瀬川冬樹
続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第19項・リニアフェイズを流行らせた元祖 テクニクスの最新型SB8000」より
日本を代表するスピーカー、というと、ヤマハNS1000Mと並んでもうひとつ、テクニクスのSB7000、通称テクニクス・セブンをあげなくてはならないだろう。まるで雛壇のように並んだ独特のスピーカーユニットの配列は、テクニクスの主張するリニアフェイズの理論によって、低・中・高の三つに分れた音源の位相(この用語の意味は、ここでは説明しない)を、いかによく揃えるか、という観点から生まれた形である。この考え方自体は決してテクニクスだけの独創ではないにしても、スピーカーの位相を明確に解明し、具体的な製品で示したのはごく早い時期であり、その後、前述のKEF105など、ヨーロッパ各国のスピーカーにもこの考えにもとづいた製品が各種出現している。
SB7000は、これまでのブックシェルフとかフロアータイプという分類にはちょっと入りきらない独特の形で、またその音質を生かすためにも、多くの場合、リスニングルームの床上に直接置いたのでは、低音がこもったり過剰になったりしてぐあいがよくない。部屋の音響特性によってケースバイケースだが、十数センチないし四十センチ以上までの、頑丈な台に乗せて、聴いてみて最もバランスの良い高さを選ぶ必要がある。背面や側面も周囲の壁から適度に(五十センチ以上)離し、周囲に何も置かず広くあける必要がある点は、前述のヤマハや、すでに出たスペンドールやKEFその他、この種のアキュレイトサウンド系のスピーカーに共通の注意事項だ。
ところで、ごく最近発表されたこの上のクラスのSB8000は、7000にくらべて音がはるかに緻密でしかもみずみずしい。価格の差以上に音のグレイドは向上している。低音が引締まっているので、7000ほど高い台を必要とせず、部屋の音響特性によっては何も台に乗せずにそのまま床の上に置いても大丈夫だ。元祖という点ではSB7000だが、その完成度という点ではむしろSB8000のほうが(もちろん、この間に5年以上の歳月が流れているのだから当然とはいえ)格段に優れていると思う。したがって、これから購入するのであればSB8000のほうがおすすめできる。
ヤマハにもテクニクスにも共通にいえることは、概して国産のスピーカーは、音の味つけを極度に嫌うために、その組合せも、アンプやカートリッジに、できるだけ音の素直で、むしろ味の薄い製品を持ってこないとむずかしい。
アンプには、同じテクニクスの、ごく新しいプリメイン、V10をあげよう。とくにこのパワーアンプ部は、ニュークラスAと称する新しい回路で、とても透明感のある美しい音質だ。チューナー、プレーヤー、カートリッジとも、同じテクニクスで揃える。
さて、ここから先はかなりオーディオマニア向けの話だが、プリメインアンプV10は、パワーアンプ部分の性能が非常に良いので、これを流用して、プリアンプだけ単体のもっとグレイドの高いものを追加すると、さらにいっそう音のグレイドが上がる。たとえばオンキョーP307、ヤマハC2a、アキュフェーズC230などがその一例。
スピーカーシステム:テクニクス SB-8000 ¥150,000×2
プリメインアンプ:テクニクス SU-V10 ¥198,000
チューナー:テクニクス ST-8077T ¥45,800
プレーヤーシステム:テクニクス SL-1400MK2 ¥95.000
カートリッジ:テクニクス 100C MK2 ¥65,000
計¥703,800
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