Category Archives: 国内ブランド - Page 98

ビクター UA-7045

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ビクターのトーンアームとして、一つの高水準に達した初の製品だと思う。スタティックバランス型で、回転部は独特なジンバルサポートで、高感度を実現、かつ、共振の害を押えこんでいる。7045は、35cmタイプのコンベンショナルなモデルだ。不安定なレコードのソリ、偏心に対しての追従もよく、トーンバランスも妥当である。

サンスイ AU-607

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 本誌42号のプリメイン・テストのとき、下から順に聴いてきてここまで来て、はじめて、ステレオのプレゼンスを本格的に再現するアンプに出会ったという印象が強く残っている。音がとてもみずみずしく魅力的。もうひと息緻密な充実感が出てくればと思うが、それはこの価格帯のアンプには無理な注文だろう。デザインも落着いて仕上げも美しい。ライバル機としては、これより後に出たトリオの7300Dぐらいしか思い浮かばない。

ビクター TT-101

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロック・ターンテーブルとして比較的早く完成した製品で、高度なテクノロジーと工作技術による一級品である。クォーツのコアレスDCサーボモーターは、±1Hzの速度微調がつくという精巧さで、ピッチの正確さを要求する人々にはこれが一番だ。シンプルなデザインも好ましいが、風格ではもう一歩。

ダイヤトーン DP-EC2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いうまでもなく兄貴分EC1の第二世代で、前者の経験をもとに、操作機能やキャビネットの装飾板など一部を簡略化してローコスト化をはかっているが、ハウリングマージンの点では、後発であるだけにむしろやや優れ、アームを含めた音質はEC1よりもクリアーな感じに仕上がっている。優秀な兄弟同士。

アキュフェーズ P-300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このメーカーのデビュー作として登場して以来、高い評価と信頼に裏づけられ、現在も立派に現役製品として作られ続けている。パワーアンプの代表的な製品といってよいだろう。艶のある、美しい音の質感が、余裕のあるパワーの底力で支えられ、音楽の骨格と肉づきを明確に再現する。

フィデリティ・リサーチ FR-1MK3

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 MC型の中でも純粋にコイルによる発電で、磁気歪を徹底的に排除したピューリタン。FRのデビューが、このFR1で、その後、時代とともにリファインが続けられ、現在のMK3になったものだ。そのリファインの方向は、高域の周波数特性の改善にもっとも顕著に現われ、MK3のバランスは、やや高域偏重に感じられるほどに、すっきりとのびきっているのである。あまりに純度が高いので、他のパーツの品位が重要である。

サンスイ SR-929

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアノフィニッシュと称する漆黒のキャビネット(指紋を気にしていつも磨いておきたくなる)の質感の良さが929の最大の特長だが、ベースをリジッドに固めたことが音質の向上につながって、とてもクリアーで鮮度の高い音を聴かせてる。モーターまわりのダイキャストの仕上げが、もう少しキメこまかくなればさらに品位が上がると思うし、音質面では低音域にもうひと息厚みが出てくれるといっそういいと思うのだが。

ヤマハ CA-2000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヤマハの一連のアンプの音質に、もうひとつ、色気の欠けていることが不満である私自身、ここまで磨き上げた端正で上品で、清潔な美しい音を聴かされるとその歪のない澄明な音色にはひとつの魅力のあることがよくわかる。また実際に使ってみて、コントロールファンクションの豊富でしかも実用的によく練り上げられ、感触も抜群であることに脱帽する。

サンスイ SR-838

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SR929で成功したピアノフィニッシュ・シリーズの第二弾として発表されてか、アームの設計や操作ファンクションの整理など、むしろ929とは別シリーズのように思える。929ではやや不満であった低音の重量感がよく出るという点で、同価格の中でもちょっと群を抜いた出来栄え。

ヤマハ YP-D7

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アームベースに重量を集めて土台を固めたのが特長だが、そのためか5万円台では最も音に安定感のあるプレーヤーのひとつといってよい。同じカートリッジでも、一段と解像力が増して聴こえる。ただ、キャビネットの色や質感、それにターンテーブルまわりの粗いストロボなど、ラフさを狙った仕上げはこの内容にふさわしくないと思う。なぜヤマハ一流のあの清潔でエレガントな雰囲気でデザインしなかったのかふしぎだ。

アキュフェーズ M-60

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モノーラル・パワーアンプで、パワーアンプとしての理想形である。大出力でありながら、アキュフェーズらしい、純度の高い、力と暖かさを感じさせる聴き心地のよさを持ったリファインされた音の感触が、このアンプを単なるものものしいモンスターにはしていない。絶対的信頼感のある超絶なサウンドだ。大型システムのマルチ構成で、そのボトムエンドには欠かせないアンプだと思う。難はデザイン。風格は中味がずっと上。

ヤマハ B-2

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 BIを、ややスケールダウンしたアンプ、とはいってもパワーは100W/チャンネルあるが、しかし、音質的にはBIに勝るとも劣らず、製品としては、BIの経験にもとづき、よりリファインされた完成度の高さを持つ。ブラック・フィニッシュの精悍な外観も頼もしく、機能性も備えたパワーアンプである。メーターやパネル面のスイッチ類は、パワーアンプといえども、あればそれだけ便利で楽しい。

ビクター FB-7

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 バックロードCWホーン・エンクロージュアが、何といってもこのシステムの大きな特長で、これに30cm口径ウーファーと、ホーントゥイーターの2ウェイを装着している。屈託のない明るく軽く、パンチのある低音が魅力で、特にジャズの再生には素晴らしい。能率の高いこともこのシステムの強味の一つだ。

マランツ Model 510M

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツの最高級パワーアンプであり、パワーアンプのスタンダード的存在である。出力の割にコンパクト、軽量で、音質は、こくのある彫りの深い充実したものだ。別に、これからメーターを取りのぞいた510、とラックマウントパネルのついたP510Mのヴァージョンが用意されている。

パイオニア CS-755

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パイオニアの新しい55シリーズ中で中堅的存在がこの755である。655のスケールアップといえばそれまでだが、同社らしい明るくソフトな肌ざわりでは、655と共通した感触がある。しかし、こっちのほうがスケールは大きいが、低域の量感がやや大味になっているようだ。しかしバランスよい製品。

ビクター SX-5II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SX3を3ウェイに発展させたのがSX5であり、その改良型がこのSX5IIである。SX3より音がソリッドになったのがいいともいいきれないところで、独特なソフトタッチではSX3に一歩譲る。そのかわり、こっちのほうがスケールが大きく、アクティブな音楽には向いている。

ビクター UA-7045

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 軽量級から重量級までカートリッジの適合範囲が比較的広いことは、ユニバーサル・タイプとして陶然ながら良い点だ。ごく中庸の音質で、カートリッジの音のちがいをわりあいによく鳴らし分ける。高さ調整やインサイドフォースキャンセラーのメカニズムなど、よく考えられている。上部で安定で音がよく、扱いやすい。価格からみると割安という印象。

ビクター TT-101

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ターンテーブルやゴムシートの素材や形状など、細部に至るまで聴感上の音色のニュアンスを大切に作ったというだけあって、物理特性は言うまでもなく音質の面でも、本誌の試聴テストの際などでも信頼のおける製品として使っている。ただ、使っているうちにゴムシートに埃が附着して汚らしくなる点、音質の面でこの素材が良いのだそうだが、気分的にどうもうれしくないのは、なんとかならないものかと思う。

ダイヤトーン DIATONE F1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このユニークな外観は若者向きなのだそうな。なぜ、若者となると、かくも画一的にメカメカしい機械観が表に出てくるのかわからない。大人の考える若者向きだとすれば問題だし、本当にこれが若者向きだとすれば、もっと問題だ。実に積極的に鳴り響くスピーカーで、屈託のない明るく豊かなサウンドである。

パイオニア CS-655

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パイオニアらしい明るく柔らかな肌ざわりをもったサウンドで、もう一つ輪郭が鮮やかにきまればとも思うが、総体的に優れたバランスのシステムである。エンクロージュアのデザイン、仕上げ、各ユニットの作りも、この会社らしいそつのなさで美しくまとめられた万人向きのものといえるだろう。

Lo-D HT-840

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Lo-Dの新しいプレーヤーシステムは、現在、中級機以上では標準となりつつある水晶制御方式を導入したDD型ターンテーブルを採用したマニュアル機である。
 駆動源であるDD型モーターは、同社独自の開発であるユニトルク型で、ブラシレス、コアレス、スロットレス構造の偏平型DCサーボ方式である。この基本性能が高いモーターにPLL水晶サーボをかけ、負荷特性、回転精度を一段と高めている。発表された測定値は負荷特性が針圧120gまで0%、回転偏差0・0003%以内だ。
 トーンアームはS字型スタティックバランス型で、トーンアームに生じる100Hz付近の曲げ共振による振動エネルギーを、一般的なメインウェイト軸とパイプ間にゴムを入れて共振を40Hz近辺の低い周波数にずらす方法ではなく、メインウェイト軸内部にゴムダンパーを介して取り付けた小型ウェイトで構成するダイナミックアブソーバーで吸収し共振レベルを下げる特殊な構造を採用している。また、ヘッドシェル取付部分のコネクターは、コネクター部が二重構造で、内側締付金具が外側に向ってテーパー状となったチャッキングロック型を採用し、ガタがなく、剛性を増している。
 プレーヤーベースは天板が14mm厚の高密度BMCボード、下部は、40mm厚の高密度パーチクルソリッドボードの二重構造であり、大型インシュレーターと重量級ダストカバーで耐ハウリング性を高めてある。

ダイヤトーン DS-28B

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 中型ブックシェルフ型スピーカーの代表的製品ともいえるシステムで、ダイヤトーンらしいスピーカー作りのベテランぶりが、音にも仕上げ外観にも滲み出している堅実な製品である。小さいながら、3ウェイ構成で、ウーファーは25cm口径、トゥイーターはポリエステルドームを使い、なめらかで明るいサウンドだ。

フィデリティ・リサーチ FR-1MK3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 この独特の音質をなんと形容したらいいのだろうか。たとえばシンフォニーのトゥッティでも、2g以上の針圧をかけるかぎり、粗野な音や荒々しい歪っぽい音を全くといっていいほど出さないで、あくまでもやさしく繊細に鳴らす。油絵よりも淡彩のさらりとした味わいだが、この音は一度耳にしたら好き嫌いを別として忘れられない。出力がきわめて低いので、良質なトランスかヘッドアンプを組み合わせることが必要条件。

オットー SX-551

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オットーのシリーズ中、もっともバランスのよい、そして、広く他製品と比較しても高く評価出来るシステムが、このSX551である。重厚なクォリティでいて音が暗くならず、十分明晰な分解能と朗々としたソノリティを響かせる。25cmcarファーをベースにした3ウェイ・3スピーカーで、高域はソフトドーム。

トリオ LS-77

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マニア好みの企画性の光る、興味深いシステムである。コアキシャルの2ウェイスピーカーに可変ダンピングのパッシブラジエーターつまりドロンコーンという構成で、ホワイトコーンも目に鮮やかに、きわめて効果的な新鮮で若々しい音がする。これこそ、たくまずして若者向きといえるシステムだろう。