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トリオ・ボザーク B-313

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 大変キャラクターの濃いスピーカーだ。重く厚い低域、引き締まった控え目な中音、高質の高音、それらが一つとなって再生する音はマッシヴで重厚な安定感がある。しかし、私の好みからすると、いかにも明るさと軽やかさが即し、デリカシーとニュアンスの再現に難がある。全体にダンプされ過ぎた感じで、特に中音域のふくよかさ、陰影といった点で不満があった。シェリー・マンのブラッシングのピアニッシモはどこかへ消えた。

アコースティックリサーチ AR-5

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 クオリティは引き締った音で品位は高いが、抜けが悪く低音の上のほうからかぶり気味でこもる。バランスはよくとれていて、プログラム・ソースのシェイプがくずれることはない。低い能率でもあるし、かなりハイ・パワーでドライヴすると抜けの悪さもカヴァーされてくる。また、高域のエネルギー不足感じられ、質が良いだけに残念な気がした。使用条件をととのえれば、まだまだ高い性能を発揮するようにも思える。

JBL Lancer 77

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 私にはもっともぴったりきたシステムで、今回の試聴器中では最右翼に置きたいもの。明るく、よく抜けながら、音質が安っぽくなく解像力も優れている。プレゼンスも豊かでオーケストラのかもし出す音響空間もよく再現された。バランスの点でも中域がやや強い感じはあるがよくまとまっている。しかし、ジャズの再生で、中音が平板な感じで深みが足りないのが不満として感じられた。ピアノの打音の立上がりもよく大変好ましい音であった。

アルテック Lido

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 全体のバランスはよくとれているが、ややハイ不足で、どこか位相歪みのような不自然な部分(中低域)があり、音がのびきらない。しかし、締まったソリッドな音色は印象的で、ピアノなどの衝撃音には腰の強い引きしまった再生音が得られた。こうした傾向はジャズの再生により好適で、オン・セットのリアルなベースの再現は大変鮮やか。音像のイメージも明解である。どちらかというと全体に平均した周波数分布をもつソースでアラがでる。

JBL Lancer 44

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 大変力強い音質だが、少々気になる響きが中域につきまとう。また、ごく低いほうののびもやや、ふやけた感じで不満だった。しかし、中音域あたりのマッシヴなクオリティは強固な音のイメージをもち、非常に聴きごたえのある音である。オーケストラは迫力のある再現だが、やや、きめが荒く、室内楽ではそれがやや仇となる。ジャズではガッツのある再生音が効果的だが、やっぱり、のびと抜けの点ではもう一つ不満が残った。

タンノイ IIILZ MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 大変ソリッドでしまった音である。軽やかさや繊細さという点で、室内楽のデリカシーをもったソースには欲をいう余地はあるが、このまとまりとクオリティの高さは立派である。かなり品位の高いスピーカーだと思う。オーケストラとジャズにもっとも安定した再生を聴かせ危なげない。欲をいうと高域の解像力というかデリカシーというか、そうしたキメの細かさが加わって欲しいとこで、そうなれば文句なしのシステムである。

アコースティックリサーチ AR-3a

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 これだけはあらかじめAR3aと知らされていたが、かりに名前を伏せてあったとしても、この特徴ある音は、容易に聴き分けがつく。全体にやわらかくソフトフォーカスで、キリッとしたところが少ない。従ってポピュラー系の音楽を雰囲気的に楽しむにはよいが、クラシックでも室内楽やピアノなどの細かな陰影までを感じとろうというには無理がある。しかし、どんなレコードをかけても、楽器も声もすべてそれらしく、異質な音が少しもしない点、立派なものだ。全域にわたって、非常に質の良いなめらかな音を聴かせてくれる。このスピーカーは、小音量で鳴らすよりも、あるていどパワーを入れてやる方が、良い音質になる。

テスト番号No.1[特選]

アルテック BF419 Malaga

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 クオリティは大変高い音だと思う。締まっていて硬軟合わせもった緻密で腰のしっかりした音だ。しかし、高低域がのび切らず、レンジの狭さがなんとしても気になる。オーケストラの中でのオーボエなどのソロでは魅せられるほど素晴らしい音を聴かせてくれているのに、テュッティになるとバランスせずスケールがくずれる。ただし、ジャズにはマッシヴな中域がものをいって充実した再現が得られ迫力ある安定した再生音が得られた。驚異的な高能率。

サンスイ SP-LE8T

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 解像力が大変よく、マッシヴで抜けのよい音はスケール感もある。ただし、高域ののびと繊細さにもう一つ不満があって、広い帯域のソースでは不満がでる。オーケストラの高域がまとまった響きとなって、浮き立たないし、高いハーモニックは十分に出きらない。パーカッシヴなソースには効果的で、ジャズには大変ぴったりしたキャラクターをもっていた。シンバルの打音もリアルだし、ガッツのある充実した中音域は力量感が豊かだ。

ADC 303A

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 低域が豊かに盛り上がり、量感はあるが、高域に冴えたのびがない。つまり、毛色の変った音色をもっている。どこか、ガサついた音で、さわやかさ、丸味、暖かさなどの快感が感じられない音で、どのレコードも味気のない再生音となるのが不思議であった。エコーとキャラコンでかなり個性的に仕上げられたポピュラー・レコードだけしか満足のゆくものではなかったという他はない。

アコースティックリサーチ AR-4x

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 全体のバランスはよくとれたシステム。中域に鳴きがあり、ちょっとカーカーといった響きが気になるが、上下へののびはよく、素直である。ピアノのパルス、声楽の暖かさ、柔らかみといった点に、多少の不満が感じられたけれど、他のレコードでは平均して水準以上の再生音が聴けた。大きなスケールの迫力ある音とはいえないが、質のよい音色とオーソドックスなバランスを兼備したシステムである。

アコースティックリサーチ AR-5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 どんなソースも一応ソツの無さで、採点上では推選になったが、個人的には疑問の多いスピーカーだ。とくに、音量の大小によって音のバランス──それも周波数特性上のバランスというよりも、各楽器の音色や音量差や距離感がガラリと変わるのは、不思議だ。とくに、絞り込んだときの音は貧相である。しかし、音量を相当上げて聴くと、朗々と豊かな音になるのだから始末が悪い。ハイパワーの好きな人にという前提つきで。

テスト番号No.21[推選]

アルテック Lido

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 能率のあまり良い方でなく、しかも周波数レインジもあまり広い方ではないという音で、切替え比較では、ラフな聴き方をされると損な製品という点では、No.2にちょっとにているが、音の品位は相当に高く、これなら室内楽でもじっくり聴き込める。そして、どんなソースでもイヤな音を決して出さない。はったりも何も無い音だから、レコード音楽に長いこと親しんだ人でないと、見過ごしそうな音だと思うが、ともかく良い製品だ。

テスト番号No.16[推選]

テレフンケン TE-200

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 表情豊かというか、個性的といおうか、快適な音が印象的。適度に油の乗った充実感があり、長く聴いていると耳について気になりそうな音色が、こういう試聴では効果をあげる。つまり、巧みな音づくりなのである。華麗な音色、人為的なバランスがどんなソースにもそれなりの効果をあげるから不思議である。中高域の硬さ、レンジの狭さが不満として残るが、極めて印象的なスピーカー・システムであった。

オルトフォン SL15, 2-15KJ, RS212, マランツ Model 7T, Model 15

オルトフォンのカートリッジSL15、昇圧トランス2-15KJ、トーンアームRS212、マランツのコントロールアンプModel 7T、パワーアンプModel 15の広告(輸入元:日本楽器)
(スイングジャーナル 1969年3月号掲載)

SL15

JBL SA600

岩崎千明

スイングジャーナル 3月号(1969年2月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 私のリスニング・ルームには時折米国のハイファイ・マニアが出入りする。都下の米空軍基地の将校たちである。米国ハイファイ界のニュースなども話題になるが、彼らにとってもジム・ランシングという名は超高級イメージである。日本ではジム・ランシングと同じ程度にハイ・グレードと思われているARスピーカーというのは優秀品には違いないがどこにでもあり、いつでも買える身近なパーツのようだ。ところが「ランシング」のブランドは多いに買気をそそられる魅力、またこれを使うことによる大いなるプライドを持てる商品というように価値づけられているようである。
 ジム・ランシングは本来スピーカー・メーカーで音響専門であったが60年代に入って、ステレオ・アンプを発売した。それ以前から「エナジザー」と名でパワー・アンプが出ており、ごく高級のスピーカー・システムに組み込まれて存在した。
 独立したアンプ商品としての第一陣はプリ・アンプSG520であったがパワー・アンプを組み込んだSA600が、2年ほど前から米国内で発売され、マニアに注目されている。このSA600の優秀さはいろいろな形で、昨年中の米国オーディオ誌に採り上げられているが、その代表的な一例を68年春のエレクトロニクス・ワールド誌にみてみよう。この雑誌はかなり技術的な専門誌であるが、この号には、米国市場にある20種の代表的なアンプの特性を権威ある研究所でテストした比較書がのせてある。
 その試聴結果をみて、私は眼を疑ったほどである。ジムランSA600の最大出力についてメーカー発表の規格値は左右40/40ワットの最大出力になっているのに、試験によると「60/60ワットを超える出力がとり出せる」となっている。つまり規格値を超えること50%も最大出力が大きいという点である。むろん20種のテスト製品の中で、これほどゆとりある設計は、ジムランのアンプだけであることはいうまでもない。
 この点にジムランというメーカーの製品に対する考え方、メーカーのポリシーを感じることができる。ほかの性能も一般のアンプにくらべてずばぬけて優秀であり、20種中、ベストにランクされていたのもむろんである。
 SA600のこの優れた性能は、あなたが技術的にくわしい方なら、このアンプの回路をみれば完全に納得がいくはずだ。そこには普通のアンプとは全然違った技術を見ることができよう。コンピューターの中の回路と同系の、バランスド・アンプの技術が中心となっているのである。ジムランでは、これをTサーキットと呼んでおり、ハイ・ファイ用として特許回路である。コンピューターと同じくらい厳しく、しかも安定な動作がこの回路でなら楽々とこなせるはずだ。SA600のこのTサーキットはジムランのもうひとつのアンプSE400シリーズに採用されているが、さらに後面パネルはスピーカー組込み用SE408パワー・アンプの前面パネルとまったく同じデザインであり、パワー・アンプがほとんど同じことが外観からもうかがい知ることができる。アンプの後面についているべきターミナルは、ジムラン独特のケース底面に集められており、実際に使用の際の合理的な設計が、身近に感じられる。
 SA600は日本市場価格は24万だが、プリ・アンプSG520がデザインこそ豪華だがほぼ同じ価格。さらにパワー・アンプSE400シリーズが、20万円弱ということで、この両者を回路的に組み合せたSA600の価格としては割安で、このアンプがベスト・バイとなるのもうなずけよう。

シュアー V15 TypeII, M75E Type2

シュアーのカートリッジV15 TypeII、M75E Type2の広告(輸入元:バルコム)
(スイングジャーナル 1969年2月号掲載)

V15II

シュアー M44-5, M75G, M75E TypeII

シュアーのカートリッジM44-5、M75G、M75E TypeIIの広告(輸入元:バルコム)
(スイングジャーナル 1969年1月号掲載)

M75

アルテック 419A

菅野沖彦

スイングジャーナル 1月号(1968年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 アルテックといえばオーディオに関心のある人でその名を知らぬ人はあるまい。アメリカのスピーカーといえば、アルテックとジムランの名がすぐ浮ぶ。ジムランはもともとアルテックから分れた会社で、アルテックがプロ用機器をもっぱら手がけジムランが家庭用を主力にしていることもよく知られている。もっとも、このプロ用と家庭用なる区別は、なにによってなされるのかははなはだ不明瞭であって厳重な規格や定義があるわけではない。しかし、現実にその両者の差は優劣ということではなくて、製品のもっている特長、個性に現れているといってよいだろう。
 ところで、スピーカーというものは、音響機器の中でももっともむづかしいものであることはたびたび書いてきた。つまり、優劣を決定するのに占める物理特性のパーセンテージがアンプなどより低いのである。直接空気中に音波を放射して音を出すものだけに使用条件や音響空間の特性も千差万別で、そうした整備統一も容易ではない。そして音質、音色の主観的判定となると実に厄介な問題を包含しているわけだ。それだけに、業務用、一般用という区別はスピーカーにとって大きな問題とされる。業務用スピーカーといえばモニター・スピーカーといったほうが早く、モニター・スピーカーとはなにか? という論議は時々聞かれる。
 モニター・スピーカーはよくいえば基準になり得る優れた特性のスピーカーというイメージがあるし、逆にひねれば味もそっけもない音のスピーカーというイメージにもなるのではないか。
 この辺がモニター・スピーカーとは何かという論議の焦点だ。私としては、モニター・スピーカーと鑑賞用スピーカーの区別は音質や音良の面ではつけるべきではなく、良いスピーカーはいずれにも良いと考えている。強いてモニター・スピーカーに要求するとすれば、許容入力であって、少々のパワーでこわれるものはモニターとしては困る。実演と同次元で再生することが多いから、かなりの音量をだすことが必要なのである。ただし、許容入力は常に能率とのバランスで見るべきで、同じ20ワットの入力でも能率が異れば出しうる音量はまったくちがってくる。この点、アルテックのスピーカーはすべて大変能率がよく、許容入力も大きい。絶対の信頼感がある。そしてさらにその音質は音楽性豊かというべき味わいぶかいものだ。
 今度発売される419Aというユニットは30cmの全帯域型で、きわめて独創的なものだ。バイフレックスといって2つのコーンが一体になったような構造で1000Hzをさかいに周波数を分担している。この2つのコーンはそれぞれ異ったコンプライアンスと包角をもっており、さらにセンターにアルミ・ドームのラジエターで高域の輻射をしている。これは30cmスピーカーとしては小型なパイプダクト式のキャビネットに収められ〝マラガ〟というシステムとして発売されるという。
 私の聴いたところでは実に明晰な解像力をもっていて音像がしっかりときまる。固有の附随音が少く、抜けのよいすっきりとした再生音であった。マッシヴなクォリティは他のアルテックのスピーカーに共通したものだ。また能率のずばぬけてよいことも特筆すべきで.大音量でジャズを肌で感じるにはもってこいのスピーカーであろう。モニターとして鑑賞用として広く推薦したい製品。
 欲をいうならば最高域が不足なので、同社の3000HトゥイーターをN3000Hネットワークと共にブラスすると一段と冴えると思う。

トーレンス TD124

岩崎千明

スイングジャーナル 12月号(1968年11月発行)
「ベスト・セラー診断」より

「縁(円)の下の力持ち」という言葉がぴったりのハイ・パートがターンテーブルだ。事実ハイ・ファイ装置がそのすばらしさを発揮しようとすればするほどターンテーブルは重要となる。装置が高級なら高級なほど、その性能を十分に引き出すためにターンテーブルが重要になってくる。
 さて、10数年近く前のことだったが、あるスピーカーの大メーカーの定例コンサートで用いるアンプに初めてOTLを使用したことかある。OTLアンプがメーカーによって公開の場で鳴らされた最初のことだった。大出力真空管を10数本並べたそのアンプは、今までになく高性能を発揮し、とくに超低域のものすごい底力には目をみはったものだった。低音出力が落ちるトランスがないためであるが、そのアンプを試聴したときに当時の市販ターンテーブルはすべてゴロが出て使いものにならなかった。その時点において海外製品もすべて失格であった。そのメーカーのYは有能なのでベルト・ドライヴ・モーターを作ってコンサートは無事終ったように記憶する。
 セットが高級化すればするほど、保守的で伝統的な技術によって作られる部分でありながら、性能の向上が求められる部分といえる。
 ステレオ時代になり、レコードの水平方向に加え垂直方向にも音が吹き込まれるようになり、ターンテーブルの性能はさらに高度なものが望まれるようになる。そしてベルト・ドライヴ機構が高級品の常識にさえなってきた。さらに最近は〝2重ターンテーブル〟が新技術として注目されてきている。
 この2重ターンテーブルは、小口径の軽いメインテーブルが、ベルトドライヴされそのテーブルの上にドーナッツ状の重い大口径テーブルが乗ることになっている。これにより、モーター軸が太くなるので、ベルトに力が加わりトルクが増し、しかもモーター軸が極所的にぴっぱることがなくなるので、ベルトの部分ののびがなくなる。さらにターンテーブルの外周部分だけが重いのでフライホイール(はずみ車)効果も大きく、機構的、動作的に理想といえる。これが今まで国内製品で実現しなかったのは、2つのターンテーブルがぴったり合うのがむづかしくまた経年変化により外側がそったりしてしまうことであった。
 さてこのすぐれた機構を最初に実現したターンテーブルこそ、スイスのトーレンス社のTD124である。しかもこのターンテーブルはなんと1950年代の後期、つまり今から10年前に製品化されているのである。
 トーレンスTD124はさらに大きな技術を内蔵する。そのひとつは、モーター軸がベルトをドライヴするのではなく、一度アソビ車(アイドラー)を介してベルトをドライヴしている点である。つまり、これによりモーター自体の振動は2重に吸収され弱められる。それからもうひとつは2つのターンテーブルの上にさらに軽金属のプレートが乗っていて、これがインスタント・ストップ(瞬間停止)のときちょっと動くことにより、メインテーブルの回転と関係なく停止できうる点だ。このサブ・プレートの入っているおかげでカートリッジの磁界の影響を防ぐことができるのも大きな利点である。
 67年末より、外部分の重量級テーブルも軽金属にかえられII型と改められた。これで、いかに強いマグネットのカートリッジを用いても、テーブルの金属を吸引して針圧が変るという欠点も完全に解消した。
 ヨーロッパを廻ると、各国のスタジオで業務用として使用されるトーレンスTD124をしばしば見かけるという。今後もプロ用、高級マニア用として、ますます注目を集めるターンテーブルであろう。

シュアー M44-5

シュアーのカートリッジM44-5の広告(輸入元:バルコム貿易)
(スイングジャーナル 1968年11月号掲載)

M44

アルテック A7

アルテックのスピーカーシステムA7の広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1968年11月号掲載)

ALTEC

JBL SA600, SG520, SE400S, SE408S

JBLのプリメインアンプSA600、コントロールアンプSG520、パワーアンプSE400S、SE408Sの広告(輸入元:山水電気)
(スイングジャーナル 1968年11月号掲載)

JBLamp

JBL Lancer 44, Lancer 77, Lancer 101, Trimline, LE8T, LE175DLH, LE20, LE10A, LE14A, PR8, PR10, LX10, LX4-2, サンスイ SP-LE8T

JBLのスピーカーシステムLancer 44、Lancer 77、Lancer 101、Trimline、スピーカーユニットLE8T、LE175DLH、LE20、LE10A、LE14A、PR8、PR10、LX10、LX4-2、サンスイのスピーカーシステムSP-LE8Tの広告(輸入元:山水電気)
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

JBL

SME 3009

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1968年9月発行)
「ベスト・セラー診断」より

 トーン・アームの最高級品は何かときくと、誰の口からも即座にSMEの3字が帰ってくる。SMEアームは現在のトーン・アームの王座にある。
 SMEアームが英国から日本へ入ってきたのはずい分前のことだ。はっきりした記憶はないが、5年にはなるだろう。その間にオーディオ機器は急速な進歩をとげているし、特にプレーヤー関係パーツは軽針圧の傾向が大きく支配し、多くのカートリッジやアームが改良に改良という形で消えたり変貌したりした。しかし、SMEアームは細部のちょっとした変更以外、形を変えていない。しかも今だに現役として最高の性能を誇っているのである。この製品がいかに高い完成度をもっていたかが分ろうというものであるし、現在のオーディオ技術の水準を数年前に確保していたともいえるのである。現在のどれほど多くのアームがSMEに方向を指示され、SMEのもつ特性を追いかけたことか。そして、SMEが数年前に現れたことによって国産アームに対する一般の要求度が著しくシビアーで高度なものになったのも事実である。数々の新機構、当時として考え得た総てのアクセサリー類、最高の機質と精密な仕上げSMEアームはその完璧で安定した動作と、溢れるばかりの機械美、抜群の耐久性など、すべて私自身でたしかめた優秀製品なのである。価格の高いことも相当なものだが、実際に数年間使ってみると十分それに応えるものであることがわかる。手元の数台のプレーヤーにつけられた他のアームが、あるいはガタになり、あるいは動作が鈍くなって交換されていく中に、SMEのアームだけは全く買った時と同じ状態の外観と性能を維持しているのである。
 SMEアームの特長について簡単にふれておくと、6つのポイントが考えられる。①ナイフ・エッジ方式による高感度、高耐久性の支持、②インサイドフォース・キャンセラー機構、③ラテラル・バランサー、㈬スライドベース方式、④油圧式、アーム・リフタ一機構、⑤ヘッド・アングル可変がそれである。これらの特長は現在では高級アームのほとんどが備えているから今更とも思えるかもしれないが、それらはすべてSMEによって初めて実現されたものといってよいのである。S. M. E. LIMITED, という会社は英国のサセックスにあるらしいが、もともと大変なオーディオ・マニアが自分の理想とする機構をすべて備えたアームを作ろうという夢から生れた製品であり、会社であるという。
 ナイフ・エッジ方式というのは今でもあまり他に類がなく、これはアームの上下動方向の支持が鋭利なカミソリの匁先で支えられているものだ。左右の回転はベアリング式を採用している。この支持方式と精度の高さのためにアームの実効質量はそう軽くはないにもかかわらず、1グラム以下の軽針圧トレース、レコードのソリなどに対する追従性も見事な性能を発揮するのである。そして、それでこそ、かえってアームのマスの大きさが適応カートリッジの範囲を拡げてユニバーサルな特質をもつことに役立っている。トランス内蔵のオルトフォンなどの重いカートリッジから、穴あきの軽量シェルにつけた自重約10グラムの軽いものまでいずれにも優れた低域特性が得られる。インサイドフォース・キャンセラー機構はずい分批判もあびてはいるが、その後の多くのメーカーが踏襲している事実は否定できない。マニア気質の満足度というものを考えると、実害を示す以外に反論はできない。リフターはいまだにどの製品のものより動作確実で実用的。スライドベースはオーバー・ハング調整には絶対に有利。高価なのと扱いの難しさが欠点といえばいえるが、それこそぜいたくな楽しさというものだ。