Category Archives: パワーアンプ - Page 27

パイオニア M-75

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おそらくペアとして企画されたコントロールアンプC77の、やや重い感じで反応の鈍い傾向の音をちらかがうまく補うという印象で、ややコントラストを強く、音の表情を生かすようにどちらかといえば身ぶりの大きな音を鳴らす。M25やエクスクルーシヴ・シリーズのM4の正攻法の作り方ではなく、どちらかといえばヤングマーケットをことさら意識したのではないかと思えるような、甘さ辛さをはっきりさせたいわゆるわかりやすい味に仕上げてあるので、音の品位という点からみるとかなりものたりない。中音域から低域にかけての厚みを持たせて腰の坐りを良く、大づかみな意味で音のバランスをととのえるうまさはパイオニアならではの手際の良さだと思った。

ハーマンカードン Citation 16A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなり積極的な音を持ったパワーアンプだ。中域以上高域にかけて華やかな光沢があって、明るいライトで照らしたようにディテールに至るまでキラキラと輝いて浮き出してくるようだ。低音のかなり低いところには意外に重量感もある。やや重く、力にまかせるように思えるが、それは、中低音域でいくぶん音の引っ込むような傾向があるのでよけいにそんなふうに聴きとれるのかもしれない。したがっていわゆる低次倍音の音域がバランス上薄手なので、中〜高域の華やぎは、ときとしてかなり派手にはしゃぎすぎる傾向を聴かせる。饒舌気味、説明過剰の傾向といえようか。これなりに得がたい個性で、国産でいえばビクターのアンプに概してこの傾向が聴きとれる。

オンキョー Integra M-505

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 どちらかといえばウェットなタイプの音、あるいは女性的な美しさを持った音、ともいえそうだが、清らかでなよやかな表情のやわらかさは、ごく良質なアンプでなくては聴けない上等の音質だ。「オテロ」冒頭のトゥッティでは、音像の奥行きや深みや発声のニュアンスも十分で、ステージの雰囲気さえ感じとれ、弦楽四重奏やアメリンクの声、伴奏のピアノの表情なども、音がよく響きよく溶けあってほどよく弾み、いかにも音楽している楽しさが感じとれる。LNP2Lの情報量を全部は出しきれないところはあるし、やや甘口で弱腰のところはあるが、この音の良さはもっと注目されていい。外観の武骨さが、かなりイメージを悪くしているのではないかと思える。

ガリエン=クルーガー 1000-1S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 このメーカーについては詳しいことを知らないが、外観はいわゆるコンシュマー用でなくいかにもプロ用、それもPAあるいはモニター用などの用途を思わせるコンストラクションで、見た目にはなかなか信頼感を抱かせる。そのことは音を聴いてもうなずける面がある。総体に神経質なところが少しもなく、やや重い感じの独特の低音の力に支えられて、中音から最高音域に至るまでどちらかといえば反応が鈍い印象。ディテールを照らし出すのでなく全体をくすんだモノトーンに仕上げるような音色といえる。かなりの音量で鳴らし続ける目的には、シャープすぎなくていいのかもしれないが、ふつうの鑑賞用としては、もう少し鮮度の高さやニュアンスが欲しく思える。

GAS Ampzilla II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 中庸であることをの良さを十分にわきまえた音というべきか。実に見事に堂々とした安定感があって、どんなプログラムソースにも破綻をみせず、いわゆるヒステリックなところのない本当の底力のあるとてもいいパワーアンプだ。大地にどっしりと足をふんばってたっているかのように腰の坐りのよい音。よく鍛えたぜい肉のない筋肉質の肉づきの良さを思わせる、いかにも男性的な自信にあふれた魅力といえようか。ただ、前回のセパレート特集でも発言したように、私自身は、同じ音でももう少し女性的なやさしさや艶っぽさがなくては嬉しくなれない。いずれにしてもコントロールアンプのLNP2Lとは相容れにくい性格をもっていて、GAS同志の組合せの方がいい。

GAS Son of Ampzilla

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプジラIIとグランドサンとのあいだにあって、まさにその中間的な音に仕上げてあるあたり、実力のある設計にが余裕しゃくしゃくで遊んでいるようで、これは並の手腕ではない。アンプジラのようなパワーに支えられた底力には欠けるという面を補う意図か、いくぶんコントラストの強い硬調ぎみの音に作ってあり、親父のようなおっとりした音でなく目鼻立ちをくっきりさせて、音の輪郭を鮮明にさせる。そういう傾向の割にはクラシックの弦合奏も案外楽しませるが、ただ本質的にはポップス系のプログラムソースの方を生かすようだ。親父の威光に負けまいといくらか突っぱって生きている、という感じで私にはグランドサンの素直さの方が好ましいが。

GAS Grandson

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプジラの孫ならさしずめ「マゴジラ」か。いかにも孫らしく、小造りで可愛らしさの感じられる音で、「オテロ」の冒頭の部分など、かなり精一杯がんばっているとでもいう鳴り方をする。ただそれはよほどの音量でのことで、ふつうの聴き方をするかぎり、表示パワー(40W×2)が信じがたく思える点はDB6と同様。コントロールアンプのサリアとも共通の性格だが祖父(アンプジラ)のあの堂々とした押し出しのないかわりに、プログラムソースにしなやかに順応する率直さがあって、弦や声もほどよく柔らかく溶けあう響きが美しい。いくぶん硬質ぎみの音といえるが、自己主張が強烈でなく、ぜい肉を抑えて細身に表現するところが私には好ましい音だった。

ダイナコ Mark VI

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弦あるいは声がとてもいい。血の通った暖かさがあって、ふくよかでやさしい音がいつのまにか聴き手の心を和ませる。ボリュウムをかなり上げてもやかましい感じ、金属的な感じが少しもない。最新のTRアンプのどこまでも切れ込んでゆくもの凄い解像力を聴いた耳には、このいささか甘口の音は物足りないともいえる。音の響きの部分のデリケートな繊細さ、弦の倍音の漂う感じ、など、ディテールがTRほどは見通しにくかったり、ピアノなど打音がもうひとつ切れ込まないなど、不満がなくはないが、まろやかで豊かなこの音には十分の魅力を感じる。ただ、組み合わせたLNP2Lの解像力の良さに助けられた面がかなりあることは書き添えておく必要がありそうだ。

ラックス MB3045

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 球と石という単純な分類には賛成しないが、トランジスターアンプでかなりの水準を実現させたラックスがあえて残しているだけの理由は、音を聴いてみて十分に納得できる。旧型の管球アンプの概して不得手な音の切れこみの悪さがこのアンプにはあまり感じられず、LNP2Lのように解像力の良いコントロールアンプと組み合わせることでいっそう引き締った現代的な面をみせながら、しかしマーク・レビンソンのときとして鋭くなりがちの高域を適度に甘くやわらげて、ついいつまでもボリュウムを絞りがたい気分にくつろがせてしまう。弦やヴォーカルには素晴らしく味わいの深い良い音を聴かせるが、打音に対していささか締りの不足する感じがやはり管球アンプの性格か。

DBシステムズ DB-6

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一にびっくりしたのは表示パワーが40W×2と小さいのに、鳴らしているかぎりとうてい信じられない力があることだ。国産のパワーアンプの多くが、80Wクラスではまだもうひと息、力あるいは密度の不満を感じさせるのだが、DB6にはそうした不満が、全くないとはいえないが少なくとも百W旧のアンプのような充実感があって、かなりの音量でも危なげがない。低音の支えもしっかりしているし、高音域にも音楽の表情を生かすような適度の艶が感じられて、かなり楽しませてる。中音域、というより中低音域をやや抑えた感じがあり、ディテールを繊細に形造ってゆくやや硬調ぎみの音だが、たいそう質の良い音のアンプだと感じた。

ラックス 5M21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティの鳴り方から、音の密度のきわめて高く、混濁感のない品位の高さが聴きとれる。概して不満の多いホルンの響きも自然なバランスでとてもいい。弦楽四重奏、ヴォーカル、ピアノ、すべてに格調の高い安定感があって、やや細身ながら品の良いバランスの良さが一貫していて、たいへん良く練り上げられたアンプであることを思わせる。キングズ・シンガーズの六声のよくハモること、そして声の向うに広がって消えてゆく余韻の響きのデリケートな美しさなどは、リファレンスの510M以上だ。ただやはりこれはいかにもラックスの、あるいは日本の音で、いわゆる脂っこさ、あるいはハメを外す寸前までの自在な躍動感という面はここにはない。

ラックス M-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 すっきりと上品な透明感のある、よく磨かれた音質のパワーアンプだ。音の品位を大切にしている反面、ローエンドの延びあるいは量感のやや抑えられた感じの、どちらかといえば細身の音質で、たとえば「オテロ」の冒頭のオルガンの持続音が十全に聴きとれたとはいいにくい。しかし中低音域以上高域にかけては、音の芯もしっかりして密度もあり、弦合奏やクラシックのヴォーカル(テストソースではエリー・アメリンク)の美しさはなかなかけっこうなものだった。シェフィールドのパーカッシヴな音も意外にしっかりと鳴る。ただ、菅野録音のベーゼンドルファーの脂っこい丸味のある艶を要求するのは少し無理のようで、そこはいかにも日本の音、という感じだった。

BGW Model 410

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプの♯203とよく似て、いくらか乾いた傾向でどこ素気ないというか、アンプ固有のカラーをできるだけ抑えて作ったという印象がある。リファレンスのマランツ510Mには、高音域にいくぶん線の細いキラッと輝く音があってそれが音の切れこみの良さを感じさせる要素にもなっているがこのBGW410の高域にはそうした色あいまたは光沢を抑えて作ってあるために、一見ソフトな音に聴こえるが、音楽のディテールも一応過不足なく描写するし、反応の鋭敏さもあらわにしないが底力も十分にある。以前のBGWは小出力時にどこかザラついた音があったが、410では歪も十分に除かれているらしく、粗い音は全く感じさせない。

Lo-D HMA-9500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 すでに各方面で評価の高い製品だが、こうして内外の最新機種の中に混ぜて試聴しても、全力投球のあとが聴きとれて、優秀なパワーアンプのひとつだということがよくわかる。音の傾向は本質的にはハードでかなり力強いところがあるが、緻密で腰の坐りがよく、低音の支えもしっかりしているので、音にうわついたところが少しもなく、ハイパワーでも全く危なげのない充実した音を聴かせる。音の力強さがいかにも男性的で、底力のある重量感に満足をおぼえるが、反面、ここにもう少しやさしさが加わるとさらに素晴らしい音に仕上ると思う。入力にあくまでも素直に順応するというより、どこか一ヵ所力づくの強引さがあるところがもうひと息、なのだ。

Lo-D HMA-7300

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 HMA9500のきわめて男性的な音と比較しての話でなく、この7300自体が本質的にどこか女性的な、硬さを嫌ったかなりウェットな音を持っていると聴きとれる。やかましい音、あるいは張り出す音を嫌ってのことだろう。たとえばダイヤトーンではきわめて張り出していた中〜高音域が、難しい弦の音でテストしてみてもHMA7300ではよく抑えられ、耳たぶをくすぐられるかのような細身の音色で聴こえる。その意味ばかりでなくこういう音はやはり女性的といえるだろう。もうひとつ、音の基本的な質がかなりウェットで、音の密度も薄手のため、プログラムソースによってはもう少し中味の埋まった音が欲しいというように思われることも少なくなかった。

Lo-D HMA-7500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」冒頭のオルガンの低い持続音がやや聴きとりにくく、低音の量感が不足ぎみであることを感じる。国産アンプには案外多いが、続いてのトゥッティの部分でも、総体に音が細身で重量感や厚みや奥行きが出にくい。音の硬さやおしつけがましさがよく抑えられているのでやかましくない点はよいが、弦楽四重奏でさえいくぶんオフマイクぎみに音像が遠ざかる感じで、もう少し実態感や充実感が欲しく思えてくる。骨ばってこない点が好ましいともいえるが、どこか軟体動物的で頼りないところもあって、フォルテ・ピアノのはげしく入れ変るような曲では音がふわふわとあおられて抑揚の強調される感じもあって、もう少しふんばりが欲しい。

パイオニア Exclusive M4

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 国産に珍しいロングセラー機だが、こうして何度聴き直してみても、やや線が弱い面のあるもののやはりこのアンプならではの音のしなやかさでやさしく、いくぶんウェットだが繊細で上品な音の良さは、他に類機の得がたいという意味で、これから先も十分に存在理由のある製品といえる。ことにAクラス独得の、おそらくマイクロワット・オーダーのミニパワーの弱音でも、弦の音などニュアンスが美しくしっとり聴かせるところがいい。ハイエンドにやや独得のキラッと光る強調感があって、そこがM4であることを特徴づける個性になっている。重低音の支えがいくぶん弱くそれでいて音が重いところがあるがそれは聴感上マイナス要因にはならない。

ダイヤトーン DA-A15DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弱点をどんどんおさえていって、欠点も少ないがおもしろみに欠けた音になってしまう、いわば減点法で仕上げる例の少ないとはいえない国産機の中では、かなり積極的に音を作り上げたという感じの強い、なかなかユニークなパワーアンプだ。ダイヤトーンのスピーカーもそうだが、どちらかといえばクラシックの弦やヴォーカルよりは、ポップスの打音の切れこみのよさや、張りのある力強い音の再現を狙っているらしく、やや金属質ともいえるハードによく張った音といえる。非常にクリアーな印象で、たとえばシェフィールドでテルマ・ヒューストンのヴォーカルがバックからよく浮き出すというように、コントラストを高めて輪郭の鮮明な音に仕上げてある点が特徴。

ダイヤトーン DA-A10DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 A15DCの弟分ということをかなり意識して仕上げたのか、それともむしろ意図して音の傾向を変えているのか、ともかくA15とはずいぶん音質が違う。兄貴分がかなり硬質の、むしろ金属質のハードでクールな音を聴かせたのに対して、A10DCの方はもう少し力の誇示をおさえて、おだやかな鳴り方をする。ただそれはあくまでもダイヤトーンどおしの比較の話で、他社の音の中に混じるとやはり硬質の傾向で、たとえば弦楽四重奏でもA15DCのときほど各声部を目立たせることはないが、本質的にポップス系志向の傾向はあって、弦や声はどちらかというと骨ばって聴こえる。反面、ポップスの打音の系統は、かなりシャープに浮き上って聴こえる。

デンオン POA-1001

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 価格も出力も1003とそんなに差があるわけではないのに、音質はその差以上に大きく、国産の水準の中ではかなりのできばえといっていいだろう。国産の、とあえて断わるのは、海外のアンプのあの湧き上ってくるような積極性に富んだ、良くも悪くも個性の強い音とは違って、やはりどこか平板だし、音の艶もやや抑える方向で鳴らすからだが、しかし抑えた中に力も充分に感じさせるので、1003では十分でなかったシェフィールドのレコード等でもかなり聴きごたえがある。ただ、弦合奏やキングズ・シンガーズの声のような場合、もうひと息冴えた立体感や躍動感が欲しくは思われるが、音楽を楽しませるという点で相当に良い部類のパワーアンプだと感じた。

デンオン POA-1003

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 85W×2という出力はそれ自体では決して小さなパワーではないが、100Wを超えるアンプが居並ぶ中に混ぜて聴くと、やや小ぶりで可愛らしい音に聴こえる。その点は価格等とにくみあわせて多少割引くとすれば、音質そのものは、クラシック・ポピュラーを通じてかなりの水準をゆく。ことに、演奏のデリケートなニュアンスがかなりよく出てくることに感心させられる。決して積極的な音ではないが、プログラムソースのディテールに素直に順応してゆく良さを持っていて、音楽を楽しむ気持をしぼませることがない。だたシェフィールドのダイレクトカッティングのようなレコードでは、もっは張りのある力が出てくれないと不十分だが、総じてよくできたアンプといえる。

オーレックス SC-77

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パワーアンプ単体のテストには、コントロールアンプにマークレビンソンのLNP2Lを組み合わせているわけだが、ときに必要以上に音をこまかく浮き上らせるとさえ思えるLNPの音が、SC77と組み合わせると意外に起伏のおさえられて一様に均されたような音になる。そのことからSC77自体の持っている方向は、かなり客観的でおとなしい、ややスタティックな音質であることが想像できる。バランス的には重低音域がおさえぎみ。またステレオの音像は、奥行きを感じさせるよりも平面状にひろがるタイプだ。「オテロ」冒頭でも歪感はなくクリアーで混濁しない点は立派だが、総じて音は淡泊な傾向で、いわゆる音の深味や充実感をことさら聴かせるというアンプではない。

アキュフェーズ M-60

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 露(あらわ)とか、あからさま、といった感じをことさら避けて、潜在的に持っている力をさえ一見それとわからないほどさりげなく感じさせるところまで練り上げたとでもいうような、いわば日本に古くから伝わる美徳とでもいった雰囲気を漂わせる音、といったらほめすぎになるだろうか。ほどよく潤いのあるしっとりした肌ざわりで、どんなハイレベルでも荒々しい音をとろりとくるみこんで上品に鳴らすところは「M60の音」とでも呼びたくなりそうになる。反面、すべての音を音源からやや遠くに持ってゆく傾向があり、曲によってはもっと荒くとも演奏に肉迫した感じ、もっと生々しい躍動感を求めたいという気持にもさせる。だが良いアンプであることは確かだ。

アキュフェーズ P-300S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ロングセラーに改良を加えて事実上のニューモデルに変身したが、改良の成果はコントロールアンプよりもこちらに顕著のように思える。旧型のP300は(というより従前までのアキュフェーズの目ざしていた音は)、どちらかというと穏健型のおだやかな、音の丸みを大切にした作り方だったが、Sタイプになってそれが一変して、現代の新型アンプに共通の入力に対する反応(レスポンス)の鋭敏な、とても新鮮な音のするいいパワーアンプに生れ変ったと思う。ただそれがしいていえばもうひとつ熟成を待ちたい感じとでもいうか、C220やM60の鳴らす解像力の優れているがそれをあらわに出さないといういわば大人の雰囲気にくらべて、むしろ若さを感じさせるところがある。

ヤマハ C-2 + B-3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前B2と組み合わせて聴いたC2だが、パワーアンプが変ると総合的にはずいぶんイメージが変って聴こえるものだと思う。少なくともB3の出現によって、C2の本当に良い伴侶が誕生したという感じで、型番の上ではB2の方が本来の組合せかもしれないが、音として聴くかぎりこちらの組合せの方がいい。B2にはどこか硬さがあり、また音の曇りもとりきれない部分があったがB3になって音はすっかりこなれてきて、C2と組み合わせた音は国産の水準を知る最新の標準尺として使いたいと思わせるほど、バランスの面で全く破綻がないしそれが単に無難とかつまらなさでなく、テストソースのひとつひとつに、恰もそうあって欲しい表情と色あいを、しかしほどよく踏み止まったところでそれぞれ与えて楽しませてくれる。当り前でありながら現状ではこの水準の音は決して多いとはいえない。ともかく、どんなレコードをかけても、このアンプの鳴らす音楽の世界に安心して身をまかせておくことができる。