井上卓也
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ビクターからは、先きにBクラス動作に匹敵する高い電力効率とAクラス動作と同等のリニアリティをあわせもつパワー段と、半導体のもつ非直線性を改善した低歪率ドライバー段を組み合わせた、新開発のスーパーAサーキットを採用したステレオパワーアンプM7050が発売され注目を浴びているが、今回この新回路をプリメインアンプに導入した2機種の製品が新発売された。
A−X5は、同系のデザインで100W+100WのパフォーマンスをもつA−X9のシリーズ製品として開発されたモデルであるが、70W+70Wのパワーをもちながら価格は1/2以下で、非常に高いコストパフォーマンスをもつことに特長がある。
A−X9とA−X5は、パネル下側のヒンジ付パネルを閉めた状態では外観上ほとんど区別がつけがたいが、タテ長のバー型プッシュボタンスイッチの延長線上に溝が付き立体的なデザインをもつのがA−X9。これがないものがA−X5で両者を区別することができる。
回路的なブロックダイヤグラムは、MC型カートリッジ用ヘッドアンプなしにダイレクトにMC型がゲイン切替で使用可能なハイゲインDCサーボイコライザーアンプとハイゲイン・スーパーA/DCパワーアンプの2段で構成するシンプルなもので最近ではプリメインアンプのひとつの動向となっているタイプである。したがって、TUNER、AUX、TAPEなどのハイレベル入力はパワーアンプに直接入力が加わるためSP・OUTまではカップリングコンデンサーがまったくない1アンプ構成の完全DCアンプになる。
電源部は独立2電源・ダイレクトパワーサプライ方式と名付けられたタイプで、電源トランスの2次側を電圧増幅段用と電力増幅段用に分離して使い、各回路と直結させ広帯域にわたり電源インピーダンスを下げようとするものだ。
機能は回路構成がシンプルであることにくらべて多機能型で、カンガルーポケット内側にイコライザー段サブソニックフィルター、TAPE−2用の入出力端子などを備えているのが特長である。
A−X5は聴感上で十分にレスポンスが伸びきったワイドレンジ感と粒立ちが細やかで滑らかな音をもっている。エネルギーバランス的にはやや中域が薄いが、音色は明るく軽いタイプで、歪感が少ないためステレオフォニックな音場空間が奥深く拡がるのが特長である。
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