Category Archives: 井上卓也 - Page 35

テクニクス RS-M05

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 同社のコンサイスコンポシリーズに加えられた小型メタル対応機である。走行系は独自の1モーター方式のソフトム操作系を採用し、Fe−Crを除く3種のテープの自動選択、自動頭出し選曲、自動巻戻再生、キューイングの他に、1ボタン録音が可能であるなど、小型のボディに性能をベースとした多くの機能を備えている点に特長がある。

20万円未満の’80ベストバイ・プレーヤーシステム

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 20万円未満の価格帯では、基本的に価格帯の分割方法がラフに過ぎるため、簡単に傾向を記すことは不可能である。したがって、ここではさらに細分して考えることにする。
 5万円未満では、各メーカーともにシリーズ製品のベーシックモデルが選択のポイントになる。これらの製品は付属機能を省いたマニュアル機で、基本的な機構設計が同一な点に注目したい。駆動モーターも、クォーツロック型よりも、ただのDD型のほうが結果としての音が優れた例もあるため、最低限の比較試聴をしたいものだ。
 5〜10万円台は、予想外に優れた製品が少ない価格帯で、ポイントは、各メーカーともに、最新製品を選ぶことだ。
 10万円以上では、機械的な設計、とくに強度が充分にある製品が必要最低限の選択条件だ。トーンアームのガタや、ターンテーブル軸受が弱いために、ターンテーブルの端を押すとタワムような製品は要注意である。

ヤマハ C-6

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 C6は、モデルナンバーから考えるとX電源、X増幅を採用した最新のパワーアンプB6とペアになるコントロールアンプに思われやすいが、製品系列からは従来のC4の後継モデルに位置づけされる製品である。
 基本的な構成は、MC型カートリッジ用ヘッドアンプ、イコライザーアンプ、フラットアンプにパラメトリックトーンコントロールをもつオーソドックスなタイプだ。各ユニットアンプには、独自の開発による電源部とアンプ系の相互干渉を排除するピュアカレントサーボ方式がパラメトリックトーンコントロール部分を除いて採用されているのが目立つ。
 機能面は、新採用の高音と低音に2分割したパラメトリックトーンコントロールが特長である。国内製品では最初に採用されたこのコントロールは、グラフィックイコライザーの高音と低音の各1素子にあたる部分が、低域では31・5 〜640Hzの範囲で任意の周波数に連続可変でシフトできるタイプと考えるとわかりやすい。また、そのシフトした周波数でのレベルのブーストとカット量、帯域幅が変化でき、合計で3つのパラメーターが独立して連続可変できる。
 C6はクリアーで反応が速い音をもち、クォリティは充分に高い。広い帯域感、明るい音色は、まさにベストバイだ。

ヤマハ A-6

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 A6は、定評あるプリメインアンプA5のボディにX電源方式を採用した、100W+100Wのパワーをもつプリメインアンプの新製品である。
 構成は、MC・MM切替可能なハイゲイン・ピュアカレントサーボ・イコライザー、新設計ヤマハ型トーンコントロールアンプとハイゲインDCパワーアンプの3段構成で、メインダイレクトスイッチによりトーンアンプをバイパスできる。
 A6は、X電源の特長である安定した低域をベースに素直に伸びたワイドレンジ型の帯域感をもつ。音色は明るく滑らかで、スムーズに音を聴かせるタイプだ。

ヤマハ B-6

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 B6はデザインのユニークさもさることながら、アンプの高能率化とハイクォリティを両立させた、今後のパワーアンプのひとつの方向性を示した画期的な新製品である。
 わずかに重量9kgの軽量でありながら、200W+200Wのパワーと200W、8Ω負荷時に20Hz〜20kHzでTHD0・003%をクリアーする高性能は、2つの新方式の採用のめざましい結果だ。
 まず電源部のX電源方式は、電源部の負荷であるパワーアンプの消費電力に応じて最適量の電力を電源の大容量コンデンサーにチャージさせるタイプで、電源トランスの一次側に切替用素子としてTRIACを直列に入れ、出力側の直流電圧の低下を基準電圧と比較し、フォトカプラーを通して高速フィードバックによりTRIACを制御し、交流の通電位相角を変え高能率低電圧回路としたものである。
 パワーアンプのX電源方式は、電源電圧を2段切替とし低出力時に低電圧をかけ発熱による損失を抑え、大出力時には高電圧に切替えハイパワーを得るという構想だ。
 リアルタイム・ウェーブプロセッサーによる電源電圧の切替は、100kHz一波でも正確にレスポンスし、電源電圧の切替えの立上りの遅れによる波形の欠損はなく、音楽信号に忠実に応答するとのことである。
 B6とリファレンス用コントロールアンプのマークレビンソンのML6×2を組合せる。新方式の成果を調べるためには、低域の十分に入ったプログラムソースによる試聴が応しいが、B6は低域レスポンスが十分に伸び、とくに50Hz〜100Hzあたりの帯域では、X電源の定電圧の特長が感じられる引締った再生が目立つ。聴感上の帯域感は最新のアンプらしいワイドレンジ型で、音色は明るく機敏な反応を示す。中高域の分解能は、非常に優れたピュアカレントサーボ方式で純A級増幅のBX1と比較すると一歩譲るが、アンプのランクからみれば充分に優れており、トータルなパワーアンプとして考えれば、200W+200WのパワーのゆとりはBX1を凌ぐとさえいえるようだ。

オプトニカ CP-3

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 CP3は、この価格帯としては珍しい160ℓの大型エンクロージュアに、38cmウーファーを採用した3ウェイ構成のバスレフ型スピーカーシステムだ。
 38cmウーファーは、アルカライズド・プリヒート・ロウテンパレーチュア・プレス(APL)方式による高ヤング率、軽量コーンと、直径156mm磁石とポールに銅キャップ低歪処理をした磁気回路の組合せ。16cmフリーエッジ・コーン型スコーカーは2・8ℓのバックキャビティ付で、ウーファー同様のコルゲーション入りコーンと銅クラッド・アルミ線(CCAW)ボイスコイル、同じくメタルボイスコイルボビンを採用している。トゥイーターは、前面にスランド型音響レンズ付の口径5cmフリーエッジ・コーン型で、クロスオーバー周波数4kHzで使用。
 エンクロージュアはバスレフ型で、内容積160ℓ、システム重量41kgのスタジオモニターを連想させる大型4面仕上げである。ネットワークは音質対策をした部品による低損失設計で、各定数はヒアリングテストにより決定されたとのことだ。
 CP3は事実上はフロアー型サイズのシステムだが、4面仕上げのスタジオモニター的設計であるため、標準としている60cm角のアングルに乗せて使った。帯域バランスはスケールの大きい低域ベースの安定型で高域もスムーズ、音色も明るい。

オットー SX-P5

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SX−P5は発泡金属コーンウーファーと全面駆動フィルムトゥイーターを採用した3ウェイ・ブックシェルフ型システムだ。
 口径25cmウーファーは、オットー独自の開発による、ニッケル発泡金属、ポーラスメタルを振動板に採用した特長があり、既発売のSX−P1/2/3に採用し、実績をもつタイプである。今回は、従来のウーファーユニットをベースに一段と改良が加えられているが、主な点は、磁気回路を強化する目的で、フェライト磁石よりも磁束密度が高いストロンチウムフェライト磁石の直径120mmのタイプが使われていることだ。スコーカーは、振動板に高剛性3層構造アルミを使った口径80mmの逆ドーム型であり、位相特性上でメリットがあるとのことだ。トゥイーターは、振動板に米国NASAで開発された特殊耐熱樹脂ポリイミドフィルム面にボイスコイルを耐熱接着した全面駆動型で、振動板前面にはショートホーンが付く。なお、磁気回路は希土類マグネット採用である。
 ネットワークはとくにコンデンサーを重視し、フィルム型、ネットワーク専用電解型を新開発。エンクロー樹は、表面ブピンガ材仕上げ20mm厚パーチクルボード製ツインダクト・バスレフ型である。
 SX−P5はナチュラルな帯域感と穏やかでしっとりした表情のある音である。音の粒子は細かくキャラクターが少ない。

ビクター Zero-3

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Zero3は、新シリーズとして最初に登場したZero5、平面振動板採用の4ウェイ構成のZero7に続く、第3弾の製品である。基本構成は、上級機種のZero5を受け継いだ25cmウーファー使用の3ウェイ型であり、4万円台の価格帯に最初にリボン型トゥイーターを採用したシステムであることが注目される。
 ウーファーは、振動板面積の25%を占めるエッジの悪影響を避ける目的で、ユニークなシールデッドエッジ採用に特長がある。新開発アルファーコーンは、周辺部の強度を高めるリブ構造。マグネットはストロンチウムフェライト磁石採用である。口径7cmコーン型スコーカーは、紙の両面に無電解金属メッキをしたメインコーンとセンタードームにチタンを使った複合型で、紙と金属の利点を併せもつタイプだ。トゥイーターは、独自のダイナフラット・リボン型で、振動板は10μ厚ポリイミドフィルム面に15μ厚のアルミ箔を融着し、ストロンチウムコバルト磁石閉回路方式磁気回路と組み合わされ、振動板前面にはショートホーンが付く。エンクロージュアはバスレフ型、左右対称のユニット配置だ。
 本機は小型ながら低域レスポンスが伸び、分解能が優れた中域とキャラクターが抑えられ透明感のある高域が巧みなバランスを保ち、この価格帯として抜群のクォリティであり、上下指向性も大変によい。

トリオ LS-100

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 LS100は、コーン前面に放射状にリブをつけた25cmウーファーと口径4cm平面振動板トゥイーターを組み合わせたユニークな2ウェイ・ブックシェルフ型である。
 ウーファーは、リブドHAプレスコーンと名付けられた独自のコーンを採用している。従来からもトリオのスピーカーシステムは、低域ユニット用に損失が少なく軽量のコーンを使い、中音、高音と周波数が高くなると次第に損失の大きいコーンを採用するという、一般の手法とは逆のアプローチを見せた点に独自性があったが、今回も低損失、軽量のホットプレスコーンに、コーンと同一素材のリブを奇数個つけて軽量、高剛性のリブドHAコーンとし、インナー・ロスを追放したコーンのキャッチフレーズでその設計思想を表面に出している。トゥイーターは、断面が台形のアクリル樹脂振動板採用のプレーンラジェーターで、磁束密度は15、000ガウス、音圧レベル91dBの定格であり、2kHzクロスオーバーで使用される。
 エンクロージュアはバスレフ型で、ユニット間の振動クロストークを防ぐ独自の2重構造バッフル採用、ネットワークも素子間の電気的クロストークを防ぐ目的で、ネットワークを遠隔配置している。
 LS100は活気のある低域をベースに2ウェイ独特の細身ですっきりとした音が特長。低域は反応が速く質も高い。

オンキョー M55II

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 M55IIは、従来のM55を改良した小型ブックシェルフ型システムである。広帯域化、高入力化、高能率化が改良点で、弾力的な低域ベースのスムーズに伸びるレスポンスと適度に明るい音色が特長。

オンキョー M90

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 M90は、32cm口径の回転抄造コーンを採用したウーファーと、新開発ダイレクトドライブトゥイーターに特長がある3ウェイ構成ブックシェルフシステムである。
 ウーファーは、既発売のモニター100用ユニットの設計方針を受け継ぎ、大入力時にも安定した振動モードを確保し歪の発生を抑えるという回転抄造コーンと直径76mmのロングトラベル型ボイスコイル、
リンセイ銅箔ボビンの組合せと直径160mmの大型高密度マグネット使用の磁気回路により、120Wのパワーハンドリングと92dBの出力音圧レベルを得ている。
 口径10cmコーン型スコーカーはカーボン混抄コーン採用で、0・37gの軽量級。高域特性を改善するためにチタンダストキャップ採用であり、12、000ガウスの磁束密度の磁気回路を組み合わせ、バックキャビティは1・8ℓと大型である。
 口径3cmのトゥイーターは、ユニークなダイレクトドライブ型と名付けられたタイプだ。振動板は12・5μのポリイミドフィルムと20μのアルミ箔を重層構造とし、これに円環状にボイスコイルをエッチングしたダイアフラムを直接駆動する方式で、振動板は円環状のリング型である。前面にはアルミ削出しイコライザーが付き、磁気回路は直径90mmの磁石が2個使用され、重量的には直径120mmの磁石に相当する強力なタイプだ。
 エンクロージュアはバスレフ型を採用し、バッフルボード面のユニット配置は、同社の開発テーマのひとつであるリスニングエリアの拡大を目的として、高音と中音ユニットをできるだけ近接させ、厚さ10mmのアルミダイキャストフレームに一体化してマウントしてある。ネットワークは低損失コンデンサー、低抵抗内部配線材を使用し、コンピューターシミュレーションと試聴により最適定数を決定したとのこと。
 M90は厚みのある重い低域と明快な中域、シャープで透明感のある各ユニットのキャラクターが適度に一体化した帯域バランスをもつ。約60cm角のアングル上の位置では、サランネットを付けると高域のレベルを上げ気味としたほうがトータルバランス上から低域の反応が早くなり、バランスもナチュラルとなる。ハイパワー型の設計と発表されているが、試聴室での結果では、一般的なレベルより高いことが多いことを基準として、平均的かやや抑え気味で、M90の3ウェイ構成の特長がよく引き出される。高入力時では抑えてあるがウーファーに独特の固有音が感じられ、楽器固有の音色が判然としがたい。

マランツ Pm-6, Pm-5

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Pm6は、マランツの定石通り、Sc6とSm6を一体化したモデルで、両者に共通の特長を備える。
 音にはプリメインアンプらしいまとまりがあり、基本的なキャラクターはSc6、Sm6を受け継いでいる。
 Pm5はAB級80W/ch、純A級20W/chの出力をもち、ドット表示ピークメーター付である。Sc6同様ハイゲインイコライザーを採用したストレートDC回路切替え可能が特長である。

マランツ Sc-6, Sm-6

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このところ、製品の層が一段と厚くなったマランツの新シリーズアンプ群は、パネルレイアウトが左右対称タイプとなり、往年の名器として伝統的な管球コントロールアンプ♯7のイメージを踏襲した雰囲気をもつことが特長である。
 コントロールアンプSc6とステレオパワーアンプSm6の組合せは、従来の♯3150と♯170DCを受け継ぐ位置づけに相当する製品だ。
 Sc6は、過渡混変調歪を低減する、いわゆるLOW−TIM設計を採用した点に特徴がある。全段完全プッシュプルDCアンプ構成、片チャンネル13石構成のMCヘッドアンプを採用。左右独立型ディフィート付高・低音コントロール、2段切替ラウドネスコントロール、イコライザーサブソニックフィルター、3段切替のMM型カートリッジ負荷抵抗切替のほか、出力0・5Wの純A級動作ヘッドフォンアンプなどを備える。
 Sm6は、AB級動作120W/chと純A級動作30W/ch切替使用が特長である。AB級動作では出力段に高域特性が優れたパワートランジスタ

ハルアンプ Independence II G

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 高精度、高品質の構成部品を世界に求め、ユニークな管球式アンプを市場に送り出しているハルアンプから、インデペンデンスIIの上級機種として限定生産モデル、インデペンデンスIIGが発売される。
 フロントパネルの基本的な配置は変らないが、色調がシャンペンゴールドとなり、ウッドケースが付属する。型番末尾のGは、この色調の変化を意味する。回路構成上での変更は、左右独立電源の採用をはじめ、イコライザー耐入力の向上、高信頼度管の使用が主な点である。高精度アッテネーターを使ったボリュウムコントロール、厳選された海外製のC・R部品の採用は、従来と同様だ。完全な手作業によるワイヤリングなど、専門メーカーらしい入念な工作とリファインされた仕上げは、一般的なマスプロダクトの製品とはひと味違う、この種の製品ならではの魅力であろう。
 試聴は試聴室でリファレンス的に使っているパワーアンプ、マランツ♯510Mと組み合わせて行った。従来のインデペンデンスIIが管球アンプ独特のスケールが大きい音を聴かせたことに比較すると、音の粒子が一段と細かく滑らかとなり、スムーズでクォリティの高さが加わったことが聴きとれる。パワーアンプにインデペンデンスIIIを組み合わせれば、新モデルの特長がより発揮されよう。

Lo-D D-3300M

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 メタルテープ実用化以前に、カセットデッキにマイクロコンピューターを導入し、多種多様なカセットテープを最適条件に自動調整可能とした世界初の製品が、Lo−D D5500DDであった。ここで採用されたATRS(オートマチック・テープ・レスポンス・サーチ)システムは、マイコンにより、テープ一巻ごとに最適バイアス量、中低域、中域と高域の3点可変イコライザーによる録音・再生周波数のフラット化、録音・再生感度補正の3項目を自動調整する機能である。
 メタルテープ対応型となったD5500Mと同時に発表されたATRSシステム採用の第2弾製品が、D3300Mである。ATRSシステムをIC化し、マイコン内部の計算処理を5ビット化し精度向上した新ATRSシステムは、自動調整時間が約10秒に短縮された。
 D3300Mの新ATRSシステムは、テープセレクタースイッチを選択後、ATRSを動作させる手順である。5つのメモリー回路をもつため、自動調整した5種類のテープデータが保存可能だ。電源を切っても内蔵電池でバックアップされているので、データが消えるおそれはない。また、バックアップ電池が消耗した場合には、バッテリーインジケーターが点滅し警告する。
 テープトランスポートは、ICロジック回路採用のメカニズム操作系を採用し、独自のデッキ用ユニトルクモーター採用のDDデュアルキャプスタン方式2モーター型メカニズムである。ヘッド構成は、コンビネーション型3ヘッドを採用。録音・再生コンビネーションヘッドは、録音と再生ギャップ間隔が1・4mmのクローズギャップ型。表面はメタルテープ対応のチタン溶射仕上げされ、ヘッド形状は録音ギャップと再生ギャップにテープの圧着力が効率よく集中するハイパーボリック型である。
 機能は、オートリワインダー、オートプレイ、メモリーリワインド、REC・MUTE、タイマー録音/再生、−40dB〜+10dBのワイドレンジピークメーターなど標準的で、性能優先型の設計である。
 D3300Mは、推奨テープにLo−Dの各種テープがあり、バイアスやイコライザー量は、これらのテープに対して最適量がプッシュボタンのテープセレクターに記録され、電池でバックアップしているが、ATRSを備え任意のテープが最適条件で使えるメリットがあるため、試聴室にあった各社のテープをATRSで調整して使うことにする。デッキ自体が穏やかな性質をもち、聴感上の周波数帯域がナチュラルで、やや暖色系の柔らかく滑らか音であり、ATRSの効果もあって、各テープの個性をマイルドにして聴かせる傾向をもつ。テープヒスに代表される聴感上のノイズは少ないタイプだ。録音レベルは標準的な範囲をこさない程度にセットすれば、このデッキ本来のキャラクターを活かした音が得られる。また、ATRSのため、ドルビー回路が本来の機能を発揮できるのもメリットである。

ナカミチ Nakamichi 680ZX

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨年、480、580、600ZXシリーズと3シリーズの新製品群を一挙に発表し注目を集めたナカミチの事実上のトップモデルの製品が、この680ZXである。各シリーズともに、テープトランスポート系のメカニズムは新開発のデュアルキャプスタン方式で、テープのたるみ自動除去機構付。カセットハーフ側のテープパッドをメカニズムにより押し、テープパッドなしに使う独自の構想により設計されたタイプである。600ZXシリーズは、再生ヘッドの自動アジマス調整機構を備えるのが他のシリーズにない特長であり、なかでも680ZXは、テープ速度が半速を含む2段切替型であるのが目立つ点だ。
 600ZXシリーズは、他のナカミチのシリーズとは型番と機能の相関性が異なり、660ZXは録音・再生独立ヘッド採用で、アンプ系が録音・再生兼用型で、670ZXが独立3ヘッドの標準型である。
 型番末尾のZXは、自動アジマス調整付の意味で、内蔵発振器を使いキャリブレーション時には録音ヘッドアジマス(垂直角度)をモーター駆動で自動調整をし、20kHzをこす周波数特性をギャランティするユニークなメカニズムを装備している。この機構は、カセットハーフの機械的強度のバラツキによる特性劣化を補償できるメリットをもつ。とくに、半速で15kHzという高域特性を確保するために不可欠のものだ。
テープトランスポート系は、2モーター方式フルロジック型の操作系と周波数分散型ダブルキャプスタン方式に特長がある。ヘッドは、録音、再生独立型で、独自のクリスタロイを磁性材料に使い、再生ヘッドギャップは、標準速度で30kHzをクリアーさせるため0・6ミクロンと狭い。
 アンプ系はDC録音アンプ、ダブルNF回路を採用し、メタルテープのダイナミックレンジを十分にクリアーする性能を備える。機能面では、ピーク・VU、キャリブレーションなど多用途ワイドスケール蛍光ディスプレイ、18曲までの自動頭出し機構、2速度に切替わるキューイング機構、ピッチコントロール、REC・MUTE、マスターボリュウム、3種類のテープに対し、標準速度と半速にそれぞれ左右独立した感度調整機構を備えた性能と機能を両立させた特長があるが、マイクアンプは省略された。
 680ZXにメタル、コバルト、LHの各社のテープを組み合わせて使用してみる。走行系の安定度は抜群に優れ、ヘッドを含みアンプ系のマージンが十分にある。メタルテープ使用では、ドルビーレベルを0dBとしたレベルメーターのフルスケールまで録音レベルを上げても、さして破綻を示さない。デッキの性質は、粒立ちがクリアーで緻密さのあるやや寒色系の音で、帯域感は広くスッキリとしたクォリティの高い音である。ドルビー使用の半速でもコバルト系テープで必要にして十分なクォリティが得られ、並のデッキ標準速度に匹敵する。かなり厳しいディスクファンの耳にもこのデッキ音は、余裕をもって答えられるだけの見事なクォリティをもつ。

ソニー SS-G5a

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーを代表するスピーカーシステム、Gシリーズの中核をなすSS−G5は、細部に改良が加えられ、SS−G5aとして新発売された。
 独自のブラムライン方式ユニット配置、高域指向性の向上とバッフル板振動モードを制御するAGボードの採用、バスレフ方式のエンクロージュアなどは変らない。30cmウーファーは、ボイスコイル直径が50mmから70mmとなり、磁束密度が25%増加して、高剛性リブコルゲーション付ストレートコーンの特長が一段と発揮されるようになった。8cmバランスドライブの中音ユニットは、新開発コーンが採用され、音色が明るく分解能が向上している。ネットワークは伝送ロスを減らすため、パターン厚70μのプリント基板を採用。ウーファー用コイルは音響素材SBMCで固め、機械的な振動を抑えるなど、新技術と高精度部品を採用した音質重視設計である。
 試聴室では標準に使っている高さ60cmのアングルに乗せて使ったが、表情は抑えられ低域は重く、音離れが悪かった。床上20cm程度の強度ある台にセットすると、音色が明るく腰の強い低域をベースにした活気があるクリアーな中域と、華やかな印象の高域が効果的なバランスを保ち、質的にも高い音となる。サランネットを外した状態では、高域のレベル2時半の位置で

パイオニア S-180A

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアのS180は、高域と中域ユニットにボロン合金振動板を採用し、オリジナリティ豊かなスピーカーシステムとして脚光を浴びたが、発売以来既に一年半の歳月を経過した。今回、これをベースに、開発テーマである音像リアリズムを一段と追求し、S180Aに改良・発展した。
 変更点は、エンクロージュアの仕上げが明るい色調のテネシーウォールになったこと。サランネットがダークブルーからブラウンになり、レベルコントロールの位置が変ったほか、ウーファーを除きほぼ全面的にモデファイされている。中音は12cmボロン・バランスドライブ方式ダイレクトラジェーターを採用。ボロン合金のコーンのネック部分を精度向上、ボイスコイルボビンの高耐熱化が行われており、パワーリニアリティとダイナミックレンジが改善されている。25mmボロンドーム型の高音は、ダイヤフラム厚を25μから20μとし重量も20%減らし、フランジが樹脂+アルミ製からアルミダイキャスト製に改良された。ネットワークは低インピーダンス化され、相互誘導が軽減された。
 音色は、キャラクターが抑えられ、暖色系の穏やかで内容の濃い音になった点がS180と異なる。豊かな低域をベースに、明快な中域とシャープな高域が巧みにバランスし、シュアー・V15/IVを使うと低域が弾み活気に富んだ快適な音を聴かせる。

オンキョー M88

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 再生周波数帯域、ダイナミックレンジとリスニングエリアの拡大をテーマとして開発されたMシリーズの最新モデルである。
 ユニット構成は、モニター100のウーファー同様、回転抄造コーン採用の28cmウーファーをベースにとした3ウェイ型だ。回転抄造コーンは、従来ランダムに堆積していた繊維を、一定の方向性を保ち同心円状に配置させる新しい製法で、加えて特殊樹脂含浸により高剛性、高能率を確保している。磁気回路には直径120mmの大型磁石、ポリイミドボビンに3層巻ロングボイスコイル使用で、100Wの許容入力をもつ。10cmスコーカーは混抄コーンを採用。振動系質量は0・37gと軽く、15kHzまでのレスポンスをもつ。3cmダイレクトドライブ・トゥイーターは、12・5μ厚のポリイミド箔に20μ厚のアルミ箔を重ね、同心円のボイスコイルをエッチングした特殊型。指向性が優れ、70kHzに及ぶ高域レスポンスを誇るタイプだ。エンクロージュアは振動処理をしたバスレフポート採用で、ユニットは左右対称配置。コンピューターシミュレーションと聴感検査によるネットワークを採用している。
 バランスは、中域のアッテネーターが2時半の位置でナチュラルとなる。重厚で力強い低域と、明快な中高域がバランスをとった音で、比較的に音量を上げると特長が出るタイプである。

デンオン SC-304

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、従来のSC104IIをベースにシステムとしての完成度を一段と高めた新製品で、SC106に対する現在のSC306に相当する位置づけにあたる。
 デンマーク、ピアレス社製ユニット採用の3ウェイであることは従来と同様である。25cmウーファーは、デンオン独自のサウンドラチチュード特性を従来の測定法に加え、振動系と支持系をより追求して、ピアレス社と共同開発した新ユニットだ。コーンはノンプレス系でエアドライ方式の新乾燥法を採用。表面はアクリル系樹脂でスプレー含浸処理され、ボイスコイルボビンはアルミ製で高耐入力設計としてある。10cmコーン型スコーカーは、SC306同様、バックチャンバーとフレームを軽合金ダイキャスト一体構造とし、ウーファーからの振動を遮断する特長をもつ。3・2cmドーム型トゥイーターは、特殊布成型振動板を採用し100Wの耐入力をもつ。エンクロージュアは密閉型で、低音は独特のサンドイッチ方式マウントを採用。裏板部の一部は、アルミラミネートブチル系ゴムを貼り合せて振動モードを調整している。
 SC304は、サランネットを外した状態で高域レベル−2でウェルバランスとなる。SC104IIとの比較では、音色が明るくなり、活気のある表現力が加わった。重く力強い低域と明快な中域、独特の華やかさのある高域がバランスしている。

フィデリティ・リサーチ FR-2

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 FR1系の発電機構を採用した小型・軽量の空芯型MCカートリッジの新製品だ。振動系は軽量化され、インピーダンスは6Ωと低められているが、サマリウムコバルト磁石採用により発電効率が改善され、従来通りの出力電圧を得ている。ボディは金属製で振動防止設計である。
 FR2は音色が明るく、活気ある生き生きとした音を聴かせる。とかく繊細で、スタティックな表現になりやすいMC型のなかでは、注目したい新製品である。

マイクロ RX-3000 + RY-3300

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 超重量級ターンテーブルユニットと駆動用のモーターユニットを組み合わせ使う糸/ベルトドライブ兼用アームレスプレーヤーシステム、RX5000/RY5500と同じ構想による新製品である。
 RX3000ターンテーブルユニットは、ユニークなデザインを採用したダイレクトドライブ方式のアームレスプレーヤーシステムDDX1000、DQX1000と同じく3本脚構造のデザインを受け継ぐ。ターンテーブルの回転による共振は、機械的強度、重量で吸収する設計である。設置時の安定性は高く、3本の脚部にそれぞれトーンアームが取付可能であり、場所的制約も予想以上に少ないという特徴がある。
 ターンテーブルは、銅85%、錫その他15%の合金である砲金製。比重や内部損失が大きく、直径31cm、重量10kgというヘビー級だ。フレームとターンテーブル裏側との間を凹凸型に加工し、このギャップ間の空気層でもターンテーブルの共鳴をダンプする構造を採用している点はこのモデルのみの特長である。直径16mmステンレス製シャフトは熱処理、研磨後、軸受と一対の組合せ鏡面仕上げされる。シャフトに接する軸受側は特殊ベアリング採用で、油膜に鉛の分子が均一に析出され、滑らかな回転を保てる特長がある。シャフトとベアリング間はオイルバス方式である。
 RY3300モーターユニットは、4極6スロット・アウターローター型サーボモーター使用で、ベルトと糸共用のプーリー付。糸はアラミド繊維製である。
 RX3000/RY3300に、オーディオクラフトのトーンアームを組み合わせて使ってみる。糸がけなどセッティングは手順を考えて行なえば比較的容易である。速度調整もストロボ板でチェックしたあとは、回転数の安定度は高い。RX5000/RY5500と比較すると、充実感は一歩譲るが、音色の明るさ、反応の速さではこちらの方が勝るようだ。重量級ターンテーブルの特長である緻密で内容の濃い、情報量の多い音は、並のDD型とは一線を画した独特の魅力で、カセットを聴いていてオープンリールを聴いた場合の印象と比較できる。置場所は剛性の高い台上がよく、ターンテーブルシート、スタビライザーなどは、ケース・バイ・ケースで試用するのが好ましい。

ラックス L-48A

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックス独自のデュオベータ回路を採用したアンプ群に、新しくL48Aプリメインアンプが加わることになった。
 デュオベータ回路は、パワー部では全帯域にわたって音質的に最適量のNFBをかけ、可聴周波数帯域外の超低域についてはDCサーボ回路によりダンピング特性を向上している。プリアンプ部は、低域と中高域に2つのNFBを組み合わせ、全帯域にわたりバランスのよい再生音が得られる特長がある。また、パワーアンプ出力段は、高域特性が優れたパワートランジスターに充分なアイドリング電流を流し、スイッチング歪を低減し、デュオベータ回路を効果的としている。イコライザーアンプはハイゲインタイプで、MCカートリッジがダイレクトに使えるタイプである。トーンコントロールは、湾曲点切替周波数2段切替のLUX方式NF型。その他、フィルムコンデンサーには機械振動を抑えるため、両端子間に直流バイアスをかけ、電気的に振動を抑えて使っているのが注目される。外観は、薄型プロポーションのリアルローズウッド木箱入り。10素子のLEDピーク指示パワーインジケーターが特長である。
 音色は、明るく滑らかなタイプだ。デュオベータ方式を完全に消化した、いかにもラックスらしい特長がよく出た好ましい音である。音場感プレゼンスも自然で、トータルバランスの優れた製品だ。

パイオニア M-Z1

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

純A級動作で、しかもNFBを使用しない無帰還型のモノ構成パワーアンプ。リニアリティは、増幅部の非直線性と逆特性の非直線性で吸収する手法で解決。ガラスケース入り電解コンデンサーなど部品選択は十全である。

アキュフェーズ C-230

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

デジタル表示チューナーT103、パワーアンプピ260とコンビとなるコントロールアンプ。オリジナル全増幅段対称型プッシュプル駆動、A級DC方式に新しくDCサーボ方式が導入された。