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GAS Grandson

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケールは小さいが、シャープで音の鮮度が高く、小気味のよい爽やかな音を聴かせるパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、低域は抑え気味であるが、中域から高域にかけてスッキリと伸び切ったワイドレンジ型であり、低域の質感が甘く軟調となる傾向がなく、40Wの定格パワーのアンプとしては、見事な低域のコントロールぶりを聴かせる。エネルギー感は予想よりもかなりあり、ドライブしがたい4343を、家庭内での音量なら充分に鳴らすことができるのは立派である。全体のキャラクターとして、国内製品のパワーアンプ的な面があるが、開放感があり伸びやかに音を出すあたりは、一味違っている。

ダイナコ Mark VI

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 耳あたりのよいウォームトーン系の、適度にクリアーさのある独特の音を聴かせるパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準から見ればナローレンジ型で、一種独特のしなやかさと力強さがあり、鮮度感もかなりあり、落着いて長時間音楽を聴くときに応わしい安定感のある音である。音の表情はさして細やかさはないが、活気がありおだやかさも充分にある。
 ステレオフォニックな音場感は、空間がフワッと滑らかに広がった印象があり、パースペクティブもそれなりに感じられる。音像はややふくらみ、大きいが、輪郭はかなり線が太く、明瞭である。

DBシステムズ DB-6

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 カッチリと引き締った、小柄だがエネルギッシュに音を出すパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、かなりフラットレスポンス型で、バランス的には、ローエンドはシャープカットされているようである。音色は寒色系のソリッドで引き締ったタイプで、割り切ったスパッとした音の決りかたは、セパレート型アンプに要求される個性を充分に備えている。
 定格パワーはかなり少ないが、エネルギー感は予想以上にあり、ローパワーアンプにありがちな、低域が甘く軟調で、クリアーに質感が再現されない点は皆無といってよい。中域から中高域の音の粒子は、粗粒子型だがクリアーな光沢があるタイプだ。

BGW Model 410

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 大陸的なスケール感の大きい、ウォームトーン系の柔らかく粘った印象の音をもつパワーンあプである。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすればややナローレンジ型で、バランス的には、ローエンドが抑えられた、中低域がタップリとした安定型のレスポンスであり、高域はやや下降気味のように受けとれる。音の粒子は全体に粗粒子型で、低域は甘く重く、中域は硬質な面が感じとれる。203コントロールアンプとの組合せに感じられたトータルキャラクターは、パワーアンプ側に多くあるようだ。表情はおおらかで落ちつきがあり、反応はおだやかで、独特のエネルギー感がある。

アムクロン DC300A IOC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lと組み合わせると、エネルギー感がタップリとし、ゆったりと伸びやかに鳴るようになる。表情は、豊かでおおらかに鳴り、クォリティが高く、充分に楽しませてくれる。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びており、基本的にはウォームトーン系の音である。低域は力感があり、軟調気味ではあるが、厚みが充分にあって、安定したベーシックトーンとなっている。中域は少し密度が薄い傾向があり、粒子が少し甘くなるが、量的にタップリあり、エネルギー感もかなりあるために、さして不足感はない。高域は少しラフな面があるが、トータルなまとまりは良い。音像はかなり締っている。

ヤマハ B-3

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 軽快で伸びやかな、フレッシュな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、現代アンプらしいナチュラルなワイドレンジ型で、音の粒子は細かく滑らかに磨き込まれており、バランス的にはフラットレスポンスタイプであるが、中域の密度は少し薄い印象がある。音色は、軽く明るく滑らかであり、音の反応が早く、伸びやかに活き活きとした音を聴かせる。
 ステレオフォニックな音場感は、左右方向にも前後方向のパースペクティブをもよく広げて聴かせ、音像定位もナチュラルであるが、スケール感はやや小さく、音場が箱庭的な精緻さで再現される傾向がある。

ビクター M-7070

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 シャープで立ち上りの早い、反応の早い音が特長のパワーアンプである。
 トータルバランスやエネルギーバランスの面では、EQ7070よりも、むしろこのM7070のほうが一段と優れており、120Wの定格パワーから予想した音よりも、充分にパワーの余裕を感じさせる音である。バランス的にはフラットレスポンス型で、音色は低域から高域に渡ってよくコントロールされた、明るく軽く、細やかなタイプで、音の表情も活き活きとし、鮮度が高い爽やかな音を聴かせる。ステレオフォニックな音場感は、ナチュラルに広い空間を感じさせるタイプで、音像の立ち方もクリアーで、実体感がある。

ビクター M-3030

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 低域ベースの安定した、かなり活気のある音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、豊かな低域をベースとした安定感のあるバランスで、高域もハイエンドは少し抑え気味の印象を受ける。低域の音色は、豊かで柔らかく重いタイプで、重心の低いズシッとしたエネルギー感があり、中域は、量的には充分なものがあるが、音の粒子がやや粗粒子型で、滑らかに磨かれてはいるが、引き締ったクリアーさでは今一歩という感じがする。カートリッジは、4000D/IIIや881Sよりも、ピカリング系のソリッドで輝きがあり、クォリティの高いタイプがマッチしそうで、アンプ本来の特長が活かせるだろう。

トリオ L-07M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 安定感のあるソリッドで、かなりタイトな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少しシャープに落したような印象があり、このためか、中域が量的にタップリとあり、張り出した活気のある音となっている。バランス的には、低域の音色はやや柔らかく甘く暗いタイプで、反応は少し遅いが安定感は充分にある。中域は寒色系の硬質な音で、とかくなめらかで細かいが中域が薄く充実感に欠けがちの最近のパワーアンプのなかでは、このパワーアンプのソリッドさは、一種の割り切った魅力にも受け取れる。音の表情は、L07Cよりも伸びやかさがあり、反応も一段と早いようだ。

トリオ L-05M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 同じモノ構成のパワーアンプL07Mと比較すると、音の伸びやかさが一段と加わった、滑らかで細かい音がこのパワーアンプの魅力である。聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には中域が少し薄く、低域は豊かで柔らかい。音の粒子は細かく、よく磨かれていて、細やかなニュアンスの表現や、表情の伸びやかさをかなり引き出して聴かせる。
 ステレオフォニックな音場感は、左右にもよく広がり、前後方向のパースペクティブをもナチュラルに聴かせるが、音源は少し距離感を感じるタイプで、左右のスピーカー間の少し奥まったところに広がる。音像はソフトで適度なまとまりと思う。

テクニクス SE-A1 (Technics A1)

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケール感の大きな、ゆとりが感じられるパワーアンプである。音の細やかな表現や、情報量の豊かさがベースとなるステレオフォニックな音場感の再現性では、コントロールアンプA2のほうが一枚上手のようである。音色は軽く柔らかく滑らかなタイプであり、ゆとりがタップリとあるために、スケール感の非常に豊かな音を聴かせる。表現はおだやかでやや間接的な傾向があり、マクロ的に音を外側から枠取りを大きく掴んで聴かせる特長があり、バランス的には、中域の密度がやや薄く、中高域あたりには少し音の粒子が粗粒子型で、柔らかく磨いてあるのが感じられる。おおらかで安定した音は、ハイパワーアンプならではのものだろう。

テクニクス SE-9060II (Technics 60AII)

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなり国内製品のパワーアンプとしては平均的な性格をもった、オーソドックスな音である。聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少し抑えたナチュラルなバランスであり、音色は均一で軽く、やや明るいソフトなタイプで、低域もあまり柔らかくなりすぎないのが特長である。バランス的には、中域は量的には充分のものがあるが、エネルギー感としては不足気味で音が伸びず、頭を抑えられた印象の音となる。リファレンスコントロールアンプLNP2Lの特長を引き出して聴かせることができず、あまり音の反応が早くなく、本来のペアの魅力が出ないが、このクラスのセパレート型アンプとしては、これが本当だろう。

スタックス DA-80M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ウォームトーン系の豊かで細やかな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には、中低域が柔らかく量感が豊かで、中域は少し薄く、高域はわずかに上に向ってなだらかに下降するレスポンスに受けとれる。低域は甘く軟調傾向を示すが、M4よりも厚みはあるが音色はやや重く、暗いタイプである。中域は細やかだが、エネルギー感は不足ぎみで、粒立ちも甘いタイプである。LNP2Lの中域を+1、高域を+2に調整すると帯域バランスはかなり改善され、本来の細やかで伸びのあるウォームートン系の、響きの豊かなクォリティの高い音となる。

ソニー TA-N7B

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかな、寒色系のクリアーな音をもつパワーアンプである。聴感上での周波数レンジは、組合せで予想したよりもナローレンジ型となり、低域は重くおだやか型、中低域はやや薄く、中域から中高域はソリッドで硬質な面があり、高弦では輝きが過剰気味に再生される。音の表現はかなりマジメ型で、表情を抑える傾向があり、音の反応も早さと遅さがあってバランスが悪くなるが、リファレンスコントロールアンプLNP2L,またスピーカーシステムの4343と、かなりミスマッチの印象が強い。やはり本来のN7BのペアコントロールアンプはE7Bであり、トータルバランスは数段優れていると思う。

ソニー TA-N86

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソリッドで引き締った音をもつパワーアンプである。聴感上では充分に広い周波数レンジを感じさせ、バランス的にはかなりフラットレスポンスで凹凸が少なく、音色では、低域が軽くソフトであり、中低域は粘った印象があり、中域にはソリッドな硬質さがある。音の鮮度はかなり高いタイプで、表情にはフレッシュな魅力がある。
 ステレオフォニックな音場感は、左右方向・前後方向のパースペクティブともによく広がるが、音源はかなり近づいた印象となる。音像のまとまりはよく、輪郭の線もかなりクッキリとしてシャープさがある。低域は、やや厚み不足を感じさせることもあるが、定格パワーからは充分な力をもつと思う。

サンスイ BA-2000

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 素直で、伸びやかさを感じる音をもったパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びた、現代アンプらしい印象があり、音の粒子が全帯域にわたり、細かく滑らかに磨かれ、音色も軽くフワッと明るい印象に統一され、充分にコントロールされている。バランス的には、中域が少し薄い傾向があり、低域が柔らかいために、エネルギー感は薄いが、スッキリと爽やかな音である。
 ステレオフォニックな音場感は、スッキリとした爽やかなプレゼンスが感じられるタイプで、音像も小さくまとまり、その輪郭も細くシャープでナチュラルに定位をする。スケール感もあり、かなり良い音である。

デンオン TU-850

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TU850は、デンオン独特の回転ドラム式ダイアル、2個のメーターをもつ個性的なデザインを踏襲した新製品である。
 中間増幅段の帯域切替、超高域FM検波器、NFBパイロットキャンセルのMPX、録音用発振器内蔵などが特長といえよう。

デンオン PMA-850

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのプリメインアンプは、良き時代の高級感級アンプの面影を感じさせるPMA700Zが、DCアンプ化されマークIIIとして登場したばかりである。
 今回は、これにつづいて、1001、1003といったセパレート型アンプでの成果をベースとし、最新の技術動向の最先端をゆく回路構成を備えたPMA850が、新しく装いを変えて登場することになった。
 基本的な開発のポリシーは、格段のユニットアンプの特性を極限値まで追求し、いわゆるプッシュプルタイプの平衡型コンプリメンタリー構成を全段増幅に採用している。これにより、裸特性の良さを活かし、ダイナミックな音楽信号の歪補正を従来回路の製品より完全にしている。また、ダイナミックレンジを拡大する目的で、とくにSN比が重点的に追求され、同社の従来製品よりも約10dB向上しているとのことだ。
 機能的には、30mVの許容入力をもつMCヘッドアンプ、イコライザーとパワーアンプを直結するダイレクトカップルスイッチなどを備える。従来どおりのクロストーク特性の重視に加えて、左右別巻線のトロイダルトランス仕様の強力な電源部、DC構成の全段直結平衡型DCパワーアンプなどは、今回はじめて採用された。
 このモデルは、各構成アンプの素直で優れた性能がナチュラルに音に反映したかのような、明るい、伸びやかな現代のデンオンの音といえるものだ。従来機との違いは、ちょうど、カートリッジでいえばDL103と最新製品DL103Dの差と似ており、音の性質でも同様なことがいえる。新世代のデンオンを感じさせる磨き込んだ立派な音である。

ソニー PS-X9

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プレーヤーシステムは、ダイレクトドライブ型フォノモーターが実用化されて以来、FG型サーボの第2世代、さらに、クォーツロックの第3世代と性能が向上し、現在のトップランクの製品では、まったく完成期に入ったかのように感じられる。性能的に見ても、聴感上においても頂点に達し、もはやプレーヤーシステムが、コンポーネントシステムのネックになるとは考えられないというのが実情である。しかし、一部では、精密な機械加工による精度をもつ、まったくサーボシステムをもたない旧タイプのフォノモーターを使ったシステムのほうが、現在のクォーツロックのフォノモーターのものよりも聴感上で明らかにメリットがあるとの声も絶えないのは事実である。
 たとえば、業務用として定評のあるEMTのTSD15を、一般のプレーヤーシステムとEMT927stとで比較試聴したとしよう。当然のことながら同じTSD15なのに、結果としての音は、カセットデッキの音と2トラック・38センチの音ほどに隔絶した差、誰しも驚くほどの違いが出てくる。この意味では、アンプにたとえれば、現在のプレーヤーシステムは、プリメインアンプの範囲にとどまり、高級セパレート型アンプに匹敵する製品は皆無といえよう。
 今回ソニーから発表されたPS−X9は、まさしくセパレート型アンプのランクにある待望された大型製品である。
 直径38cm、重量2・8kgの大型ターンテーブルは、トルクムラによる振動がない起動トルク7kg/cmの大型リニアBSLモーターでダイレクトドライブされ、サーボ系は、マグネディスク検出方式に加えて、クリスタルロック機構付である。プレーヤーベースは、モーターとトーンアームを他の部分から隔離したアルミ鋳造フレームによるフローティング機構を備え、アルミダイキャスト製の固定フレームからゲル状の高粘性体のインシュレーターで懸架されている。また、モーター部は軸受部分が砲金製、モーターハウジングが鋳鉄製である。
 トーンアームは高感度で剛性が高い軸受ブロックとパイプには剛性アルミ合金と炭素繊維をラミネートした材料を採用し、内部のリード線には高域損失が少ないリッツ線を、シェル固定には前後2箇所で締めつけるネックシリンダー機構をもつ。
 カートリッジはマグネシュウムシェルと一体化したXL−55Pro、電源はパルスロック型で、MCヘッドアンプとフォノイコライザーが内蔵されている。なお、トーンアームはオートリフター機構付である。
 PS−X9に各種のカートリッジを使い、内蔵アンプを使用せず、ダイレクトにコントロールアンプに接続して試聴してみると、安定感があり重厚な低域をベースとして、テープの2トラック・38センチ的な雄大なスケールをもったダイナミックな音に変貌した。

ラックス L-10

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新セパレート型アンプC12、M12と共通の外形寸法とデザインをもつ新プリメインアンプで、ラボラトリー・リファレンス・シリーズの5L15と共通のDC構成イコライザーとハイゲインDCパワーアンプのみの単純構成が特長である。パワーアンプは、高周波特性が優れた小型パワートランジスターの並列使用で、動作はABクラスだ。機能はシンプルだが、湾曲点3段切替の高音、低音コンペンセーターがあり、変化範囲は狭いが実用上では本機自体が歪感が皆無といってもよいナチュラルな音をもつため、僅かのバランスの変化が敏感に聴きとれ、一般のトーンコントロールと同様に効果的に使える。

マランツ Model 1180

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 モデル1180は、基本的にはモデル3250とモデル170DCをインテグレートアンプ化したと考えてよい製品である。機能的には、モデル3250にピークインジケーターが加わった点だけが異なる。セパレート型の組合せの音に比較すると、ややローエンドとハイエンドを抑えたプリメイン型らしいバランスであり、これは聴感上でのパワー感となって反映されている。同じ定格出力だが、本機のほうがスピーカーを駆動するエネルギーは強く、4343を十分に駆動した。

マランツ Model 3250, Model 170DC

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 管球アンプ時代からの伝統を誇るマランツのセパレート型アンプは、ソリッドステート化されてからも、シンプルで機能美の典型ともいえるフラットなフロントパネルをもつデザインを踏襲してきたが、コントロールアンプ・モデル3600の発表を機会として、ブラック仕上げのサブパネルを配した立体的なフロントパネルに変更され、新しいマランツの顔として定着している。
 今回発表された一連の新シリーズ製品は、それに対してサブパネルをフロントパネルに重ねた二段構成のタイプとなり、色調も薄いゴールド一色に統一されている。
 モデル3250は、マランツのコントロールアンプとしては、位置づけとしてモデル3200の後継機種として開発された製品である。モデル3200に比較して外形寸法は、標準のいわゆるマランツサイズに統一され大型化されたため、外観から受ける印象は本格的なコントロールアンプらしくなっている。
 機能的には、現在のアンプとしては例外的ともいえるフロントパネルに左右独立したマイクジャックを備える他に、高音と低音のみがターンオーバー可変型で、かつ中音を含めたトライコントロールをもち、加えてMCヘッドアンプと連続可変型のラウドネスコントロールがある。
 モデル170DCは、コントロールアンプ・モデル3250と組み合わせるパワーアンプで、型番末尾にDCが付いているように、マランツ最初のDC構成のアンプである。パワーは90W+90Wで、フロントパネルにはブルーに照明される2個の大型のパワーメーターがあり、対数圧縮されたメータースケールにより8Ω負荷時のピークパワーを直読できるうえに、左右独立したLED使用のピークインジケーターを備えている。
 モデル3250とモデル170DCの組合せの音は、最新製品にふさわしく従来のマランツのアンプよりもかなり粒子が細かく、広いfレンジを感じさせる現代的なものだ。強力な電源回路をベースとする伝統的な、力強く芯がしっかりした低音の上に、米国系のアンプらしい中域の充実感があるのは血統の異なるところであろう。モデル3250は、単体で使用してもナチュラルな音場空間の拡がりと定位感のよさは、モデル3600を明らかに抜いたものだ。

ビクター EQ-7070, M-7070

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターの7070シリーズは、単なるセパレートアンプの分野にとどまらず、周辺機器までを含めたシステムプランにより開発されたユニークな製品である。すでに、このシリーズではグラフィックイコライザーSEA7070、エレクトロニッククロスオーバーCF7070が発売されているが、今回、イコライザーアンプEQ7070、モノ構成パワーアンプM7070、FMシンセサイザーチューナーT7070、プラズマインジケーターDS7070がシリーズに加わり、充実した製品のラインナップとなった。
 EQ7070は、フォノイコライザーの名称をもつようにディスク優先型のプリアンプで、必要最少限度の機能のみを残した単純機能のプリアンプであり、トーンコントロールはシリーズ製品のSEAを併用することになる。機能は、2系統はMM/MC切替可能となっている3系統のフォノ入力、AUX、チューナーの入力切替、2系統のテープモニタ、CとRのカートリッジ負荷切替などを備える。
 MCヘッドアンプは、エキストラ・ローノイズFET採用のICL−DC構成で高SN比をもち、イコライザーアンプは、初段FET同相帰還ダブル差動定電流負荷のICL−DC構成、フラットアンプは初段FETシンメトリー・プッシュプル・ドライブ型ICL−DC構成である。
 M7070は、モノ構成の完全なDCアンプである。電源関係を重視した設計であるために、A−B独立電源のBクラス動作をするパワー段には、一般の商用電源を一度DCに整流した後に数10kHzのパルスに変換し、高周波用トランスで変換してから再び整流してDC電源を得るDクラス電源に、制御系にPWM方式を用い応答速度を高めた定電圧電源が使用されている。これにより、電源の内部インピーダンスを高域まで非常に低くすることが可能となり、電源のレギュレーションは、理想の電源と言われた蓄電池をしのぐものとしている。
 この強力な電源をベースとして、パワー段には高域特性が優れた素子として注目されているパワーMOS FETを採用し、100kHzにおいても120Wの実効出力を、0・02%の高調波歪率で得ることに成功している。
 フロントパネルには、12ポイントのLEDピークパワーインジケーターを備え、0・3Wから200Wまで表示可能であり、入力調整、ヘッドフォン端子、スピーカー切替を備える他にプロ用機器としても使用するために、キャノンコネクターをもつ。
 EQ7070とM7070の組合せは、現代アンプらしい伸びきったfレンジと粒子が細やかで透明感のある音をベースとし、反応が速く十分にエネルギー感がある充実したサウンドで、ソフトドーム系や、古いタイプのスピーカーに積極的に働き、活気ある音として聴かせる。

ビクター JA-S77

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプの2020シリーズを基盤として開発されたプリメインアンプで、ビクターの中心機種の位置にある。構成は、イコライザー、トーンアンプがA級動作のDC構成、パワーアンプがDCアンプのトライDC構成で、電源は、A−B独立型、対数圧縮型パワーメーター、フロントパネルのテープ入出力端子が目立つ。
 このモデルは、最新アンプ共通の歪感がなくfレンジが広い、滑らかな粒子の細やかな音をもつ。ビクター製品らしく、音色が明るく、中域に十分な厚みが感じられるのが魅力のポイントである。

オーレックス SB-730

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 各ユニットアンプをはじめ、電源部、各種の構成部品を徹底的に低歪化してつくられたオーレックスの新プリメインアンプである。
 このモデルは、音色が軽く明るいタイプで、粒立ちが細かい音をもつが、中高域に適度の輝きがあり効果的にシャープさを感じさせる魅力となっている。低域の反応はおだやかで中高域は早いタイプといえるだろ。