Category Archives: 国内ブランド - Page 116

ビクター JA-S41

岩崎千明

電波科学 7月号(1976年6月発行)

 若いファンにとって求めやすい価格帯のいわゆる、普及形アンプの品質向上がますます加速されている。
 新製品は必らず性能的により高いレベルに要求されるし、実際にそれは遂げられている。同じ価格なら性質は良いし、同じ性能なら価格は安くなった。文字通りお買い得の新形として、常に賛辞を浴びてデビューするというのがこの頃の常識だ。
 だから、今さらここで「ビクターの今度の新形JA−S41は前のくらべて、パワーはぐんと上って65/65W、ひずみ0・05%の高性能、電源トランスは2つ付いてるし電源コンデンサは15、000μFが2つ。性能もSNも抜群、クロストークも格段にすぐれてる」と定石通りにほめ言葉を並べたところで、こんな美辞麗句に馴れっこになってしまった読者の皆さんには、大して気に止めなくなってしまった。馴れというのは恐いものだなんて、長屋のいん居のぐちみたいなことをこぼすひまはここにはないのだが、少なくとも、これだけははっきり知っておいて良い。ビクターの新形アンプJA−S41はまぎれもなく、今までのビクターのアンプ技術の一大集成ともいえる傑作で、音に接しても今までになくステレオ感も自然でくせは本当に感じられず、透明でありながら暖か味さえ伝わってくる。
 歌の生々しさは、音量さえ適切ならばびっくりするほど、眼をつぶって聴くと歌手が眼前で語りかけてくる姿が見えてくるほどだ。マイクに対してのわずかな顔の向きの変り方すら手にとるように判る。バックの演奏者の並び方から楽器の配置、その大きさなど注意して聴けば聴くほどリアルな再生ぶり。それはサウンドのバランスの良さ、音の質的な水準の高さ、さらにステレオ感、セパレーションの良さなくては得られない。
「アンプというのはエレクトロニクス技術だ。だから電気的データが何よりも大切で、これが長ければ実際の動作も音もよいはず」という説はたしかにその通りだ。しかし、電気的性能さえよければそれですべてよいというわけでは決してない。音の良くなる最低条件として電気的性能は必らず要求されるけれど、その辺を十分に認識していないと性能さえよければ音は必然的に良いはずと思い込んでしまうことになるし、それが落し穴とすらなってしまう。しかし、逆に性能なんか無視してもよいというわけでは決してないが、本当の音質の良さの基本になるべき性能の良さというものは、単なる数字で表わせる、というほど簡単なものではない。このところをよく了解しておかなくてはならない。
 たとえば今、話題となっているクロストークについても、セパレーション何dBと数字が良ければそれで本当に良いといえるかどうか。逆にデータの上で、驚異的な数値なんかを発表していなくとも実際には優れているのだってある。ビクターのJA−S41の場合、クロストークに対しての配慮とか処置とかいうだけではないだろうが、電源を左右分離するのでなく、最終出力段とドライバ段以前とを別電源としている。電流変動の大きな出力段を分離することにあって、電源全体的な電圧変動がなくなるため、特に直線性とかひずみとかに強く影著されることがなくなったわけだ。これが同じ価格帯なのにひずみが格段に減り、出力がより大きくなりしかも、ピーク出力でも直線性がよくなった理由だろう。つまり、基本的な性能を重視した新らしい技術的着眼が、アンプの今日的問題点とされているクロストークまでも格段に向上させてしまったということになる。
 それなのにこの新らしい大いなる飛躍は、それをはっきりと知らすことが単なる数値の羅列ではでき難いのである。さぞかしメーカーも歯がゆいことだろう。でもこうした良さは聴く側に耳さえあれば必らず判るものだ。こうして聴いてみることを推めよう。
①左右スピーカを一辺とした正三角形の頂点に座る。
②できれば歌の入った演奏を、ミニチュア化したステージで歌手がある程度の距離で歌っているように再生する。
③アンプのバランス中央のまま右のフォノ端子入力を外す。そのままで左ピーカへと音像、つまり歌手が移動する。次に左フォノ端子を外したときに右スピーカ側に移動する。
④これでよく判らなければ右側フォノを外してアンプ出力端子の左スピーカー側のリード線を外して、8Ωの純抵抗を接続し右側の音を聴き確める。特に高音シンバル、低音ベースなどが洩れていないか。

 JA−S41はこうしたときに数字には表されることのない良さを発揮する。JA−S41の水準にあるアンプは市場の5万台に果して何機種あるだろうか。

ダイヤトーン DA-P10 + DA-A15

菅野沖彦

スイングジャーナル 6月号(1976年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ダイヤトーンのアンプにかける惰熱がありありとわかる新製品が登場した。今月発売された一連のセパレート・アンプ・シリーズである。プリアンプ2機種とパワー・アンプ3機種が同時に発表されたが、いずれもひとつの明確な思想のもとに開発されたオリジナリティーをもったアンプである。中でも高級機が、今月の選定新製品になったDA−P10プリアンプと、DA−A15パワー・アンプである。このシリーズのアンプでまず目をひくのは、プリ・アンプとパワー・アンプを1台のインテグラル・アンプとしてカップリングできる構造をとったアイデアである。これは今迄、ちょっと考えつかなかった発想ではなかろうか。セパレート・アンプとしての純粋な形からすれば、わざわざカップリングさせるとは余計な考え過ぎという見方もできなくはないが、スペースに制限がある場合、こういう使い方ができるようになっていることはありがたい。しかも、そのドッキング機構もシンプルで確実だし、デザイン的にも、いかにもたくましいインテグラル・アンプの魅力たっぷりな姿が実現する。シャーシ・パネル構造は大変がっちりした頼もしいもので信頼感に、溢れている。
外観が先になってしまったが、肝腎の中身のほうも、セパレート・アンプとしての必然性を十分保証する密度の高いもので、DA−P10もDA−A15も、完全なモノーラル・コンストラクションを採用した本格的な高級アンプなのだ。このコンストラクションにより、従来見逃されていたクロストークの害からほとんど理想的に逃れることを可能にしているのである。両チャンネル間のダイナミックな動作状態においては、クロストークは、単にセバレーション、音像定位などに悪影響を与えるのみならず、歪による音質劣化という現象としての害をダイヤトーンは徹底的に追求したというが、たしかに、このような完全モーラル・コンストラクションによるアンプの音と従来のステレオ・コンストラクション(ただ電源が2台あるだけでは不十分の場合もあり、電源が1つでも急所を抑え余裕のあるものの場合は意外に好結果が得られる)と聴き比べて、臨場感や音像の安定感の差は瀝然なのである。筆者は、2台のステレオ・アンプを使って、この差を確認しているが、それは全体的な音質の差という聴感的な認識をもたらすほどだった。その昔、マランツがモノーラル・アンプを2台カップリングしたアンプを発売していたが、その頃、ステレオといえども、この方式に大きなメリットのあることを某社のエンジニアに話しをしたが全くとり合ってもらえなかったことを思い起こすにつけ、アンプも進歩したものだ? という妙な感慨をもったものだ。薄紙をはぐように、紙一重の音質の向上に、大切なお金と貴重な時間をさいている我々アマチュア精神の持ち主が考えることなど、いちいち聞いてもらえないのも当然だと思っていたものなのだが、最近のようにメーカーが本格的に、こうした地道な基本に目を向け、その成果を定量的なデーターとしても明らかにしてくれることは喜びにたえないのである。
 ところで、このアンプ、いくらモノーラル・コンストラクションがいいといっても、それが全てでは勿論ないし先にも書いたように、ステレオ・コンストラクションでもいいアンプはたくさんあるのだが、音質のほうも、なかなかすばらしい。特にDA−A15パワー・アンプが素晴らしい。差動2段、カレントミー・ドライブ、3段ダーリントンによるピュア・コンプリメンタリー・サーキットは余裕のある安定した電源から150W×2(8Ω)の出力を引き出す。音に深味があって、しかも解像力のよい鋭い切れ込みをきかせる。高域も決してやせないし肉がつく。これに対してDA−P10のプリ・アンプのほうが、やや声域がハーシュに響く。ダイヤトーン独特の高域の華やぎといえるが、筆者にはこれが気になる。高域はもっとしっとり、繊細さと鋭さが豊かさと肉付きを犠牲にしてはならないと思うのだ。これで、そういうニュアンスが再生されたら、倍の値段でも高いとは思えない定価がさらにこの商品の可能性と魅力を高めているのである。
 情熱に裏付けられた、よほどの販売自信がなければ、この品物をこの値段で売ることはできないのではないかと思うほどの価値をもったアンプだ。

フィデリティ・リサーチ FR-64S

岩崎千明

スイングジャーナル 6月号(1976年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 この1年間ほど米国のオーディオ誌やステレオ・レビュー誌の広告に、FRのアームが真上からみた原寸にも近い大きな姿勢で載っている。この広告は決しでFRのものでもないし、無論トーンアームの広告でもない。シェルはSMEだがアームはまぎれもなくFR54がなぜか登場しいる。おそらく広告制作者が、FR54の美しい姿態に魅せられての結果だろうということは十分察しがつくというものだ。現在世界に何10種とあるトーンアームの中で、奇をてらうことなく本格派の風格を、これほどのセンスでまとめ上げたアームは他に探すのはちょっと難しかろう。このアームに眼を止めた読者は、単純にその美しい姿を無意識のうちに理解し、更にその広告主のセンスの良さを無言の中で受けとめよう。
「名は態を表わす」というのと同じくらい「態は内側を表わす」ものだ。外観の上にその中味はにじみ出るから「美しい」ものは必らずその内容も悪かろうはずがない。これは真理だ。人の世に芸術というものがある以上、自然の法則ともいえよう。
 ところでこのFR54を外観の上でも、内容としてもはるかに凌駕する製品が出現した。このスーパースターこそFR64Sなのである。
 FRは軽量級MC型カートリッジFR1と、そのアームFR24をもってスタートした。その後、MM型カートリッジFR5を加え、さらに汎用アームFR54を加えて今日の基礎を成してきた。今、FR6シリーズ、さらにFR101とMM型カートリッジ陣を展げ さらにFR1は1度の改良を加えて性能をはるかに向上させた。そうした一連のグレード・アップともいえるカートリッジを最も理想的に動作させるため、実働性能の優れたトーンアームを既に数年前から開発中だった。実働性能といういい方は少々理解し難いかも知れぬ。例えばレコードのコンディションやプレイヤーの動作環境を考えれば、必らずしも理想状態にいつもあるとはいえない。いや逆に実際のコンディションは、理想状態とは程違いというのがディスク再生の実際なのである。
 これを考慮したとき、今日の高感度軽量級アームの基本技術といえるスタティック・バランス・タイプの全ては実用的動作で問題を内蔵することになる。レコードの偏心、ソリ、プレイヤーの傾き、水平の保持の不確かさ、こうした全てが重力をたよりにしたスタティック・バランス型では裏目に出てしまう。針圧を加えんと、カウンター・ウエイトをずらして水平バランスをくずした時から、このウイーク・ポイントに常に脅かされることになるというわけだ。アーム自体の水平バランスを完全にとった上で、スプリングによる針庄加圧をするダイナミック・バランス方式こそ理想だ。プレイヤーをほんの少し傾けてみたとき厳然たる事実として、それは誰にでも確かめられよう。プロフェッショナル用アームにおいて、ダイナミック・バランス型の多いのも理由がはっきりあるのだ。
 ところが、このダイナミック・バランス方式は機構として針圧加圧のためのスプリングを内蔵するが、これが実は難物だ。市販の量産品にこのタイプがない最大の理由がそれである。現実にEMTのプロ用アームにおいてもその1グラム単位のひと目盛は2m/m程度の大まかなものであるのは、スプリングの許容誤差を究めることが至難なことを示している。
 さて、FR64S開発に既に5年あるいはそれ以上を経たはずだが、今日の新型はなんと0・5g刻みで、1目盛は4m/m近くもある。つまり1gあたり8m/mはあろう。これはかつてあらゆる海外の業務用メーカーの達し得なかった領域で、そこに使われているスプリングの構度の極限をまさに一眼で表わしているといえよう。ダイナミック・バランス型の良さを承知していても実際上、製品化の難しいのは当事者たるメーカー各位がよく知っているはずで、最近になってやっと数種が国産製品化に成功したに過ぎない。その数少ないダイナミック・バランス型の中にあってFR64Sは、もっとも高精度のアームといってよい。加うるにステンレス・アームによる超低域特性の確固たる音は、価格5万5千円を補って余りある内容と知れば、誰しも納得してしまうことだろう。

サンスイ AU-7700

菅野沖彦

スイングジャーナル 6月号(1976年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 サンスイから新たに発売されたプリ・メイン・アンプAU7700は、一聴して歪のない快よい音が印象的であった。どこかうつろといってもよいような、それは、空胴感をもっているのである。私には、よくも、あしくも、これがこのアンプの音の特長に感じられる。だいたい、従来から、メカやエレクトロニクスのプロセスを通った録音再生音は、あまりにも音の存在感があり過ぎたように私には感じられてならない。色でいえば、不透明な顔料とでもいえるのだろう。一種特有の壁のように私の前に立ちふさがるのである。音には、それが自然音の場合、どんなに衝撃的な迫力のある音であっても空中を浮遊する美しい透明感と、突きあたりのない奥行、つまり立体感に満ちている。このアンプが私に与えた空胴感というのは、いわば、一種、この感覚に近いものであって、これは歪の多いアンプには絶対にないものだと思う。しかしである。自然音の魅力は、そうした透明感、空胴感は、確個とした実体感とバランスを保ったものであって、決して最近の低歪率音響機器と称せられる製品の多くが持っている弱々しい虚弱さとは異るのである。こう書いてくると、いかにも生の音とそっくりの再生音……つまり一頃よく云われた原音再生こそ理想だといっているようにとられる危険性を感じるが、私のいわんとしているのは、それが生であろうと、再生音であろうと、美しい音ならばいいわけで、現状では、自然音のもつ美しさに匹敵する再生音がまだ得られていないというだけのことである。透明感が得られたと思うと力がなくなり、力があると思うと歪感があるといった具合で、なかなか思うようにはいかないのである。このサンスイのAU7700というアンプも、どちらかというと、少々力が足りない。やや歪の多いスピーカーを鳴らしたほうがガッツのある音がする。スピーカーは未だ歪だらけだから、それを鳴らすアンプとしては今の所、解析されている歪は出来るだけ減らしていったほうがいいのである。しかし、問題は歪感のある音……つまり、元々、とげとげしい音、荒々しい音まで、ふんわりと鳴らしてしまうことである。残念ながら、現在の音響機器から、理解されている歪をどんどん減らそうと局部的に改善を重ねていくと、どういうわけか、そんな傾向へいってしまうようなのだ。その証拠に、現在、測定データで歪のもっとも少ないとされるスピーカーは、まるで無菌状態のように、ふぬけの音がするのである。改善が局部的というか片手落ちというか、トータルでのバランスをくずす結果の現象と推察する以外にない。
 このアンプは従来のサンスイのアンプのもっていた馬力というものより、むしろ、よく抜けたすっきりとした音というイメージが濃いが、この辺にサンスイのアンプの進歩を明らかに見出すと同時に、一抹の不安を感じさせられるのである。その不安は、このアンプそのものにあるのではなく、そういう傾向に進んだとしたら……ということだ。サンスイは音の専門メーカーとして、聴感上のコントロールを重視しているので、その心配はないかもしれないが……。音に関する限り、それが研究所内での実験ならいざしらず、テクノロジーだけに片寄っていくとそうした危険を伴う。そういった現状での電気音響技術の不完全性が商品に現われてしまうという事実を認めざるを得ない。現時点での最高のテクノロジーといえども、目的である音(感覚対象としての)を100%コントロールすることは出来ないのである。AU7700は、この点、両者がよくバランスしたアンプであって、商品としての実用性が高い。20Hz〜20kHzの帯域で両チャンネル駆動で50W+50Wの出力が保証され、高周波歪、混変調歪率0・1%以下に収められているが、合理的な設計が随所に見られる最新鋭器である。惜しむらくはデザインで、内容を充分に象徴するところまでには至っていない。リアの入出力ターミナルのパネルがリ・デザインされ便利になっているし、努力の跡は大いに認められるのだが、未消化な面取や無理なスタイリングが高級品に必要なシンプリシティを害している。電源の安定化(±2電源)、配線を極力排した基盤と直結のコネクター類、一点アースなどオーソドックスな技術面での追求によって得られた音質は、このアピアランスを上廻っているのである。初めに書いたように、力強さから、品位の高い透明感に近づいたサンスイの新しいサウンドは、音の美しさを一歩高い次元で把えるマニアに喜ばれるものだろう。

ヤマハ NS-1000M

岩崎千明

サウンド No.6(1976年5月発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より

 ヤマハのオーディオ技術は他社と違って、はっきりした特長がある。それはオリジナル技術を持っている点で、アンプのV-FET、スピーカーのベリリューム・ダイアフラムだ。ともに他社にその類似製品があるが、ヤマハの場合、独力に近い形で一から始めて商品化に成功し、製品化にこぎつけたという点でユニークだ。
 ベリリューム・ダイアフラムは、それまでのジュラルミン系のダイアフラムにくらべ2倍も硬度が高く、重さはかえって軽いという驚くべき金属で、これが高音用に用いられると、同じ口径なら1オクターブ上の周波数範囲までピストンモーションが確保される。つまり理想状態でスピーカーが動作する。
 NS1000Mとして中音、高音にこのベリリューム・ダイアフラムを着装したシステムは、おそらく始めて海外製品を越えたサウンドを得たと断言できる。このシステムを聴いて海外メーカーの技術者は、おそらくどれほど驚いたことだろう。
 オーディオファンとして、JBLのシステムと切換えて、それに匹敵するサウンドの国産品が誕生したことを、半ば信じられない形で驚嘆した。それは、もう1年も前か。今、その第2弾としてヤマハNS500がデビューしたばかりだが、普及価格帯にまでベリリューム・ダイアフラムが登場したことには、オーディオ王国・日本の誇りと心強ささえ感じたものだ。
 さて1000Mのデビュー以来、このシステムはいろいろな形で常に座右にあってモニター用としての威力をふるっているが、そのすばらしさは誰かれとなくスピーカーにおいての国産品を見直すきっかけを作ってきた。
 10万円のスピーカーにしては1000Mの外観は少々おそまつかも知れぬが、それは実質本位のなせるためで、黒檀仕上げの14万円の1000の方が、より風格も雰囲気もあるのは当然だ。しかし10万円のシステムというラインの中でのNS1000Mのサウンドの魅力は、何にも増して強烈だ。マニアほどそれを鳴らさんと、やる気を起こさせる。

ダイヤトーン 2S-305

岩崎千明

サウンド No.6(1976年5月発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より

 世界のスピーカーがすべて「ローディストーション、ワイドレンジ、フラットレスポンス」を目指す今日、その先見の銘をもっていたのがダイヤトーンの305だ、といったら誰かになじられようか。事実、三菱がハイファイ・スピーカーに志向し始めたとき、その目標としたのが前提の3項目であるし、それはなんと今から20年も前のことだった。
 その最初の成果が30センチの2ウェイ305であり、続く2弾が16センチのP610であり、どちらも20年以上の超ロングセラーの製品なのだ。305は最初、良質なる音響再生に目をつけたNHKによってモニター用として使用され始め、今日にいたるも、その主要モニターとして活躍し続けている。30センチの大型ウーファーに5センチの高音ユニットを、1500Hzのクロスオーバーで使うこの2ウェイ構成は、なんとごく最近の英国KEF製のBBCモニターにおいてトゥイーターユニットが2つだが、まったく同じ組合わせの形をしている。これは果たして偶然なのであろうか。KEFのモニターが、よく聴いてみればダイヤトーン22S305と酷似しているのは当然すぎるほど当然だ。三菱305の場合、日本のマニアからみれば国産品という点において、いわゆる舶来品との違いが商品としての魅力の点で「差」となってしまうのが落し穴なのだ。
 だから、もう一度見直して、いや聴き直してみたい。それがこの2S305だ。いくつかの驚くべき技術が305には秘められているが、そのひとつはウーファーのボイスコイルだ。そのマグネットは巨大で、ヨークの厚さに対してボイスコイルが短かい、いわゆるロングボイスコイルの逆の、ショートボイスコイル方式だ。これはダイヤトーンのウーファー以外には、JBLの旧タイプのウーファーだけの技術である。国産品の中にJBLの技術にひけをとらないといい得るのは、なんとこの305だけなのである。JBLなみに手元におきたいモニターシステムというのは、その理由だ。

サンスイ SR-525

サンスイのアナログプレーヤーSR525の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

SR525

ヤマハ C-2, B-2

岩崎千明

スイングジャーナル 4月号(1976年3月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 市場の数ある高級セパレート・アンプの中で高い評価を得たひとつにヤマハCIとBIのペアを上げるのは妥当であろう。V−FETという現代的なデバイスを基にした技術がアピールされたパワー・アンプBI。至れりつくせりのフル機能の内側をそのままのパネル、デザインの豪華にして、ぜいたくなプリ・アンプCI。ともに「豪華型」において、ひとつのはっきりした特長をズバリと明確にし、ユーザーにポイントをはっきりと把握させることができた点がひときわぬき出た成功の源動力となったといえよう。それというのもこれだけ大きく取り上げて謳い上げ得る特長を持ち、それを外観的デザインに完成させた。
 ところで、こうしたBI、CIの初期段階での華麗なる成功があっただけに次なる豪華型アンプはひどくむつかしくならざるを得ない。大スターのあとに続くスターは、前者を乗り越えなければ成功につながらない、という宿命を内蔵し、それが思い通りに事の運ばぬ大きな理由ともなるものだ。
 ヤマハのC2、B2は、こうした点でCI、BIよりもはるかに試練を受けるべき立場にある。CI、BIの成功が大きければ大きいほど、こうした宿命ともいうべきものを背負ってしまうということになるのである。
 C2、B2はこうした背景のもとに早くから多くの関係者から強く期待され、その期待は時とともに高まった。
 そのヤマハのC2、B2がやっと姿をあらわした。
 ごく一部に片鱗が伝えられていた通りに、C2はCIとはすべての点で、まったく違っている。フル機能ともいい得るほど、考えられるすべての使用用途に応じられるスイッチ類や、コントロール類を盛り込んだCIに対して、C2はすべての点で簡略化されている。外観的にも、C2は高さ8センチにも満たない超薄型の形態にまとめられて、デザイン以上に構造上からもユニークだ。
 プレイヤーがそのまま乗りそうな大きな上面パネルは、側面と一体で全体の強度の中心となっていて、分厚いダイキャストの引きぬきだ。
 全体は上品な艶消しの黒で仕上げられでいるが、ともすると重い感じに陥りがちなこのイマージュを、ケースの縁との断ち落されたようなシャープなラインが外側を囲むように包んでいて、この鮮かなカットが現代的な感覚を強めているため、全体としてスッキリとした格調の高いイメージを強く訴えている。
 裏ぶたを取ると単純化された回路ブロックごとに整然とした配列が、大きなプリント基板の上に見られ、その細かなパーツは整然と並んで僅かの乱れもみせない。回路の部品点数こそ多くないが、そのひとつひとつが大変高い精度であることは、パーツの外観からも確かめられる。数少ないスイッチやコントロール・ボリュームも密閉式であったり、スイッチの接点の金属の輝きにも厳選された高級品としての格調がはっきりと認められるのも、ヤマハの超高級アンプらしい。
 こうした細かいひとつひとつの積重ね、集積がその全体のサウンドの上にも如実に表われているのは響きの澄んだ冴え方から判断できる。
 単純化イコール純粋というパターンの典型が、このC2のすべてでもある。アンプの電子回路的な見地からもパーツからの視点でも、さらにその創り出すサウンドの世界からもこのパターンをはっきりと聴くものに知らされるのだ。CIとの比較試聴がこの特長をひときわきわだたせる。つまり、CIが至れり尽せりの回路の完全性で、非のうちどころのないサウンドとして我々を驚かせるのに対して、C2は自然感そのもの、ナチュラルな響きと素っ気ないまでの素直なことこのうえないスッキリした再生ぶりだ。すっかり賛肉を取去ったこのC2こそ、まさに現代ハイファイが求める音の方向なのだ。
 C2に多くを語ったためB2へのスペースが少なくなってしまったが、そのV−FET出力回路の技術はBIからの直系のもので、特に中出力(といっても100W十100W)の実用的高出力でゆとりをもって鳴らすさまは、BIと置きかえても羞を感じさせないほどの再生クォリティーといってよかろう。
 願わくは、この日本の誇る豪華型アンプがより多くの方の耳にいっときも早く達することを。

トリオ KA-9300

菅野沖彦

スイングジャーナル 4月号(1976年3月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 トリオが昨年一年間にアンプに示した積極的な姿勢は目を見張らせるものであった。その初期に展開したCP戦略は、必らずしも私の好むところではなかったが、見方を変えれば、トリオの生産力の現われとして評価することもできるだろう。KA3300を皮切りに1W当り1000円という歌い文句は少々悪乗りが過ぎたし、オーディオ専門メーカーとしての真摯な態度とは私にはどうしても考えられなかったけれど、その後、KA7300、そして今日のこのKA9300に至って、矢張り本来のトリオであったことを実感させられて嬉しくなった。近視眼的に見れば安い製品の出現や、安売り販売店の横行は、ユーザ一に利をもたらすかのごとく見えるものだが、度を超すと、それが、いかに危険な悪循環の遭をたどるかが明確やある。オーディオを愛す専門のメーカーとして、ここまで、共にオーディオ界の発展向上に尽してきたメーカーならば、こんな事は百も承知のはずで、昨日今日、その場限りの儲け主義で、この世界に入りこんできた連中の無責任さと同じであっては困るのである。まあ、過ぎた小言はこのぐらいにしてKA9300について話しを進めよう。トリオが、アンプの特性と音質の関係について、恐らく業界でも一、二を競う熱心な実験開発の姿勢をとってきていることは読者もご存じかもしれない。いささかの微細なファクターも、音に影響を与えるという謙虚な態度で、回路、部品、構成の全てに細心の注意を払って製造にあたっていろ。その姿勢の反影が、このKA9300に極めて明確に現われているといってよいだろう。前作KA7300という65W十65Wのインテグレイテッド・アンプが左右独立のセパレート電源を採用して成果を上げ、本誌でも、その優秀性について御紹介した記憶があるが、KA9300も、この電源の基本的に優れた点を踏襲し、アンプの土台をがっしりと押えている。この左右独立方式は、パワー・アンプのみならず、プリ部にも採用されて、電源のスタビリティーの高さを図っているものだ。二個のトロイダル・トランスの効率の高さは熱上昇の点でも、インテグレイテッド・アンプには有利だし、それに18000μFの電解コンデンサーを4個使って万全の構えを見せてくれている。この電源への対策は、アンプの音の本質的なクォリティの改善に大きく役立つもので、建前でいえば、基礎工事にあたる重要なものだから、こうした姿勢からも、トリオがアンプに真面目な態度で臨んでいることがわかるだろう。出力は、120W+120Wと大きいが、このアンプの回路は、大変こったものであることも御報告しておかねばなるまい。それは、パワー・アンプにDCアンプ方式を採用していることである。DCアンプは今話題の技術であるが、これが、音質上いかなるメリットを持つものであるかは、まだ私の貧しい体験からは断言できない。しかし、世の常のように、ただDC動作をさせているから音がよいという短絡した単純な考え方はしないほうがよいだろう。DCアンプともいえども、それだけで、直に音質の改善につながると思い込むことは早計であり過ぎるのではないか。アンプの音は、部品の物性、配置、構成などのトータルで決るものだからである。しかし、ごく控え目にいって、このアンプのもつ音は素晴らしく、きわめて力強い、立体的な音が楽しめる。音の質が肉質なのだ。つまり有機的であって、音楽に脈打つ生命感、血のさわぎをよく伝えてくれるのである。DCアンプで心配される保護回路については、メーカーは特に気を配り、ユーザーにスピーカー破損などの迷惑は絶対にかけないという自信のほど示してくれているので信頼しておこう。低い歪率(0・005%定格出力時8?)、広いパワー・バンド・ウィガス、余裕ある出力と、よい音でスピーカーを鳴らす物理特性を備えていることも、マニア気質を満足させてくれるであろう。ベースの張り、輝やかしいシンバルのパルスの生命感、近頃聴いたアンプの中でも出色の存在であったことを御報告しておこう。そして特に、中音域の立体感と充実が、私好みのアンプであったことも……。

オーレックス C-550M

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このカートリッジは、発電方式は、MM型であるが、振動系のカンチレバーにカーボンファイバーを採用している。カンチレバーは、グラスファイバーの0・37mm径のソリッド材を使用し、針先には、オーレックスで開発したエクステンド針を使っている。このタイプは、音溝との接触が、カッティングレースのカッター針に近い、ラインコンタクトタイプで、高域の分解能が優れ、接触面積が大きいために、針先、音溝両方の摩耗が少ない特長がある。この針は、ダイヤモンドと同等の硬度をもつコランダム結晶を研磨している。

サンスイ SR-323

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからの新しいプレーヤーシステムは、シンプルなデザインをもつ、ベルト・ドライブ方式の製品である。
 直径30.3cmのアルミ合金ダイキャスト製のターンテーブルは、重量が1.1kgあり、4極シンクロナスモーターで、ベルト・ドライブで駆動される。
 トーンアームは、実効長220mmのS字型ユニバーサル型であり、針圧は、メインウェイトを回転して印加する。トーンアームの付属機構は、ラテラルバランサーと、SMEタイプのインサイドフォースキャンセラーがある。回転軸受部分にSMEと逆方向に出たバーがバイアスカーソルで、0.5gステップで2gまで針圧対応でバイアスをかけることが可能である。付属カートリッジは、MM型で0.5ミル針付である。

デンオン SL-71D

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフレーヤーシステムでは、DP−3700Fのように、モデルナンバーの頭文字がDPではじまる一連のシリーズが、よく知られているが、今回、発売された、新しいシステムは、モデルナンバーがSL−71Dと付けられていることからもわかるように、異なったシリーズであり、以前のベルトドライブ型プレーヤーMTP−701などの後継機種と考えられる。
 直径33・8cmのアルミダイキャスト製ターンテーブルは、その外周部分が一段落ちになっていて、この部分に、ストロボのパターンが刻まれ、プレーヤーベースの左手前にある大型のネオンランプで照明されるが回転数の確認は、容易なタイプである。
 トーンアームの下側のパネルには、操作部分が集中し、それぞれが単機能でコントロールされる方式である。実効長235mmのS字型のパイプをもつトーンアームは、スタティック・バランス型で、メインウェイトを回転して、0.1gステップで3gまで針圧を印加できる。アームに付属するアクセサリーは、インサイドフォース・キャンセラーとアームリフターがある。アームは、全体が黒で統一してあるために、カーボンファイバー製とも思いやすいが、充分な剛性を得るために、硬質アルマイト加工された結果である。付属カートリッジはJM−16は、MM型で、0.5ミル針付のものだ。
 DD方式のモーターには、アウターローター型、ACサーボモーターを使用しており、回転数の制御は、周波数検出型である。
 本機は、このクラスのプレーヤーとしては、これといって目立つ点が少なく、平均的な印象の製品だ。しかし、いわゆる音のよいプレーヤーという言葉があるが、結果として得られる音質は、かなり高級プレーヤーに匹敵するものがある。全体に、音が引締まり、力強く、とくに、中域の下から低域にかけてこのことが著しい。
 プレーヤーシステムの音の差は、よく問題にされるが、現実に機種間の差は、かなりあり、その程度は、少なくともアンプ以上である。選択にあたって、ヒアリングテストが不可欠である。

スペックス SD-909, SDT-77

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スペックスからは、MC型のSD−909である。このカートリッジは、共振を防ぐために、カートリッジのボディに、航空機用の軽合金を使い、共振点の異なる2つの材質が共振を打ち消す構造である。
 振動系は、78・5%PCパーマロイを使った巻枠に巻いたコイル、つまり発電系と、カンチレバーの振動支点が一致するワンポイント支持方式を採用し、温度変化にたいして一定のダンピング係数を保つために、異なった性質の材料を2枚合わせてプッシュプル方式を採用している。
 SD−909は、MC型で、精密な作業をおこなうために、少数生産でつくられ、一日に21個しかつくれないとのことだ。
 SD−909などの低出力MC型カートリッジの昇圧用トランスとして、スペックスでは、SDT−77が用意されている。このトランスは、SDT−180newのトランス本体をベースとし、より使いやすくよりスペースをとらない小型にするために、かずかずの改良が加えられている。
 この種の昇圧トランスは、入力インピーダンスのマッチングを、切替によっておこなうのが一般的であるが、ここでは、切替不要の独得のトランス設計により、2〜50Ωのインピーダンス範囲では、切替なしで使用できるとのことである。
 SD−909を、SDT−77をペアにして使ってみる。従来からも、スペックスのMC型カートリッジは、音色が明るく、力強い音を特長としていたが、SD−909は、この系統を受継ぎながら、さらに、音の密度が高くなり太い線も表現できるMC型としてユニークであると思う。

ラックス L-30, T-33

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプとしては、突然、昨年秋のオーディオフェアで発表されたジュニア機である。外観上は、80シリーズ以前の木枠を使ったフロントパネルをもつために、ラックスファンにと手は80シリーズよりも親しみやすいかもしれない。パワーは、35W×2とコンシュマーユースとしては充分の値で、回路面や機能面でも、従来のプリメインアンプを再検討して実質的な立場から省略すべき点を省略し、価格対音質の比率をラックス的に追求して決定した、いわば気軽にクォリティの高い音で音楽を楽しめるアンプである。
 L30のペアチューナーとしてつくられたのがT33である。価格は、抑えられたが、回路的には最新技術が導入されているとのことで、実用電界強度を表示する信号強度表示ランプがあり、FMミューティング、ハイブレンドを備えている。

ラックス L-85V

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプのなかでは、中核をなす位置にあたる80シリーズの製品である。従来、このシリーズには、L80VとL80の2モデルがあったが、これに今回、L85Vが加わり、3モデルで80シリーズが構成されることになった。
 L85Vは、80シリーズトップモデルであるだけに、パワーも、80W×2とパワフルである。外観上は、ラックスの一連のM−6000に代表される新しいアンプに採用されたものと共通なデザインポリシーをもっているが、80シリーズの特長は、フラットなフロントパネルを採用している点にある。しかし、パネルフェイスを立体的に見せるために、コントロールツマミやレバースイッチがアンプ内部のボディにセットされ、ちょっと見るとフロントパネルがフローティングされているように感じられるのが、このシリーズのユニークなところだろう。
 L80と80Vは、共通のフロントパネルをもつがL85Vは、イメージ的には共通だがリニアイコライザーが加わり、スピーカースイッチがロータリータイプになったために、フロントパネルはこの価格帯のプリアンプとして立派なものになっている。
 主な回路構成は、イコライザーにC−1000と同じ回路構成をIC化し、出力段のみがディスクリートのA級インバーテッド・ダーリントン・プッシュプルである構成が採用されている。トーンコントロールは、LUX方式NF型で、ボリュウムには、21接点のディテント型が使ってある。パワーアンプはM−6000などの開発の経験をいかした差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCL方式で、プリドライバー段を定電流駆動とし、さらにこれにつづいて定電流駆動のエミッターフォロワーを使い、A級動作のプリドライバー段とB級動作のパワー段とを電気的に分離してスピーカー負荷によるインピーダンス変動が、プリドライバー段におよぶのを防いで、広い周波数にわたる低歪化を図っている。

オーレックス ST-720

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 シンセサイザー方式のFMチューナーとしてはオーレックスの第2弾製品である。価格的には、複雑な構成のために10万円をわずかにこしてはいるが、デジタル表示の未来志向型のチューナーとしては、充分に魅力的な価格であるの楽しい。
 選局は、カード式の変形ともいえる4組のFMユニット(周波数メモライザー)の内部にFMピンボードを規定に従ってあらかじめ希望局の周波数に合わせてセットすれば機械的に周波数はメモリーで気、このユニットにラベルを貼り局名を表示できる。
 マニュアルは、10MHzの桁で70か80を選択し、1MHzと0.1MHzは8、4、2、1を加算して0〜9を選択する方式で、最初は難解に思われるが慣れれば明解であるため、問題はない。プリセットチャンネルスイッチは4個のFMユニット用と、マニュアル用の5組あり、マニュアルはあらかじめセットしておけば、第5のFMユニットとしても使用できる。ファンクションとしては、国内の放送バンド以外の周波数をマニュアルでセットした場合になどに、点滅して警告するチューニング・エラー表示ランプやエアチェックのレベルセッティングの目安となる50%変調と100%変調に相当するレベルの信号が出力端子に出せるエアーチェック・レベルスイッチなどを備え、この種のチューナーに、ふさわしいものとしている。

オーレックス SB-820

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーレックスの新製品は、プリメインアンプとしては高級機に属する10万円以上、15万円までの価格帯に投入されたモデルで、パワーは82W×2と、このクラスとしては平均的であるが、とくにテープ関係の機能を重視しているのが特長である。
 外観は、フラットフェイスのフロントパネルに大型のボリュウムコントロールをもつ、かなり現代的な傾向を捕えたデザインである。トーンコントロール関係やフィルター類は、各2周波数を選択でき、このクラスの標準型といえるものだが、フィルターの高域に20kHz、低域に10Hzがあるのは、例が少ない。テープ関係は、リアパネルに2系統の入出力端子をもつ他に、ボリュウムの下側にジャックタイプのテープ3を備え、レバータイプとロータリータイプがペアとなったテープモニタースイッチとロータリータイプのデュープリケイトスイッチがあり、3系統のテープデッキを多角的に活用できる点は注目したい。
 回路構成は、差動2段の3段直結A級イコライザー、FET差動1段の2段直結NF型トーンコントロール、NF型フィルターアンプが、プリアンプ部分であり、パワーアンプは初段の差動アンプがカスコード接続になっている差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCLで、パワートランジスターは並列接続でない、いわゆるシングル・プッシュプルである。このモデルも、オーレックス独自のCADISによる一台ごとの実測データがついている。

ラックス M-2000

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品はM−6000、M−4000と続いて発表されてた一連のハイパワーアンプに続く、第3のパワーアンプであり、基本とする設計思想もまったく同様なものである。発表された規格も、M−4000と比較してパワーが120W×2であることを除いてほぼ同等であり、外観上も棚などに置かれてあると区別はつきがたい。ただ、外形寸法上で奥行きが、11・5cm短いのが両者の大きな違いといえよう。
 回路構成は、差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCLで、出力段のパワートランジスターは、並列接続のパラレル・プッシュプル構成である。入力回路には単独のエミッターフォロワーがある。電源部は左右チャンネルの出力段用に別系統の電源が用意され、2個の2電源用電解コンデンサーを使用している。ドライバー段を含む他の増幅段用には、定電圧電源からの電圧が供給されている。
 フロントパネルにある2個のレベルセット用ボリュウムは、1dBステップのディテント型で、とくにチャンネルアンプなどに使う場合には好ましいものだ。付属回路には、LED表示のピークインジケーター、平均レベル表示のVUメーターと0dB〜10dBのメーター感度切替スイッチがある。
 M−2000は、M−4000にくらべると全体にひかえめな印象の音である。しかし音の粒子は細やかなタイプで、ローレベルの音が美しい。これをC−1010と組合わせると、音に活気が加わりスッキリとした爽やかな音になるのが印象的である。直接、C−1000とは比較しないが、C−1010のほうが明るくフレッシュな音をもつように思われる。

デンオン TU-355

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、同社のPMA−255と組み合わせるFM専用チューナーである。フロントパネルは、チューナーとしては、横長型のスライドレールダイアルを廃して、2個の大型レベルメーターをもつ、個性型チューナーTU−500をベースにしている。TU−500と比較して変更されたのは、2個のレベルメーターが、フロントパネル左側に並んでセットされた点と、センターチューニングメーターが独立したことだ。
 TU−355のダイアルは、窓の部分こそ小型だが、直径12cmのドラムを採用しており、目盛りの全走行長では、28・3cmと長く、200kHzごとに等間隔目盛りであり見やすいタイプである。ダイアルの回転機構は、ステンレスシャフトと合金軸受の組合わせでフィーリングは、スムーズである。
 2個のレベルメーターは、それぞれ、チューナーの出力レベルを指示するが、左側は信号強度計として兼用している。メーター切替スイッチは、3段切替型で、リアパネルにあるエキスターナル端子からの信号を指示することも可能である。この場合には、フロントパネルにあるエキスターナル・アッテネーターを使い−30dBから+33dBまで、つまり、24・5mVから、34・6Vまでの指示が可能でエキスターナル端子の入力インピーダンスが200kΩ以上あるために、簡易な測定器としても利用できる。
 フロントエンドは、5連バリコン使用で、高周波一段増幅、段間トリプルチューンの同調回路とデュアルMOS・FETの組合わせ、信号系と制御系を二分割した2系統のIF段、PLL採用のMPX部のほか、オーディオアンプは2段直結NF型である。
 このチューナーは、音質的には、TU−500よりも、音の粒立ちがよく比較をすると、ややクリアーで抜けがよい。

サンスイ TU-7900, TU-5900

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 価格ランクこそ異なっているが、新しい2機種のチューナーは、好みにより、3機種のプリメインアンプのいずれともペアにできる。デザイン的には、TU−9900のイメージを受け継ぎ、性能面では実用上もっとも影響力が大きいSN比50dB時の感度向上にポイントが置かれている。
 TU−7900は、RF段にデュアルゲートMOS型FETと複同調回路をもつ4連バリコン使用のFMフロントエンド、低歪化と選択度を両立させるフェイズリニア・セラミックフィルターを採用したFM・IF段、それに、PLL方式のMPX部をもつ、オートノイズキャンセラー、FMアンテナ入力を抑えるアッテネーターをフロントパネルに備えている。

サンスイ AU-7900, AU-6900, AU-5900

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイから、新モデルとして3機種のプリメインアンプが発売された。これらの製品は、ハイパワーのプリメインアンプであるAU−20000でおこなわれたパワーアップの考え方を、中価格帯に導入したもので、サンスイのいうパワーアップとは、単なるパワーの増強ではなく、質的な高さをも含めた、質量ともどもの向上を意味しているとのことである。また、特性面では、音楽信号を入力するアンプの動特性の改善、低歪化などが追求され、とくに電源部についてはパワーイコール電源という考えで、電源部を重視しているのは現在のアンプの共通の特長と考えられる。
 AU−7900は、75W×2の出力をもつ今回の発売機種としてはもっとも高価格なモデルであるが、従来のAU−9500に匹敵するパワーである。機能面では、中音コントロールをもつTTCがサンスイのアンプの特長である。AU−7900では、高音が2kHz、4kHz、8kHzに湾曲点をもつ3段切替であり、低音は150Hz、300Hz、600Hzに湾曲点をもつ3段切替であるが、中音は1500Hzを中心にして±5dB変化させることができる。
 フィルターは、高音が7kHz、6dB/oct.と12kHz、12dB/oct.であり、低音が20Hzと60Hzと切替可能な12dB/oct.型である。ラウドネスコントロールは、ローブーストとハイローブースト切替型であり、ミューティングは15dBステップの2段切替である。
 回路構成上の特長は、初段に差動増幅を使った4石構成のNF型イコライザーを採用し、特性を改善するためにイコライザー基板は入力端子に直結する構造になっている。パワー部は、初段が物理的に安定度が高いデュアルトランジスターを使った差動増幅をもつ、全段直結コンプリメンタリーOCL方式で、電源部は大型のパワートランスと15000μF×2の電解コンデンサーを採用している。なお、トーンコントロール段は、ディフィート時には信号kからバイパスされるのもサンスイのアンプとしては特長になるであろう。
 AU−6900は、基本的にはAU−7900を基本にしてパワーを60W+60Wとしたモデルと考えてよい。機能面では、TTCの高音と低音がそれぞれ2つの周波数を選択できる2段切替になったのをはじめ、フィルター、ラウドネスコントロールともに一般的なタイプに変更されている。
 AU−5900は、3機種中ではもっともローコストなモデルであるが、機能面ではTTCの高音と低音の湾曲点切替が除かれた以外AU−6900と同等で、逆に考えれば、多機能な機種とも考えられる。
 3機種共通のポイントとしては、プリアンプ部分が発表された規格から見るかぎり、共通なアンプが採用してあることだ。例えば、フォノ1の感度が2.5mVであり、カートリッジ負荷抵抗の3段切替をはじめ、イコライザーの許容入力が250mVと、まったく同じである。電源部の電解コンデンサーの容量も、3機種とも15000μF×2と等しく、プリメインアンプとしてのコンストラクションも、ほぼ共通である。

ラックス C-1010

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスの新しいソリッドステート・コントロールアンプは、そのモデルナンバーと外観からも判るように、既発売のC−1000コントロールアンプに続く機種で、いわゆる性能を落したジュニアタイプではなく、発表された規格を見てもまったく同等で、いわば実戦型のニューモデルだ。
 フロントパネルで、C−1000と変った点は、ボリュウムコントロールのツマミについていたタッチミュートが除かれた点で、これに伴って、タッチミュートのインジケーターランプがなくなっている。
 回路構成は、高域のリニアリティの改善と安定性とSN比の向上を狙った設計で、イコライザーが、ディファレンシャル・ダイレクトカップル方式と呼ぶ差動1段で、出力段がA級インバーテッド・ダーリントン接続のプッシュプル構成でテープデッキを負荷しても性能が落ちない特長があり、歪率が0・006%と低い。中間アンプも、イコライザーと同様な考え方のカスコーデッド・ダイレクトカップル方式であり、トーンコントロールは、LUX方式NF型だ。フィルターアンプは2石構成の定電流駆動のエミッターフォロワーで、不要な場合は信号系からカットされる。

テクニクス SU-8600, SU-8200

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプに目立つ傾向として、電源部分の音質に影響する点に着目して電源部の強化や、セパレート型のパワーアンプに採用されることが多い左右チャンネルの電源独立の手法が、プリメインアンプのパワーアンプにも採用されるようになっている。しかし、ことパワーアンプに関しては、かつてから経験豊かなファンはモノ構成のパワーアンプを使うことが音質を良くすることを熟知していたし、製品ではマランツの最初のソリッドステート・パワーアンプ♯15が、独立したモノアンプ2台でステレオアンプとしていたことは忘れられない。
 テクニクスのアンプは、従来から物理的な特性を重要視して、特性の優れたアンプが結果として音質の良いアンプをつくり出すというポリシーで開発されているように思われるが、今回の新しい2機種の8000シリーズのプリメインアンプも、とくに動的なトランジェント歪を追求して開発されたとのことである。
 音楽信号のように変化が激しい信号を増幅する場合には、安定度の悪い電源を使うと、無信号でにはアンプが最適動作点であったとしても、信号により電源が変動すると最適動作点からはずれて歪を発生することになり、これをトランジェント歪といっている。この解決は電源部の強化がもっとも有効で、SU−8600では3組の±電源をもつために±6電源方式をキャッチフレーズとし、さらにテクニクス独自のセルフトランジェント歪測定法により、一層の低歪化が図られている。
 フロントパネルは、2機種ともに横幅にくらべて高さが高く、両サイドにある大型のナットがメカニックな感じを出している。大型のボリュウムコントロールは、−30dB〜−40dBの間が2dBステップとなっている26接点のディテント型で、ラウドネス端子が設けられているために、小音量時には自動的に低域が増強されるタイプである。トーンコントロールは高音、低音ともにターンオーバー2段切替型で、SU−8600だけはトーンディフィートスイッチが付いている。フィルターは、SU−8600が12dB/oct.、SU−8200は6dB/oct.である。
 回路構成は、SU−8600の方がイコライザーに差動回路、変形SRPPの2段直結型、トーンコントロール段がカレントミラー負荷をもつ差動増幅を初段とした3段直結型、パワーアンプが差動増幅、エミッターフォロアー電圧増幅、出力段の構成で電源部の電解コンデンサーは15000μF×2となっている。
 一方SU−8200は、イコライザーがカレントミラー負荷差動回路と定電流負荷のエミッターフォロアーの2段直結型であり、パワーアンプは差動増幅、電圧増幅、出力段のシンプルな構成である。電源部は、プリアンプとパワーアンプが独立しており、イコライザーとトーンコントロールは定電圧化されている。

サテン M-18E

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サテンのカートリッジは、もっとも古いモノーラル用のモデルであるM−1以来、独自のポリシーのもとに、鉄芯を使用せず、ステップアップトランスも不要な、高出力MC型一途に、製品を送り出している。
 最近では、久しぶりに沈黙を破って、M−117を発表したが、今回の新製品、M−18は、M−117をベースとして発展させたモデルではなく、逆に、M−117のプロトタイプとして、M−117に先だって開発されたモデルである。
 サテンのムービングコイルは、三角形に巻かれているために、いわゆる、オムスビ型をしたスパイラル巻きであるが、M−18、M、117ともにダ円形のスパイラル巻に変更され、コイルが磁束を切る有効率が1/3から1/2に増し、M−117でも、質量は1/2と半減している。
 新シリーズは、カンチレバーの支持方法が、従来のテンションワイヤーによるものから、二枚の板バネとテンションワイヤーを組み合わせたタイプに変わり、カンチレバーは、二枚の板バネとテンションワイヤーの中心線の交点を支点として支持されるため支点は厳密に一点である。これにより、従来は不可避であったカンチレバーの軸方向まわりの回転運動がなくなったことが、新しい支持方式の大きなメリットである。また、コイルを保持し、カンチレバーの動きをコイルに伝えるアーマチュアも、大幅な改良が加えられ、50μの厚みのベリリュウム銅でつくったアーマチュアとコイルとの結合部がループ状になっており、電磁制動が有効に使えるタイプになっている。
 サテンのMC型は、針交換が可能なことも、忘れてはならない特長である。新シリーズは、交換針を本体に取付ける方法が、従来のバネによるものから、MC型が必要とする磁石の磁力によって交換針を保持する方式に変わった。
 M−18は、M−117の高級機であるために、精度が一段と高まり、ムービングコイルが、さらに軽量化されている。M−18シリーズは、4モデルあり、0.5ミル針付のM−18、ダ円針付のM−18E、0.1×2.5ミル・コニック針付のM−18Xと、コニック針付で、カンチレバーにベリリュウムを使ったM−18BXがある。
 試聴したのは、M−18シリーズのスタンダードとも考えられる、M−18Eである。MM型では、負荷抵抗による音の変化は、ほぼ、常識となっているが、MC型でも、変わり方が異なるとはいえ、負荷抵抗によって、音量が変化し、出力電圧も変化する。サテンでは、負荷抵抗として30Ω〜300Ωを推奨しているが、50kΩでも可とのこともあって試聴は、一般のカートリッジと同様に50kΩでおこなうことにした。
 M−18Eで、もっとも大きな特長は、聴感上のSN比がよく、スクラッチノイズが、他のカートリッジとくらべて、明らかに異なった性質のものであることだ。M−18の音は、文字で表現することは難しく、周波数帯域とか、バランスといった聴き方をするかぎり、ナチュラルであり、問題にすべき点は見出せない。ただ、いい方を変えれば、いわゆるレコードらしくない音であり、例えば、未処理のオリジナルテープの音と似ているといってもよい。他のカートリッジであれば、レコード以後のことだけを考えていればよいが、M−18Eでは、レコード以前の、いわば、オーディオファンにとっては見てはならぬ領域を見てしまったような錯覚をさえ感じる。この音は、誰しも、素晴らしい音として認めるが、使う人によって好むか好まざるかはわかれるだろう。

フォステクス GZ80, FP253, UP203Super, UP163, FE83New, FT60H, FT3RP, BK25, BK45, BK70, BK101, BK202

フォステクスのスピーカーシステムGZ80、スピーカーユニットFP253、UP203Super、UP163、FE83New、FT60H、FT3RP、エンクロージュアBK25、BK45、BK70、BK101、BK202の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

GZ80