Category Archives: 筆者 - Page 148

オーディオクラフト AC-10E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産のカートリッジが、概して中〜高域にエネルギーバランスが集まりがちで、言いかえればオーケストラのトゥッティ等でやや派手やかすぎのカン高い音を鳴らす中で、オーディオクラフトのカートリッジは、中〜高域をむしろおさえこんで、低域に厚みを持たせた、国産には得がたいバランスで聴かせる。

ヤマハ NS-690II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 日本の音、と表現してきたNS690の改良型で、一段の芯の強さ、張りが加わった。特有の美しさは、さらっとして暖かく、穏やかなサウンドを特長としている。どちらかといえば、淡彩で,油のようなこくはない。バランスはじつによくとれていて、3ウェイのコントロールは見事である。

マランツ Model 1250

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 往年のマランツの系統を引継いだパネルレイアウト・デザインは、今なお魅力的であり、美しい。同社のプリメインのトップモデルの名に恥じない風格である。おとは、まさに絢爛豪華なアメリカン・サウンドで、実にブライトである。力強く、積極的に、スピーカーが雄弁に鳴りはじめるのである。

アカイ GXC-730D

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カセットデッキは、メカニズムを持っているから、価格別に見るとより高級なメカニズムが採用できる価格帯から、性能、音質ともに格段に上昇するもようである。一般的にカセットデッキとしての高級機である9万円台の製品が、このボーダーラインをこした価格帯であり、この730Dも、ある程度以上のクォリティを要求して製品選びをすれば、アカイを代表するに応わしい実力をもった製品であり、力強く緻密な音を聴かせる。

シュアー M75G TypeII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このもうひとつ下にM75Bというのがあるが、B型の音はかなりラフで反応が鈍いのに対して、75Gになると音は一変してやわらかくよく広がる雰囲気を鳴らしはじめる。その意味でこれをベストバイとするわけ。次の針交換の際に、交換針の変更で最高クラスの75EDIIに生れ変らせることができる点も楽しみ。

ビクター SX-55

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 中級機の価格帯では、今やユニークな存在である完全密閉型エンクロージュア採用の、オーソドックスな3ウェイシステムである。新製品らしく音色は明るく、クリアーであり、低域の量感は密閉型ならではの厚みがある。SX−3以来のキャリアを活かした、いわば伝統的な利点がよくあらわれたシステムだ。

トリオ KA-9300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの最高級モデルである。DCアンプで左右2電源独立型。そんなことより、このアンプの、きわめて充実したダンピングのきいたサウンドの魅力は一味違う。ただ、気になるのは、どうも音がふくらみ過ぎの感があって、もう少し輪郭がきりっと鮮やかになれば文句なしであろう。

トリオ LS-505

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かなり、個性をもった音で、好みの分れる製品だと思う。とにかく、前へ前へ音が張り出してくるので、欲求不満はない。しかし、決して貴品のある音ではないのである。このあたり、好みの音楽によって評価が分れると思うのだ。肉質の、弾力性に富んだ音は、血の通った魅力だが、センスと品位の高さがもう一つ。

サンスイ SP-L150

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Lシリーズ中では、中間位置にあるシステムである。性質は、シリーズ3モデル中ではもっともマイルドで、潜在的なクォリティの高さがトータルの音を支持しているような大人っぽさが特長である。音色は明るく、適度に厚みがありニューミュージックからクラシックにいたる幅広いジャンルに反応を示す。

エレクトロ・アクースティック STS255-17

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 STS155−17にくらべると、高域の音色がコントロールされて、音のバランスがずいぶん違ってきこえる。この差は好みの問題、あるいは主として鳴らす音楽のジャンルの問題だが、255の方がややクラシック向きに高域に艶を乗せて鳴らす。ただし、輸入品でこの価格では、品位を論じるのはまだ無理。

マランツ Model 1150MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツのアンプの華麗なサウンドは、この1150IIで、さらに洗練された。アメリカ的サウンドといっても、日本マランツの製造だが、不思議なもので、この鳴り方はアメリカを感じさせる。エキゾチックなのである。パネル操作機能は消化され切っていないが、この力強い音の魅力を買って目をつぶろう。

ダイヤトーン DS-35B

 菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

ダイヤトーンらしい、明晰な再生音に、かなりのスケールの大きさが加わって、余裕のある再生音を楽しめる。低音が充実して、豊麗でありながら、中高域の明瞭さを、いささかもマスクしていない。音像の明確な、しかも、位相差による空気感をもよく再現する優秀なもの。やや無機的な響きがなくもないが──。

パイオニア CS-616

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 2ウェイ型のCS−516と、3ウェイ型のこのCS−616の、いずれを選ぶかとなると、一般的には聴感上のバランス感からCS−516が選ばれるだろう。しかし、中域のレベルを少し下げたときのCS−616は、さすがに3ウェイらしく、中域が充実し、明らかに1ランク上の音を聴かせる。

ヤマハ TC-800GL

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかくカセットデッキのデザインは類型的になりがちで、現在では、いわゆるコンポーネント型が主流を占めている。カセットデッキをシステムのなかに固定することは、デッキ本来のマイクを使う録音を重視すれば、好ましいことではない。この800GLは、タイプライターのような独得な形態と電池でも動作する特長を活かし、バーサタイルに使えるのが最大の魅力である。これで、ブレンドマイクがあれば、もっと楽しいはずだ。

トリオ KA-7700D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの中での上級機種で、お家芸の左右独立電源、DCアンプの新機種である。艶ののった力のある再生音は、従来のやや弾力性の勝った音を一段と引き締め充実した実感を与えることになった。スピーカーを十分コントロールするといった感じで甘く鳴らさない。引き締めるのである。

オンキョー M-6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オンキョーの異端児的存在のスヒーcarで、実に積極的な表現力をもったもの。31cm口径のウーファーを基にした2ウェイだが、2ウェイらしい音の張り出しが魅力である。どちらかといえば、ジャズ、ポピュラー系のレコード再生に向いている。これに端正さと繊細さがプラスされればオール・マイティだが──。

ダイヤトーン DIATONE F1

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 思い切りのよい独特なデザインを採用したスピーカーシステムである。しかし、構成面はオーソドックスなコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、高能率なシステムである。音色は明るく伸びやかであり、スケールも十分にある。とくに、しなやかで反応が速いトゥイーターは、見事な音を聴かせてくれる。

オルトフォン SPU-G

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンのMC型カートリッジとしてきわめて寿命の長いSPU−Gシリーズには、楕円針つきのSPU−G/Eとコニカル針つきのSPU−Gの二種類あり、それぞれトランス内蔵のモデルもある。このSPUシリーズは、現在でも日本のオーディオファンに親しまれている魅力あるカートリッジである。

ソニー TC-4300SD

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ソニーのコンポーネント型デッキは、このところ新機種に置き換えられている。この4300SDは新しい製品ではないが、予想外に良いデッキが少ない中級機の価格帯では、現在でも目立つ存在である。性能、機能、音質、操作性などとくに優れた特長があるわけではないが、オーバーオールのバランスがよく、長期間の使用でも安定して働く点は、カセットデッキがメカニズムを中心としているだけに大きな長所といわなければならぬ。

パイオニア CS-516

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のパイオニアのサウンドイメージを完全に覆した新鮮な音をもつ製品である。表現は線がシャープで鋭角的であり、細部にこだわらず、割り切ったストレートさは、いわば未完成な爽やかさである。オーディオは、とかく密室的になりやすいが、このシステムの明るい外向性の音は、健康そのものである。

パイオニア SA-8900II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 これは、中堅のアンプとして内容、外観共に、大変充実した製品である。パワーも十分だし、音質の力感はやはり8800IIを上廻る。滑らかな肌ざわりは人間の本能的快感をくすぐる、独特な弾力性をもっていて心地よい。機能も、使い勝手も、よく練られていて、プリメインアンプとしての代表的な存在。

アントレー EC-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産の新しいメーカーで、デビューしたての製品である。発電方式はMC型で、音質は、外国製カートリッジのようなニュアンスをもったバランスのよいもの。物理特性の誇示だけが表へ出てこないで、音楽に必要なバランスコントロールがおこなわれている。ただ、デザインや仕上りが内容に追いつかず物足りない。

パイオニア SA-8800II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パイオニアのアンプとしては中級製品の下ぐらいで、かなり普及層を意識したものだろう。しかし、内容は立派に中堅アンプとして通用する。音の肌ざわりのよさは、同社のすべてのアンプに共通する美点だが、個のアンプにも強くそれを感じる。デザインも堂に入っていて、きれいな仕上りである。

ヤマハ NS-L225

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 3ウェイ構成のNS−L325を2ウェイ構成としたシステムだが、トゥイーターはコーン型とドーム型の特徴を備えた、やや特殊なユニットに変更されている。低域は量感が豊かであり、高域もクリアーで、音の鮮度はL325に勝り、滑らかでよくコントロールされた帯域バランスが、この製品の特長である。

ビクター KD-2

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 生録用にもコンポーネント用にも使えるだけの十分な性能を持つポータブルデッキである。モールド製の外装は機能優先でラフ仕上げだが、室外の使用でかなり乱暴に使っても上部であり、傷がついてもさして気にならないのばこの種のデッキとしてかえって好ましい点である。とくに生録向きであり、2種に使いわけられるノイズリダクションは、バイノーラルには、ぜひ使いたい機能である。