オンキョーのプリメインアンプIntegra 714の広告
(スイングジャーナル 1970年5月号掲載)
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オンキョー Integra 714
サンスイ AU-999
岩崎千明
スイングジャーナル 5月号(1970年4月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
サンスイから、やっと待望の大出力アンプAU999が発表された。
やっと、というこの言葉をもっとも痛切に感じているのは、このアンプの常用者になり買い手となるべきマニアの側ではなくして、おそらくサンスイというメーカー自身ではないだろうか。
サンスイがブラック・フェイスという独特のメカニカルなデザインを打ち出したトランジスタ・アンプのPBシリーズ、AU777を頂点として爆発的なベストセラーを続けたのは、今を去る3年前であった。このAU777の売れ行きは、まさに伝説として残るほど驚異的であり絶対的であった。高級マニアにトランジスタ・アンプの良さを納得させ、トランジスタ・アンプの愛用者を確実に個定化したのもこのサンスイAU777の大きな業績といえるだろう。それまでは、トランジスタ・アンプは音が良いという以外の何かの理由で使用するだけであったのである。
AU777の驚くべき人気に刺激されたトリオ、さらにパイオニアなどのステレオ専門メーカーが、このAU777の後を続けとばかり、ぞくぞくと一連の製品を充実させて今日のトランジスタ・アンプ全盛期を迎えている。今では、特にことわらなければ、アンプといえば、トランジスタであるのが常識である。それは、そのままトランジスタ・アンプの性能の向上と現在の優秀性を物語るのである。そして、市場のアンプの充実が著しい最近の情況下に於いては、定評のあったAU777も多くのライバル製品にその地位をおびやかされる現状である。AU777は中音コントロールを加えAU777Dとして諸性能を充実させたが、ライバルメーカーのより大型のアンプ群を相手に、ベストセラーの伝統に輝くサンスイ・PBシリーズの象徴製品たるには物足りなくなって来たのは事実である。それをもっとも強く感じていたのが、かつての栄光を意識するサンスイと言うメーカー自身であって何の不思議があろうか。
その山水が逐に他を圧する本格的大出力アンプを出したのである。
AU999は単に大出力というだけでなく、PBシリーズの最高級、いやそれ以上に「象徴」たるにふさわしい幾多の「内容」に充たされている。
その最大のポイントは、なんといっても全段直結パワー・アンプという点であろう。最近の高級トランジスタ・アンプのひとつの流行がこの全段直結である。JBLのアンプSE400の改良型によって初めて採り入れられたこの回路方式は、トランジスタ回路によってのみ実現の可能な、いいかえれば、トランジスタにふさわしい回路方式であり、これは初めカウンター回路のために開発された直流増幅器であった。高速カウンター回路への発達が、そのままオーディオ用としてもっとも理想的な回路方式を創ることになったとしても、少しも不思議ではなく、トランジスタとその回路の発展として考えればごく当然な結論であった。ハイ・ファイ用として終局的に理想とされるのがこの全段直結であり、これを製品化したのがJBLであった。さらにサンスイがJBLの日本総代理店を兼ねていることから、サンスイのアンプにJBLの息のかかった全段直結が応用されるのもまた当然であり、サンスイならそれが最良の状態で活きてくることも想像できる。
サンスイとJBLの結合はすでにスピーカー・システムにおいても見られるが、アンプにもこの優れた成果が遂に通せられたと見るべきであろう。
このことはAU999の音質を聞けばだれしもが納得するのではないだろうか。力強く、あくまでも豊かな低音、輝かしい中高音、そして冴えわたる高音のひびき。JBLのアンプとの違いはより充実し厚みと力を増した中音域に
あろう。それはテナーのソロを聞くときに強く意識させられ、中音コントロールをも備えるAU999にとって大きなメリットとなろう。
AU999のもうひとつのポイントは2台のデッキにより、テープからープの録音再生が容易な点であり、これは今日のテープ隆盛期においてのマニアには大きな魅力といえよう。
全段直結と名を冠した各社の高級アンプの中でも本命とみられるこの50/50Wの大出力のアンプが85、000円と割安なのもファンにとってはかけがえのない製品といえるだろう。
ラックス SQ507
ラックス SQ707
テクニクス SU-50A (Technics 50A)
オンキョー Integra 714
ダイヤトーン DS-34B, DA-44UA
Lo-D IA-1200, SR-300, SR-600
オンキョー Integra 613
ビクター MCA-105, MCT-105
ニッコー TRM-1200
オンキョー Integra 714
ラックス SQ707
ビクター MCA-105
菅野沖彦
スイングジャーナル 4月号(1970年3月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
再生装置の機能は最近ますます充実してきた。特に、再生系のコントロールをあずかるプリ・アンプの操作機構と多目的機能の充実ぷりには目を見張るものがある。その中でも、今月の新製品、ビクターのMCA105プリ・メイン・アンプは万全の機能をもったマルチ・ユース・システムの中核をなす製品といえるだろう。このプリ・メイン・アンプには、きわめて豊富なユティリティが備わっているが、その性能もプリ・メイン・アンプというカテゴリーが持つべき充分な優秀性をもっていると思う。現在、市場にあるアンプをタイプ別に見れば、いわゆるステレオ・レシーバーと呼ばれるチューナー、プリ・メインの一体型、そしてプリ・メイン型、さらにセパレート型というプリとメインが独立したものの3種類に大別出来るが、これらの商品が、そのタイプの本質的かつ必然的性能をもっているものばかりとは限らない。つまり、ステレオ・レシーバーは、すべてが一つにまとまっているというのが最大の特長、プリ・メイン型は、オーディオ専門アンプというのが本質的な性格、独立型は、さらに専門化した特長をもつものだから、それぞれが用途に応じる特徴というだけではなく、性能的にも自ずと差があると思うのが当然である。しかし現状はさにあらず、プリ・メイン型といっても、ステレオ・レシーバーからチューナー部だけをのぞき、あとは全く同一クラスのものもあるし、独立型といえどもプリ・メイン型をただ二分して、それぞれに電源部をもった単品としたものも多い。これは市場性、ユーザーの要求に応える適応性などから生れたことで、別に問題とするにはあたらないが、初めてアンプを買う人がどのタイプを買ったらよいかと迷うことも事実である。したがって、私個人の意見としては、これらのタイプのちがいと性能のちがいを結びつけ、あまりに高級なプリ・メイン部をもつ高価なレシーバー、逆に、性能的に物足りないプリ・メイン型や独立型は人にすすめないことにしているのである。そこで、このMCA105に話をもどすが、このアンプのもっているプリ・メイン部の性能は、そうした私の考え方でのプリ・メイン型としても立派なものだと考えるのである。音質は大変マッシヴで迫力のあるもので、ダイナミックな聞きごたえがあるし、スムースに余裕のあるパワーが得られる。ミュージック・パワーは8Ω負荷で80W、実効出力は同負荷だと32W×X2という値だが!やや能率の低い小型ブックシェルフ・スピーカーを、内蔵のSEAでブースト・コントロールをして鳴らしても充分な力がある。SEAは今さら説明を要しないだろうが、帯域分割型のイコライザーでビクターでは音場補正という打ち出し方をしているように、細かな山谷を自在に調整して好みの音質を得ることのできる便利なもの。このアンプでは60、150、400、1K、2K、4K、6K、15Kという7分割で、±10dBのコントロールができるが、60Hzがスイッチで40Hzと切換えられるので実用上は8素子のSEAとしての効力をもっている。コントロール・レバーの動作やタッチはきわめてスムースで使いよい。入力回路は豊富だし、半固定レベル調整がつき、各種プログラム・ソースの同時比較試聴などには大変便利。そして、大きな特徴はピンク・ノイズ発生器が内蔵され、音色パターン認識による音質調整や、位相チェックなどに利用できるのは、マニア気質を把んだ心憎いセンスである。そもそも、このプリ・メイン・アンプは、♯105シリーズの一つとして発売されたものたが、統一デザインのシステム製品がチューナー、チャンネル・フィルター、パワー・アンププリ・アンプというようにずらりと並んで、多種類の構成ができるようになっている。従って当然、マルチ・アンプ・システムやマルチ・チャンネル・ソース・システムというバラエティに発展させられるわけで、70年のアンプにふさわしい製品だ。
ダイヤトーン DS-22B, DA-33U
テクニクス SU-50A (Technics 50A)
オンキョー Integra 714
サンスイ AU-999, TU-999
オンキョー Integra 712
岩崎千明
スイングジャーナル 3月号(1970年2月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
コンピューター万能の時代である。コンピューターをアンプの設計に活用した、という時代の先端をそのまま商品とした強力なアンプがオンキョーから発売された。
ハイ・ファイ業界の眼れる獅子といわれた関西の大型専門メーカー大阪音響は、すでにマルチ・チャンネル・アンプ・ステレオ・シリーズで一躍業界でフット・ライトを浴びる存在となって一年。お手のもののハイ・ファイ用スピーカーを基盤に着々とステレオ専門メーカーの地盤を確固たるものにしつつある。コンポーネント・ステレオが流行のこのところ、すでに発表以来高性能をかわれているスピーカー・システムE83AやF500のスピーカー陣にいよいよアンプが加わることとなったのである。
結論から申し上げると、このアンプ群、いかにも百獣の王にふさわしい大型メーカーの作り上げたアンプである。
初めてのアンプ製品ながら、じっくり時間をかけて、ベテラン技術スタッフがガッチリと取組んで完成したにふさわしい、手ごたえのある本格的高性能を秘している。ただ欲をいえば、もう少し商品としての魅力がほしい。しかし、やはり専門メーカーらしくオーソドックスなデザインになっている。同じ関西の非常に手堅いアンプメーカーL社の商品に対する考え方と同じものをデザインに感じさせる。
ハイ・ファイ専門メーカーとかステレオ専門メーカーといえるメーカーは決して多くはない。オンキョーはそういう数少ないメーカーであり、業界で屈指の規模の大型メーカーである。
カラー・テレビまで自社の技術で作り出し得る高度の電子回路技術力は、アンプ・メーカーではチューナーで名の通っているT社がわずかにこのオンキョーと匹適する程度であろう。
テレビに対するパルス回路的考え方が、アンプの低域特性に応用されて、コンピューターの出動にまで発展したものであろう。アンプの低域時定数の理想的な決定に複雑で面倒な計算に計算機を応用したという。そして、もうひとつの理想的な回路として、このところにわかに注目されてきている出力コンデンサーレス、OTL回路を含む全段直結アンプ方式を、すでに検討を終り、オンキョー・アンプの最高級機種としてインテグラ701を同時に発しているのである。ただ701は全段直結とハイ・パワーのためにかなりの高価な値段で一般の若いマニアには手がとどきかねると申しておこう。
インテグラ701を最高ランクとして712、713、714を除いてまったく同じといってよいパネル・デザインである。
最近のアンプの各社の製品を見ると、マルチ・アンプ方式に対する配慮がにじみでているが、オンキョーの場合も同時に発表されたディバイダー・アンプとパワー・アンプを組合せてマルチ・アンプシステム化ができる。しかし、このマルチ・アンプ・システムは非常にレベルの高い音楽ファン層を意識していることがわかる。きわめて周到に設計されており値段も安いものではない。これでもうかがわれるようにオンキョーのアンプはかなり高級マニアを狙ったものだ。いまは、珍しいものではない周波数切換付きトーンコントロールも、親切な配慮であるし、よけいなアクセサリー回路も欲ばっていない。つまり非常にありきたり、オーソドックスな設計基本方針にもとづいて製品化されたものであることがわかる。
特徴のないデザインもそれの現われであろう。ただこのあたりまえな衣の内側は非常に充実しており、それは712において13kgという超重量にも見られる。おそちく、胴大な電源回路が同クラス製品中ずば抜けた迫力をもたらしているのであろう。
初級者にはきわだった魅力を聴しにくい製品ではあるが、あなたがレベルの高い音楽マニアならインテグラ・シリーズの良さを使っているうちに、本当に認めるであろう。
このアンプを実際に鳴らしたとき、この価格が妥当なものであるごとがすでに判ったことは確かである。この重低音の力強さと分厚い響、中音域のぬけのよさ、そして高音ののびはさすが大型メーカーの手がけた製品にふさわしい一流製品である。
オンキョー Integra 713
ビクター MCA-105, MCP-105, MCM-105
ラックス SQ707
JBL SA600
瀬川冬樹
ステレオ 3月号(1970年2月発行)
「世界の名器」より
プリメイン・アンプというと、ふつう一般にはプリアンプ、パワーアンプを独立させたセパレート・タイプにくらべて一段下の性能とみられることが多い。たしかに、アクセサリーの豊富さや、とり扱いの面ではセパレート型が勝るかもしれないが、音質だけに限っていえば、JBL・SA600は、第一級のセパレート型のアンプに対して、全くひけをとらないどころか、現在得られる内外のオーディオ・アンプの中でも群を抜いて素晴らしい音質を聴かせてくれるアンプなのだ。
昨年9月号のこの欄でご紹介した、同じJBあるのセパレート・タイプ、SG520型プリアンプとSE400S型パワーアンプを、それぞれ僅かずつ簡素化して一体に(インテグレートに)まとめたものがSA600で、その音質は、JBL以外のアンプからは得られない独特の、華やいで繊細な、キリッと小股の切れ上ってぴりりと神経の張りつめた、透明で、シャープで、明るく小粋な音を響かせる。
「電波科学」誌68年8月号で、海外著名アンプのブラインドテストの席上で、菅野沖彦氏が(むろんブラインドだからSA600とは知らずに)おもしろい発言をしておられる。「──にくいアンプですね。非常ににくいアンプだと思います。だけどそれが果して自分で持っていて毎日聴いて、どこかでぶつかってきやしないかと思うのです。──」
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SG520とSE400Sの組合せを常用アンプとして、3年間聴いてキたひとりとして言わせて頂くのだが、全く菅野氏の予言どおり、こういう張りつめた音に、ときたまふっといや気がさすことがある。それでいて、三日もこの音を聴かずにいると、もう無性にスイッチをいれたくなる。これは窮極の麻薬なのかもしれない。
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JBLの製品は、音質ばかりでなく物理特性が優れていることでもよく知られ、いろいろな研究所やメーカーで実際に測定してみると、常にカタログに公称している以上の性能が出ることに驚異の目を見張る。中でも、SE400SおよびSA600のパワーアンプ部分の、差動増幅器による全段直結というJBLのオリジナル・サーキット(JBLではこの回路を、Tサーキットと名づけている)は、,トランジスターによるオーディオ・アンプの将来のありかたを示唆したものとして、専門家のあいだでも高い評価を受けている。差動増幅回路以後の三段に亘る完全対称型の電力増幅回路は、原理的に偶数次の調波ひずみがゼロになるという優れたもので、直流領域から高調波領域にまで亘る広い周波数帯域と、大きな出力を極度に少ないひずみで広帯域に亘って確保できるズバ抜けたパワーバンド・ウィズスは、今に至るまでこれを凌駕するものが殆んど無いほどのものだ。この優れたパワー・キャラクターのためか、あらゆるスピーカーを接続してみて、他のアンプとのあまりにも違う抜けの良い音質に、いったい幾たびおどろかされたことだろう。
差動・直結回路をJBLが完成したのは一九六五年のことで、それから五年を経たいま、回路構成こそ違うがこの方式がアンプメーカー各社によって次々と採用され、開発されはじめたことをみても、JBLのアンプ設計技術が、いかに卓抜なものであったかと改めて思い知らされる。
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しかしこのアンプを〝名器〟といわせるのは、決して回路構成や音質の優秀さばかりではなく、そういう内容を包んでいるデザインの素晴らしさも、また特筆する必要がある。
フロント・パネル面は淡いゴールド・アルマイトで、光沢を抑えたヘアライン仕上げは、光線の具合によっては、やや若草色がかかってもみえる。そして、大胆な面の分割と、アンプの人間工学を十二分に消化した操作ツマミ類の簡潔な整理。さりげなく置かれたJBLのマークの一部がパイロットランプを兼ねて光るというしゃれたアイデア。パネルに続く両サイドのウォールナット板は、化粧張りなどしていない本もののムク板で、チークオイルでみがき込むと、だんだんと渋い深みのある濃いウォールナット色に変わってゆく。
正面や側面もさることながら、このアンプはおそらく世界一のバックシャンでもある。精度の良いアルミ・ダイカストの厚板で、フロントパネル以上にきびしい分割面を持った、完璧にヴィジュアライズされた見事な作品で、ここにスピーカー端子とACプラグ、それにヒューズ・ホルダーだけがさりげなく配置されている。実はこのパネルは、パワー・トランジスターの放熱器(ヒートシンク)で、エナージャイザーとしてスピーカー・キャビネットに組み込むためのSE408では、これはもともと前面パネルなのだと知れば、この背面パネルらしからぬ美しい処理にも納得がゆく。
そこでSA600では、入力端子のピン・ジャック類を、シャシー底面に置いている。しじゅうコードを抜き差しするといったマニアには不便このかたない場所に違いないが、このアンプそのものが、そういう目的に作られたものではない。
一九六六年に発売されたSA600も、開拓期のTRアンプの宿命か、三年たった昨年(一九六九年)、新型のSA660にモデルチェンジされて、製造中止されてしまった。660は、ほとんど黒に近いブロンズ色のパネルに大きく方向転換し、SA600の若々しい姿から、ちょっぴり分別くさく、ややふてぶてしいパネルフェイスに変わってしまった。40W×2の出力が60W×2と増加したり、左右連動だったトーン・コントロールのツマミが二重型でセパレートされたなど小改良が加えられたが、あの若さに溢れたみずみずしい音質までが、パネルフェイス同様に妙に分別くさく、つまりよくいわれる無色透明型の音質にやや近づいてしまったのは、個人的には残念なのだが、おそらく660の音ならば、菅野氏も「毎日聴いていたら、どこかぶつかってこやしないか」とは仰らないだろう。
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