ソニーのプリメインアンプTA1120F、TA3120Fの広告
(スイングジャーナル 1969年12月号掲載)
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ソニー TA-1120F, TA-3120F
ビクター MCA-105, MCP-105, MCM-105, ICM-105M, MCT-105, CF-105
ラックス SQ503, SQ507
サンスイ AU-777D
菅野沖彦
スイングジャーナル 12月号(1969年11月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
AU777Dは、従来のAU777を改良した新機種で、信頼度の高い、高いグレードをもったアンプである。AU777はベスト・セラーと呼ばれた製品で、サンスイのトランジスタ・アンプの評価を固めたアンプだが、このD型になって、一段と音楽的にもよくなった。試聴してみても、従来、やや気になった高音域のザラザラした荒さが大きく改良されていて、より滑らかにふっくらとした音を出すようになった。そして、中音域のバンド・パス・パターンをコントロールできるトリプル・トーン・コントロール方式の採用は、ルーム・アコースティックの調整に役立つのみならず、ジャズの再生にもっとも充実性を要求される中音域のコントロールに大きな威力を発確するものだ。一般に、迫力ある音にするというと、低音と高音を増強するような傾向がなきにしもあらずだがこれは本来正しくない。低高音を増強することは、中高域をやせさせることになり、決して迫力のある音にはならず、うるさい音になる。かといって、低、高音を落して中音域をクローズ・アップさせたのでは、切角のワイドレンジが泣く。この辺の微妙なコントロールは音づくりの妙味であるが、そう簡単にはいかないものだ。このトリプル・コントロールは中音域を1デシベル・ステップで、+−5db調整できるようになっているが、これが大変上手い特性曲線に設定されていて効果的であった。決して極端な増減ではないし、選択帯域を曲線が適切で、あらゆるレコードに、まともな効果をあげることができるのである。もちろん、併用スピーカーの特性を補うこともできるし嗜好に合わせるという使い方にもつながるものだろう。
例のブラック・パネルのメカニカルなデザインと、機能的なレイアウトはかつてのAU777をそのまま踏襲している。細かい特長を捨い上げてみると、接続カートリッジ間の入力回路が二つあるが、そのうち一つは、入力インピーダンスを30kΩ、50kΩ、1100kΩの三段に切換えることができる。これは、カートリッジの出力インピーダンスのマッチングをとるという目的だが、適確なインピーダンス整合を計るという考え方から発展して、インピーダンス・マッチングによって変化する音帯の相違をトライするというマニア意欲を満たすサンスイらしい配慮であると見た。入力回路は、この他、チュ−ナー、AUX、テープ・ライン、テープ・モニターなどと豊富であり、高級プリ・メイン・アンプとしての機能をよく備えている。また、入力感度3・5mVのマイク入力端子をもっていて、喫茶店などの使用には便利だが、これがピン・ジャック端子であることは考えもの。これは是非、マイク用として一般的なミニ・ジャックとすべきであろうし、できればフロント・バネルに出して欲しかった。出力回路としては、まず、プリ・アンプ出力が、かなりのハイ・レベルであることが、マルチ・アンプ・システム発展の時には大変便利である。そして、二系統のスピーカー出力端子が扱いやすいターミナルで出ている。フロント・パネルには、20dbのミューティング・スイッチ、ハイ、ロー・カット・フィルター、ボリューム・コントロールと同軸になったレバー式バランス・コントロールなどが整然と並んでいる。いかにもマニア好みのメカニカルな雰囲気ではあるが、素人には、馴れないと、あまり整然と並びすぎていて、かえって戸惑いを感じるようだ。特に、左右独立の六つのツマミからなるトリプル・トーン・コントロールとなったので、余計にぎやかな印象を与えるのであろう。
このアンプは、価格的には中級プリ・メイン・アンプであるが、サンスイの現役プリ・メイン・アンプを代表する製品で、その再生音の品位はかなり高い。定格30W+30Wの出力は、現行商品の中では決して大パワーではないが、ジャズの再生に向く能率のよいスピーカーには十分な出力である。試聴に使ったアルテックのA7が堂々たる迫力を再現してくれたし、ブックシェルフ・タイプの数種のスピーカー・システムでも、特に不満は感じられなかった。従来のタイプの発展型だけに特に目新しさこそないが、それだけよく練られた、信頼度の高い製品だと思う。
ビクター MCA-104, MCT-104
サンスイ AU-777D
テクニクス SU-2010 (Technics 50A)
ラックス SQ707
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1969年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
SQ707というラックスの新製品アンプは、アンプの老舗ラックスが生みだした傑作である。ロー・コストの普及アンプであるが、決して安物ではない、これは、このアンプを使ってみればただちに理解できるであろう。第一、見た目にも、いかにも品位の高い音が出そうな美しい姿をしている。徹底した合理的な設計と、量産計画から割り出されたために、この価格がつけられたものと思う。数多くの商品を見馴れた眼には一目で、この製品の優秀性がピンとくるであろう。安物とは安物しか作れないメーカーが作るものらしく、高級機を作る技術と体験をもったメーカーがつくるロー・コスト商品には自ずから、その品位が滲み出るものであることを敢えてくれる
SQ707の機能は、プリ・メイン・アンプとして必要なすべてを備えていて、一般の使用上、まったく不便を感じない。入力側からみていくと、フォノ、チューナー、テープデッキ、補助入力の4端子が用意されていて、フォノの入力感度は2mV、その他は120mVとなっている。出力側は、録音用のライン出力と、3ヘッド・タイプのテープレコーダーのモニター再生端子、そして2系統のスピーカー出力端子とヘッドフォン・ジャックがそろっている。コントロール機構には両チャンネル独立の高、低トーン・コントロールに、高低の湾曲点を変更するスイッチ、18dbのミューティング(アッテネーター)スイッチ、ABスピーカー切換スイッチなどがラックス特有のパネル・レイアウトですっきりと並んでいる。パネルはホワイト・ゴールドの瀟洒な色彩をヘアー・ライン・フィニッシュにした美しい輝やきをもつ。ケースはABS樹脂使用のユニークなもので、合理性はもちろんのこと、下手な鉄板加工より完成感が強く枠である。操作面によく練られているし、スイッチやボリューム類は専門メーカーのラックスらしく実にタッチがよく、スムーズであった。そして、その再生音は、こうした外観上の特長と共通した、あるいはそれらを上廻る質の高いもので、まるで澄みきった深い水を見るように、濁りや汚れのない、そして丸やかなものだ 実にふっくらと、独特のプレゼンスといいたいほど軽やかに空間が再現されるのである。この特長は、コンテンポラリー・レコードのように、ステレオフォニックな空間性のある録音により効果的で、ブルー・ノートやインパルスのようなマルチ・モノーラル的な録音では、やや丸味がついて物足りないという印象になるかもしれない。連続出力17Wという表示に物足りなさを感じられる人もいるかもしれないが、能率のよいスピーカーを使えば、家庭用としてパワー不足は感じられず、SJ試聴室のアルテックA7が、ガンガン鳴る。我家では、サンスイのSP1001やクライスラーのCE1ac、またオンキョーのFR12というような数種のスピーカーをつないで、鳴らしてみたが不足は感じなかった。もちろん大きな部屋で、大音響を期待すると無理も生じるが、10畳ぐらいの部屋までなら十分いける。まして4・5畳〜6畳での使用にはまったく心配はいらないだろう。名士の手すさぴといったらメーカーに怒られるかもしれないが、このアンプには音にも、外観にも、そうした余裕が滲み出ていて無理な気張りをまったく感じさせないのである。34、000円という価格も、ユーザーにとって、それほど気張りを要しないだろうし、本誌の選定新製品として名実共に推奨にあたいする製品である。
このアンプから出る素直な音は、この製品を初めて使われる多くのオーディオ入門者に、初めから趣味のよい、音の規準を与えてくれると思う。これはいい変えれば、市販製品にあり勝ちな、ちょっと聞きには強い印象を与える、辛しや味の素が度ぎつくきいていないということである。ロー・コストの普及アンプの代表的地位を占める製品になるだろう。
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