菅野沖彦
ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より
ある種の雰囲気をもったどちらかというと内政的な音で、中高域の冴えがなく中低域以下が豊かだ。風格のある充実した音だが、音楽の内容によっては、もっと明るく、張り出した響きが欲しい。ワイドレンジで力もある音なのだが、少々しぶ味がある感じ。
菅野沖彦
ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より
ある種の雰囲気をもったどちらかというと内政的な音で、中高域の冴えがなく中低域以下が豊かだ。風格のある充実した音だが、音楽の内容によっては、もっと明るく、張り出した響きが欲しい。ワイドレンジで力もある音なのだが、少々しぶ味がある感じ。
井上卓也
ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
独自のデュオβ回路と、新しい方向性を示したパネルフェイスに特長があるラックスのニューラックスマンシリーズはプリメインアンプL58Aが最初の製品であるが、今回発売されたコントロールアンプC5000AとパワーアンプM4000Aは、このシリーズの最高に位置づけられるほか、ラックスのトップランクモデルでもある。
C5000Aは、L58Aと同じデザインのパネルフェイスをもつコントロールアンプである。
基本的な設計ポリシーは、高NFBアンプの問題点としてクローズアップされたTIM歪を軽減することにある。このため、オーディオアンプの基本に戻り、NFBをかける以前のアンプの裸特性を改善し、これに最適量のNFBを僅かにかけ、動特性および静特性を向上させようという構想に基づいて、デュオβサーキットを採用している。
回路面の主な特長は、イコライザー段とフラットアンプ段を同じ回路構成とし、
入力段にはFET4石のカスコード入力ブートストラップ回路を使用、トランジスターによる動抵抗回路や定電流回路を組み合わせて裸特性の向上を図る。出力段にはトランジスター4石によるSEPP回路を採用し、出力インピーダンスを極力低く抑えていることにある。
コンストラクション面では、最近の技術的傾向を反映して、アンプ基板に近接するシールド板、シャーシーなどの金属類を排除。静電的ノイズには抵抗体シートを木箱に貼って対処するなどのほかに、電源部を含めた左右チャンネルの分離、配線の単純化、最短距離化のためすべてのスイッチ類が直接基板に取付けられ、この基板を縦位置に取付けているため、独特のパネルフェイスとなって現れている。使用部品には音質の優れたチッ化タンタル抵抗やコンデンサーを使用し、ノンポーラコンデンサーのオーディオ的なポラリティまでも検討するなど、音質を重視した設計となっている。
M4000Aは、従来のM4000系の筐体に高域特性が優れ、クロスオーバー歪やスイッチング歪の少ないパワーMOS−FETを使用し、多量のバイアス電流と高速ドライバー回路を組み合わせて〝ノッチレスAクラス〟動作方式とした出力180W十180Wのパワーアンプである。
回路的には、裸特性の優れた回路に少量のNFBとDCサーボ回路を組み合わせた独自のデュオβサーキット使用で、左右独立電源、音質のよい15、000μF×4の電解コンデンサーとフィルムコンデンサーをパラレルに使用したことなどが特長である。入力端子は金メッキのRCAピンプラグ、出力端子はユニークな使用法のキャノンコネクターを採用している。
瀬川冬樹
別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より
ラックスの新しいシリーズがL58Aという、いわゆる高級プリメインアンプで、このアンプによってラックスの新しい側面が発揮された。そのL58Aを聴いた印象は、おそろしく音が滑らかで、透明で、上質で、聴き手を幸せな気分で満たしてくれる。それがこのL48Aにそっくり受け継がれているということを聴くことができて、私は聴き終わって非常に満足している。
音質 総合的に言って、これは質の高いアンプだと言っていいと思う。このアンプの音というのは、いまいったように滑らかさ、美しさということがまず第一だが、音にじめじめしたところがなく、とても明るく、クリアーで、すべての音が見事にハモってくれる。音楽を聴いていてすべて納得ができる。耳あたりは決して荒くない。そのくらい美しく磨かれている。アラを探してやろうというような意地の悪い聴き方を何度してみても、けってはなかなか見つからない。決してやせたり、細くギスギスしたりということがなく、量感はたっぷりしていながら、美しく、そして充実した音を聴かせてくれる。それから音はしっとりしているが、それが変に湿ったり、暗くなったりしない。明るさを保ったままで、しっとりしている。ベタぼめのようだが、このアンプの音というのは、この値段を考えると信じられないぐらい質の高い、本当の高級アンプで聴くことのできる音に近いものだと思う。
もう一つ、このアンプまできて、初めてブルックナーのシンフォニーの第一楽章から本気で聴いてみようという気になった。実はこれは大切なことで、この一つ前のマランツPm4というのは、大変いい面を持ったアンプだが、そのマランツではブルックナーを聴こうという気には、ちょっとなれなかった。つまり、ラックスもマランツも両方とも大変優れたアンプだが、マランツはポピュラー志向であるのに対して、ラックスはクラシック志向ではないかという気がする。
それではポップスはまるでだめかというというと、そんなことは全然ない。例えばマランツなどよりも少し甘口、ソフトタッチになるという違いはあっても、しかし決して露骨に柔らかくなったり、ふやけたりするわけではない。力は十分持ちながら柔らかく、滑らかに表現してくれるわけで、ポピュラーでも十分楽しめる。何しろ音質がずば抜けていいアンプだったという印象だ。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはオルトフォンMC20MKIIではちょっとかわいそうという気がした。ノイズの質は悪くないけれども、ノイズの量が決して少なくないので、MC20MKIIで十分な音量で聴こうとすると、ノイズがかなり耳につく。デンオンの103D、これは十分使用できる。MCヘッドアンプ自体の音質はよかった。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールはターンオーバー切り替えのついている本格的なもので、問題なくよく効く。特にトレブルの方をターンオーバー4kHzにして強調したときの音の上がり具合というのは、音を強調してみてなおさらこのアンプが基本的に持っている質がすばらしくいいものだったということを感じさせた。高音を上げても鋭くならないで、量だけがきちんと上がってくる。ターンオーバー切り替えのスイッチをうんとゆっくり切り替えようとすると、途中で途切れる部分があって、そこに妙なハムが出る。これは回路構成上仕方がないのだが、あるいは改善できるのかメーカーにただしてみたい。
ヘッドホン ヘッドホン端子は、スピーカーで聴いた時に比べるとちょっと音の出方が低い。音は決して悪くはないが、もう少し鳴りっぷりがよくてもいいのではないかと思う。ラックスのアンプは従来から、ヘッドホン端子の出力を少し低く取りすぎる傾向がある。その点、このアンプはかなり改善されてはいるが……。
★★★
瀬川冬樹
ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より
ラックス久々の力のこもった新製品だという印象をもった。15万円前後のプリメインアンプは、前記したビクターA−X9をはじめ、長いことベストセラーを続けているヤマハCA2000、最近のヒット商品サンスイAU−D907など、それぞれに完成度の高い製品がひしめているクラスに、あえて打って出たということからもラックスの意気込みが感じられる。それだけに前記のライバル機種と比較してもL58Aの音は相当に水準が高いといえるだろう。現時点での最新機種であるだけの良さがある。
ラックスのプリメインアンプから受ける印象として、ここ数年、たいへん品は良いのだがもう一歩音楽に肉迫しない、あるいはよそよそしくひ弱な感じがあった。本当の意味での低域の量感も、やや出にくかったように思う。しかしL58Aではそれらが大幅に改善された。たとえば「ザ・ダイアログ」で、ドラムスとベースの対話の冒頭からほんの数小節のところで、シンバルが一定のリズムをきざむが、このシンバルがぶつかり合った時に、合わさったシンバルの中の空気が一瞬吐き出される、一種独得の音にならないような「ハフッ」というよな音(この「ハフッ」という表現は、数年前菅野沖彦氏があるジャズ愛好家の使った実におもしろくしかも適確な表現だとして、わたくしに教えてくれたのだが、)この〈音になら
ない音〉というようなニュアンスがレコードには確かに録音されていて、しかしなかなかその部分をうまく鳴らしてくれるアンプがないのだが、L58Aはそこのところがかなりリアルに聴けた。
細かいところにこだわるようだが、これはひとつのたとえであって、あらゆるレコードを通じて微妙なニュアンスを、このアンプはリアルに表現してくれた。細かな、繊細な音さえも、十分な力で支えられた緻密さで再生してくれていることが、このことから証明できる。
低音に十分力があり、そして無音の音になるかならないかの一種の雰囲気をも、輪郭だけでなく中味をともなったとでもいう形で聴かせてくれることから、よくできたアンプだと思った。しかし、試聴したのは量産に入る前の製品だったので、量産機の音を改めて確認したいと思う。
今回聴いた製品に関しては、試作機的なものだからか、MCヘッドアンプの音は、L58Aが本来もっている音に比べ、もう一歩及ばないと聴いた。アンプ全体のクォリティからすれば、もう少しヘッドアンプの音が良ければと思わせる。しかし14万9千円のアンプにそこまで望めるかは微妙な問題で、価格を考慮すれば、この音のまま量産されることを前提に、たいへん優れたアンプといえる。
井上卓也
ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
先般、新発売されたプリメインアンプL309Xを従来からのラックスサウンドを継承したトップランクの製品とすれば、今回、続いて発売されたL58Aは、ラックスの新世代を意味する新回路設計とサウンドをもつ、新しい展開の第1作である。
外観上で、伝統的な木枠をもつフロントパネルは見慣れた雰囲気であるが、ファンクションスイッチは、従来のレバー型を多用するタイプから、角型に縁どられた横方向に動く小型のレバー型に変更されたため、全体の印象は相当に異なったものとなっている。
外観の変化に呼応するように回路構成も新しいチャレンジが感じられる。ブロックダイヤグラム的には、MC型カートリッジのインピーダンスによりゲインが20〜28dBに変化する利得自動調整型MCヘッドアンプ、FET差動入力でカスコードブートストラップ回路採用で42・4dBの現在の標準からは利得が高いイコライザーアンプ、前段に利得0dBのFET入力でカスコード接続ソースフォロア一回路のバッファーアンプをもち、回路構成を同じくする利得0dBの湾曲点3段切替のラックス型トーンコントロール、全段プッシュプル構成で出力段にMOS型FETを使い、無信号時に300mAのアイドリング電源を流しスイッチング歪を除いたラックス独自のスタガ一方式により、出力10Wまでは純A級動作をするスタガー方式A級動作のパワーアンプの5ブロック構成で、バッファーアンプとトーンアンプは、フロントパネルの小型プッシュスイッチでバイパスが可能である。
設計上のポリシーは、基本的にアンプのNFBをかける以前のオープンループ利得を抑え、NFB量を適度に保つ、ローNFB設計がポイントである。このためには裸特性の優れたことが条件となるが、例えばパワーアンプでは、オープンループ利得80dBで定格出力時の歪率0・2%、NFBをかけた後の利得は43dB、歪率0・005%になっている。これが従来の設計ではオープンループ利得が100〜120dB、NFB後の利得が32dB程度とのことである。
また、NFB量を少なくしたときに生じやすい低域の音質劣化を改善するために、一般のNFBの他に、DC・NFBを併用するデュオβ回路が採用され、超低域成分を抑え低域の分解能を向上している。
さらにイコライザーアンプでは、低域の裸利得を上げ、高城と低域のNFB量の差を少なくし、TIM歪の低減を図り、イコライザーアンプの低域カットオフ周波数を5Hzに設定している。
L58Aは、低域から高域までフラットに伸びきった広い周波数レスポンスとクリアーに引締まった、クッキリと粒立つ音が特長であり、従来の滑らかで柔かく、それでいて豊かなラックストーンとは全く異なる音だ。力強くゴリツとした低域と適度に輝やく中高域は巧みにバランスし、新しい実体感のある魅力の音を聴かせる。
井上卓也
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ラックスといえば、現在に至るまで管球式のアンプを作りつづけるアンプ専業メーカーというイメージが強いが、創業以来50年をこすキャリアを誇るだけにプレーヤーシステムやスピーカーシステムの分野でも独自な発想に基づいた製品をタイムリーに開発し、つねに話題を提供してきたことを知る人も多いことであろう。
今回発売されたMS10は、昨年の全日本オーディオフェアに展示された一連のスピーカーシステムのなかから最初に製品化されたものと考えられる小型ブックシェルフ型である。トールボーイ型のプロポーションをもつエンクロージュアは、箱の後面に複数個の小孔をあけエンクロージュア内部の空気圧をコントロールするマルチベントチューニング方式と名付けられたタイプで、密閉型ほどウーファーのコーンに圧力がかからず、バスレフ型のように共振点をもたずコーンの動きの非対称性がない特長をもつとのことだ。材料はハイダンプド硬質パーチクル板で内部には吸音とパーチクル板の振動を抑える目的で粘弾質含有発泡吸音材スーパーシールが貼付けられ不要輻射を低減している。
ユニット構成は2ウェイ型で、20cmウーファーは、コーン材料にアラミド系繊維のネットに化学処理を施し加熱成型をした新素材を採用し、エッジはポリウレタンフォーム、ダンパーはコーンと同じ素材、フレームはアルミダイキャスト製バーアーム型と数多くの特長をもつ。2・5cm口径のポリエステルフィルムドーム振動板使用のトゥイーターは、ウーファーとのつながりを重視した素材選択の結果選ばれたもので広帯域、高耐入力設計によるものである。
ネットワークは、景近その使用部品が注目されているところだが、ここでは低域側、高域側ともに18dB/oct型が採用され、ユニット相互間の干渉を少なくするため補正回路を設け、クロスオーバー周波数付近のマスキング効果の発生を防いでいる。素子のコイルは低損失型、コンデンサーはメタライズドフィルム型を使い、レベルコントロールは付属していない、いわゆる固定型である。なお、スピーカー端子は太いコードでも確実に接続できるリード挿入式の大型ターミナルである。
MS10のもっとも大きな特長は、アラミド系繊維をウーファーコーンに導入したことにある。各種のプラスティック系の材料を応用した例は国内製品には珍しいが、英国系のスピーカーシステムには比較的多く使用されているようだ。新材料を採用したためか、MS10は音色が軽く明るいタイプで、音の反応が速い特長がある。聴感上での帯域バランスは、小型ブックシェルフ型のつねで、やや高域に偏ったタイプで、セッティング場所を選び、バランスを補正した後にさらにアンプ側のトーンコントロールで補正するのがオーソドックスな使用法だ。MS10には粒立ちが細かく滑らかなアンプがマッチする。
菅野沖彦
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より
新たにスピーカー開発に乗り出した同社の第一作で、アラミド系コーンの20cmウーファーと2・5cmドーム型トゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムである。この価格とこのサイズ(W25×H54×D26cm)の中では比較的オーソドックスなリプロダクションが可能であり、すっきりとした歪みの少ない音とスケールの大きな再生音が得られる本格派だ。
井上卓也
ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞」より
現在でも管球式アンプをつくりつづけているラックスには、それぞれの時代に名を残した名作が多いが、そのなかでも傑出した製品は、このMQ36をおいて他にないだろう。
管球式のパワーアンプでは、パワー管とスピーカーのインピーダンスマッチングのために必然的に出力トランスを使わざるをえない。出力トランスの得失はあるにせよ、アンプの物理的な特性を向上するには、この出力トランスの存在が大きなネックとなり、出力トランスを使わないアウトプット・トランス・レスの方式がかなり以前のモノーラル時代から研究され、特殊なハイインピーダンスのスピーカーを前提として製品が海外で開発された例もあった。
現在では、アンプがソリッドステート化され、OTL方式は当然のこととなり、逆に出力トランスを採用したパワーアンプのほうが例外的な存在となっているが、かつてはOTL方式は夢のパワーアンプとして考えられはしても、現実の製品は海外製品を含めて無にひとしい時代であった。
MQ36は、管球式からソリッドステート式に移りかわる時代に、管球式パワーアンプの性能限界に挑戦するかのように開発された、同社トップランクのパワーアンプであるとともに、管球式パワーアンプの代表作としてデザイン、性能、音質を含めて、オーディオの歴史に残るラックスの最大傑作である。
特殊双三極管6336Aを片チャンネルあたり2本をSEPP構成としたステレオパワーアンプで、物量を投入した回路構成もさることながら、シャーシーを含むパワーアンプのコンストラクション、オーバーオールのデザインなど、どの点をとってもパワーアンプの頂点に位置するものがあり、現在に生きている素晴らしい製品である。
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
ハイパワーアンプのジャンルでは、現在においても開発のコンセプトが、いわゆる業務用に重点が置かれるのは、実際の使われ方から考えても当然のことに思われる。とくに、300Wクラスともなれば、業務用途に開発されたモデルが圧倒的に多く、そのほとんどが、いわゆる19サイズのラックマウント仕様のフロントパネルとコンストラクションを備えている。
ラックスのM6000は、一九七五年に商品化され、すでに3年経過しているが、現時点においてもその開発意図はいささかも古くなく、むしろ、コンセプトを限って企画された発想は最新製品にはない趣味性豊かな魅力として感じられるようだ。そのコンセプトを限って企画されたと感じられる点は、何をおいてもそのデザインに色濃く現われている。フロントパネル面は、別系統のピークレベルメーターを内蔵する2個の大型パワーメーター、dB目盛の左右独立型入力レベル調整、矩形をした大型パワースイッチのいずれを見ても、パネルフェイスをフラットに見せようとする思想で統一され、フロントパネルに続くウッドケースも、額縁状に一端くびれて後部の上部が開閉可能なウッドボンネットにつながる独特のデザインは、ラックスの創成期以前の早川商店が、ガラス輸入商であり、次に額縁商に転じた歴史を象徴するものという、もっともラックスらしく、ラックスでなくては成しとげられない雰囲気をかもしだすものである。これは、19サイズのラックマウントパネルをもち、純粋に機能面から要求されるデザインをもつ多数のハイパワーアンプと、このM6000が全く異なったコンシュマーユースのために開発されたハイパワーアンプであることを明確に示す事実以外の何物でもない。
M6000の300W十300Wのハイパワーは、コンシュマーユースとしては過ぎたものとの意見もあるであろう。たしかに、平均的な使用と要求度からすれば、正しいと思うが、かつて今は亡き岩崎千明氏が再生音量が極めて大きいことを質問された答として、ディスクに刻まれているローレベルの音をクリアーに聴きたいために、結果として音量が大きくなる、との名言にも現われているように、量的なものと解釈されやすいパワーは、平均的な音量の場合にもいつ訪れるかもしれない強烈なピークを再生するためのリザーベーションパワーの有無として、またスピーカーからのアンプに及ぼすリアクションを制御するためにもパワーの余裕は高度な再生を要求するときには不可欠の条件となり、聴感上ではパワーもまたクォリティにほかならない。
現実にピークマージンが強烈に高い2トラック38cm速度や76cm速度のテープ再生では、ディスクと同じ平均音量で再生をしても、ピークでは簡単にプロテクターが動作することは、250W+250Wのパワーアンプと、93dB程度の現在の平均的出力音圧レベルをもつスピーカーシステムの組合せでも常時経験することである。これは、最近のカッティングレベルが高くなった最新のディスクでも、パワー不足の状態では本釆ディスクのもつ性能の向上が実感として聴きとれないことにもなるわけだ。ちなみに、カッティングレベルが3dB上昇すれば、ピーク値ではアンプのパワーは2倍必要となり、6dB上昇すれば4倍を必要とすることは単純な計算でも容易にわかることなのである。つまり、M6000の300W+300Wのパワーは、高度なディスク再生を要求すれば必須の条件であり、しかもローレベル時の低歪率化を重要視した設計方針からみても、ラックスがハイパワーアンプを純粋なコンシュマーユースとして開発しなければならなかった背景がうかがい知れるというものである。
回路構成は、片チャンネル12石構成のダブル・トリプルプッシュブルの出力段、A級動作のプリドライブ段とB級動作の出力段との間に2石構成のエミッターフォロアーを設け、スピーカー負荷によるインピーダンス変動がプリドライブ段に及ぶのを防止する設計、2個の独立パワートランスを使い出力段を別系統にし、ブリドライブ段の定電圧化などオーソドックスな設計方針が見られる。
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
薄型のパネルに特長があるDC構成の新製品である。3段直結イコライザー、2段直結フラットアンプ、2段直結ラックス型トーン回路、ドライバーにEBT使用のDCパワーアンプの充実した構成である。機能もフル装備の本格派で、特長は、かつてのJBLの製品と同様にアンプ底部に入出力端子をもつことである。
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
出力管にポピュラーな5極管6CA7をプッシュプル動作で使用したステレオパワーアンプである。出力トランスは、SGタップ、カソード巻線付の2次巻線を単一巻線とした新設計の低損失型で、初段は差動増幅、ラックス高電圧ドライバー管6240G使用の差動増幅ドライバーの3段構成だ。CL36とペアの音は、音の表現力が従来より一段と高まり、適度に活気のある実体感を伴った管球アンプならではの魅力的なサウンドである。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
特集・「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
ラボラトリー・リファレンス・シリーズと名づけて、ラックスが全面的にイメージチェンジをはかった一連のシリーズの中心をなすものが、この6C50と、パワーアンプの5M21だろう。
こんにち管球式のアンプになお相当の比重を置いている唯一の国内メーカーだけに、トランジスターアンプに関しては、とちらかといえばや保守的な姿勢をとり続けてきたようにみえた。もちろんトランジスター化は意外に早く、すでに一九六二(昭和37)年に、トランジスタータイプのコントロールアンプPZ11を発表している。これはいまふりかえってみると、こんにちの超小型アンプのはしりとも考えられないことはない。そして翌年にはプリメイン型のSQ11を作っていて、トランジスター化では最も早い時期とされているトリオのTW30にくらべても、そんなに遅れをとっていない。
その後SQ301で、いわゆる高級プリメインの線を一応完成させたが、しかしラックスのトランジスターアンプが本当の意味で高く評価され広く認められるに至ったのは、SQ505,507の2機種以後のことだ。これはのちに505X、507Xのシリーズでさらに改良されて、当時の他の類機を大きくひき離して注目を浴びた。
けれど、それからあとのしばらくのあいだは、外野からみるかぎり、ラックスのアンプはあちこちと迷いはじめたようにみえた。いくつもの新製品が発表され、部分的にはラックスらしいユニークさがみられたにせよ、総合的なまとまりという意味では507Xの完成度の高さに及んでいない。
三年まえ(一九七五年)に、創業五十周年を迎えて発表したハイパワーアンプM6000及びM4000で、ラックスのトランジスター技術は再び注目されはじめた。だが、これとおそらくはペアとして企画されたらしいコントロールアンプC1000は、そのかなり異色のデザインがユーザーを戸惑わせたようだ。ラックスは以前からトーンコントロールをはじめとする音質調整方法には熱心で、コントロールアンプも管球式に関するかぎりCL35シリーズのような佳作を生み出しているが、トランジスターでのコントロールアンプに関しては、多くの人たちを普遍的に説得できるほどの完成の域には、いまひとつ達していなかったと思う。
その意味では5C50は、ラックスが久々に──というよりトランジスタータイプのコントロールアンプとしては初めて、そしてようやく、だがみごとに──放ったヒットだと思う。おそらく、ラックスの内部で何かがひとつふっ切れたような、迷いのない透明で十二分に美しい質感。とても品の高い、素晴らしく滑らかな音質。現代のアンプに要求される入力に対する応答も早く、音の解像力も、すみずみまで見通せるように優秀だ。そういう音質は、とうぜんの結果としていくらか冷食系のクールな印象を与える。また、ぜい肉の抑えられた感じになるから音がいくらか細い印象を与える。しかしそれは必要な肉までそぎ落すギスギス型ではない。
ただ私個人は、この5C50は単体としてではなく、トーンコントロールアンプ5F70と一体にした形を基本に考えている。5F70は、音質を劣化させずにトーンバランスをコントロールできる優秀な製品だ。75Hzから150Hzのあいだに任意のディップを作るアコースティックコントロールも、部屋の音響特性によってはきわめて有効でユニークなコントロールだ。未確認の情報だが、QUADがそらく近々発売するコントロールアンプには、ラックス独創のリニアイコライザーに似たコントロールがついているといわれる。本当だとしたら、誇りに思っていいだろう。
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
同調ツマミが正確な同調点で機械的にロックされるアキュタッチ機構を備えたAM・FMチューナー。同調の精度と安定度を向上するラックス独自のCLL方式同調システム、IF帯域幅2段切替、オペレーショナルアンプ使用のオーディオ部などを備えている。アキュタッチ機構のフィーリングも格段に改善され、受信性能、音質は充分に高級機に匹敵するものがある。
黒田恭一
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より
●オルトフォンMC20で聴く
声のつやがましたということと、音が積極的に前におしだされているということで、シュアーV15タイプIVより、まさる。低域のひびきに、さらに力が加われば、よりこのましいのだろうが。
●デンオンDL103Sで聴く
このカートリッジの折目正しさに正直に反応しているというべきか。ひびきの輪郭をくっきりと示して、あいまいさがない。全体的なバランスに乱れはないものの、個々のひびきがつきはなされすぎているように感じる。
●シュアーV15/IVで聴く
もし「ナチュラルなバランス」などという言葉が可能なら、その言葉は、ここでこそ使われるべきかもしれない。ただ、ひびきを、もう少し積極的に前におしだしてもいいのではないかとは思うが。
黒田恭一
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より
シュアーV15タイプIVで感じられるひろびろとした音場感は、なかなか特徴的だった。それに、3つのカートリッジで共通して感じられた、ひびきがついに脂っぽくならないところも、このプレーヤーシステムのこのましい点としてあげられるだろう。したがって、ここできけるひびきは、決してごりおしにならず、さわやかだ。
それにさらに、腰のすわった、とりわけ低域での力感のあるひびきが加われば、全体としてのひびきの説得力は、一層ましたと思われるが、その点では幾分ものたりなさを感じた。
おそらく、そのことと無関係ではないはずだが、「ナチュラルなバランス)がたもたれているにもかかわらず、ひっそりとした印象をぬぐいさりがたかった。もっともそれは、かならずしも弱点とはいいがたい。積極的すぎて、きいての印象が騒がしくなるより、よほどこのましいということも、いえるにちがいない。まとまりのいいプレーヤーシステムだが、もう一歩ふみこんできてものをいってほしいなというのが、率直な感想だった。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
製造中止の噂が伝えられるが、ぜひとも残して欲しいユニークな製品。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
独創的な操作性とデザイン感覚の冴えた製品。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
PD121の優雅な雰囲気を受け継いで軽針圧に徹した設計が良い。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
古典的といわれた管球アンプの伝統をくつがえした新しい魅力は見事。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
新しいテクノロジーとラックスの音への指向の接点を感じる製品。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
完成度の高いロングライフの製品で、大人の風格をもつ。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
管球アンプの新しい魅力を提示した同社ならではの優れた作品だ。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
スッキリした外観とあたたかく艶のあるサウンドが魅力。
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