Category Archives: テクニクス/ナショナル - Page 4

テクニクス SB-3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 デンオンよりはサイズが大きいにしても、同様に背面を壁に近寄せて設置しないと低音の量感が不足する。エラック径のカートリッジでは、デンオン以上に中音域が硬く張り出して気難しい音になりやすく、カートリッジやアンプの選び方にやや注意が要る。トゥイーターのレベルの調整に敏感に反応するので、相当こまかく合わせこんでやる必要がありそうだ。設計者の石井伸一郎氏からのサジェッションがあって、トゥイーター前面の透明なプラスチックのプロテクターを取り外してみた(ごく注意深くやる必要あり)。このほうが高域が素直になってよい。これらの調整と組合せでピントがあってきてからは、わりあいにふくよかさも出てきて、デンオンよりはスケールも大きく、なかなか聴きごたえのする音が鳴りはじめた。反面、使いこなしにちょっと気をゆるめると、中域のクセが出やすいし、そのせいもあるのか、高域端(ハイエンド)がすっきり伸びたという感じがしにくい。やや気難し型のスピーカーといえそうだ。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:6
バランス:6
質感:5
スケール感:6
ステレオエフェクト:6
耐入力・ダイナミックレンジ:6
音の魅力度:5
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや難し

テクニクス SB-7

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 全体としてのまとまりや、この素直ともいえる透明な音は優れた水準のものだろう。音の汚れや音色に強い癖のないスピーカーである……というように、どこといって欠点を指摘することができない。帯域バランスもよくとれているし歪感もない。楽器の特質もよく再生し、ローレベルからハイレベルまでのリニアリティもよい。しかし、一番不満なのは、演奏の表現がフラットになって表情が乏しい。つまり、音響的にはともかく、音楽的には不満が残るのである。細かくいえば、一つ一つの楽音にしてもどこか生命感に乏しいのが不思議だ。たとえばピアノの粒立ちが立体的なイメージにならない。クレッシェンド、デクレッシェンドが音量的には行なわれても、生きたエクスプレッションが失われてしまう。美しい音だし、ハイパワー再生をしたときの音量も結構なものだが、真の迫力たり得ないのである。優れた特性のスピーカーなのだろうが、こうした音楽の充足感に一つの不満が残るのが惜しまれる。不満を強調しすぎだが……。

総合採点:8

テクニクス SB-7

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ひびきに独自の魅力があるということではない。しかし、このスピーカーの、さまざまなレコードに対するあぶなげのない、そして誇張感のない反応ぶりは、大変にこのましい。たとえピアニッシモでかなでられた音でも、その音は充分な力で支えられている。ピアニッシモの音がフニャフニャであっていいということにはならない。その辺のことを、このスピーカーは、ききてにわからせる。つまり、個々の音がそれなりにしっかりと示されているということになるだろう。❷のレコードでのグルダのなかばかすれたような声の特徴をあきらかにする反面、❸のレコードでのブラスのつっこみの鋭いひびきにも対応する。そのようなことから、基本をしっかりおさえられたスピーカーシステムの音という印象だ。あぶなげのなさというのは、そういうことをふまえてのことだ。安心してつかえるスピーカーといえよう。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

テクニクス SB-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 全体の印象としてはソフトタッチな、平面的な音像で、音の奥行感、マッシヴな立体感に乏しいスピーカー。すべての楽音が、さらっと淡泊な味わいになるのがこのシステムの特長で、決して聴きづらい汚れや、耳を刺すような刺激的な音は出てこない。バランスとしては中域以上の帯域に寄っているから、なおさら音が軽い印象を受ける。良さとして受けとるか、物足りなさとして受けとるかは聴き手次第といえるだろうが、私の音の好みからすると、音楽のエネルギーバランスとして、もっと低音に重心のある、重厚感がほしいのである。そして、高域も前述したように平面的だから、艶とか輝きといった印象を受けにくい。フリューゲルホーンなどは独特の音色的味わいが出にくく、時としてトランペットのぼやけたような音色に聴こえてしまう。ベースやバスドラムの力感と弾みも十分に出きらない。したがって、どちらかといえばムーディなストリングスの方がよく、ジャズやロックには不満が出る。もっとリアルなプレゼンスが欲しい。

総合採点:7

テクニクス SE-A3

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

ニュークラスA方式を採用したパワーアンプの第1弾製品。高速パワートランジスターと電源部をユニット化したコンセントレーテッドパワーブロック採用に代表される独自の最高の技術を導入。

テクニクス SU-A4

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

考えられる機能をフル装備のA2を基本に機能を標準型としたシンプルな新製品。特長はプリアウトの超ローインピーダンス化で、信号ケーブルの影響が軽減され正確な伝送と強力な駆動力を持つ。

テクニクス SU-V6

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

Aプラス級動作に続く、ダイオードスイッチング方式の独特な高能率A級動作をプリメインアンプに採用した第3弾製品。ユニークな超低音と超高音トーンコントロールの採用と磨き込まれた音が特長。

テクニクス SB-10

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

リニアフェイズを提唱するテクニクススピーカーにとって、平面振動板ユニットは、好適な材料だ。特殊なハニカムコアの使用法により、振動板の固有音が抑えられ、フラットで力強い音が聴かれる。

テクニクス SU-A4, SE-A3

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 柔らかい音だが、やや、もたつきも感じられる性格。ヴァイオリンのボーイングの細かいタッチがよく出ないし、音像の角が丸くなってしまう傾向がある。どうも、コントロールアンプにこの傾向が強く、パワーは仲々力強く弾力性のある堂々とした音だ。

テクニクス SB-10

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スピーカーの位相特性を重視して、フランス系の製品に以前から採用されていた、各ユニットを前後方向にスタガー配置するリニアフェイズシステムを早くから製品化していたテクニクスにとり、平面振動板ユニットの実用化は、通常のフラットなバッフル面をもつエンクロージュアでリニアフェイズ方式を可能とするためには最大の急務であっただろう。
 SB10をトップモデルとする新平板スピーカーシリーズは、振動板材料にハニカム構造体の特長を最大に引き出し短所を抑える巧妙な軸対称ハニカムコアにフィルム状スキンを両面にサンドイッチ構造とし、円形振動板の円形の節を円形のボイスコイルで駆動する理想的な節駆動型である点に特長がある。
 SB10の32cmウーファーは、直径16cmの大口径ボイスコイルで節駆動するタイプ、8cmスコーカーも50・5mm直径のボイスコイル使用で、ともに磁気回路は電流歪低減設計で広いピストン振動帯域を誇る。トゥイーターは定評のある全面駆動のリーフ型で125kHzまで再生可能。エンクロージュアは完全密閉型、板厚25mmの高密度パーチクルボード使用、リアルローズウッド仕上げである。
 SB10は力強い低域をベースに、活気のある中域、爽やかな高域が優れたバランスを保ち、音色が明るい。従来のイメージを一新した新世代の音だ。

テクニクス SU-V8

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 テクニクスのこの新しいSU-Vシリーズには6、8、10とある。V6が五万九千八百円というかなり安い価格であるにもかかわらず、この前後の価格帯の中でも際立った出来栄えを示していた。それだけにその後に発売され、なおかつパワーも110Wとほぼ倍近くまでグレードアップされたこのV8には、こちらが過大な期待をもって臨むのはこれは当然のことだと思う。
音質 さすがに110Wというパワーと、ほとんど十万円に手の届くの価格ということからか、音を支える力というのは、これは実に大したものだ。これ以前の十七台のアンプに比べて聴取レベルを一ランク上げ、相当大きな音量で聴いてみたが、音が崩れるようなところがなく、大太鼓、いろいろなパーカッションなど、どんな音にも全く危なげなく、本当の力を出してくれた。さすがにハイ・パワーアンプだ。そして音の一つひとつが大変くっきりと出てくる。裏返していえば少しコントラストがきついということがいえるかもしれないが、とにかく一つひとつの音をとてもわかりやすくきちんと出してくれる。半面、その音の質ということになると、例えば音透明度という面からみると、オンキョーのA817、ラックスL48Aあたりに比べると若干物足りない感じがする。
 一言でいえば音の力強さというところにピントを合わせて作ったアンプではないかなと思う。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはさすがにこのくらいの高価格帯になると、ゲイン、SN比とも大変練り上げられている。ゲインも十分、ノイズもかなり少なくなっている。しかし、この一つ前のパイオニアA700のMCヘッドアンプが大変よくできていて、オルトフォンのMC20MKIIでも実用的に全く問題なく使えたということからみると、V8のヘッドアンプはオルトフォンMC20MKIIでは少しノイズの点で聴き劣りする。A700を除けば、テストしたアンプの中でも別格のいいできだとは思う。デンオン103D、これはもちろんゲイン、SN比とも全く問題なく、十分に聴ける。音質の点ではMC20MKIIを付けたときの音はまあまあで、もう少しMC20MKII的なよさが出てほしい。一方、デンオンに関しては大変音質がいい。やはりこのアンプのMCヘッドアンプの基本設計目標がデンオン系に合わせているのだと思う。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールには大きな特徴がある。普通の低音、高音のトーン・コントロールのほかに、スーパーバスというのがあり、ターンオーバー75Hzまたは150Hzから下を非常に急激なカーブでブーストできる。これらをつかうにはオペレーション・スイッチをストレートDCからビアトーンという方向に倒して使う。そしてスーパーバスのつまみをグッと上げていくと、普通のスピーカーではなかなか再生することのできにくい超低音を非常に確かな手ごたえで増強してくれる。音全体の厚み、あるいは深みといった感じが増してくるので、これはうまく使いこなすとなかなか面白い。
 スピーカーが多少小さいものであっても、これをうまく使いこなすと大変広がりのある豊かな音が得られる。これはこのアンプがもっているほかのアンプにないファンクションだ。
 スーパーバスを除いたトーン・コントロールの効き方はごく軽く、標準的。ラウドネス・スイッチを押したときも比較的抑え目の妥当な効き方をする。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力はスピーカーで聴く音よりも少し抑えかげんだが、これは一般的な水準からいって標準的。
 ヘッドホン端子での音質はこのアンプ自体のもっている基本的な音に比べると少し力が減るような感じがした。

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 前号での試聴記で、とてもいいアンプだと思ったが、今回、ローコストのアンプを並べて聴いてみても、相変らずいいアンプの一つだという印象を持った。
音質 いいアンプという表現はかなり抽象的だが、とにかくクラシック、ポップス、そのほかいろいろなソースを随時、任意に片っ端からかけて音を聴いてみる。どこか薄手なアンプでは、プログラム・ソースによっては、いいところと悪いところが目立ってきて、何となく聴いていることがつまらなくなってくる。ところが、このテクニクスのV6はいつまででも音を聴いていられる。どんなプログラム・ソースでも、すべての音がきちんと聴こえるということが大変すばらしい点で、一言でいうと、比較的ローコストのアンプにもかかわらず、いわゆるコストダウンの手抜きをほとんどしていないのではないかと思う。
 例えばストラヴィンスキーの『春の祭典』のティンパニーとバスドラムが活躍するフォルティッシモの連続の部分でも、このアンプは少しも混濁しない。すべてのおとがきちんと分離し、よく調和しながら聴こえてくる。それからキングス・シンガーズのように、それと正反対の大変柔らかい美しいエレガントなハーモニーを要求するようなコーラスでも、その魅力が十分伝わってくる。とにかく一つ一つの曲について言い出せばきりがないが、すべてのプログラム・ソースがきちんと聴こえてくるということが言える。
 特にこの五万九千八百円という価格帯の一つ下のグループ、例えばビクターのA-X3、トリオのKA80、それぞれにいいアンプだが、それがここにくるとグンとランクが上がる、つまり音の品位が上がったという感じがする。
 このクラスではヤマハのA3も大変いい音を聴かせてくれたが、このV6とA3を比較すると、なかなか対照的な音を持っている。ヤマハのA3は比較的明るい、よく乾いた、応答の早い音がするのに対して、V六は少しウェットだ。それとヤマハの明るさに対して、少し音に暗さがある。
 それからもう一つ、ヤマハに比べると高域が少し線が細い気がする。しかし、それは音の繊細感、きめ細かさという印象を助ける部分なので、そのことは決してネガティブな意味で言っているわけではない。
MCヘッドアンプ このアンプもMCヘッドアンプが内蔵されている。オルトやぉんのMC20MKIIのようなローインピーダンス(低出力)のカートリッジでは、このアンプではさすがに能力いっぱい。ボリュームをかなり上げなくては無理だし、そこのところではかなりノイズに邪魔される。
 やはりデンオン103Dのようなハイインピーダンス(高出力)のカートリッジがMCヘッドアンプの設計の基準になっているように思う。デンオンの場合にはもちろん十分にMCのよさが味わえる。
トーン&ラウドネス このアンプにもオペレーションというボタンがあり、ストレートDCとリアトーンというポジションがある。ストレートDCではトーン・コントロールは効かない。トーンを使う時にはリアトーン側に倒すが、その場合にごく注意深くきかなければわからないわずかな差だが、このアンプの持つ基本的な音のよさから比べると、ほんの少し音が曇るような気がする。
 トーン・コントロールは大変軽い効き方をして、あまり低音、高音を強調しないタイプだ。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方だが、これは同じボリュームの位置でスピーカーからの音量とヘッドホンをかけての音量感とが、割合近いところまで、うまくコントロールされている。ヘッドホン端子での音の出方は大変よい部類に属する。

★★

テクニクス SB-8000

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第19項・リニアフェイズを流行らせた元祖 テクニクスの最新型SB8000」より

 日本を代表するスピーカー、というと、ヤマハNS1000Mと並んでもうひとつ、テクニクスのSB7000、通称テクニクス・セブンをあげなくてはならないだろう。まるで雛壇のように並んだ独特のスピーカーユニットの配列は、テクニクスの主張するリニアフェイズの理論によって、低・中・高の三つに分れた音源の位相(この用語の意味は、ここでは説明しない)を、いかによく揃えるか、という観点から生まれた形である。この考え方自体は決してテクニクスだけの独創ではないにしても、スピーカーの位相を明確に解明し、具体的な製品で示したのはごく早い時期であり、その後、前述のKEF105など、ヨーロッパ各国のスピーカーにもこの考えにもとづいた製品が各種出現している。
 SB7000は、これまでのブックシェルフとかフロアータイプという分類にはちょっと入りきらない独特の形で、またその音質を生かすためにも、多くの場合、リスニングルームの床上に直接置いたのでは、低音がこもったり過剰になったりしてぐあいがよくない。部屋の音響特性によってケースバイケースだが、十数センチないし四十センチ以上までの、頑丈な台に乗せて、聴いてみて最もバランスの良い高さを選ぶ必要がある。背面や側面も周囲の壁から適度に(五十センチ以上)離し、周囲に何も置かず広くあける必要がある点は、前述のヤマハや、すでに出たスペンドールやKEFその他、この種のアキュレイトサウンド系のスピーカーに共通の注意事項だ。
 ところで、ごく最近発表されたこの上のクラスのSB8000は、7000にくらべて音がはるかに緻密でしかもみずみずしい。価格の差以上に音のグレイドは向上している。低音が引締まっているので、7000ほど高い台を必要とせず、部屋の音響特性によっては何も台に乗せずにそのまま床の上に置いても大丈夫だ。元祖という点ではSB7000だが、その完成度という点ではむしろSB8000のほうが(もちろん、この間に5年以上の歳月が流れているのだから当然とはいえ)格段に優れていると思う。したがって、これから購入するのであればSB8000のほうがおすすめできる。
 ヤマハにもテクニクスにも共通にいえることは、概して国産のスピーカーは、音の味つけを極度に嫌うために、その組合せも、アンプやカートリッジに、できるだけ音の素直で、むしろ味の薄い製品を持ってこないとむずかしい。
 アンプには、同じテクニクスの、ごく新しいプリメイン、V10をあげよう。とくにこのパワーアンプ部は、ニュークラスAと称する新しい回路で、とても透明感のある美しい音質だ。チューナー、プレーヤー、カートリッジとも、同じテクニクスで揃える。
 さて、ここから先はかなりオーディオマニア向けの話だが、プリメインアンプV10は、パワーアンプ部分の性能が非常に良いので、これを流用して、プリアンプだけ単体のもっとグレイドの高いものを追加すると、さらにいっそう音のグレイドが上がる。たとえばオンキョーP307、ヤマハC2a、アキュフェーズC230などがその一例。

スピーカーシステム:テクニクス SB-8000 ¥150,000×2
プリメインアンプ:テクニクス SU-V10 ¥198,000
チューナー:テクニクス ST-8077T ¥45,800
プレーヤーシステム:テクニクス SL-1400MK2 ¥95.000
カートリッジ:テクニクス 100C MK2 ¥65,000
計¥703,800

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 今回試聴したアンプの中で最もローコストの製品で、外観を眺め価格を頭におくかぎり、正直のところたいして期待をせずにボリュウムを上げた。ところが、である。価格が信じられないような密度の高いクォリティの良い音がして驚いた。ヤマハとオンキョーのところで作為という表現を使ったが、面白いことに、価格的には前二者より安いV6の音には、ことさらの作為が感じられない。
「つくられた音」ということをあまり意識させずに、レコードに入っている音が自然にそのまま出てきたように聴こえ、えてしてローコストのアンプは、安手の品のない音を出すものが多いが、その点V6は低音の量感も意外といいたいほどよく出すし、音に安手なところがない。
 他の機会にこのアンプを聴いて気づいたことだが、今回のテストのように、スイッチを入れてから3時間以上も入力信号を加えてプリヒートしておかないと、こういった音は聴けない。スイッチを入れた直後の音は、伸びのない面白みのない音で、もっとローコストのアンプだといわれても不思議ではない音なのだが、鳴らしているうちに音がこなれてきて、最低でも一時間以上、二時間もたってみると、聴き手をいつまでもひきつけておくような魅力的な音になっているのである。最近のローコストアンプの中でも傑出した存在だろう。内蔵のMCヘッドアンプも、価格を考えれば立派というほかない。
 しかし、あえて苦言を呈すれば、オリジナリティに欠けるデザインポリシーは、全く理解に苦しむ。この価格帯のアンプを買うであろうユーザー層を露骨に意識した──しかも当を得ているとはいいがたい──メカっぽさ。少し前の某社のアンプデザインを想い起させ、イメージもマイナスだし、いかにも機械機械した印象は、鳴ってくる音の美しさ、質の高さとはうらはらだ。

テクニクス EPA-500

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カートリッジの多様化、高性能化が現在のようにエスカレートしてくると、それらと組み合わせて使用するトーンアーム側は、ヘッドシェル交換が容易な現在のユニバーサル型という構造自体が、それぞれのカートリッジの性能をフルに発揮させるための障害とさえ考えることができる。ユニバーサル型の使い易さと専用のインテグレートアームの性能の高さを併せもった製品として開発されたモデルが、このEPA500である。
 システムトーンアームの名称をもつように、EPA500は、使用するカートリッジの特性に応じて専用アームユニットを交換できるようにしたシステムトーンアームの基本モデルで、アームベース EPA−B500とアームユニット EPA−A501H及び針圧計SH50P1の3種類で構成される。
 EPA−B500は、ジンバル支持の軸受とヘリコイド方式の高さ調整機構をもつアームベースで、軸受部分に横方向にスライドしてアームユニットを交換することができる。針圧計SH50P1は、半導体ストレイゲージと大型メーター使用のエレクトロニクス針圧計で、精度が高く、針圧直読型で、電池を内蔵している。
 アームユニットは、他に、EPA−A501M、EPA−A501Lが用意されている。使用カートリッジの自重は3種類ともに5〜7gだが、コンプライアンスの違いにより、Hは10〜14、Mが7〜10、Lが5〜7×10の-6乗cm/dyneと区別され、自重とコンプライアンスが異なる、E、Gなどが続いて発売される予定だ。
 アームユニットは、実効質量とパイプ素材が異なり、ウエイト部分は、独自のダイナミックダンピング方式で低域共振鋭度の制動効果は6dB以上と高い。なお、パイプ部は、テーパー型でチタニウムナイトライドパイプ使用だ。

テクニクス EPC-207C

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 比較的に入手しやすい価格帯を対象として開発されたMM型の新製品である。振動系は実効質量が小さく、コンプライアンスが大きい設計で、カンチレバーには高強度アルミ合金パイプを使用し、マグネットは棒型で、ダンパーはリング状のスタビライザーを採用した新しい支持構造が使われている。針先はダエン針で、針圧は1・75gとやや大きく、フルオートプレーヤーを含めた広範囲の使用を目的とした製品である。

テクニクス EPC-205CMK3

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスカートリッジの中心モデルともいえる205CIIシリーズは、従来からも広い周波数帯城と低歪なカートリッジとして高い評価を得ているが、今回、新素材と新技術が導入されて、一段と高性能化されたMK3となって発売された。
 EPC205MK3は、シェル一体構造のモデルであり、EPC−U205CMK3はカートリッジ単体のモデルである。
 発電方式はMM型であるが、構造的には、205CIIシリーズとはまったく異なった新方式が採用されている。カンチレバー材質は純ボロンパイプを採用し、微小化、軽量化がおこなわれ、振動子実効質量は0・149mgで、80kHzにおよぶ超広帯域を得ている。磁気回路は、HPFコア使用の新しいブリッジ・ヨーク構造で、振動系にヨーク部をもつ特長がある。なお、ダンパーには温度変化による特性変化を抑えたTTDD、振動子磁石にはサマリウムコバルトの円板型磁石、ワンポイント支持方式などは従来型を受継いでいる。

テクニクス SL-Q3, SL-Q2

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスのプレーヤーシステムは、幅広い価格帯にわたり、ベーシックモデルを中心として、これに各種のオート機能を加えた数多くのバリエーションモデルがあり、ほぼ、すべての需要に対応できる。いわば、フルチョイスの製品群をもつことに特長がある。
 今回、発売されたクォーツQシリーズの2機種は、4万円台のもっとも多くの需要者層をもつ価格帯におかれた新製品だ。
 基本的な構成は2機種とも共通であるが、機能面で、SL−Q3がメモリーリピート付フルオート型、SL−Q2がオートリターン型の違いがある。
 デザイン面では、このところプレーヤーシステムの主流となっている前面操作型がこのシリーズにも採用され、テクニクスのプレーヤーシステムの特長ともいえる長方形のジンバル支持型軸受をもつトーンアームにテクニクス製品らしい雰囲気がある。
 ターンテーブルは直径31・2cmのアルミダイキャスト製で、ローターが組み込まれた独特の構造をもつブラシレスDCモーターで、ダイレクトに駆動される。このモーターの制御方式は、2個の専用ICを使った水晶発振器を基準とするフェイズロック方式で、モーターには全周検出FGが組み込まれており、回転偏差は、±0・002%以内におきまり、起動トルク1kg・cm、起動時間は33回転時に0・9秒という値を得ている。
 トーンアームはS字型パイプをもったスタティックバランス型で、アーム実効長230mm、付属シェル使用時のカートリッジ自重範囲は、6〜9・5g、針圧調整範囲は0〜2・5g針圧直読型である。アームの軸受は、水平回転軸と垂直回転軸の軸心が一点で交差するジンバル型サスペンション構造が採用され、回転部分はピボットとボールベアリングにより4点で支持され、水平と垂直方向の感度が高く、摩擦抵抗が少ないため水平、垂直ともに初動感度は7mgという値を得ている。
 付属のカートリッジは、テクニクスを代表するMM型カートリッジ、205CIIシリーズと同様な発電ユニットを採用した新開発の207Cで、トレース能力が高く、コンプライアンスの大きい設計で、新しいダンパー支持構造、ダエンダイヤ針採用などに特長がある。
 プレーヤーベースはアルミダイキャスト製で、底板部分は防振効果が高いTNRC(テクニクス・ノン・レゾナンス・コンパウンド)を採用し、この材料はアルミダイキャスト上面部にも使われ2重構造となっている。インシュレーターは、バネと粘弾性体を組み合わせたタイプで、アルミダイキャストのベースに直接取付けてある。
 操作系は、電子コントロールのソフトタッチスイッチによる前面コントロール方式で、メカニズムの作動音は十分に抑えられている。なお、ストロボスコープは水晶発振器と同期したLED照明である。

テクニクス SU-V6, ST-S5

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプのジャンルでは、パワーアンプのB級動作の問題点であるスイッチング歪を軽減する目的で、B級動作のメリットである効率の高さをもちながら、本質的にスイッチング歪を発生しないA級動作と同等の低歪とする各種の新回路が開発され各社からその製品化がおこなわれていることが特に目立つ傾向である。
 テクニクスでは、さきにA+級と名付けられた新回路を採用した高級セパレート型アンプ、テクニクスA2を発売し、これにつづいてニュークラスAという、異なった発想による新回路を採用したプリメインアンプSU−V10を開発したが、今回は、最も需要層の多い価格帯に、このニュークラスA回路を採用したSU−V6を登場させ、低スイッチング歪を軽減しようとするテーマは、早くもプリメインアンプの分野にまで及び、今後とも各社から、それぞれの構想による低スイッチング歪軽減対策を施した回路を採用したプリメインアンプが、低価格帯と高価格帯に重点を置いて発売されることが予測できる。なお、ST−S5はSU−V6とペアとなる薄型にデザインされたクォーツシンセサイザーFMステレオチューナーだ。
 SU−V6は、B級動作の高い効率とA級動作に匹敵する低歪という、量と質を両立させたニュークラスA動作のパワーアンプを採用している点が特長である。ここでは、B級動作のスイッチング歪の原因となる出力トランジスターのON・OFF現象をシンクロバイアス回路で防止する方法を採用している。この回路は、パワートランジスターの入力にダイオードを使い、ダイオードの半導体としての特性を利用して信号をカットオフし、別のダイオードからバイアスを与えてパワートランジスターのカットオフを防止するタイプで、一種のダイオードスイッチング方式と考えられる。
 イコライザー段は、初段に超低雑音デュアルFETを差動増幅に使うICL構成で、アンプ動作モードスイッチをストレートDCに切替えるとフォノ入力からスピーカー端子までカップリングコンデンサーのないDCアンプとして使用可能であり、イコライザーのゲインを切替えてダイレクトにMC型カートリッジが使える設計である。
 電源回路は、電磁誘導歪みを防止するテクニクス独自の電源部とパワーアンプの出力段を一体化したコンセントレーテッドパワーブロックで左右チャンネル独立型2電源方式である。
 ST−S5は4連バリコン相当のバリキャップ使用フロントエンドをもち、6局までのプリセットが可能。RF系までを含めたDC増幅、DC・MPX回路などが特長。
 SU−V6は、やや音色は暗いが重量感のある低域とクッキリとシャープに粒立ちコントラスト十分な中高域がバランスした従来のテクニクストーンとは一線を画した新サウンドに特長がある。こだわらずストレートに音を出すのは新しい魅力。

テクニクス SB-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ロングライフを誇るフロアー型。グラマラスなスケールの大きな再生音が得られることが特徴だ。

テクニクス SB-8000

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 単体発売し好評を得ているリーフトゥイーターを、リファインして最高域に採用した4ウェイシステムの最新作。個々のユニットの優れた能力をフルに生かしてまとめられたワイドレンジ型だ。

テクニクス SB-E200

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカー開発のオーソドックスなテクノロジーを徹底的に追求して作られた3ウェイシステムだ。ソフトウェア的なまとめ方よりも変換器としての優秀さは見事で、実質的価値が高い。

テクニクス SL-5300, SL-5100, SL-5200, SL-5350

テクニクスのアナログプレーヤーSL5300、SL5100、SL5200、SL5350の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

SL5300

テクニクス 88A (SU-8088), 77T (ST-8077)

テクニクスのプリメインアンプ88A (SU8088)、チューナー77T (ST8077)の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

SU8088

テクニクス EPC-305MC

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 EPC300MCと同じコアレス・ツインコイル方式を採用した純粋MC型の新製品である。カンチレバーには独特の手法により開発した純ボロンパイプを採用し0・1mm角微小ダイヤチップをレーザー加工の角穴にマウントし高域共振周波数40kHzの広帯域特性を得ている。カンチレバーは一点支持型で、ダンパーには温度変化のないTTDD、磁気回路は電磁純鉄とサマリュウムコバルト使用である。性能対価格で注目に値する現代型MCと思われる。