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トリオ L-07C

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 クリアーで硬質な明快さをもつ音である。聴感上の周波数レンジは、かなり充分に伸びているが、ソリッドな音であり、爽やかに抜けたワイドレンジ感とはならない。バランス的には、低域が甘くかなり軟調傾向があり、豊かさはあるが、中域以上の音のキャラクターからすれば、一段と引締ったダンピングの効いた音が必要と思う。中域は、量的には問題はないが緻密さが不足気味で、中高域にかけての帯域は、クリアーで硬質な輝きをもっているために、弦楽器はやや金属的な響きとなり、オーバートーンが過剰気味となる。このあたりは、リファレンスパワーアンプ♯510Mとの相乗効果でもあろう。もう少し柔らかさ、滑らかさが欲しい。

テクニクス SU-A2

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ナチュラルで端正な音をもつコントロールアンプである。聴感上の帯域は充分に伸びきっており、リファレンスパワーアンプ♯510Mの硬質さを抑え、滑らかなクォリティの高い音とする。バランス的には、やや中域の緻密さが必要と感じるが、全体に音を引締め、粒立ちがクリアーなタイトな音にする点では、A1よりも♯510Mのほうが一段と優れているようだ。しかし、音のディテールの再現性や情報量の多さでは、A1のほうが一段と優れている。音のクォリティは非常に高く、反応もかなり早く、シャープで豊かな余裕たっぷりの音は素晴らしいが、実態感のある活き活きとしたダイナミックな表現では、もう一歩のもどかしさがある。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII)

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せのほうが、9060IIパワーアンプとの場合よりも伸びやかさが減り、スケールも小さく感じられて、何とはなしにつまらない音になる。聴感上の周波数レンジは、平均的よりもむしろナローレンジ型であり、バランス的には中域の低い部分でエネルギー感が不足し、安定度の悪さが出てくる。音の表情でも、やや消極的で伸びやかさが不足し、フレッシュな鮮度の高さがあまり出てこない。やや中域が粗粒子型で硬い部分があるのは、♯510Mとのマッチングが悪いためであろう。スケール感は小さく、小型ながらせい一杯に頑張って音を出している印象である。

スタックス SRA-12S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 帯域バランスが、かなり低域側に偏った独得なレスポンスをもっている。本来のDA80Mパワーアンプよりも、リファレンスパワーアンプ♯510Mのほうが、引締った力強さが感じられる音になるが、バランス的には、やはり高域が伸び不足で、細やかさや粒立ちのよさは求められず、ウォームトーン系のソフトで大柄な音であり、表情が鈍く、反応が遅いために絞らず、散漫で、クリアーな音にならない。
 ステレオフォニックな音場感は、DA80Mよりもナチュラルさがあり、左右には広がるが、パースペクティブが抑えられ、音像定位のシャープさはあまり感じられない。

ソニー TA-E88

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーソドックスにまとめられた、かなりマジメな音をもつコントロールアンプである。聴感上での帯域バランスはかなりワイドレンジ型で、バランス的には、低域がおだやかであり、中域はやや薄く、中高域から高域では硬質な面があるようだ。この硬さは♯510Mのキャラクターかもしれない。
 付属のMC型ヘッドアンプは、MC20ではMCA76よりも全体にソフトで甘い音となり、トータルバランスはこの方が安定感があり好ましいが、表現が少しパッシブな傾向となる。103Sでは、高域がスッキリと伸び、中域がカッチリと引締り、音の表情もMC20よりは明らかに一段と伸びやかとなり、情報量の増した音となる。

ソニー TA-E86

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、中域の充実感とエネルギー感ではリファレンスの組合せ(LNP2L+510M)に一歩を譲るが、細やかさと滑らかさでは、むしろこのコントロールアンプとのほうが優れた面を聴かせる。聴感上での周波数レンジはワイドレンジ型で、バランス的に中域が薄い傾向をもち、ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるが、音源は遠く感じられるタイプである。付属のMC型ヘッドアンプは、MC20でMCA76よりも全体にバランスが低域側に偏った安定型となり、低域の分離も向上する、やや硬質な音だ。103Sでは、かなりダイレクトな音源に近い音となり、一種のドライさがある音になる。

サンスイ CA-2000

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソフトで滑らかな音をもつアンプである。聴感上での周波数レンジは、素直に伸びており、バランス的には、低域が柔らかく豊かであり、中域は少し薄く、高域はスッキリと伸びている。音色は、基本的にはウォームトーン系で、音の粒子は細かく磨かれており、適度に粒立つため、表情が甘くならず、一種の爽やかさがある。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、BA2000の場合よりも中域の充実感は一段と加わり、粒立ちがクリアーになる。ステレオフォニックな音場感は、左右方向によく広がるタイプで、スッキリとしたプレゼンスを聴かせる。音源は少し距離感のあるタイプである。

パイオニア Exclusive C3

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなりクリアーで引締った音をもち、初期の製品に比較して、音のクォリティは相当に高く、表現力が加わっているようだ。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からは少しナローレンジ型で、バランス的には、低域が軟調であり、高域が少し粗粒子型の、やや硬調さがある。ステレオフォニックな音場感は、左右によく広がるが、音の粒立ちがクッキリとしない面があるためか、前後方向のパースペクティブが少し抑えられ、音像の立ちかたが少し甘くなる傾向がある。このあたりが、最新のアンプと比較するとC3のマイナス面となるが、音楽を聴くアンプとしては、非常にまとまりがよくクォリティが高く、出色の製品である。

スレッショルド NS10 Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、CAS1との場合よりも一段とクォリティが高まり、活気があり、反応が早く安定感が向上する。
 音色は軽くフワッと明るいタイプで、表情の細やかさが適度にあり、クォリティ的に充分に高さがわかる音である。バランスコントロールを+8dBにすると、高域がスッキリと伸びて、かなりクリアーで透明度が高い音になる。独得の細かいニュアンスの表現は、セパレート型アンプらしいユニークさである。「サイド・バイ・サイド3」のような、独得の細やかなプレゼンスのある音には、シャープな反応を示し、このアンプならではの他では求められない素晴らしい音を聴かせる。

パイオニア C-77

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マクロ的に音を外側からゆったりと掴み、響きを豊かに、あまり細部にこだわらず音を聴かせるコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを抑えた、いわゆるカマボコ型のレスポンスを感じさせるタイプで、全体にウォームトーン系の音色をもち、音の粒子は粗粒子型で基本的にはソフトである。
 リファレンスパワーアンプの♯510Mとの組合せでは、ややマッチングが悪いようで、スケールは大きいが、エネルギーが加わるだけに、ややまとまりに欠け、音が素直に伸びきらない面が感じられる。積極的にトーンコントロールを活用して、効果的な音として使うべきアンプのように受け取れる。

スペクトロ・アコースティック Model 217

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 屈託なく、活気のある音をもっている。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすれば少しナローレンジ型に感じられるが、ナチュラルに伸びており、とくに不足を感じることはない。バランス的には、低域はやや軟調傾向があり、中低域にかけてある種の粘った印象に特長がある。中域は、量的には充分あるが密度が少し薄く、高域は粗粒子型と面があるが、ほどよく磨き込まれている。
 音の表彰はかなりアクティブで、表面的に感じられる面がなくはないが、価格的に考えれば充分のクォリティがある。なお、ボリュウムの回転角度により、キャラクターが変化する点は注意したいところである。

パイオニア C-21

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで聴きやすい音のコントロールアンプである。聴感上の周波数レンジは、やや狭く感じられ、音の粒子が粗く、クリアーに粒立たないために、シャープにフォーカスが合った音にならず、表情が抑えられた、マットな印象になってしまう。
 バランスコントロール用のボリュウムをマキシマムとして、カートリッジ負荷抵抗を75kΩか100kΩとすると、かなりスッキリとした感じが出てくるが、低域は軟調で、音の姿・型が不明瞭であるために、力感が充分に再生できず、組み合わせるパワーアンプの♯510Mの250W+250Wのパワー感がダイレクトに感じられない。表情に活気があればまとまる音である。

SAE Mark 2100L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マクロ的に音や音楽を外側から、枠取りを大きく掴んで聴かせるコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすれば少しナローレンジ型で、バランス的には低域に厚みがあり、中域も量的にタップリあるが、少し粒立ちが甘くなる。音の表情はかなり豊かで伸びやかさはあるが、細部をクリアーに引き出せず、ある種の力で押し切るタイプで、音楽と対峙して聴き込むファンには、大柄で反応が鈍い面があり、不満を感じるかもしれない。いわば、音楽ファン用というよりは、高級PA的なキャラクターともいえよう。音場感は左右には充分広がるが、パースペクティブは抑え気味で、音像は前に出るタイプである。

QUAD 33

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 現在の水準からしても、かなりオーソドックスにまとまった音である。
 聴感上での周波数レンジは、さしてナローレンジ型を意識させない程度に伸びており、バランス的にはローエンドが抑えられ、低域はやや厚み不足ではあるが、芯のしっかりした適度のソリッドさがある。中域は安定し、高域は少し粗粒子型で硬質さがあり、立ち上がりは甘く、ハイエンドがなだらかに下降している。
 音の表情はおっとりしているが落ちつきがあり、ほどよくプログラムソースをまとめる特長があるが、反応は遅いタイプで機敏さはない。音場感はやや狭く、音像はふくらみ気味で、輪郭の線が甘い。

マッキントッシュ C32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯510Mのソリッドでやや硬質なキャラクターを巧みにカバーして、豊かでしなやかなクォリティの高い音になる。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びきっており、充分にローエンドまでのびた低域をベースとして、緻密で粒立ちが適度にクッキリとして芯がある中域、ハイエンドが少し抑えられた高域と、安定感のあるバランスを保っている。音色は明るく、好ましい重さがあり、音への反応もアクティブで、活気が充分にある。ストレートな音の表現力も見事で、エネルギー感はタップリとある。ステレオフォニックな音場感の広がりは、従来より一段と優れ、音像もシャープである。

マークレビンソン LNP-2L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンス用コントロールアンプとして数多くのパワーアンプの試聴用に使用して、その役目をほぼ完全に果したこと自体だけでも、このLNP2Lの群を抜く優れた性能と音質を物語るに充分なものがある。
 スッキリと伸びた周波数レンジをもち、全帯域にわたり、音色が明るく適度の重さがあり、音の密度が濃く、格調の高い都会的に洗練された音である。バランス的には中高域が少し硬質であるが、これはこのモデルがユニークな発想のデッキ用録音・再生アンプとして開発されたという、コンセプトの違いが、独得の硬質さをもつディスクをプログラムソースとすると相乗的に働くためで、アンプとしての正確さを示していると思う。

マークレビンソン ML-1L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lと比較をすると、全体に軽くやや薄い音であり、低域の緻密さ、厚みも少し不足する。しかし、中域が量的に充分あり、音の密度が薄くないのは大きな特長である。
 ゲイン切替をハイとすると音は全体に引き締り、シャープさが出てくる。また、左右チャンネル独立のバランスコントロールの位置によっても音が変化し、マキシマムの+5dBの位置がもっともクリアーに抜けた、緻密で爽やかな音になる。ゲイン切替をローとし、バランスを0dBとすると、もっともLNP2Lの音に近くなるが、低域はより柔らかく、軟調気味である。音場感的には空間がよく広がり、音像もクリアーに立つタイプだ。

マランツ Model P3600

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 標準モデルの♯3600とくらべると、聴感上での周波数レスポンスはよりフラット型であり、中域の密度が高く、ソリッドで引き締り、硬質で粒立ちがよく、キリッとしたメリットがあるのは大きい。
 バランス的には、現代のワイドレンジ化されたコントロールアンプの水準から見れば、ローエンドとハイエンドを抑えた印象があるが、帯域は充分に広い。音色は明るく、適度のソリッドさと、豊かな柔らかさがある。
 音の表情は伸びやかでナチュラルであり、ストレートな表現力、基本的なクォリティの高さでも充分である。ステレオフォニックな音場感はよく広がり、空間の広さを感じさせる。音像は標準的で、やや距離感がある。

マランツ Model 3250

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 現代アンプらしい、しなやかさと表情の細やかさがある、ワイドレンジ型のコントロールアンプである。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯P3600よりも反応が早く、音の粒子が細やかで、プレゼンスの豊かな音になる。バランス的には、低域は柔らかく豊かで、音色が明るく軽く、中域はやや薄いが、適度に鮮度が高く、粒立ちが滑らかであり、音のニュアンスをかなりナチュラルに引き出す。高域はスッキリと伸び切り、細やかである。ステレオフォニックな音場感は、左右には充分に広がり、、前後方向のパースペクティブをもよく聴かせる。音像は少し奥にスッキリと定位をする。

ハーマンカードン Citation 17

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルの♯16Aとの場合よりもマッチングが良いとはいえない。聴感上での周波数レンジはナローレンジ型で、バランス的には低域の量感は出るも、軟調で音色が重く暗くなり、ダンピングがかなり甘い。中域は粒立ちが甘く、中高域は予想よりも高質さが出てくる。
 全体におだやかでゆとりはあるが、反応が遅く、音楽のテンポが遅くなったように感じられる。今一歩、反応のシャープさが欲しい。
 ステレオフォニックな音場感は、標準的には広がるが、空間の広がりが少し狭く感じられ、音像は甘いタイプである。

オンキョー Integra P-303

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、音が全体に爽やかで、適度のコントラストが付いたフレッシュな音になる。やや間接音成分が多く、中域の密度の薄さは残るが、中域のエネルギー感もあり、クォリティ的にもセパレートアンプらしさが充分に感じられる。バランス的には、中域から中低域にかけて、エネルギー感的に不足ぎみの部分があり、厚み、力強さがわずかに抑えられる印象がある。
 付属のMC型用ヘッドアンプは、MC20で、柔らかく間接音がタップリとした、まるく甘い音となり、103Sでは、トランスよりも鮮度が高く、細部のディテールをかなりスッキリと引き出して聴かせる。

ラックス 5C50

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の粒子は、全帯域にわたって滑らかで、細かくよく磨かれている。聴感上の周波数レンジは充分に伸びているが、表情がおだやかで、やや間接的な表現をするために、クリアーに伸びた印象とはならない。
 音はやや薄いタイプで、音場感は左右によく広がるが、前後方向のパースペクティブは抑えられ、音場は、左右のスピーカー間の奥に引っ込んで広がる。リニアイコライザーをアップティルトにすると、スケールは小さいが反応の早い、キレイな音になる。4000D/IIIや881Sなどのハイインピーダンス型カートリッジでは、負荷抵抗を100kΩとすると、クリアーさ、シャープさが増して、音の鮮度感が高まる。

ハフラー DH101

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプとしては、いわゆるセパレート型アンプらしい性能とクォリティを狙った製品ではなく、限定された範囲内での性能、クォリティをベースとして、音楽を楽しむためのアンプとして開発されたアンプという印象の音である。
 聴感上での周波数レンジはナローレンジ型であるが、聴きやすく、柔らかく適度に活気が感じられる、大変に巧妙なバランスが保たれている。「サイド・バイ・サイド3」は、正確さはないがムード的に楽しく聴かせ、テルマ・ヒューストンでは、ヴォーカルを中心として、ダイレクトカッティングとしてではなく、中域ベースの安定した再生をする。この適度に楽しめる音が最大のメリットと思う。

ラックス CL32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おとなしく、滑らかな音のコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型ではあるが、ソフトで磨かれた音をもつために、狭さは感じられず、かなりナチュラルに伸びた印象となる。
 全体に、間接音成分を豊かにつけて、響きのよい音を聴かせる傾向があり、低域は甘さがあるが、トータルとしては安定型のバランスとなり、落着いた印象を聴くものに与える。中域は、予想よりもエネルギー感があり、このあたりはワイドレンジ型でない、このアンプのメリットであろう。ステレオフォニックな音場感は、音源が遠く感じられ、スピーカー間のかなり奥に広がるタイプで、音像は少し大きくまとまる傾向がある。

GAS Thaedra II

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルなペアよりも音の表情が素気なくなり、押出しはよいのだが、力にまかせて音を出すような印象となる。とくに中域から中高域にかけての帯域が硬調となり、厚さが感じられない、やや細い、薄い印象となる。
 聴感上での周波数レンジは、オリジナルなペアよりもフラット型となり、音色もソリッドとなるために、オーディオ的にはかなりクォリティが高く、エネルギー感もタップリとあるが、音の表現が単調となり、独得の陰影の色濃い、ダイナミックな魅力はもはや感じられない。結果としてはマッチングの悪さが感じられるペアである。