である。いたずらに技術を誇示する方向ではなく、地味に内容の充実に向けて、最新の、そして、豊かな技術を盛り込んでつくられたチューナーだ。その音質のクリアーさは、FMの音を再認識させるほどであり、本当の意味での高級チューナーというものは、これをもって標準とするに足る。いかにもチューナーらしい平凡なデザインだが嫌味がなく楽しめる。

トリオ KA-7300D

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオでは同社で確立したというダイナミック・クロストーク理論に基づいて、ステレオアンプの左右チャンネルの電源部を独立し、さらにDCアンプ化するなど現在のオーディオアンプの動向をリードしてきたが、今回はさらに音質を改善するために、スピーカーとパワーアンプ間の問題に焦点を絞ったダイナミック・ダンピングファクター理論に基づいて設計された、新しいプリメインアンプKA7300Dを発売することになった。
 ダイナミック・ダンピングファクター理論とは、スピーカーからの逆起電力がパワーアンプに及ぼす影響をテーマとしたもので、簡単に考えれば、超低域でのスピーカーに対する制動力で従来のACアンプにくらべDCアンプが優れていることの証明であるといったらよいであろう。
 回路面は、初段にカレントミラー負荷をもつFET差動アンプ、出力段にSEPPピュアコンプリメンタリー回路を使い入力コンデンサーを使わないイコライザー段、ICL化したフラットアンプと独立した低音、高音トーンコントロールアンプ、DC構成の75W+75Wの出力をもつ同じくICL化した差動増幅3段のピュアコンプリメンタリーSEPP・OCL方式のパワーアンプが組み合わされ、電源部は左右チャンネルが完全に独立した電源トランスと各チャンネル10000μF×2のコンデンサー、定電圧化したプリアンプ電源をもつ。

トリオ KT-7700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ペアとなるべきKA7300は改良型の7300Dとなって一段と性能が向上した。KT7700の方は内容的にはそのままらしいが、いまの時点でみても、あえて新型にすべきほどの弱点は見当りそうもない。音質は9700には及ばないにしても、傾向的にはよく似ていて、クリアーな受信ができる。

トリオ KA-7300D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Dのつかない旧作も一応の力作だったが、改良型の音は全く別もののようにグレイドアップされている。一体にトリオのアンプは、他社よりも調子が出るまでに時間のかかる傾向があるが、このアンプも、鳴らしはじめて二時間ぐらい後になると、素晴らしく細やかで質の高い音の表情を生かしはじめる。

トリオ KA-7100D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 型番のうしろ三桁に300のつくシリーズが最もオーソドックスなのに対して、100番のつくのは若いポップス愛好家向きで、メーターつきはメカマニア向きとというような作り分けをしているのではないか、というのは私の勝手なかんぐりだが、ともかく7100Dは、調味料をかなり利かせたメリハリの強い、5万円台の製品の中で独特の個性を聴かせる。

トリオ KA-9300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 音楽の実在感を生き生きと聴き手に伝えるという意味で、なかなかの出来栄えだと思う。いくらか硬目の音で、自己主張の強いところがあるから、そこが好き嫌いの分れ目になるが、音の鳴り終えたあとの余韻が空間に美しく響きながら消えてゆく感じの再現力からも、優れたプリメインであることがわかる。

トリオ KA-7700D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 音楽の表情を生かすためにアンプが積極的に働きかける、といった感じがトリオの新しい一連のシリーズに共通した印象。その中でも、型番の下三桁に300のつくシリーズがクラシックまで含む広い適応性を持っているのに対して、それ以外のモデルは、ややハード型の方向で音をまとめているように思える。

トリオ KA-7100D

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 細工はりゅうりゅうといった感じの気合いの入った力作である。本質的な音の素性はかなり品位が高いが、それに加えて、なかなか堂に入った味つけが巧みに施されている。充分にびきった低域にバランスさせるべくコントロールされた高音域の輝き、艶が、ソースによって、あるいは、スピーカーによっては、大変効果的に響くのだが、スペンドールでは効果として働き、JBLではその逆の傾向になった。ベーゼンドルファー・ピアノの音はしっとりした味わいと、品のよいソノリティが、少々ヒステリックになり、日々が安っぽい。弦楽四重奏では、内声部から低音にかけての厚みが豊かなソノリティをつくり効果的だが、高弦のハーモニクスがやや耳をさす。大オーケストラのfffでの音の締りと明晰さはこのクラスとしては秀でていて、音くずれが少ない。TC回路を入れると一枚ベールをかぶるのは問題だが、残留ノイズの少ないことは特筆に値する。

トリオ KA-7700D

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 きわめてワイドレンジを感じさせる音でありながら、音楽の表現に重要な中域の充実した聴きごたえのある音。高域に独特の色彩感と触感があってリアリティを効果づけているが、プログラムソースによっては、それが気になることがある。特に弦楽器のハーモニックが味つけ過多の印象でもう少し素直に、しなやかに響くべきではないかと思う。反面、こうした特質は、管やピアノにはプラスと働くようで、艶と輝きのある音色効果は演奏表現を魅力あるもにする。余裕のあるパワーはさすがに力強く、数Wの範囲で鳴っている時でも音が締って力強い。どちらかというとソリッドな音で、空間を漂う繊細なニュアンスの再現より、実在感のある楽器の直接音の再現に力を発揮するアンプのようである。トーン回路による音の変化は少ないほうだが、やや甘く、音がひっこむ感じになる。SN比は大変よく、特性の優秀な高性能アンプの名に恥じないものだ。

トリオ KA-9300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 前の三菱DA−U850と同じく、15万円の線を越すとさすがに音のクォリティがぐんと上がる。ただし鳴ってくる音の傾向は対照的といえるほど違う。たとえば「悲愴」のフォルティシモの部分で、左右のスピーカーのあいだに最も音のよく広がるタイプのアンプであった。楽器のパートごとに空間的な距離や広がりや奥行が感じとれる。そして音の消えてゆくときの余韻が美しい。DA−U850のあとにこれを聴くと、そうか、850の鳴り方はいわば音そのものという感じで、この響きの部分が不足していたんだな、と思えてくる。9300の方は、弦の高域のしなやかな表情や、女声の艶々しさを、かなりいい感じで聴ける。ただ、弦楽器の木質の響きにもう少し自然な感じが欲しい、というように、中音域の質感にもう少し自然さと密度が加われば一層いいと思える。それにしても、音楽を聴く楽しさを味わうことのできる良いアンプのひとつだと思った。

トリオ KA-7700D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 基本的には7100Dの音とよく似ている。というよりも、この7700Dの持ち味を、半分の価格でも鳴らそうといろいろ味の素を利かせたのが7100Dの音だったのか、ということが、こちらを聴くうちに理解できた。さすがにこのクラスになると、小細工あるいは手加減で聴感上の音を整えるということはせずに、正攻法で水準以上の音を鳴らすことが可能になるために、プログラムソースを替えスピーカーを替えて聴いていっても、ソースやスピーカーによる適不適のようなものは少なく、音の輪郭のくっきりした鮮度の高い音が一貫して聴きとれる。とても生き生きと音楽の表情を生かすところがこのアンプの特徴だが、弦のユニゾンや合唱曲などで、響きをもう少し柔らかに聴かせて欲しいという気もする。ボリュウムを上げたときも絞ったときでも、ノイズの非常に少ないこと、そしてトーンをオン・オフしても音質の劣化の少ない点はさすがに高価格帯のアンプだ。

トリオ KA-7100D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 腰のすわりの良い力強い音、というのが第一印象である。ピアノの打鍵音やポップス系のパーカッションの場合にも、腰くだけにならずクリアーでよく緊った、エネルギーのたっぷりした音を聴かせる。こういう性質の音は、たとえばスペンドールのようなやわらかい音質のスピーカーを組合せた場合には、弦合奏あるいは編成の大きな管弦楽を鳴らしても、音の芯をしっかりと、音楽の表情を生き生きと聴かせる。反面、JBLモニターのようなスピーカー自体の音のしっかりしたものを組合せた場合には、ポップス系ではその力強さ、エネルギー感がプラスになるが、弦合奏を中心としたクラシックの音楽、および女声ヴォーカルなどで、骨っぽい男性的な音になる傾向があまり感心できない。トーンコントロールをオフにすると回路ごと切離されるような設計だが、トーンをONにする音が曇って鮮度を失う傾向が顕著で、この部分の設計がやや緻密さを欠くように思える。

トリオ KT-7100

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプの分野では、つねに、時代を先取りしたハイパワー化や、パワーアンプのDCアンプ化など話題を投げかけているトリオから、さきに発売された、モデルナンバー末尾に、DCアンプ化したパワーアンプをもつことを意味するDの文字を新しくつけたプリメインアンプ、KA7100Dのペアチューナーとして、KT7100が発売された。
 このモデルは、価格的には、安いランクに設定されているが、FMのトリオ、をもって任じる同社の製品だけに、受信機としての性能とオーディオ機器としての音質の相反する要求を満たすべく設計され、高級機の開発で得た音質対策の技術を活用し、電源部の強化、ビート歪みの解明に裏付けられた、PLLループフィルターの改良などが採用してある。
 機能面は、シンプルなタイプだが、回路面では、FMフロントエンドに、デュアルゲートMOS型FETをRF増幅に採用した4連バリコンと組み合わせ、高感度と強電界での安定度を両立させている。IF段は、フェイズリニア6素子フィルター、検波段には、帯域が広いクォドラチュア回路により低歪化がおこなわれ、MPX段では、PLLと新開発の左右チャンネル分離型のローパスフィルターによって、キャリアリークを抑えている。なお、AM部は、短波帯からのビートを防ぐトラップ回路がある。

トリオ KA-9300

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 最高級プリメインアンプにランクされる製品としての実力は備えているアンプだと思う。音の品位は高いし、なにをかけてもその音楽的特質をよく再現する。フィッシャー=ディスカウの声はソフトで、たっぷりと響き、豊かだし、クヮルテットも、高域にやや味の素の利き過ぎる感じはあるが雰囲気はよく出る。オーケストラの強奏への安定性はよく堂々としたソノリティと、明解な音色の分離で混濁することはない。コーラスも透徹なさわやかさだ。ピアノは少々モノトーンに感じられ、もう一つデリカシーが足りないが、立体的な粒立ちがよい。ベースもよく弾む。ただ、全体に妙な表現で恐縮だが、ゴム質の質感があるのが聴けば聴くほど気になってくる。これば決して嫌な感触ではないし、人によっては快かろう。しかし、この粘りつくようなセクシータッチは、湿って重苦しく感じられてくる。もう一つ明快に晴れ上ってほしいものだと思う。

トリオ KT-9700

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 外観からは、あまり特長めいたものを感じさせないモデルだが、内容では新しいFMチューナーの技術をフルに盛り込んだFMのトリオらしい快心作である。
 フロントエンドは、RF増幅にリニアリティが優れたDD−MOS型FET、バランスドタイプのミキサーには、2乗特性が優れたDD−MOS型FETを使用し、バリコンはエアーギャップが広い局部発振器内蔵型8連を採用し、アンテナ入力回路がシングル、段間がトリプル、トリプルチューニングとしている。なお、局部発振はバッファーアンプ付である。
 IF段は、帯域3段切替で、ワイドでは6ポールLC集中型フィルター、ノーマルでは、12ポールLC集中型、さらにナローでは、4素子3段のセラミックフィルターを使い、ワイドとノーマルにはバッファーアンプが入る。また、IF段は、10・7MHzの第1IFと水晶発振器による1・93MHzの第2IFをもつダブルコンバート方式で、これは中間周波数の約10倍の周波数特性が要求されるパルスカウント方式の検波段で、パルス変換を容易にすると同時に、相対周波数偏位をあげて検波効率を高め、SN比を上げる目的があるためである。
 パルスカウント方式の検波段は、直線検波が可能なため歪みが少なく、調整箇所がないため、安定度が高い特長がある。直線性の優れている利点は、多少の同調ズレがあっても歪率が悪化せず、シンセサイザーやAFCで周波数をロックする必要がない。
 MPX部は、トリオ独自のDSDC方式で、ビートを抑えるPLLループ応答切替、ノルトン変換した7素子ローパスフィルターを使うキャリアリークフィルターがある。オーディオアンプは、差動直結オペレーショナルアンプで、300%の過変調時でも歪の劣化は少ない。
 機能面では、80dBまでの信号強度が読める直線目盛のシグナルメーター、38kHz検出型マルチパスメーター、デビエーションメーター、2段切替のミューティングレベル、2系統のアンテナを切替使用できるアンテナ切替スイッチなどがある。
 本機は、現時点の高級チューナーとして頂点に位置する音質と性能をもっている。とくに音質は、オーソドックスなもので、最近聴いたチューナーのなかでは抜群である。選局のフィーリングは優れているが、繊細な同調ツマミの動きにダイアル指針が敏感に反応しない点が大変に残念である。

トリオ KA-7700D

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 本機は、左右独立電源、DCアンプと話題を投げかけたトリオらしい新製品で、さらに、プリアンプ電源を独立した3電源方式に発展している。
 回路構成は、FET差動を含む差動2段の3段直結ICLイコライザー、初段FET差動2段直結フラットアンプと独立した高音と低音のNF型トーンコントロール段、アクティブ型の高域とサブソニックフィルター、初段FET差動を含む差動3段のA級増幅段とパワーダーリントンブロックをつかうDCアンプ構成のパワーアンプ部である。

トリオ KP-7300

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオから新しく発表されたプレーヤーシステムは、比較的にローコストなモデルだが、プレーヤーシステムの基本であるプレーヤーベースをはじめ、トルクの大きなダイレクトドライブ用モーター、重量級のターンテーブルの採用などに代表される、使用部品を充分に検討して開発されたオーソドックスな製品である。
 プレーヤーペースは、プレーヤーシステムの性能を向上させるための重要な部分であるが、ここでは、骨組みとして、石綿を加えて高圧成形したコンクリート一種であるMC材を使用している。この材料は、吸水率、含水率が低く、剛性が高い特長をもち、外部振動に強いシステムとすることに大きく役立っている。また、ベースの底板部分は、1・6mm厚の鉄板を使用しているのも、この部分の共振を抑えるための配慮である。また、ダストカバーは、スピーカーからの音のエネルギーを大量に受ける上面の肉厚を厚くし、各コーナーの内側は、三角形の肉もりを施して剛性を上げ、材料には振動減衰率が大きいアクリル材を使用するなどして機械的な強度の高いカバーとしている。また、プレーヤーシステムの幾何学的中心に重心がないと、高い周波数と低い周波数の2つの共振点が出来ることになり、防振性の上で大きなマイナスになるとの見解から、ダストカバーの開閉時にも、総合的な重心の移動を極小にできるような、カバーの重心分布が考えられているとのことである。
 ターンテーブルは、最大トルク1・1kg・cmの20極・30スロットDCサーボモーターで、ダイレクトに駆動されるが、ターンテーブル自体は、直径33cm、重量2・6kgのアルミ合金ダイキャスト製で、ゴムシートを含む慣性質量は、440kg・㎠と、このクラスの製品としてはかなり大きな値を得ている。なお、ゴムシートは、肉厚が6mmあり、ターンテーブルの分割共振を抑えているとのことだ。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、パイプ部分は、直径10mm、肉厚1mmのアルミパイプを硬質アルマイト仕上げし、パイプのネックは、真鍮材で作った充分な長さのパイプで固定してある。ヘッドシェルは、アルミダイキャスト製で、フィンガー部分も一体成型として強度を高めたタイプである。
 付属カートリッジは、デュアルマグネットタイプのMM型で、音の傾向としては帯域が広く、とくにパルシブな音が多いジャズ、ロック系の音楽に適した、ガチッとした音をもっているとのことである。
 なお、プレーヤーベース部分のインシュレーターは、再生音、耐ハウリングの両面から検討された新開発のタイプで、上下方向の防振はもとより、横方向および回転軸の動きを制動する特長があるデュアルサスペンション方式である。ストロボスコープは、付属の小型円板をターンテーブルのスピンドルに入れて使うタイプである。

トリオ KT-7700

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 チューナーの新製品では、性能重視型のFM専用機が増加しているが、このKT−7700も、同様なポリシーで開発されたニューモデルである。
 ダイアルスケールは、読取り精度が高いミラー付ロングスケールで、シグナルとチューニングメーターとマルチパス兼放送局の変調度を指示するデビューションメーターがビルトインしてある。フロントエンドは、局部発振回路組込みの7連バリコンを使ったRF2段タイプで、選択度2段切替型のIF部は、12素子セラミック型と8ポールLC集中型フィルター採用である。MPX部はFETによる復調スイッチング回路を使う低歪率設計であり、オーディオ部は、差動直結±2電源オペレーショナルアンプを使い、ローパスフィルターには7素子ノルトン型を採用するなど、高性能なFM専用チューナーに応わしい新技術が各ブロックに導入されている。

トリオ KA-9300

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプのパワーアップは、普及機クラスから、徐々に中級機に波及してきたが、量と質のバランスを要求される高級機ともなると、単なる量的なパワーアップだけでは、シビアなユーザーの要求に答えることは不可能である。
 KA−9300は、一連のプリメインアンプのハイパワー化に加えて性能、音質ともにグレイドアップした高級モデルに相応しいプリメインアンプである。
 回路構成上は、初段FET差動4段直結型ICLイコライザー段、初段FET差動3段直結アンプを使った、高音と低音が分離したターンオーバー切替付NFBトーンコントロールなどをもつプリアンプ部は、43ステップの4連ディテント型ボリュウム採用で聴感上のSN比がよく、左右チャンネル独立電源をもつパワーアンプ部は、FET差動を初段とする差動3段パラレルプッシュプルのICL、OCL、DCアンプで、120W+120Wのパワーがあり、スピーカー端子には切替スイッチをとおらず直接アンプとスピーカーが接続可能なDIRECT端子がある。
 このアンプは、パワーが充分にあるために、低域に安定感があり、クリアーでストレートな音のメリットがよく出ている。聴感上では、さしてワイドレンジを感じさせないバランスをもつが、誇張感がなく、ストレートで素直な音をもっている。このタイプの音は、えてして音の芯が弱く軽い音になりやすいが、充分にあるパワーが低域をサポートしているためにソリッドで安定感のある好ましさにつながっている。DCアンプ採用というとワイドレンジを思い出すかもしれぬが、聴感上は、誇張感がなくナチュラルである。
 操作性は機能が整理されており、使いやすいが、ロータリータイプのスイッチは、フィーリングが不揃いで硬軟の差があり、高級モデルとして他の部分のバランスがよいだけに、ぜひ改良を望みたい。

トリオ LS-77

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このところ、2〜3万円クラスのスピーカーの新製品では、新材料や新デザインを導入した意欲的な製品が多い。
 トリオの新スピーカーシステムは、従来からも、ドロンコーンをもつバスレフ型のスピーカーシステムを開発してきたキャリアーをいかし、さらに、音像定位を明確化するために、例外的なコアキシャルユニットを採用した、注目すべき製品である。
 ブラック仕上げのエンクロージュアは、18mm厚の高密度ホモゲンでつくられ、エンクロージュア内の共振を分散するための補強がおこなわれている。
 使用ユニットは、ダイキャストフレームを採用した25cm口径のウーファーとラジアルホーン付のトゥイーターを同軸上に配置したコアキシャル2ウェイユニットと、同じフレームを使ったパッシブコーン、つまりドロンコーンが組み合わせである。
 マルチコルゲーションが付いたウーファーのコーン紙は、重量が8・3gと軽量であり、酸化チタンがコーティングされている。このコーンは、形状がほぼ、ストレートコーンともいえる、わずかにカーブをもっており、スムーズでキャラクターが少なく、伸びのある中音が得られるとのことである。
 トゥイーターは、振動板に、ルミナーにアルミ蒸着したものを採用し、ホーンはアルミダイキャスト、イコライザーは亜鉛ダイキャスト製で、ホーン鳴きを防止するために、ホーンの裏側にはゴム板を貼付けてダンプがしてある。
 パッシブコーンは、ウェイトを交換して低音をコントロールできるようになっている。標準としては、重量が30gあるウェイトが、コーン中央にネジ止めされているが、別売りのウェイト・オプションPW−77を使えば、低音不足を補う、20gのブースティング用ウェイト、低音が出すぎたり、中低音がカブル場合に使う、40gのダンピング用ウェイトが使用できる。
 標準ウェイトとウェイト・オプションは場合によれば、重ねて使用することも可能であるために、部屋の音響条件や、設置場所により、ウェイトを調整すれば、低音をかなりの幅でコントロールすることができる。一般に、この種のスピーカーシステムでは、部屋に応じて、最適の低音が得ることができれば、トータルなバランスは比較的にコントロールしやすいものである。ブックシェルフ型の特長である設置場所が自由に変えられるメリットに加わえて、パッシブコーンにより低音再生が調整可能な、このシステムは、良い低音再生をするために大きな可能性があると考えてよい。
 このシステムは、ホーン型トゥイーターを使った同軸型ユニットという特長があるために、クロスオーバー周波数が4kHzと高いことが音色にも影響しているようだ。バランス上では、中域が、やや薄く、声の子音や弦に独得のオーバートーンがつくが定位はシャープで、音色は明るい。

トリオ KA-9300

菅野沖彦

スイングジャーナル 4月号(1976年3月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 トリオが昨年一年間にアンプに示した積極的な姿勢は目を見張らせるものであった。その初期に展開したCP戦略は、必らずしも私の好むところではなかったが、見方を変えれば、トリオの生産力の現われとして評価することもできるだろう。KA3300を皮切りに1W当り1000円という歌い文句は少々悪乗りが過ぎたし、オーディオ専門メーカーとしての真摯な態度とは私にはどうしても考えられなかったけれど、その後、KA7300、そして今日のこのKA9300に至って、矢張り本来のトリオであったことを実感させられて嬉しくなった。近視眼的に見れば安い製品の出現や、安売り販売店の横行は、ユーザ一に利をもたらすかのごとく見えるものだが、度を超すと、それが、いかに危険な悪循環の遭をたどるかが明確やある。オーディオを愛す専門のメーカーとして、ここまで、共にオーディオ界の発展向上に尽してきたメーカーならば、こんな事は百も承知のはずで、昨日今日、その場限りの儲け主義で、この世界に入りこんできた連中の無責任さと同じであっては困るのである。まあ、過ぎた小言はこのぐらいにしてKA9300について話しを進めよう。トリオが、アンプの特性と音質の関係について、恐らく業界でも一、二を競う熱心な実験開発の姿勢をとってきていることは読者もご存じかもしれない。いささかの微細なファクターも、音に影響を与えるという謙虚な態度で、回路、部品、構成の全てに細心の注意を払って製造にあたっていろ。その姿勢の反影が、このKA9300に極めて明確に現われているといってよいだろう。前作KA7300という65W十65Wのインテグレイテッド・アンプが左右独立のセパレート電源を採用して成果を上げ、本誌でも、その優秀性について御紹介した記憶があるが、KA9300も、この電源の基本的に優れた点を踏襲し、アンプの土台をがっしりと押えている。この左右独立方式は、パワー・アンプのみならず、プリ部にも採用されて、電源のスタビリティーの高さを図っているものだ。二個のトロイダル・トランスの効率の高さは熱上昇の点でも、インテグレイテッド・アンプには有利だし、それに18000μFの電解コンデンサーを4個使って万全の構えを見せてくれている。この電源への対策は、アンプの音の本質的なクォリティの改善に大きく役立つもので、建前でいえば、基礎工事にあたる重要なものだから、こうした姿勢からも、トリオがアンプに真面目な態度で臨んでいることがわかるだろう。出力は、120W+120Wと大きいが、このアンプの回路は、大変こったものであることも御報告しておかねばなるまい。それは、パワー・アンプにDCアンプ方式を採用していることである。DCアンプは今話題の技術であるが、これが、音質上いかなるメリットを持つものであるかは、まだ私の貧しい体験からは断言できない。しかし、世の常のように、ただDC動作をさせているから音がよいという短絡した単純な考え方はしないほうがよいだろう。DCアンプともいえども、それだけで、直に音質の改善につながると思い込むことは早計であり過ぎるのではないか。アンプの音は、部品の物性、配置、構成などのトータルで決るものだからである。しかし、ごく控え目にいって、このアンプのもつ音は素晴らしく、きわめて力強い、立体的な音が楽しめる。音の質が肉質なのだ。つまり有機的であって、音楽に脈打つ生命感、血のさわぎをよく伝えてくれるのである。DCアンプで心配される保護回路については、メーカーは特に気を配り、ユーザーにスピーカー破損などの迷惑は絶対にかけないという自信のほど示してくれているので信頼しておこう。低い歪率(0・005%定格出力時8?)、広いパワー・バンド・ウィガス、余裕ある出力と、よい音でスピーカーを鳴らす物理特性を備えていることも、マニア気質を満足させてくれるであろう。ベースの張り、輝やかしいシンバルのパルスの生命感、近頃聴いたアンプの中でも出色の存在であったことを御報告しておこう。そして特に、中音域の立体感と充実が、私好みのアンプであったことも……。

トリオ KT-7700, KT-5500

トリオのチューナーKT7700、KT5500の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

KT7700

トリオ LS-101

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 すべての音にやや響きをつけ加えるという感じから、あるいはヨーロッパ系のスピーカーの良さを手本にしているのか、と思われる。DS261と較べるとその点がまず対照的で、三菱がすべての音に抑制を利かせて音の輪郭をかっちりとくまどってゆくのに対して、トリオの音には手綱をゆるめた自在さが聴きとれ、華やかさ、明るさを感じる。そういう音色のせいか、音像の定位は比較的シャープだが奥行きが出にくい傾向があり、やや張り出しぎみの平面上に定位する。ただ、音の響きのつき方は、たとえばフルートのソロでいえば息の漏れる音が少々サワサワとノイズっぽくなる傾向で、中~高域にもう少しまろやかで滑らかな磨きをかけて欲しい気がする。そういう音のせいだと思うが、このスピーカーは、価格的にはやや不相応の品位の高いアンプやカートリッジで鳴らしてやらないと、右の傾向が裏目に出やすく、組合せに失敗すると、汚れっぽい音を出すことがありそうだ。しかしこういう、弱点スレスレのところでまとめた音は国産には珍しいといえそうだ。

採点:85点

トリオ LS-700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 少し前までの国産スピーカーが総じて持っていた饒舌さをこの製品はまだ持っている。たとえばオーケストラを鳴らしてみると、実際の演奏以上にスピーカーの各ユニットがよく鳴り響くという感じで、スケールの大きな反面、騒々しさと紙一重のところまで音を派手やかに鳴らす。また、総体にピッチを上げたような感じにも聴こえる。一言でいえば、にぎやかな音、とでもいう感じである。バランス的にはいわゆる逆カマボコ型あるいはドンシャリ型と呼ばれるタイプで、低音と高音の両端をやや強調して中域をおさえる方向にまとめられている。この意味では少し前のイギリス系のスピーカーなどに聴かれた作り方を意識しているのかもしれない。この系統の作り方には、やや手綱をゆるめた感じの鳴り方がともなうため、よけいに音の締りが不足のように思える。ただLS700の音には、どこか硬い芯があって、そこが何となくチグハグな印象であった。音のバランスや音像の立ち方を引き立てるには、組合せや置き方を十分研究する必要がある。

トリオ KA-9006

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 7006の音質をベースに、パワーの増加とそれにともなう中~低音域のいっそうの充実感で、耳当りのいい穏やかな音色ながらバランスの良い音質を響かせる。