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ヤマハ C-6

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 A級ピュアカレント・サーボアンプ方式を採用したヤマハの新しいコンセプトによる製品で、デザインも、それなりに若返ったイメージである。豊富なファンクションをもったフル機能のコントローラーとしてユティテリティは大きい。全体にブラック仕上げは美しいが、品位と格調はそれほど高くない。価格からしても、独立型プリアンプの普及型であり、その限りにおいてはよく出来ている製品だ。

音質の絶対評価:6.5

テクニクス Technics A1 (SE-A1)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 もう4年前に発売になったテクニクス・アンプの旗艦としての存在。出力は350W+350W(8Ω)で、スピーカーは4系統使える。独特な、クラスA+と称する回路で、A級、AB級の中間的な動作でノッチング歪のない設計。さすがに、その堂々たる体躯で貫禄充分だが、雄々しさやヒューマンな暖かみのあるものではない。どちらかというと端整で、少々冷たい感触を受ける。悪くいえば、やや陰湿なのである。

音質の絶対評価:8

テクニクス Technics A3 (SE-A3)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 200W+200WのニュークラスAアンプで、スピーカー切替は2系統と、A+Bの3点。ローレベルの読みやすい大型パワーメーターを装備、これがパネルフェイスの基本となっている。テクニクス・アンプに共通の、日本的ともいえる、さっぱりしたデザインイメージが、どこか音と共通するニュアンスを持っている。決して重厚感や、強い個性的主張のあるほうではない。この辺がよきにつけあしきにつけ印象の薄い原因。

音質の絶対評価:7.5

テクニクス Technics A5 (SE-A5)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 120W+120W(8Ω)のパワーアンプで、スイッチ切替で30W+30Wにパワーを押え、メーター・イルミネーションを消して省エネ使用ができる。スピーカー切替2系統。テクニクスのパワーアンプの中では最も新しく、普及タイプともいえるが、総合的に完成度が高い。ただし、ややスピーカーを選ぶ傾向があるようだ。大型のパワーメーターはVU的な動きでピーク指示はしない。デザインセンス、仕上げは中の上。

音質の絶対評価:8.5 

テクニクス Technics A2 (SU-A2)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 超弩級のプリアンプである。一目見ただけでは、とても理解し切れないコントローラーが所狭しと並んでいる。ここまで出来るぞという姿勢の表現だから、こうなるのも仕方なかろう。それにしても凄いプリアンプを作ったものだ。値段も重量(38kg強)も世界有数のプリアンプである。こうなると批評の埒外で、ただ圧倒されるのみ。一度のみこんで整理してみると意外に使いやすいのだが、使いこなすチャンスは滅多にない。

音質絶対評価:7.5

テクニクス Technics A4 (SU-A4)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 一目でポジションがよくわかるという理由は理解できなくないのだが、この縦長のツマミには抵抗を感じてしまう。使いやすさでは文句ないが、バラバラと互いにそっぽを向いている様は美しくない。サブパネルを閉じれば、すっきりと必要なものだけがメインパネルにあるという合理性に、音楽機器としての情緒性もブレンドしてほしいところ。パネルとツマミの色のバランスも成功しているとはいえない。貫禄が不足だ。

音質の絶対評価:7

テクニクス Technics A6 (SU-A6)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 すっきり、さっぱりといえばよい表現になる。どうも、こういう厚みや暖かさにかける機械は個人的には好きになれないのである。プリアンプというものは、レコード音楽の演奏にあたって、プレーヤーとともに直接、手で操作する機会の多いものだけに、もっと夢のある、楽しさを感じさせてくれるものであって欲しいのだ。こういう生硬なフィーリングは音楽をプレイする心情とはうらはらなのである。悪趣味よりはずっとよいが……。

音質の絶対評価:8

アキュフェーズ C-7

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 RET入力完全対称型プッシュプルA級DC構成のヘッドアンプ。聴感上でのf特は最新アンプにありがちなワイドレンジ志向ではなく、ナチュラルな帯域バランスが特長。MC20IIでは、整然とした凝縮した緻密な音が聴かれ真面目な表現が目立つ。ロッシーニは、少し表情に硬さがあり、ドボルザークは、整理された音が少し遠くに広がる。峰純子は重い低域と穏やかな丁寧な歌い方となり音質は少しソフトにまとまる。
 DL305にすると、音色は暖色系で柔らかくスムーズでキメ細かさが出てくる。ロッシーニは気軽に楽しめ、ドボルザークは少しスケールが小さくキレイにまとまる。キャラクターは少なく手堅く音を美しく聴かせる点が特長で、長時間聴いても疲れない音質。

アントレー EC-20

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 MCカートリッジ専門メーカーのアントレーからは、先号で紹介したシェル一体型のトップモデルEC30が発売されたが、これに続いてまたもや新製品EC20が発売になった。EC20のリポートの前に、EC30でその後わかった点を、この欄をかりて報告しておきたい。EC30は、MC型カートリッジが広帯域で繊細な音というイメージが強いなかに、力強く、パワフルな音をもつ製品として印象が強いが、力強く音をいきいきと聴かせる反面、MC型らしい彫りの深いシャープな分解能が不足気味であると思う。この点は、その後連続して使う間に、徐々に生硬さが解消して、フレキシビリティとシャープさが出てくるようだ。メーカーに問合せた結果でも、約10時間ほど使うとエージングができて本来の調子になるとのことで、EC30を使用中の読者は、しばらくエージングして使っていただきたい。MC型カートリッジのエージングの例は、オルトフォンSPUシリーズなどではいわば常識化されている。最初は音が硬く荒々しいが、使う間にスムーズさが出てきてSPU独特の音になる。そして、絶好調の時期が来たら、そろそろ針交換の時期が来たなということでスペアを用意しておくというのが愛用者の共通パターンだ。
 さて、新製品のEC20は、アントレー初のカンチレバーにサファイアパイプを採用したモデルだ。ムクの棒に較べて50%軽いサファイアパイプカンチレバーは、剛性が高く、音の伝搬速度が速い利点をもつが反面、硬度が高いだけに狂信が発生しやすい欠点をもつ。これを解決するために、EC20ではアルミパイプをサファイアパイプの基部にインサートしステップド・テーパード状としてQダンプをおこない高域共振を抑え、この固有音がつきやすい宝石系カンチレバーのデメリットを解決している。
 磁気回路はサマリウム・コバルト磁石、コイル巻枠は2mm角スーパーパーマロイ使用で3Ω、0・25mVの高出力を得ている。
 EC20は、ナチュラルな帯域バランスと、明るくダイレクトな音が特長。宝石系カンチレバー特有の固有音の発生や逆に過制動の印象はなく、芯が強く活気があり、ダイナミックな音を聴かせる。針圧はアームにより微調整が必要。アームはオイルダンプ型より通常型が性質とマッチした。

マイクロ SX-8000

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 マイクロが専門メーカーらしいマニアックなターンテーブルの製品に徹したポリシーをとって生み出した最高級品がこれ。20kgのステンレス製ターンテーブルを糸あるいはベルトで駆動するが、駆動モーター部とターンテーブルアッセンブリーはセパレート型。重いターンテーブルのシャフトはエアーで負担を軽くし、ノイズも軽減し耐久性を確保している。ハウリング対策さえ解決すれば、このターンテーブルならではの澄んで確固たる音が聴ける。

ナカミチ Nakamichi 1000ZXL

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カセットデッキの最高峰といってよい、ナカミチらしい力作である。マイク/ライン録音にあらゆる面から対処し、テープへのバイアス、イクォライザー、レベルは、マイコンにより全自動化されている。マニュアルでは、イクォライザー2段、バイアス3段切換えだ。録音15曲のコーディング、再生30曲のメモリー選曲、タイマー、ピッチコントロールなど至れり尽くせりの高性能デッキで、まさにカセットのリファレンスにふさわしい。

ダイヤトーン DS-505

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 オーディオ帯域を専用ユニットで4分割する4ウェイは理想に近いユニット構成である。低音と中低音はアラミド・ハニカム構造コーン、中高音と高音はボイスコイル部分をも一体成型した特殊なボロン振動板採用で、振動板に制動材を使わずに性能を引出した技術は見事だ。ワイドレンジ、高分解能型の典型で、使用機器さらにプログラムソースのクォリティに敏感に反応する性能の高さは他とは次元が異なり、試聴上の注意点だ。

デンオン PMA-950

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 新製品PMA950は、既発売のPMA970の系統を受け継いだデンオンAクラス増幅方式採用のプリメインアンプ第2弾製品で、出力は80W+80WとPMA970の80%である。
 基本構成は、ハイゲインイコライザーアンプといいゲインパワーアンプの2アンプ構成である。イコライザーは、新開発の広帯域MC/MM切替型で、RIAA偏差は20Hz〜100kHzで±0・2dBのワイドレンジ設計で、CR・NF型が特長。さらにMM型使用時に高域での実装負荷による歪率増大を防ぐ特殊回路の開発で高域歪は十数分の1に低下している。トーンコントロールは、信号系路からコンデンサーを除去したリアルタイムトーンコントロールで、パワーアンプ部にある。
 パワーアンプは、将来プログラムソースとして登場してくるPCMプログラムをも考慮して、広帯域化、ハイスピード化がテーマとなったデンオンAクラス増幅採用。スピーカー実装時の歪増加を避けるリアルドライブ回路の開発で、純抵抗負荷時の歪率と実装時の差を少なくしている点に注目したい。ちなみに、純抵抗負荷時に比べ実装時の歪みは、スピーカーによって数十倍にまで増加することがあるとのことだ。
 フォノ入力を含むAUX、TUNERなどの入力信号は、トーンコントロール使用時を含み、スピーカー端子まで信号系にはコンデンサーがない完全DC構成である。
 電源部は大型トロイダル電源トランスと22000μFかける2の電解コンデンサー使用で、4Ω負荷100W+100W時のA級パワーアンプを充分にドライブできる能力を備える。なお、電源部はパワーアンプ部の中心部に配置され、ワイアリングは左右チャンネル等距離、最短距離とするパワー・カレント・ピュア・ラジェーション構造を採用しているのも構造上の注目点である。
 マイクロSX8000にMC20とAC3000MC及びDL305とDA401を使いPMA950を聴く。MC20では適度に広帯域で、反応が早くキビキビした音だ。音像は小さく、少し距離をおいて並ぶ。DL305にすると表情の伸びやかさと分解能が高くなる。PMA970より反応が早く、プレゼンスも優れた印象である。全体に軽量級の印象はあるが、鮮度が高く分解能が優れた現代アンプらしい魅力作だ。

ヤマハ NS-690III

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ヤマハ最初の本格的3ウェイ・ブックシェルフ型として一躍脚光を浴びた、ソフトドーム型ユニット採用の完全密閉型NS690の、2度目のフレッシュアップモデルだ。ピアノ響板材料をパルプに使った新ウーファー、再設計を加えられたソフトドーム型ユニットの構成は、カラレイションがなくスムーズなレスポンスをもち、しっとりと滑らかでプレゼンスが優れる。現代の高性能アンプで駆動するソフトドーム型は新鮮な魅力だ。

ヤマハ PX-3

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ヤマハでは理論的に一般のオフセットアームに比べて性能が高いリニアトラッキングトーンアームに早くから着目し、いち早く超高級プレーヤーシステムにこのタイプのトーンアームを採用したPX1を開発。続いてリニアトラッキングシステムを合理化した第2弾製品PX2を市場に投入しているが、今回、このシリーズの第3弾製品としてPX3を新発売した。
 リニアトラッキング方式で最重要のシステム構造は、基本的にはPX2系のもので、アームベース内に非接触・光学式トラッキングエラーセンサーがあり、DCコアレスサーボモーターが不平衡電圧によりアームベースを駆動する。サーボ回路には±0・5mmの不感帯があり、レコードの偏芯が0・5mm(JISで0・2mm以下)ならレコード内周方向にのみアームは移動する。結果的に、これにより針先偏位は±0・5mm、アーム角度±0・15度以下で動作をし、歪発生を最小に抑えている。
 無共振構造ストレートアームは、材料の吟味、加工精度を始めフィンガーフックもない左右完全対称型設計、アーム基部の二重構造などで実効質量17gに設定されている。この値は、市販MM型20種、MC型10種の重量とコンプライアンスを測定した結果からf0 12Hzを目標に決定。レコードのソリ(1・1Hzが基本成分)、偏芯(0・55Hzが基本成分)の超低域成分と音楽信号成分が約12Hzを分岐点として高低に分かれている測定結果からの値である。
 ターンテーブルは重量1・6kgアルミダイキャスト製。モーターはDC4相8極コアレスホール型で、全周積分FG付のクォーツ制御方式である。キャビネットは高比重BMC製。1・1kgダストカバー付で、ゴム・スプリング複合型インシュレーターが附属する。
 機能は、電子制御フルオートマニュアル盤径選択後、PLAYで動作する方式だ。
 PX3は、豊かで柔らかい低域から中低域をベースとした安定感のあるナチュラルな帯域バランスをもつ。音色は適度に明るく、音の伸びやかさもある。試みに手もとにあったスタビライザーを乗せると、中低域が緻密になり全体に音が引き締って鮮度感が上がる。リニア方式独特の音場感の自然な拡がりと定位のシャープさは現時点でも新鮮な魅力。バランスの優れたシステムだ。

ソニー PS-X800

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ソニーのPS−B80は、世界最初のMFB制御方式のバイオトレーサーアームを採用した製品として、オーディオの歴史に名をとどめるフルオートプレーヤーシステムであるが、今回新しく登場したPS−X800は、理論上で理想のトーンアームであるリニアトラッキング方式のアームをバイオトレーサー化して採用した注目の新製品である。
 リニアトラッキング方式のトーンアームは、レコード制作時に使うカッティングレースの動作と近似の動作をするために水平方向のトラッキングエラーが極めて小さく、トーンアームの全長が短く、軽質量でトラッキング能力が高いメリットをもっている。
 しかし、現在市場にあるリニアトラッキングアームは、細かく見れば針先の移動に対してトーンアーム支持部の動きが静止・移動・静止と断続的に移動する方式が多い。この細かい点に注目して、今回発売のリニア・バイオトレーサーでは、アクティブ・トレース・サーボ方式を開発、アーム支持部の速度と針先速度の差として得られるトラッキングエラー角を検出し、常に針先速度とアーム支持部の速度が同じになるようにサーボをかけ、トーンアーム自体が動くという新リニアトラッキング方式を採用している。
 リニアトラッキング方式にはアーム支持部を移動させるためのガイドを必要とする。PS−X800のガイドはモノレール型で、アーム支持軸とアーム支点が常に同軸上にある。また、軸受にはノイズ発生の原因となるベアリングを排除し、特殊樹脂に含油したスライド軸受により振動を防いでいる。
 アーム駆動は独自のリニアトルクBSLモーター採用であり、アーム部のコントロールには垂直と水平が独立した速度センサーを備え、独立したリニアモーターに速度フィードバックをかけて低域共振を抑えるとともに、トーンアームが動くリニアトラッキング方式の問題点を解決している。
 機能は自動アームバランス、純電子式針圧印加をはじめ、自動盤径選択とレコード有無選択、2速度のアーム移動、それにカセットと連係動作用の別売のシンクロリモートコントロールRM65がある。
 音の傾向はスケールが大きく、素直で抑制の効いた、安定感のある表現が特長。独特の素気なさがかえって現代的な魅力だ。

オンキョー Integra A-817D

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 アンプの出力の+側と−側から2系統のサーボをかけるオンキョー独自のWスーパーサーボ方式を採用したプリメインアンプ、A817、815に改良が加えられ、それぞれモデルナンバー末尾にDのイニシアルの付いた新モデルに発展した。
 改良の主なポイントは、Wスーパーサーボを一段と強化して、歪みの原因となる超低域成分や電源部アースインピーダンスに起因する雑音成分を40dB以上も抑えたこと。これは100倍以上も強力な電源部を使ったことに相当する効果であるとのことで、従来の50倍から2倍アップしたものだ。この結果、中低域での音の分解能が一段と向上したとのことである。
 また、DCアンプ特有のスピーカーへのDCリークも、強化されたWスーパーサーボの副次的なメリットとして−100dB以上も抑圧し、スピーカー振動板の偏位がなくリニアリティノよ五百とが得られる。Dタイプとなってパワーも増加し、A815Dが55W+55W、A817Dが75W+75Wになった。
 基本構成は従来と同様で、ハイゲインイコライザーアンプとハイゲインパワーアンプの2アンプ構成。トーンコントロールは、特別なトーンアンプを使わずパッシブ素子だけで構成するダイレクト・トーン方式で、オンキョー独自の回路設計である。
 パワーアンプは、普遍的なBクラス増幅と各社各様の発展型高能率Aクラス増幅が最近では一般化しているが、オンキョーでは高能率Aクラスに多いバイアス可変方式を避けて、Bクラス増幅ながらAクラスなみのリニアリティをもち、バイアス変動のないリニアスイッチング方式を採用している。このあたりは、各社ともに何を重視してアンプ設計をおこなうかというポリシーの現れるところでそれぞれ一長一短が存在するだけに、どの方式を結果の音としてユーザーが支持するかにつきるところだ。
 MC20MKIIとDL305を用意して聴く。音の粒子が滑らかに磨かれ、独特のスムーズさのあるしなやかなワイドレンジ型の音だ。微妙に薄化粧をしたようなこの音は大変に美しく、音場感は少し遠くに拡がる。総合的にDL305がマッチするが、MC20MKIIともどもゲインが不足ぎみでMM型を標準に使いたいアンプだ。

サンスイ AU-X11

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 サンスイのプリメインアンプは、現在のシリーズの出発点であるAU607、707から第2世代のAU−D607、D707、D907を経て、現在はAU−D607F、D707F、D907Fの第3世代に進化しているが、それぞれの特長として第1世代はDCアンプ構成、第2世代がダイヤモンド差動増幅方式採用、第3世代のスーパー・フィードフォワード方式が技術的な特長になっている。
 今回発売されたAU−X11は、従来サンスイプリメインアンプのスペシャリティモデルとして第2世代のプリメインアンプの時期に登場したAU−X1の後継モデルとして開発された製品である。
 基本的なデザインはAU−X1と同じだが、新しくヴィンテージの名称が付けられ、パネルサイドに木製サイドボードが加えられたのが異なった点だ。
 基本的構成は、ゲインと負荷抵抗切替可能なMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、フラットアンプとパワーアンプの4ブロック構成で、トーンコントロール回路はない。イコライザーアンプのダイヤモンド差動増幅DCサーボ回路、パワーアンプ部のダイヤモンド増幅スーパー・フィードフォワード方式に特長がある。
 電源部は伝統的な協力電源採用のポリシーを感じさせるもので、MCヘッドアンプ、イコライザー、フラットアンプ、それにパワーアンプがそれぞれ独立した左右独立型を採用。電源トランスはパワー段専用に左右独立巻線の大型トロイダル型、プリドライブ以前の回路用に左右独立の大型EIトランスを使う2電源トランス方式である。
 機能面は、イコライザー付パワーアンプともいえるシンプルなタイプで、左右独立のレベルコントロールをバランサーの代りに使う方式。イコライザー出力を直接パワーアンプに結ぶジャンプスイッチをもち、この場合にはゲインは−14dBとなる。また、サブソニックフィルターは、16Hz−3dB、6dB/oct型だ。
 コンストラクションは、オーディオアンプでその性能と音質を決定的に支配するところだが、AU−X1に比べAU−X11は、かなり大幅な変更が行なわれた。従来はパワートランジスター用左右チャンネルのヒートシンクが中央部に位置し、それをはさんで横一列に左右チャンネル各4個使用の電解コンデンサーが配置されていたが、今回は、この配置が入れ代り、8この電解コンデンサーを中央部に集中配置コンデンサーのタイプもより高性能型に変更されている。最近ではヒートシンクにヒートパイプを採用する例が多く、サンスイのFシリーズもこのタイプになったが、AU−X11のみは従来型の重量級ヒートシンクを採用している点は注目したいところだ。
 シャーシは、マグネティック歪対策としてAU−D907LIMITEDで採用した銅メッキが施され、ボンネットはアルミ製、サイドはローズウッドの木製に変っている。
 マイクロSX8000とMC20+AC3000MC及びDL305+DA401をプレーヤーに、JBL4343Bを使いAU−X11を聴く。AU−X1が、一般のアンプより1octほど伸びたように感じるソリッドな低域をベースに非常に押し出しの良いエネルギッシュなサウンドを特長としていたことに比べると、AU−X11は全体に音の粒子が細かくリファインされ、適度に力強い低域をベースとしたナチュラルな帯域バランスをもち、ディフィニションが優れた音場感の拡がりが加わった音になった。MC20、DL305ともに特長は素直に音となるが、MM型使用時の方がX1のイメージを強く持つようだ。ヴィンテージの名称の如く、パワーで押す若者が年月を経て余裕のある大人の魅力を備えた印象。

フィデリティ・リサーチ XF-1

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用のスイッチレス型トロイダル巻線採用の高性能トランス。
 聴感上でナチュラルに伸びたワイドレンジ型に近いレスポンスと、音の粒子のキメが細かく、滑らかに磨込まれた美しく爽やかな印象が特徴で、クォリティはFRT3Gより一段と高い。
 MC20IIとの組合せは、豊かに量感タップリに鳴る、低域から中低域をベースとした情報虜が多い音である。音色は暖色系で滑らかさがあり、楽器の固有音をかなり正確に鳴らす。
 FR7fとすると帯域バランスはナチュラルとなり、音色もニュートラルになる。素直に聴かせる分解能の高さ、ダイナミックで余裕のある表現力、ナチュラルに拡がる音場感のプレゼンスなど、優れたカートリッジの性能をフルに引出した音。

フィデリティ・リサーチ FRT-3G

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 リング型コアにトロイダル巻線を採用した入力インピーダンス2段切替の製品。
 最近の製品らしく、昇圧トランスとしては帯域の狭さを感じさせないレスポンスと、キメ細かく滑らかでありながら適度に力感もある音に特徴がある。
 MC20IIは、少し細身のスッキリした音になるが、音場感はスムーズに拡がり、再生の難しいディスクの大振幅でも、破綻を見せずこなしてしまう。音の表情は素直で、適度なダイレクトさもある。
 DL305では、MC20IIよりもトランスのキャラクターにマッチし、伸びやかなレスポンスと一段と分解能が高い音を聴かせる。音色は明るく軽く、反応も適度に速い。FR2は穏やかで素直な表情と爽やかでバランスが優れた音である。

アントレー ET-200

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高性能化を目的として入力スイッチを取除いた低インピーダンス専用トランス。
 ET100と比べると全体に音のキメが細かく、一段とワイドレンジ型になったのが判る。MC20IIは、やや細身の高域にアクセントがついたスッキリ型になり、爽やかさはアルが、やや実在感不足の傾向がある。FR7fは、予想より低域バランスの線が太い大味な音になる。アントレーEC30を組み合わすとやはり、それなりに納得のいくバランスとなり、力強いMC型というEC30の特徴が素直に聴かれる。
 このトランスもRCAピンコードによる音の変化があり、ET15でナチュラルなバランスとなったコードはメリハリ強調型となり、付属コードですっきりした音になるが、今一歩なのだ。

アントレー ET-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 入力インピーダンスが3Ω、10Ω、40Ωの3段切替で使える昇圧トランスで、定評の高かった初期の製品を改良したのが現在のモデルである。
 聴感上の帯域は、安定感がある低域をベースに少し抑え気味の中域と輝きがある中高域から高域が適度のバランスを保つ。音色は明るく、音表情は穏やかで安定感がある。
 MC20II、FR2、DL305の3種のMC型に対し、それぞれの特徴を引出しながら適度にクッキリとコントラストの効いた、プレゼンスのある音として聴かせる。価格的にみて、現状では高価な製品ではないが、昇圧トランスの一種の基準尺度として使えるだけの信頼性の高い音は見逃せない。ET100は付属コードでバランスがとれる。

アントレー ET-15

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3Ω、40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかく軟調の低域、抑え気味の中域、硬質でコントラストをクッキリとつけるがやや粗い中高域から高域をもつ、個性の強いタイプだ。
 MC20IIとDL305ともに、トランスの個性のために大きな傾向の差が出ないが、音色が明るく細かさも出てくる点でDL305の方が良い。
 パスを含むスイッチ切替実験の結果、付属RCAピンコードを普通のタイプに交換してみると、個性の強さは大幅に減り、トランスとしては素直でキャラクターが少なく、ナチュラルな帯域バランスをもっていることが判った。昇圧トランスやヘッドアンプでは、使用するRCAピンコードで音が大幅に変わることが多い点に注意したいものだ。

ダイナベクター DV-6A

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DVカートリッジ用に開発された、巻線を含む全ての線材に銀線を採用し、一次巻線はスイッチ切替でバランス型とアンバランス型に使用できるユニークな構想にもとづいた製品である。
 入力インピーダンス40ΩでDL305を使う。柔らかな低域をベースとした安定型の帯域バランスをもつことはDV6Xと似るが、音の基本クォリティは格段に高く、豊かな響きと少し硬質な中高域がバランスを保つ。音場感はナチュラルでスピーカーの奥に拡がる。
 試みにバランス型に切替えると帯域バランスはナチュラルに伸び全体にクリアーで表情豊かな音に変わる。とくに前後方向のパースペクティブがスッキリと感じられるのはバランス型の大きな特徴で、今後の発展が楽しみな製品である。

ダイナベクター DV-6X

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DV6Aのジュニアタイプとして開発されたスイッチレスの昇圧トランス。
 入力インピーダンスは3〜60Ωと発表されているために、MC20IIとDL305を使う。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかな低域をベースとした暖色系の音色をもった穏やかなタイプで、ハイエンドはなだらかに下降するレスポンスをもつようである。
 DL305は低域ベースで高域が下降気味となり、柔らかな雰囲気は楽しめるが、本来の、解像力があり爽やか音とは別のキャラクターに感じられる音になる。
 MC20IIは、DL305よりは明快さが出てくるが、やはり本来とは異なった穏やかな音になる。製品の性格からいっても、ダイナベクター・カートリッジ専用の昇圧トランスという印象が強い。