Category Archives: アナログプレーヤー関係 - Page 13

アントレー ET-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 入力インピーダンスが3Ω、10Ω、40Ωの3段切替で使える昇圧トランスで、定評の高かった初期の製品を改良したのが現在のモデルである。
 聴感上の帯域は、安定感がある低域をベースに少し抑え気味の中域と輝きがある中高域から高域が適度のバランスを保つ。音色は明るく、音表情は穏やかで安定感がある。
 MC20II、FR2、DL305の3種のMC型に対し、それぞれの特徴を引出しながら適度にクッキリとコントラストの効いた、プレゼンスのある音として聴かせる。価格的にみて、現状では高価な製品ではないが、昇圧トランスの一種の基準尺度として使えるだけの信頼性の高い音は見逃せない。ET100は付属コードでバランスがとれる。

アントレー ET-15

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3Ω、40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかく軟調の低域、抑え気味の中域、硬質でコントラストをクッキリとつけるがやや粗い中高域から高域をもつ、個性の強いタイプだ。
 MC20IIとDL305ともに、トランスの個性のために大きな傾向の差が出ないが、音色が明るく細かさも出てくる点でDL305の方が良い。
 パスを含むスイッチ切替実験の結果、付属RCAピンコードを普通のタイプに交換してみると、個性の強さは大幅に減り、トランスとしては素直でキャラクターが少なく、ナチュラルな帯域バランスをもっていることが判った。昇圧トランスやヘッドアンプでは、使用するRCAピンコードで音が大幅に変わることが多い点に注意したいものだ。

20万円〜40万円未満の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 20〜40万円の価格帯になると、スピーカーシステムでいえば中型フロアーシステム、アンプでいえば中級セパレート型に相当する性能・音質をもつ製品が存在するところでややベストバイの意味からは外れた位置づけにあるプレーヤーシステムである。
 選択のポイントは、①性能と機能のバランスを重視してフルオート機を選び、イージーオペレーションで、適度にクォリティの高い音質をリラックスして楽しむか、②高性能さを優先させて大型/重量級のマニュアル機を選び、普及機では再生し得ない、ディスクにカッティングされている底知れない情報量を汲みとるか、の二者択一であろう。また、このクラスならシステムとは別にアームレス型を選び、使用するカートリッジにマッチしたトーンアームを組込んで、セミカスタム型のシステムを作るのも効率の高い選択である。当然、選択にはある程度のキャリアが必要だが、その結果には夢がある。

EMT STX20

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 EMTのTSD/XSD15専用の昇圧トランスであり、今回は当然、TSD15を組み合わせて使う。適度に伸びた重厚で力強い低域をベースに、厚みが充分にある中域と、ハイエンドを抑えた高域が、安定感のある帯域バランスを形成している。
 全体に音の芯がクッキリとし、やや硬質で線の太さが感じられる音だが、楽器それぞれに固有の振動を見事に聴かせるのはさすがだ。プログラムソースに対しては適度に反応を示し、ソリッドな魅力があるが、カシオペアのようなジャンルは不得手である。
 試みにMC20IIを使ってみる。バランス的に低域を抑えたクリアーで小柄な音になり、低域が豊かすぎてカブリ気味のスピーカーには効果的に使えそうだ。

8万円〜20万円未満の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 8〜20万円未満でも、さらに10万円、15万円は製品としての境界線である。10万円未満は、8万円未満の延長線上に位置する製品である。プログラムソースとして、ときにはディスクを使うという程度なら、8万円未満を選択したほうがよいが、やはりディスク中心のプログラムソースで楽しむのならこのクラスである。マニュアル、フルオート、リニアトラッキングアーム、ベルトドライブなどテーマも多いが、メカニズム的にもこのクラスは信頼性が高く、その音質にかなり聴きごたえする価格帯である。15万円未満は、実質的な高級モデルの存在する価格帯である。最近では高性能機はマニュアルという誤解も少なくなり、フルオート機がかなり登場している。また、リニアトラッキングアームの本来の特長が活かされるようになる価格帯でもある。20万円未満は15万円未満の延長線上で製品も少ないが、それ以上の価格帯に相当する好製品が存在する。

8万円未満の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムは、コンポーネントシステムの入口を受持つ位置づけにあるため、その選択を誤ると、アンプやスピーカーシステムにいかに高性能な製品を使ったとしても、希望する音が得られなくなる点に注意したい。8万円未満の製品といっても実質的には6万円、7万円をボーダーラインとして3つのグループに分けて考えたほうが現実的だ。6万円未満の製品はプレーヤーシステムとしてベーシックなモデルであり各社の製品競争が激しいところで、比較的優れた製品が多い。最近の傾向としては、ストレートアームを備えたフルオート型が主流を占めるようであるが、選択は必ず比較試聴をして決めたい。7万円未満はいわば標準モデルで、6万円未満とは音質的に1ランク差があるようだ。8万円未満は、30〜40万円クラスのコンポーネントシステムの組合せに使えるだけの性能・機能・音質を備え、一般的にこのクラスの製品を選べば安心して使用できる。

ダイナベクター DV-6A

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DVカートリッジ用に開発された、巻線を含む全ての線材に銀線を採用し、一次巻線はスイッチ切替でバランス型とアンバランス型に使用できるユニークな構想にもとづいた製品である。
 入力インピーダンス40ΩでDL305を使う。柔らかな低域をベースとした安定型の帯域バランスをもつことはDV6Xと似るが、音の基本クォリティは格段に高く、豊かな響きと少し硬質な中高域がバランスを保つ。音場感はナチュラルでスピーカーの奥に拡がる。
 試みにバランス型に切替えると帯域バランスはナチュラルに伸び全体にクリアーで表情豊かな音に変わる。とくに前後方向のパースペクティブがスッキリと感じられるのはバランス型の大きな特徴で、今後の発展が楽しみな製品である。

ダイナベクター DV-6X

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DV6Aのジュニアタイプとして開発されたスイッチレスの昇圧トランス。
 入力インピーダンスは3〜60Ωと発表されているために、MC20IIとDL305を使う。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかな低域をベースとした暖色系の音色をもった穏やかなタイプで、ハイエンドはなだらかに下降するレスポンスをもつようである。
 DL305は低域ベースで高域が下降気味となり、柔らかな雰囲気は楽しめるが、本来の、解像力があり爽やか音とは別のキャラクターに感じられる音になる。
 MC20IIは、DL305よりは明快さが出てくるが、やはり本来とは異なった穏やかな音になる。製品の性格からいっても、ダイナベクター・カートリッジ専用の昇圧トランスという印象が強い。

デンオン HA-1000

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DL103Dの発売とほぼ同時に開発されたセパレート型電源採用のヘッドアンプで、利得切替は24dBと32dBの2段切替型だ。
 MC20IIは、ローエンドを少し抑えたワイドレンジ型で、ハイエンドはやや上昇ぎみのバランスとなる。いわゆるスッキリとした細身のバランスで、音の表情は淡泊でサッパリとし、音を整理し凝縮して小さく聴かせる傾向がある。音場感はナチュラルでプレゼンスはかなりのものだ。
 DL305は情報量も多く、滑らかに伸びたレスポンスと、トータルバランスの優れたクォリティの高さ、やや抑制の効いた素直な表情が特徴である。全体に音楽を凝縮して聴かせる傾向は24dBの利得の方にもあるようで、一般的にはもう一段とスケール感が欲しい。

デンオン AU-340

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 広帯域、低歪をテーマに開発されたデンオン昇圧トランス中で最新の製品である。入力は、3Ωと40Ωの2種類が切替使用可能。
 MC20IIは、安定感のある低域をベースに、少しハイエンドを抑えた帯域バランスである。全体の線はクッキリと太く、楽器の基音成分をクッキリと聴かせるが、倍音の豊かさは今一歩という印象である。各プログラムには平均して対応しディスクのキャラクターを素直に引出す性能がある。
 DL305では、やや硬質でスッキリとナチュラルに伸びた帯域バランスと、細やかな粒だち、軽く明るい音色が特徴となる。全体に音を美しくキレイに聴かせる傾向があり、クォリティは充分に高いが、押し出しのよいパワー感とリアリティの面では少し不満が残る。

デンオン HA-500

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 HA1000に続いて開発された製品で、利得は24/32dBの2段切替だ。
 聴感上の帯域バランスはあまりワイドレンジを意識させないナチュラルなタイプで、適度に分解能がよく爽やかな、,軽く明るい音が特徴で、使いやすい音の傾向と思われる。
 MC20IIを32dBで使う。クッキリと粒立つシャープで整然としたやや硬質な音である。全体に力があり、音像がグッと前にせり出す傾向があり、各プログラムソースをコントラストをつけて明解に聴かせる。
 DL305を24dBで使うと、安定した低域をベースに滑らかでスムーズな音である。音場感は32dBとは逆に少し奥に拡がるタイプに変わる。試みにFR2を32dBで使う。滑らかさとメリハリが両立した快適な音だ。

デンオン AU-320

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 AU310の細身で素直な音と比較すると、低域の量感が一段と増加したことと、中高域に少し輝かしいクッキリとコントラストを付けるキャラクターがあり、トータルバランスを形成しているのが異なる点だ。
 MC20IIは、やや薄くシャープでクッキリとした音で、音場感の拡がりも一応の水準にある。しかし本来の音と比べると、中低域の豊かさが減り、中高域が硬質になっているのが判る。
 40Ωに切換えDL305にすると、全体に線が太い絵のように細部が見えず、音場の拡がりも狭くなる。DL103に替えると、低域の力強さと中高域の輝きが巧みにDL103の音にアクセントをつけて効果的に聴かせる。やはり、カートリッジとトランスの製作年代のマッチングの成果であろう。

デンオン AU-310

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高インピーダンス専用トランスでDL103、103S用に開発された製品。
 DL305では、ナチュラルな帯域バランスと、少し細身のスッキリとしたシャープな音となる。音場感はやや後方に拡がるタイプだが、ホールのプレゼンスは一応の水準で聴かれる。
 ロッシーニは適度に軽快さがあり安心して聴けるが、気をつけて聴くと分解能が不足気味で、反応も少し遅い。ドボルザークとなると中高域に少しキャラクターがあり、ホールの後の席の音だ。峰純子はやや硬めで、小柄なボーカルながらまとまりはよく、カシオペアもそれなりに聴かせる。
 DL103にすると帯域バランスがピタリと決まり、これなら納得という音だ。この変化は大変におもしろい。

コッター Mark2/TypeL

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用で、同社の他のモデルとはトランスが異なった仕様だ。
 聴感上では、トランスとしてはワイドレンジ型で、豊かな低域をベースに、適度に緻密で安定したトランス独特の魅力がある。全体に従来より幾らか穏やかになった印象のタイプP/PP/Sに比較して、クォリティの高さは格段に優れる。
 MC20IIは、暖色系の柔らかく豊かな低域をベースとした美しい音を聴かせる。この音は、ハイファイというよりは音楽を長時間聴くに相応しいタイプで、独特の抑えた光沢はコッターならではの魅力だろう。
 FR7fにすると帯域も一段と広く、力強く伸びやかな分解能が優れた音になる。音源は少し遠いが、カートリッジの性能差をかなり明瞭に聴かせるのは見事。

コッター Mark2/TypeP, Mark2/TypePP, Mark2/TypeS

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 タイプPがオルトフォンなどの低インピーダンス用、タイプPPがEMT用、それにタイプSがデンオンなどの高インピーダンス用となっている。基本トランスは完全に同じもので、トランスの多重巻線の接続を変更して使用を変えているために、3タイプ間の変換は後からでも可能である。
 タイプPにはMC20IIを使う。聴感上のf特は高域と低域をわずかに抑えた、トランスとしては標準的なタイプだ。柔らかに低域は安定感があり、中高域に独特のわずかのキラメキがある。音の分離は優れるが、ソーによれば今一歩の印象もある。音色はほぼニュートラルで、各プログラムを平均してそれなりのクォリティで聴かせる。
 タイプPPにはTSD15を使う。スケールが大きく、暖色系の豊かな音で、適度にスムーズさをもつが、TSDの本来の音を少し滑らかに角をとって聴かせるタイプである。
 タイプSにはDL305を組み合わせる。ナチュラルに伸びたf特と、耳あたりがよく抑えた光沢を感じさせる音は、大変にキレイであるが、峰純子は少しマイルドになりすぎ、カシオペアもムード音楽的になる。試みにMC20IIを使ったが、総合的にこれがベストである。

コーラル T-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 今回の特集に集めた唯一の一万円未満のトランス。
 3Ω専用モデルでMC20IIとFR7fを使う。全般的にはFR7fのスケールの大きな音がマッチするようだ。聴感上のf特は少しナローレンジ型で適度にコントラストをつけて、やや硬質の音を聴かせる。ロッシーニは生硬さがあるが雰囲気をひととおり聴かせる。低域が不足するためか演奏の店舗が少し速くなる。この点は、中高域にクッキリ輪郭をつけるMC20IIの方が、スケールは小さいが小粒にまとまりバランスよく聴ける。ドボルザークはFR7f、MC20IIともに硬質になりすぎる。峰純子、カシオペアは平均的に聴かせるが、カートリッジの個性を引出すには至らない。SN比を稼ぎ、小粒にカリッとまとまる音が特長だ。

トーレンス Reference

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 EMTの927Dstと、偶然のように殆ど同じ価格だが、EMTは、同社のTSDシリーズのカートリッジ専用であるのに対して、こちらは、好みのアームやカートリッジをとりつけられるユニバーサル・ターンテーブルシステム。レコードの音溝を針先でたどるという、メカ的なプリミティヴな方式を守るかぎり、メカニズムに十二分の手を尽したプレーヤーシステムは、それ相応の素晴らしい音質を抽き出してくれるという証明。

オーディオテクニカ AT-650

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3段切替スイッチ付のユニバーサル型トランスだ。
 MC20IIは、少し高質さはあるがスッキリとした爽やかな音で、聴感上のf特もスムーズに伸び、キャラクターの少ない穏やかな音である。プログラムソースとの対応の幅も広く、音をキレイに聴かせるのが特徴となる。
 DL305は、やや細部の描写が不足気味で、線が太く、本来のシャープさが出難い。
 AT34IIにすると中高域に少し硬いキャラクターが付くが、バランスの良さは、当然のことながらベストである。このトランスも付属コードを交換するとかなり音質が変化するため、使用にあたっては、コードを変えて使用システムに最適のバランスに調整するのが好ましい使用法と思う。

EMT 927Dst

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 いまは消えてしまった16インチ(40cm)ディスクを再生するための大型プレーヤーデッキだが、標準の30センチLPをプレイバックしてみても、他に類のない緻密でおそろしく安定感のある音質の良さが注目されて、生き残っている。大型のダイキャストターンテーブルの上にガラス製サブターンテーブルを乗せたのが927Dst。プラスチック製はただの927st。しかし音質面では、ガラス製のDstにこそ、存在価値がある。

オーディオテクニカ AT-630

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 中間インピーダンスをもつオーディオテクニカのMC型カートリッジ用の昇圧トランス。
 ややミスマッチにはなるが、MC20IIを使うと、トランスとしては適度の帯域バランスと少し細身の滑らかな音となる。ロッシーニは程良く鳴るがドボルザークは音源が遠く、大ホールの後の席で聴く感じだ。峰純子は少し細身の穏やかなボーカルとなり、雰囲気はアルが少し実体感不足だ。カシオペアは小柄になるが、一応楽しくは聴ける。
 AT34IIを組み合わせると、やはり、f特をはじめトータルバランスは一段と向上し、ややラフな面もあるが、価格から考えれば、充分な昇圧トランスらしい安定した落着いて聴ける音が得られる。この意味でも専用トランスと考えたい。

パートリッジ TH7834

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 この製品もTH7559同様に、キットとトランス単体が用意されている。本機は入力対出力の位相は同相で、一般の製品と等しい。
 MC20IIでは豊かで柔らかく、力強さのある低音をベースに、適度にコントラストをつける中高域がバランスをとった押し出しのよい華麗な音を聴かせる。ロッシーニ、ドボルザークを容易にこなし、カシオペアの強力なパンチも見事だ。これならSPUを使ってみたいところである。
 DL305では全体に線が太くなり、MC20IIとの本来のキャラクターの差が縮むようだが、音としては全体に力強くなったDL305、といった印象で、低域ベースで少し高域を抑えた安定感のある堂々としたタイプだ。
 TSD15では、ややオーバーゲインで使い難い。

オーディオニックス ADN-III

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 左右独立電源採用の利得切替なしのヘッドアンプで、入力と出力の位相が逆になる反転アンプである。
 聴感上のf特はワイドレンジ型で、音の粒子は細かく、適度にしなやかな反応と特定のキャラクターが少なく、基本的クォリティは相当に高い。
 MC20IIは水準以上のクォリティの高い音になるが、低域が少し軟調で甘くなり、中高域に少しキャラクターが聴きとれる。音像は少し引込み気味で、音場がスピーカーの奥に広がるタイプ。
 DL305は、帯域感は広いが高域の分離が今一歩不足気味で、これは中高域の硬質なキャラクターによるマスキングのせいであろう。全般的にみれば、MC20IIよりも音にフレキシビリティがあり、音を整理してキチンと聴かせるタイプだ。

パートリッジ TH7559

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 英国パートリッジ社のトランスを使った製品で、別に配線材で有名なベルデン社のコード付オールキット、および単体トランスも用意されている。
 このTH7559は,一次側入力に対して二次側出力が位相反転する、反転トランスであるのが特徴。
 聴感上の帯域バランスはナチュラルに伸びたタイプで、音の芯がクッキリと再現される少し硬質なリアリティのある音が目立つ点だ。MC20II、DL305ともに低域が安定し、ソリッドに引締まり、音に躍動感がある。この音は大変気持よく、ダイレクトディスクの峰純子のリアリティは試聴製品中でベスト3に入る見事さだ。
 TSD15はスケールは大きいが音の輪郭が甘く、少しソフトに過ぎる。これは位相関係が原因であろう。

オーディオインターフェイス CST-80E40

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 40Ω程度の高インピーダンスMC用トランスで、二次側の負荷条件は47kΩ/50pFが標準である。
E03と比較して、滑らかでキメ細かい音とナチュラルに伸びたスムーズなf特がこのE40の特徴である。プレゼンスを感じさせる中低域の残響成分を充分に聴かせるのが、このブランド共通の特徴だろう。
 DL305では、各プログラムソースを平均的にこなすが、音を美しくキレイに聴かせる特徴はE03と同じで、TSD15は全体に音が鋭角的で力強い特徴を少し抑えた誇張感の少ない音になる。試みにMC20IIを使ってみるとf特バランスが大変に優れたクッキリとコントラストのついた適度にシャープで安定した音で、これがベストだ。

オーディオインターフェイス CST-80E03

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 米国オーディオインターフェイス社の3Ωの低インピーダンスMC用昇圧トランスである。したがって、MC20IIとFR7fを使ったが、結果としては少しFR7fのほうがトータルバランスの優れた音であった。
 このトランスは、ゆったりとした余裕の低域から中低域をベースとした暖色系の豊かで滑らかな音が特徴である。音の表情は穏やかなタイプであるため、ロッシーニやドボルザークのようなプログラムソースをゆったり楽しむのに好適なタイプである。
 このトランスの豊かな中低域の残響成分はコンサートホールのプレゼンスを美しく再現し、音像は少し距離をおいてナチュラルに拡がる。しかし、カシオペアのようなプログラムソースは不得手なタイプである。