Category Archives: プリメインアンプ - Page 9

ダイヤトーン M-U07

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このアンプは一見してわかる通り、いわゆるミニアンプの系統に属する。今回のテストのように、ごくスタンダードのプリメインアンプをテストの対象としている中に、ミニアンプを混ぜるということは、テストとしてはあまりフェアーではない。これを承知のうえで取り上げた理由というのは、現在ダイヤトーンのアンプのカタログの中に、この価格ランクのものがほかにあまり見当たらない、ということと、これが比較的新しい製品であるということなので、あえて取り上げてみた。そのミニであることのハンデというのは、何かというと、当然同じ価格で極力小型化するためには使うパーツ、あるいはそれに付随する回路設計にいろいろ制約が出てくる。同じ価格でより小型化した場合に、無理に小型化しないで普通にゆったり作ったアンプに比べてどこか性能が劣るということは、これはやむを得ないことだ。したがって、ミニアンプは、ミニアンプの仲間の中に混ぜて、ミニアンプ同士のテストというのをすべきで、このアンプに関しては多少そういう点、ハンデをあげた採点をしようと思う。
音質 まず音全体の印象だが、割合に柔らかい、フワッとした、どちらかといえば甘口とも言えるような聴きやすい音が第一印象だ。これは実はダイヤトーンのアンプということをわれわれが頭に置いて聴くと、意外な感じを覚える。ダイヤトーンのアンプというのは、比較的カチッと硬めの音を出す。これがダイヤトーンのスピーカーにも共通する一つのトーン・ポリシーだと思っていたが、このミニアンプでは反対に割合に柔らかい音が聴こえてきた。
 柔らかい音というのは、また別な言い方をすると、少し音の芯が弱いという感じがする。これは繰り返すようだが、ミニアンプだからそう高望みをしても仕方がないことだと思う。この価格、そしてこの大きさ、それから公称出力が25Wということを頭に置いて聴くと、意外にボリュームを上げても音がしっかりと出てくる。これはミニとしてはむしろよくできた方のアンプだという印象を持った。
トーン&ラウドネス このアンプにはMCヘッドアンプは入っていない。そういう点は非常に作り方としては、割り切っている。スピーカーもA、B切り替えというものはなく、一本きり。その割にはテープが二系統あるというようにテープ機能を、かなり優先させている。また、トーン・コントロールの効きは、比較的大きい方で、ラウドネスも割合にはっきりと効く。ということはこういうミニサイズのアンプにはミニサイズのスピーカー組み合わされるというケースが多いだろうということを考えると、特に低音の方で効きを大きくしたという作り方は妥当だと思う。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方というのは、ヤマハA5のところでも言ったように、ボリュームの同じ位置で、スピーカーを鳴らしていると同じような音量感で、ヘッドホンが鳴ってくれるのが理想だが、このアンプもヘッドホン端子での出力をやや抑えぎみにしてある。
 テストには主にエラックのカートリッジ794Eを使った。多少シャープな感じのするカートリッジだ。それよりはスタントンの881S、比較的音の線が細くない厚味を持った音のカートリッジだが、その方がこのアンプの弱点を補うような気がする。つまりカートリッジには線の細いものよりは、密度のある線の太い音のカートリッジ、スピーカーも含めてそういう組合せをすると、このアンプはなかなか魅力を発揮する音が出せると思う。
 最後に、このアンプのマイクロホンの機能が充実しており、レベル設定やミキシング、それにリバーブが付けられるなど、カラオケを意識したようなファンクションもあり、楽しめる。

ヤマハ A-5

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このヤマハのA5は、四万五千円というプリメインとしてはかなりローコストの部類だが、この製品をいろいろな角度からながめてみると、高級プリメインが備えている機能を最小限に集約して、できるだけ安い価格で提供しようという作り方がうかがえる。
 例えばMCのヘッドアンプを内蔵しているということも一つ。それからインプット系統がなかなか充実しており、テレビの音声チューナーを接続できるようにもなっている、といったことだ。見た目は一連のヤマハのアンプのデザインの系統で、大変さっぱりして清潔感のある印象を与える。
音質 この製品は前号でも試聴した製品なので、音は前にも聴いていた。今回改めて同じような価格ランクのアンプの中に混ぜてみて、どういう位置づけになるかというところが大変興味があったわけだが、この価格の中で、もしヘッドアンプまで入れて機能を充実させようと考えて作ると、やはりどこかうまく合理化し、あるいは省略しなくてはならない部分が出てくるということは、常識的に考えて当然だと思う。実際に音を聴いてみた結果、大づかみに言えば、これはヤマハの一連のアンプに共通の明るさ、軽やかさ、それから音が妙にじめじめしたり、ウェットになったりしない一種渇いた気持ちの良さ、そういった点を共通点として持ってはいる。
 ただ、いろいろなレコードを通して聴いてみて、一言で印象を言うと少し薄味だということだ。それからの音の重量感のようなもの、あるいはスケール感のようなものが十分に再現されるとは言いにくい。
 前号でプレイヤーのテストをした時に、レコード・プレイヤーが三万九千八百円というような価格でまとめたものから四万円台に入るとグーンと性能が上がるという例があったように、アンプでもやはり中身を充実させながら、コストダウンさせるためには、どこか思い切りのいい省略が必要ではないかということは当然考えられる。
 そういう見方からすると、このA5はいろいろな面からかなり高望みをして、本質の方はほどほどでまとめたアンプという印象がぬぐえない。トータルとしての音のまとめ方としては、さすがに経験の深いヤマハだけに大変手慣れたものだが、そのまとめ方の中身の濃さが伴っていないという感じだ。
トーン&ラウドネス ところでこのアンプをいろいろ操作してみての感じだが、トーン・コントロールの効き方は、低音、高音ともいわゆる普通の効き方をする。ラウドネス・コントロールは割合にはっきりと効く感じで、わかりやすい効き方をする。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプだが、MC20MKIIはボリュームをあまり上げたところでは使えない。つまりあまり大きな音量が出せない。ゲインも足りないし、ボリュームを上げていくと、ヘッドアンプのノイズのほうが、かなり耳障りになってくる。これはかろうじて使うに耐えるという感じ。しかし、デンオンの103Dの方は十分に使える。ゲインもたっぷりしているし、ヘッドアンプとしての音質も、四万五千円ということを考えれば、まあまあのところへいっているだろうと思う。
ヘッドホン ヘッドホンの端子での音の出方の理想というのは、ごく標準的な能率のスピーカーをつないで、ボリュームを上げて、適当な音量を出しておく。その音量感とそのボリュームの位置で、ヘッドホンに切り替えた時の音量感が、大体等しくなることが理想だ。その点、このアンプのヘッドホン端子で出てくる音量が、スピーカー端子よりもやや低めという印象がした。
 ヘッドホン端子での音質は、スピーカー端子で聴く音とほぼ同じで統一がとれている。

パイオニア A-900

パイオニアのプリメインアンプA900の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

A900

トリオ KA-8300, KT-8300

トリオのプリメインアンプKA8300、チューナーKT8300の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

KA8300

オンキョー Integra A-810, Integra A-808, Integra A-805

オンキョーのプリメインアンプIntegra A810、Integra A808、Integra A805の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

A810

ビクター A-X9

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 ここで価格ランクが一段変わる。このビクターと後のラックスが15万円クラスの代表ということになる。
 A−X9は新しい回路構成を採用し、外観のデザインも一新したビクター久々のニューラインの最高機種だ。このアンプは、わたくしのリスニングルームでの試聴では、かなり個性的な音を聴かせた。もちろんいままでに聴いたマランツ、アキュフェーズ、トリオ、それぞれに個性を持っているのだが、その中にまぜても、ビクターは一種独得な音だと思わせる個性をもっている。具体的には、同じレコードでも音の表情、あるいは身振りをやや大きく表現する。別な一面として、鳴ってくる音に一種独得な附帯音──この表現はとても微妙でうまく言い表せないのだが──というか、プラス・アルファがついてくる印象がある。「魔法使いの弟子」で、フォルティシモの後一瞬静かになってピアニシモでコントラファゴットが鳴り始める部分、このレコード自体にホールトーンあるいはエコーが少し録音されているのだが、そのエコー成分が他のアンプよりはっきりと意識させられる。このアンプには、エコーのような、楽音に対するかくれた音を際立たせる特徴があるのかもしれない。「ザ・ダイアログ」でも、シンバル、スネアー、ベース……多彩な音が鳴った時、それらがリアルに目の前で演奏されているというより、少し遠のいた響きのあるステージで演奏されているかのように再現される。ことばにするとオーバーなようだが、これは他のアンプでもいえることで、本当に微妙なニュアンスの問題だが、それにしてもわたくしには、独得な雰囲気感がつけ加わっている不思議な音、と受けとれた。あるいはこういう音は、極端にデッドなリスニングルームで聴くと、評価が高くなるのかもしれない。

トリオ KA-9900

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 トリオの最新のアンプの音──より正確にいうなら、前作KA9300あるいはKA7300D、その後あいついで発表されたL05/L07シリーズあたりを境にして──は、目指す方向がはっきりしてきた。トリオならではの性格が確信を持って表現されるようになった、とわたくしは思う。トリオのアンプだけがもっている独得の音。それはレコード、FM、テープどんなプログラムソースを聴いても、聴き手に生き生きとした感覚をつたえてくれる。同じレコードをかけても、その演奏自体がいかにも目鼻だちのクッキリして目がクリクリ動くような表情がついてくるように聴こえる。裏返していうと、音楽の種類によっては、ほんの心もちわずかといいながらも表情過多──という言葉を使うこと自体がすでにオーバーだが──と思わせる時がないでもない。しかし全体としてみると、音楽の表情を生き生きとつたえてくれるという点で、わたくしの好きな音のアンプといえる。このKA9900はそうしたトリオの最近の特徴をたいへんよく備え、セパレートL07シリーズにも匹敵するクォリティさえもつプリメインの高級機といえる。
 音を生き生きと、コントラストをつけて表現するためか、音の輪郭がはっきりしていて、それは時として、音が硬いかのように思わせる場合がある。このアンプを長期間、自宅で個人的にテストして気がついたのだが、他の多くのアンプと比べると、スイッチを入れてから音がこなれていくまでの時間が長く、その変化が大きい。長い時間音楽を聴けば聴くほど、音がこなれてきて、柔らかくナイーヴになって、聴き手をひきつける音に変化してゆく点が独特といえる。
 内蔵MCヘッドアンプの音もかなりグレイドが高く、オルトフォンMC30を使うと、E303に比べ少々ノイズが増すようだが、アキュフェーズとの5万円の価格差を考えれば優秀といってよい。かなり豊富なコントロールファンクションを備えているが、それぞれの利き方がたいへん適切で好ましく、中間アンプをバイパスしてイコライザーアンプとパワーアンプを直結したDCアンプ構成にしても音質の変化が少ないことから、中間アンプ自体の設計も優れていることを思わせる。あらゆる点から高級機らしさを備えているといえよう。
 しかしこのデザインは何とかならないものか。このパネル面を見ていると、自家用の常用機として毎日使おうという気がどうしてもおきない。マランツにしろアキュフェーズにしろ、出てくる音とアンプ全体の雰囲気はイメージ的に似ていると思うが、トリオは一種男性的な──若さゆえに粗野が許されるといった──イメージだが、出てくる音はナイーヴなエレガントな面ももっているのだから、外観にも音と同じくらいのデリカシーがほしい。

価格帯別にサウンドの傾向をさぐると

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 25万円から6万円弱と、4倍以上の価格差のあるプリメインアンプを集中的に聴いてみると、さすがに20万円以上の製品はそれぞれに優れていると思った。このクラスでは、パワーもチャンネル当り100W、150Wと、プリメイン型としては少し以前までは考えられなかったような、ハイパワーを安定に発揮し、SN比の良さ、内蔵MCヘッドアンプのクォリティの高さ、コントロールファンクションの充実、そして見た目の美しさや信頼感を含めて(今回試聴した以外の製品の中にはいくつかの例外があるものの)、愛好家にとって良い製品を手に入れたという満足感を与えてくれるものばかりだ。
 少し値段が下がって15万円クラスになると、さすがに各社の高級機が揃っているクラスだけに、♯4343を鳴らして相当音量を上げても、量感、スケール感での不満はあまり感じない。ごく最新のアンプではより一層その感が強い。プリメインとして割り切るのなら、このクラスがねらいどころだろう。逆にいうと、先ほどのマランツ、アキュフェーズ、トリオ・クラスで、20万円以上も出してこれだけの大きさ、機能とパワーをもったプリメインアンプを手にしてみると、もう少し奮発してセパレートにした方がよかったのじゃないか、と迷うことがあるのではないだろうか。事実このクラスから上のセパレートアンプには、比較的(セパレート型としては)ローコストでも結構良い製品もあるのだ。
 10万円のクラスはどうだろう。この価格帯のプリメインアンプは、♯4343を鳴らすために買ったとしたら、買った後でいちばん迷いが出てくるのではないだろうか。このクラスの製品を買おうというからには、いろいろ前後の製品を研究してのことだろう。15万円までは出せないが7万円以下では満足できそうもないということで、奮発して10万円というランクに考えが落ち着いたのではないだろうか。今日一流メーカーの製品で10万円も支払えば、中身に裏切られることはない。価格相当の、あるいは価格以上の音がする。が、今回のテーマのように、♯4343を最終的にはできるかぎり良いアンプで鳴らしたいが、当面はプリメインアンプで実力のせめて60ないしは70%の音を抽き出そうと考えて選んだ場合、できることならこのクラスは避けた方が良さそうだ。もう少し予算を足してもう少し音を善くしたいと思う反面、もう少し安いランクのプリメインで聴いていて、あとで一挙にセパレートにグレードアップした方が……とも考えられる。やはり10万円という価格ランクは、もう少し出しておきたい、あるいはそこまで出さなくてもよいのではないかという印象を、今回の試聴ではうけた。誤解しないでいただきたいが、これはあくまで「♯4343をとりあえず鳴らす場合」なのであって、10万円のプリメインにバランスのとれたスピーカー、プレーヤー、カートリッジを組合わせてシステムを構成する場合は、先に述べたように価格相当以上の音が楽しめる。そういう良いアンプが多いといえる。
 アンプの性能で差がつくのは、価格で√2倍または1/√2というわたくし流の説によれば、10万円クラスの下は7万円以下ということになる。つまり6万円から6万9千8百円といった価格帯のアンプを思い浮かべていただければよい。するとこのクラスが、♯4343を鳴らすためのプリメインとしてまあ最低の限界だろう。他の機会に試みたことがあるが、これ以下のアンプでは♯4343は鳴らせないと思って間違いない。これ以下のアンプでは、いくら包容力のある♯4343でも、アンプの性能をカバーしきれない。逆に、♯4343だからこそ、6万円クラスのプリメインの、時としてクォリティの手薄になりがちな部分をスピーカーの方で積極的にカバーして聴かせてくれることを知るべきだ。しかしこのクラスのアンプに見合った組合せを作れば、それなりの音が楽しめるにしても、かえって、あまり価格の高くないアンプであることをゅ♯4343で鳴らしたときよりもょはっきりと意識させられてしまうことが多い。
 日頃わたくしの部屋で、プリメインで♯4343を聴くときは、ほとんど最高級機で聴くのが常だったが、今回かなりローコストの製品でも鳴らしてみた結果、スピーカーに不相応なほどアンプのランクを落しても、♯4343の持っている良さが一応出てきて、けっこう音楽を楽しませてくれることが改めて確認できた。けれど一通りの試聴が終って、最後にもう一度、マーク・レビンソンの組合せに戻した時は、わたくしばかりでなく居あわせた編集部員数人が、アッと声にならない驚きを顔に現わして、互いに顔を見合わせたのだった。桁外れて価格が高いとはいえ、アンプのクォリティはいうにいわれずスピーカーの音の品位、密度を支配するものだということも確認できた。
 JBL♯4343は、はかり知れない可能性をもったスピーカーであるだけに、費用や手間を厭いさえしなければ、今日考えうる最高クラスのアンプと組合わせて、プレーヤーシステムからプログラムソースまででき得る限りクォリティを高めて鳴らせば、再生音楽とは思いもよらない凄みさえ聴かせてくれる。それでいて、スピーカー1本の1/10の価格のプリメインで鳴らしても、バランスを崩すことなくスケール感も楽しませてくれる。♯4343以前の大型フロアータイプ・スピーカーでは、なかったことといってよいだろう。

アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 アキュフェーズ初期の音から、新シリーズは少し方向転換したという印象を受けた。セパレートのC240+P400などを聴いても、明らかに音の傾向を変えた、というより、アキュフェーズとしてより完成度の高い音を打ち出し始めたと思う。それがE303にも共通していえる。たとえば、弱音にいたるまで音がとても滑らかで、艶というとオーバーかもしれないが、いかにも滑らかな質感を保ったまま弱音まできれいに表現する。本質的に音が磨かれてきれいなため、パワーを絞って聴くと一見ひ弱な感じさえする。しかし折んょウを上げてゆくと、あるいはダイナミックスの大きな部分になると、音が限りなくどこまでもよく伸び、十分に力のあるアンプだということを思わせる。
 マランツPm8の音のイメージがまだ消えないうちに、このE303を聴くと、Pm8ではプリメインという先入的イメージの枠を意識しなくてすむのに対して、E303は「まてよ、これはプリメインの音かな」とかすかに意識させる。言いかえるとPm8よりややスケールの小さいところがある。しかし、そのスケールが小さいということが、このE303の場合は必ずしも悪い方向には働かず、むしろひとつの完結した世界をつくっているといえる。Pm8ではプリメインの枠を踏み出しかねない音が一部にあったが、E303はこの上に同社のセパレートがあるためかどうか、プリメインの枠は意識した上で、その中で極限まで音を練り上げようというつくり方が感じられた。たとえば、「ザ・ダイアログ」でドラムスやベースの音像、スケール感が、セパレートアンプと比べると心もち小づくりになる。あるいはそれが、このアンプ自体がもっているよく磨かれた美しさのため、一層そう聴こえるのかもしれない。これがクラシック、中でも弦合奏などになると、独得の光沢のある透明感を感じさせる美しい音として意識させられるのだろう。
 内蔵MCヘッドアンプのクォリティの高さは特筆すべきで、オルトフォンMC30が十分に使える。Pm8では「一応」という条件がつくが、本機のヘッドアンプは、単体としてみても第一級ではないだろうか。
 総じて、プリメインアンプとしての要点をつかんでよくまとまっている製品で、たいへん好感がもてた。

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 今回試聴したアンプの中で最もローコストの製品で、外観を眺め価格を頭におくかぎり、正直のところたいして期待をせずにボリュウムを上げた。ところが、である。価格が信じられないような密度の高いクォリティの良い音がして驚いた。ヤマハとオンキョーのところで作為という表現を使ったが、面白いことに、価格的には前二者より安いV6の音には、ことさらの作為が感じられない。
「つくられた音」ということをあまり意識させずに、レコードに入っている音が自然にそのまま出てきたように聴こえ、えてしてローコストのアンプは、安手の品のない音を出すものが多いが、その点V6は低音の量感も意外といいたいほどよく出すし、音に安手なところがない。
 他の機会にこのアンプを聴いて気づいたことだが、今回のテストのように、スイッチを入れてから3時間以上も入力信号を加えてプリヒートしておかないと、こういった音は聴けない。スイッチを入れた直後の音は、伸びのない面白みのない音で、もっとローコストのアンプだといわれても不思議ではない音なのだが、鳴らしているうちに音がこなれてきて、最低でも一時間以上、二時間もたってみると、聴き手をいつまでもひきつけておくような魅力的な音になっているのである。最近のローコストアンプの中でも傑出した存在だろう。内蔵のMCヘッドアンプも、価格を考えれば立派というほかない。
 しかし、あえて苦言を呈すれば、オリジナリティに欠けるデザインポリシーは、全く理解に苦しむ。この価格帯のアンプを買うであろうユーザー層を露骨に意識した──しかも当を得ているとはいいがたい──メカっぽさ。少し前の某社のアンプデザインを想い起させ、イメージもマイナスだし、いかにも機械機械した印象は、鳴ってくる音の美しさ、質の高さとはうらはらだ。

ラックス L-58A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

ラックス久々の力のこもった新製品だという印象をもった。15万円前後のプリメインアンプは、前記したビクターA−X9をはじめ、長いことベストセラーを続けているヤマハCA2000、最近のヒット商品サンスイAU−D907など、それぞれに完成度の高い製品がひしめているクラスに、あえて打って出たということからもラックスの意気込みが感じられる。それだけに前記のライバル機種と比較してもL58Aの音は相当に水準が高いといえるだろう。現時点での最新機種であるだけの良さがある。
ラックスのプリメインアンプから受ける印象として、ここ数年、たいへん品は良いのだがもう一歩音楽に肉迫しない、あるいはよそよそしくひ弱な感じがあった。本当の意味での低域の量感も、やや出にくかったように思う。しかしL58Aではそれらが大幅に改善された。たとえば「ザ・ダイアログ」で、ドラムスとベースの対話の冒頭からほんの数小節のところで、シンバルが一定のリズムをきざむが、このシンバルがぶつかり合った時に、合わさったシンバルの中の空気が一瞬吐き出される、一種独得の音にならないような「ハフッ」というよな音(この「ハフッ」という表現は、数年前菅野沖彦氏があるジャズ愛好家の使った実におもしろくしかも適確な表現だとして、わたくしに教えてくれたのだが、)この〈音になら
ない音〉というようなニュアンスがレコードには確かに録音されていて、しかしなかなかその部分をうまく鳴らしてくれるアンプがないのだが、L58Aはそこのところがかなりリアルに聴けた。
細かいところにこだわるようだが、これはひとつのたとえであって、あらゆるレコードを通じて微妙なニュアンスを、このアンプはリアルに表現してくれた。細かな、繊細な音さえも、十分な力で支えられた緻密さで再生してくれていることが、このことから証明できる。
低音に十分力があり、そして無音の音になるかならないかの一種の雰囲気をも、輪郭だけでなく中味をともなったとでもいう形で聴かせてくれることから、よくできたアンプだと思った。しかし、試聴したのは量産に入る前の製品だったので、量産機の音を改めて確認したいと思う。
今回聴いた製品に関しては、試作機的なものだからか、MCヘッドアンプの音は、L58Aが本来もっている音に比べ、もう一歩及ばないと聴いた。アンプ全体のクォリティからすれば、もう少しヘッドアンプの音が良ければと思わせる。しかし14万9千円のアンプにそこまで望めるかは微妙な問題で、価格を考慮すれば、この音のまま量産されることを前提に、たいへん優れたアンプといえる。

オンキョー Integra A-805

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 プリメインアンプの中級クラスとでもいえる価格の製品。しかしこの価格を頭において試聴をはじめるとオヤッと驚かされる。鳴らしているスピーカーはペアで116万円だが、百万円をこえるスピーカーを6万5千円のアンプで鳴らしたらどうなるか。おそらく多くの人がはじめから不安感を抱くと思う。わたくし自身も、このクラスのアンプで♯4343がどの程度鳴ってくれるか自信がなかった。しかし接続を終えボリュウムを上げて鳴ってきた音は、そんな心配を一瞬忘れさせる、たいへん好ましい音だった。滑らかで、独特に広がる雰囲気をともなった美しい音に、まずびっくりさせられた。
 むろん時間をかけて聴き込むと、たとえば「ザ・ダイアログ」のドラムスとベース、「魔法使いの弟子」のオーケストラのトゥッティで、音のクォリティやスケール感の上から、やはりローコストなアンプだということがわかる。しかしずいぶん聴き手を楽しませる、たいへんうまいまとめ方をしたアンプといえる。ヤマハのところで作為という言葉がなにげなく出てきたのだが、その意味でA805にも相当作為があるといってよいだろう。この価格のプリメインを即物的に設計・製作したら、これほど聴き手をひきつける好ましい雰囲気は出ないはずだ。細かな点を指摘すれば、バスドラムやスネアのスキンがピシッと張っている感じが少し湿り気をおび、いわゆるスカッとした音とは違う。反面、弦やヴォーカルはとても滑らかなイメージを展開することで、聴き手に好感をもたせるアンプだ。

ヤマハ CA-S1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 ここで再び価格ランクが一段下がる。
 音の質感は相当高度だ。ヤマハがCA2000の頃から完成しはじめた音の滑らかな質感、クォリティバランスとでもいうべき音の質感の整った点は、9万5千円という価格以上の音と思わせる場合がある。しかし数多くのレコードを聴き込んでゆくにつれて、どこか音に「味の素」をきかせたとでもいおうか、味つけが感じられる。たとえば「ザ・ダイアログ」のドラムスの音。バスドラムの量感、スケール感、パワーを上げた時に聴き手の腹の皮を振動させるかのような迫力が、この上の15万円クラス、あるいは20万円クラスのプリメインでは、セパレートと比べると、本当の意味で十全に出にくい。ところが高価格の製品から聴いてきて、CA−S1まできてむしろそういう部分が一種の量感を伴って出てくるように感じられた。しかしこの価格のプリメインで本当にそういう音を再現することは、無理があるわけで、そこが、なんとなく「味の素」を利かせた、という感じになるのだ。このクラスのプリメインでは、その辺の量感が不足しがちなことを設計者自身が意識して、意図的に作為をもって量感を加えるように計算づくで味つけしたように、わたくしは感じた。それはあるいは思いす
ごしかもしれないが、プリメインを何台か聴いてきて、そういうことを意識させる点がまたCA−S1の特徴、といえないこともないだろう。
 中音域以上はクォリティの良い、たいへん滑らかな、密度の十分な安定感や伸びが、90W+90Wというパワーなりに感じられる音だ。しかし高域にわずかに──たとえばフランチェスカッティのヴァイオリンの高域で、弦そのものの音を聴いているというより、上質なPAを通して聴いていると思わせるところがある。あくまでも録音した音を再生しているのだと意識させる、その意味でもかすかな作為が感じられる。低音に関しても高音に関しても、つい作為ということばを使いたくなったという点が、このアンプ自体、一種上等な「味の素」のような調味料をうまく利かせてまとめられているという説明になるだろうか。

マランツ Model Pm-8

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 今回のテストの中でも、かなり感心した音のアンプだ。この機種を聴いた後、ローコストになってゆくにつれて、耳の底に残っている最高クラスのセパレートアンプの音を頭に浮かべながら聴くと、どうしてもプリメインアンプという枠の中で作られていることを意識させられてしまう。つまり、音のスケール感、音の伸び、立体感、あるいは低域の量感といった面で、セパレートの最高級と比べると、どこか小づくりになっているという印象を拭い去ることができない。しかしPm8に関しては、もちろんマーク・レビンソンには及ばないにしろ、プリメインであるという枠をほとんど意識せずに聴けた。
 デュカスの「魔法使いの弟子」で、オーケストラがフォルティシモになって突然音が止んでピアニシモに移る、つまり魔法使いの弟子が呪文をとなえて、箒に水を汲ませているうちに、箒が水を汲むのをやめなくなって、ついに箒をまっぷたつに割ったクライマックス、そして一旦割れた箒がムクムクと起きあがるコントラファゴットで始まるピアニシモの部分の、ダイナミックレンジの広さ。試聴に使ったフィリップス盤では、この部分が素晴らしいダイナミックスと色彩感をもって、音色の微妙な変化まで含めて少しの濁りもなく録音されている。また、菅野録音の「ザ・ダイアログ」冒頭のドラムスとベースの対話。この二枚とも相当にパワーを上げて、とくに「ダイアログ」ではドラムスが目の前で演奏されているかのような感じが出るほどまで音量を上げて楽しみたいのだがこれはアンプにとってたいへんシビアな要求だ。だがそのどちらの要求にも、Pm8はプリメインという枠をそれほど意識せずに聴けた。
 初期のサンプルより音がこなれてきているのだろう。最初にこの製品を聴いた印象では、華麗な、ややオーバーに言うと音が少々ギラギラする傾向が感じられ、それがいかにも表だって聴こえた。しかし今回聴いたかぎりでは、それらがほとんど姿を消し、一種しっとりした味わいさえ聴かせた。
 バッハのヴァイオリン協奏曲では、フランチェスカッティのヴァイオリンは相当きつい音で録られているため、本質的にきつい音のアンプだとこれが強調されてしまうが、Pm8は弦の滑らかさ、胴鳴りの音もかなりよく再現した。
 中間アンプのバイパス・スイッチをもつが、このスイッチをオン・オフしてみると、バイパスした方が音の透明度が増し、圧迫感、混濁感が減るようだ。こう書くとその差が実際以上に大きく感じられそうだが、バイパスすると前述した点が心もち良くなるという程度の違いでしかない。内蔵MCヘッドアンプは、オルトフォンMC30のように出力の低いカートリッジだと、いくぶんノイズは増えるものの、音質的には十分実用になる。
 総合的には、同価格クラス、あるいはもう少し高価なセパレートアンプと比較しても十分太刀打ちできる、あるいは部分的には上廻っているプリメインといえるだろう。

#4343はプリメインアンプでどこまで実力を発揮するか、価格帯別にサウンドの傾向を聴く

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 本誌51号の読者アンケート(ベストバイコンポーネント)の結果をみるまでもなく、JBL♯4343は、今日の輸入スピーカーの中でも飛び抜けて人気の高い製品だといえる。愛好家の集いなどで全国各地を歩くにつけて、行く先々のオーディオ愛好家、あるいは販売店などで話を聞くと、この決して安いとは言えない、しかも今日の水準では比較的大がかりな構成のスピーカーとしては、異例な売れゆきを示していることがわかる。それだけ多くの人達に理解され支持されているスピーカーだといえるだろう。
 最近、ある雑誌の企画で、音楽評論家の方々と、内外のスピーカーを数多く聴くという機会をもった。この企画に参加した各分野の方々がいろいろなスピーカーを聴き比べた上で、♯4343にはほとんど最高といってよいくらいの讚辞がよせられている。この一例からも、♯4343はあらゆる分野のあらゆる聴き方をする人達を、それぞれに説得するだけの音の良さを持っているといえるだろう。販売店などでよく聞く話だが、夫婦づれで来た、オーディオにはなんの興味もないだろうと思われる奥さんの方が、♯4343WXを見ると「これすてきなスピーカーね」と気に入ってしまうとか、歌謡曲や演歌のファンまでが♯4343の音の良さに理解を示す。あるいはオーディオに相当のめり込んだ、キャリアの長い人が聴いても、やはり鋸スピーカーは良いという。これほど広い層から支持されたスピーカーは、過去、歴代の高級スピーカーの中では例外的といえるだろう。例外的とはいったものの、それは何もこのスピーカーが高級機の中では特異な存在というわけではなく、むしろ、かつて♯4343が出現する以前の大型の高級スピーカーは、周波数レンジ、フラットネス、音のバランス、解像力、そして見た目のまとまりの良さ等々、いろいろな面から見てそれぞれかなり強い個性を持っていた。それだけにある特定の層に好まれる版面、どうしても好きになれないという反対意見を持つ人が多かったのも事実だ。しかし♯4343にはそういった意味での強烈な個性がないところが、おおぜいの人達から好まれる理由といえるのではないだろうか。
 これだけ日本国中にひろがった♯4343ではあるが、いろいろな場所で聴いてみて、それぞれに少なくとも最低水準の音は鳴っている。従来のこのタイプのスピーカーからみると、よほど間違った鳴らし方さえしなければ、それほどひどい音は出さない。これは後述することだが、アンプその他のパーツがかなりローコストのものでも、それらのクォリティの低さをスピーカーの方でカバーしてくれる包容力が大きいからだろう。反面、♯4343の持っている音の真価をベストコンディションで発揮した時の素晴らしさ。一種壮絶な凄みのある音を鳴らすことも可能でありながら、チェンバロやクラヴィコードなどといったデリケートな楽器の繊細さを鳴らすこともでき、音楽のジャンルを意識する必要なしに、それぞれの音楽の特徴をひきだしてくれるところにある。やはり名器といってよいと思う。
 ところで、♯4343のクォリティ的な可能性については、それを今日考えうるかぎり、最高にひき出す手段はいくらでもあり、その一つとして、マーク・レビンソンのアンプ群を使い、とくにパワーアンプはML2Lを6台、そのうち4台は2台ずつのブリッジ接続で低音用として使い、あとの2台は高音用として使うバイアンプ方式が考えられる。このバイアンプ方式についてはすでに、新宿西口にある「サンスイ・オーディオセンター」で公開実験をおこない、本来ならその実験結果を本号でリポートすることになっていた。しかし諸般の事情により、同じような実験をわたくしのリスニングルームでもう少し入念にすることになり、今回は少し切り口をかえて♯4343を研究してみようと思う。
 前述したように、♯4343というスピーカーは、それ自体が、スピーカー以外の周辺機器のクォリティが少々低くてもカバーしてしまう包容力のようなものをもっている。そこで今回は、♯4343からどこまで性能を限界を抽き出せるかということのちょうど反対の、組合わせるアンプリファイアーの価格をどこまで落としたら、というと語弊があるが、つまり、♯4343をいろいろなグレードの比較的ローコストのアンプで鳴らした場合、ごく高級なアンプと比べるといったいどのような違いが出てくるのかを実験してみようと思う。かなりローコストのアンプでも♯4343の特徴をはっきり出すか出さないか、そこに焦点をあててみることにした。
 ♯4343を前提とした場合、まず当然のようにセパレートアンプを組合わせることが考えられる。しかし今回のテストからはセパレートアンプは除外し、プリメインアンプの中から比較的最近の製品を選び、なおかつその中から試聴によって選抜した製品によってテストしている。試聴にはわたくしのリスニングルームを使っている。この部屋での♯4343のセッティングに関しては、わたくし自身このリスニングルームでの体験がまだ浅いので、最終的な置き方が決まっているとはいえない。ただし、♯4343のセッティングの基本パターンともいわれる、ブロックなどの台などにのせて、背面を壁から離して置く方法とは全く逆に、背面は硬い壁に近接させて、台などは使わずに、床の上に直接置いている。おそらく、一般のオーディオ愛好家が♯4343のセッティングとしてイメージしている置き方とは違うが、このリスニングルームでは右の状態で一応満足しうるバランスを得ている。一般にいわれているのとは全く異なったセッティングだが、こうすることによって、♯4343の弱点、あるいは♯4343に好感を持たない人には欠点としてさえ指摘される、低音の鳴り方の重さ、低音のほんとうに低いところが伸びずに、中低音域の量感が少し減る反面、あまり低くないファンダメンタル音域で一ヵ所重くなったままその下で低音がスパッと切れてしまったように聴こえやすいという点が、比較的救われているといえるだろう。わたくしにはかなり低いところまで低温化伸びているように聴きとれる。この同じ条件で、別項のためのセパレートアンプの試聴をおこなったが、その時たまたまIVIEの周波数分析器でチェックしてみたところ、菅野沖彦氏録音の「ザ・ダイアログ」のドラムスの音が32Hzで109dBの音圧に達していることが確認できた。
 わたくしの♯4343WXは、このリスニングルームで鳴らしはじめてから約6ヵ月たつが、ある程度鳴らし込んでから細かな調整に移るという目的から、トゥイーターの取り付け位置の変更もしていないし、レベルコントロールの位置もすべてノーマルポジションのままだが、ほぼ満足すべきバランスで鳴っている。
 試聴に使用した機材について補足しておくと、テストするアンプ自体はプリメインアンプクラスであるにしても、それ以外のパーツに問題があってはいけないと思い、わたくし自身が納得のゆくものを使用した。プレーヤーは、ここ数ヵ月の間いろいろテストした中で、音質の点で最も信頼をよせているマイクロの5000シリーズの糸ドライブターンテーブルに、オーディオクラフトのAC3000MC(アーム)を組合わせたものを使った。カートリッジはオルトフォンMC30とEMT/XSD15をメインに、その他代表的なカートリッジを参考のために用意してある。MC型カートリッジの昇圧には、マーク・レビンソンJC1ACを2台、モノーラル・コンストラクションで片チャンネルにつき1台使うという、いささかマニアックで贅沢な使い方をしている。プログラムソースはレコードで、代表的なものは別表に示しておくが、この他にも鳴った音から触発されて、思いつくままに相当数のレコードを聴いている。
 テストしたプリメインアンプは、価格的には最高が25万円、最低が5万9千8百円。これをランク別に分けると、①20万円以上25万円までの、いわばプリメインの最高価格・最高水準のグループ、②15万円前後の高級機、③10万円前後の製品、④6万円をはさんだ価格グループ、にせいりすることができる。今日市販されているプリメインアンプを広く展望し、その中で優れた製品を選び出してみると、まず6万円近辺に優秀な製品が集中している。このグループから性能の差をはっきりつけるためには、少なくとも8万円から10万円前後の製品でなくてはむずかしい。さらにもう一段性能の向上をはかるのなら、15万円クラスにしなくては意味がなく、その上は20万円以上になる。わたくしの昔からの主張だが、明らかに性能の差をつける──性能を向上させよう──としたら、価格体で最低でも√2倍の差をつけたい。本当に性能が向上したといえるのは、実は、2倍以上の価格差がつかなくてはいけない、というのがわたくし流の理論だが、この線にそってプリメインを分けてみたわけだ。これ以外のランクの製品も確認のために聴いてはみたが、結果的には、その前後の製品に比べて、必ずしも性能の差が目立つということもなかった。そこで今回取り上げた8機種に絞って話を進めることにしたい。
 試聴に入る前に、アンプの最高水準をつかむという意味で、マーク・レビンソンのLNP2Lの最新型と、ML2Lのこれもごく新しい製品の組合せを聴き、その後、プリメインの高級機から順次試聴していった。

●試聴に使用したレコード一覧
デュカス 交響詩「魔法使いの弟子」
ジンマン指揮ロッテルダム・フィルハーモニー(フィリップス X-7916)

ラヴェル 歌曲「シェラザード」
デ・ロスアンヘレス(ソプラノ) プレートル指揮パリ・コンセルヴァトワール管弦楽団(米エンジェル 36105)

バッハ ヴァイオリン協奏曲第2番
フランチェスカッティ(Vn) パウルムグルトナー指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(独グラモフォン 2530242)

デューク・エイセス・ダイレクトディスク
(東芝プロユースシリーズ LF95015)

孤独のスケッチ/バルバラ
(フィリップス FDX-194)

ザ・ダイアログ
猪俣猛(dr)荒川康男(b)他(オーディオ・ラボ ALJ-1059)

テクニクス SU-V6, ST-S5

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプのジャンルでは、パワーアンプのB級動作の問題点であるスイッチング歪を軽減する目的で、B級動作のメリットである効率の高さをもちながら、本質的にスイッチング歪を発生しないA級動作と同等の低歪とする各種の新回路が開発され各社からその製品化がおこなわれていることが特に目立つ傾向である。
 テクニクスでは、さきにA+級と名付けられた新回路を採用した高級セパレート型アンプ、テクニクスA2を発売し、これにつづいてニュークラスAという、異なった発想による新回路を採用したプリメインアンプSU−V10を開発したが、今回は、最も需要層の多い価格帯に、このニュークラスA回路を採用したSU−V6を登場させ、低スイッチング歪を軽減しようとするテーマは、早くもプリメインアンプの分野にまで及び、今後とも各社から、それぞれの構想による低スイッチング歪軽減対策を施した回路を採用したプリメインアンプが、低価格帯と高価格帯に重点を置いて発売されることが予測できる。なお、ST−S5はSU−V6とペアとなる薄型にデザインされたクォーツシンセサイザーFMステレオチューナーだ。
 SU−V6は、B級動作の高い効率とA級動作に匹敵する低歪という、量と質を両立させたニュークラスA動作のパワーアンプを採用している点が特長である。ここでは、B級動作のスイッチング歪の原因となる出力トランジスターのON・OFF現象をシンクロバイアス回路で防止する方法を採用している。この回路は、パワートランジスターの入力にダイオードを使い、ダイオードの半導体としての特性を利用して信号をカットオフし、別のダイオードからバイアスを与えてパワートランジスターのカットオフを防止するタイプで、一種のダイオードスイッチング方式と考えられる。
 イコライザー段は、初段に超低雑音デュアルFETを差動増幅に使うICL構成で、アンプ動作モードスイッチをストレートDCに切替えるとフォノ入力からスピーカー端子までカップリングコンデンサーのないDCアンプとして使用可能であり、イコライザーのゲインを切替えてダイレクトにMC型カートリッジが使える設計である。
 電源回路は、電磁誘導歪みを防止するテクニクス独自の電源部とパワーアンプの出力段を一体化したコンセントレーテッドパワーブロックで左右チャンネル独立型2電源方式である。
 ST−S5は4連バリコン相当のバリキャップ使用フロントエンドをもち、6局までのプリセットが可能。RF系までを含めたDC増幅、DC・MPX回路などが特長。
 SU−V6は、やや音色は暗いが重量感のある低域とクッキリとシャープに粒立ちコントラスト十分な中高域がバランスした従来のテクニクストーンとは一線を画した新サウンドに特長がある。こだわらずストレートに音を出すのは新しい魅力。

パイオニア A-900, A-700

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアのパワーアンプのスイッチング歪を軽減する方式はノンスイッチング方式と名付けられ、この方式を採用した製品は、米国市場を優先して発売されているが、A級動作に類似した名称をつけていない点は、このあたりの問題に対して特にシビアな米国市場を考慮した結果でもあろう。
 A900は、サーボ回路方式を導入したMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、それにパワーアンプはカップリングコンデンサーがないDCアンプであり、別に独立したトーンアンプの4ブロックで構成する標準型ともいえるブロックダイアグラムをもっている。
 MCヘッドアンプは入力感度0・1mVで、負荷抵抗切替付。インピーダンスが大幅に異なっている各種のMC型に対応可能であり、別系統にMCポジション検出回路を備え、セレクタースイッチがMCの位置にあるときは、電源ON時にヘッドアンプ回路が安定化するまで約15秒かかるため、特別にミューティング時間を15〜25秒遅らせ、クリックノイズの防止をはかっている。
 イコライザーアンプは初段FET差動カスコードブートストラップ負荷とし、カートリッジ実装時の低歪化をはかり、2段目差動と3段目との間でカレントミラー差動回路を構成し、偶数時歪率を打消す設計。
 トーンアンプは、初段をFET差動カスコードブートストラップ負荷とし、初段と2段目でカレントミラー差動回路とするNF型で出力にはカップリングコンデンサー使用のAC構成でパネル面のラインストレートスイッチを切替えるとトーンアンプと出力部のモードスイッチ、バランサーまでを含みバイパスできる特長がある。
 パワーアンプは、基本構想はイコライザーアンプと同様な設計で、ノンスイッチングブロックを備えたDCサーボ型である。
 電源部は、各増幅部毎に専用安定化電源を置き信号の相互干渉を抑えるダイレクトパワーサプライ方式で左右独立型である。
 信号系の切替スイッチは、リモート操作型を多用し、パネル面での操作は周囲が照明された角形プッシュスイッチで、メモリー回路を内蔵し、最終便用状態を記憶し電源プラグを抜いても最低3日間はメモリー状態を保っている。
 A700は、A900同様の4ブロックのアンプ部を備えたシリーズ製品で、MCヘッドアンプがDCサーボ型でなくなり、フロントパネルの操作がフェザータッチスイッチでないことを除き、ほぼA900と同じ特長を備えた新製品である。
 A900は、音の粒子が全帯域を通じて細かく、滑らかであり、かつシャープであることに特長がある。低域は柔らかく豊かで音色が軽く、高域も自然に伸びている。音場感は前後、左右とも十分に拡がり定位もクリアーである。音の反応は速い。
 A700は、間接音が比較的に豊かな音で、滑らかで、細やかな表情が特長。

ラックス L-58A

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 先般、新発売されたプリメインアンプL309Xを従来からのラックスサウンドを継承したトップランクの製品とすれば、今回、続いて発売されたL58Aは、ラックスの新世代を意味する新回路設計とサウンドをもつ、新しい展開の第1作である。
 外観上で、伝統的な木枠をもつフロントパネルは見慣れた雰囲気であるが、ファンクションスイッチは、従来のレバー型を多用するタイプから、角型に縁どられた横方向に動く小型のレバー型に変更されたため、全体の印象は相当に異なったものとなっている。
 外観の変化に呼応するように回路構成も新しいチャレンジが感じられる。ブロックダイヤグラム的には、MC型カートリッジのインピーダンスによりゲインが20〜28dBに変化する利得自動調整型MCヘッドアンプ、FET差動入力でカスコードブートストラップ回路採用で42・4dBの現在の標準からは利得が高いイコライザーアンプ、前段に利得0dBのFET入力でカスコード接続ソースフォロア一回路のバッファーアンプをもち、回路構成を同じくする利得0dBの湾曲点3段切替のラックス型トーンコントロール、全段プッシュプル構成で出力段にMOS型FETを使い、無信号時に300mAのアイドリング電源を流しスイッチング歪を除いたラックス独自のスタガ一方式により、出力10Wまでは純A級動作をするスタガー方式A級動作のパワーアンプの5ブロック構成で、バッファーアンプとトーンアンプは、フロントパネルの小型プッシュスイッチでバイパスが可能である。
 設計上のポリシーは、基本的にアンプのNFBをかける以前のオープンループ利得を抑え、NFB量を適度に保つ、ローNFB設計がポイントである。このためには裸特性の優れたことが条件となるが、例えばパワーアンプでは、オープンループ利得80dBで定格出力時の歪率0・2%、NFBをかけた後の利得は43dB、歪率0・005%になっている。これが従来の設計ではオープンループ利得が100〜120dB、NFB後の利得が32dB程度とのことである。
 また、NFB量を少なくしたときに生じやすい低域の音質劣化を改善するために、一般のNFBの他に、DC・NFBを併用するデュオβ回路が採用され、超低域成分を抑え低域の分解能を向上している。
 さらにイコライザーアンプでは、低域の裸利得を上げ、高城と低域のNFB量の差を少なくし、TIM歪の低減を図り、イコライザーアンプの低域カットオフ周波数を5Hzに設定している。
 L58Aは、低域から高域までフラットに伸びきった広い周波数レスポンスとクリアーに引締まった、クッキリと粒立つ音が特長であり、従来の滑らかで柔かく、それでいて豊かなラックストーンとは全く異なる音だ。力強くゴリツとした低域と適度に輝やく中高域は巧みにバランスし、新しい実体感のある魅力の音を聴かせる。

サンスイ AU-D907

サンスイのプリメインアンプAU-D907の広告
(スイングジャーナル 1979年7月号掲載)

AU-D907

ビクター A-X5

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターからは、先きにBクラス動作に匹敵する高い電力効率とAクラス動作と同等のリニアリティをあわせもつパワー段と、半導体のもつ非直線性を改善した低歪率ドライバー段を組み合わせた、新開発のスーパーAサーキットを採用したステレオパワーアンプM7050が発売され注目を浴びているが、今回この新回路をプリメインアンプに導入した2機種の製品が新発売された。
 A−X5は、同系のデザインで100W+100WのパフォーマンスをもつA−X9のシリーズ製品として開発されたモデルであるが、70W+70Wのパワーをもちながら価格は1/2以下で、非常に高いコストパフォーマンスをもつことに特長がある。
 A−X9とA−X5は、パネル下側のヒンジ付パネルを閉めた状態では外観上ほとんど区別がつけがたいが、タテ長のバー型プッシュボタンスイッチの延長線上に溝が付き立体的なデザインをもつのがA−X9。これがないものがA−X5で両者を区別することができる。
 回路的なブロックダイヤグラムは、MC型カートリッジ用ヘッドアンプなしにダイレクトにMC型がゲイン切替で使用可能なハイゲインDCサーボイコライザーアンプとハイゲイン・スーパーA/DCパワーアンプの2段で構成するシンプルなもので最近ではプリメインアンプのひとつの動向となっているタイプである。したがって、TUNER、AUX、TAPEなどのハイレベル入力はパワーアンプに直接入力が加わるためSP・OUTまではカップリングコンデンサーがまったくない1アンプ構成の完全DCアンプになる。
 電源部は独立2電源・ダイレクトパワーサプライ方式と名付けられたタイプで、電源トランスの2次側を電圧増幅段用と電力増幅段用に分離して使い、各回路と直結させ広帯域にわたり電源インピーダンスを下げようとするものだ。
 機能は回路構成がシンプルであることにくらべて多機能型で、カンガルーポケット内側にイコライザー段サブソニックフィルター、TAPE−2用の入出力端子などを備えているのが特長である。
 A−X5は聴感上で十分にレスポンスが伸びきったワイドレンジ感と粒立ちが細やかで滑らかな音をもっている。エネルギーバランス的にはやや中域が薄いが、音色は明るく軽いタイプで、歪感が少ないためステレオフォニックな音場空間が奥深く拡がるのが特長である。

サンスイ AU-X1, TU-X1

サンスイのプリメインアンプAU-X1、チューナーTU-X1の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

AU-X1

ヤマハ CA-R11

ヤマハのプリメインアンプCA-R11の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

CA-R11

ハーマンカードン hk503, hk505

ハーマンカードンのプリメインアンプhk503、hk505の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

HK

ラックス L-5, L-10, L-309X, 5L15, LX38, MQ68C

ラックスのプリメインアンプL5、L10、L309X、5L15、LX38、パワーアンプMQ68Cの広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

MQ68C

テクニクス 88A (SU-8088), 77T (ST-8077)

テクニクスのプリメインアンプ88A (SU8088)、チューナー77T (ST8077)の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

SU8088