Category Archives: FM・AMチューナー - Page 6

サンスイ TU-707

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイの新製品、AU707、AU607は、現時点動向にマッチした、DCアンプ化したパワーアンプや左右チャンネル独立電源方式の採用などの技術的内容をはじめ、音質、一新されたデザインにより注目を集め、好評のうちに市場に迎えられているが、今回、ペアチューナーとして、TU707が発売された。
 プリメインアンプと共通なマットブラックのプレーンなパネルには、白いワイドなダイアルが設けられ、とかく、画一的になりやすい、この種のチューナーのなかでは個性的なデザインとしてまとめられている。
 機能面では、IF増幅段の帯域2段切替、FMエアチェック用のキャリブレーション発振器の内蔵をはじめ、ミューティング、ノイズキャンセラーがあり、また、新しく採用された同調メカニズムにより、選局のフィーリングは、滑らかで気持ちよい。
 回路面での特長は、フロントエンドにはエアギャップの広い4連バリコンの採用により周波数安定度を向上し、IF部には、リミッター特性の優れたICにより合計10段の差動回路を構成し、不安定な到来電波に対して安定な受信を可能としている。また、検波段には広帯域レシオ検波回路を採用して歪を低減し、MPX部には、PLL方式、オーディオアンプには、2段直結NFアンプとエミッターフォロワー1段を組み合わせ、低歪化がはかられている。なおオプションとして、パネル両側には取手、BX7が取付可能である。

パイオニア Exclusive F3

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 FMチューナー、とくに高級チューナーは、基本的な性能もさることながら、デザイン、仕上げの面でも、セパレート型コントロールアンプやパワーアンプと同格のウェイトをもつことが要求される。この意味においては、F3はもっとも貫禄のあるデザインをもった一流品と呼ぶに応わしいものがある。
 豪華という感じそのものの木製キャビネットは、この部分だけの価格を考えてみても普及型チューナー1台分に相当するだろう。FMフロントエンドは、パイオニアが先鞭をつけたPLL採用のロック同調方式を採用し、受信周波数は100kHzごとにロックされ、ステップ的に指示をするチューニングメーターで選局は容易に、しかも確実にできる特長がある。またダイアル系のメカニズムが滑らかで、同調のフィーリングは、適度の重さがあり、いかにも同調をしたという実感が得られるタイプである。

ビクター JT-V75

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 FM・IF段、MPX部、AM部、出力アンプ部、チューニングホールド部、それに333Hz発振器をすべてIC化したチューナーである。
 主な特長は、300%の過変調に対応した低歪と広いダイナミックレンジをもつ出力アンプ部、最良同調点を保つチューニングホールド回路、録音レベル設定用発振器、、遅延特性を保ちながら選択度をさらに改善した4レゾネーター型セラミックフィルター、ダブルミューティング回路、ミラー構造の目盛と凸型文字使用のダイアルである。

テクニクス ST-8080

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプSU8080のペアチューナーである。FMフロントエンドは、4連バリコン使用であり、IF段は、4共振素子型セラミックフィルター4個(1個は狭帯域型)とIC2個の組合せ、MPX部は、波形伝送特性を向上させる独自のパイロット信号キャンセル回路がある。また、シグナルメーターは、65・2dBfまで直線指示をする電解強度比例型である。付属機能には録音レベル設定用の440Hz50%変調に相当する発振器を内蔵している。

トリオ KT-9700

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 外観からは、あまり特長めいたものを感じさせないモデルだが、内容では新しいFMチューナーの技術をフルに盛り込んだFMのトリオらしい快心作である。
 フロントエンドは、RF増幅にリニアリティが優れたDD−MOS型FET、バランスドタイプのミキサーには、2乗特性が優れたDD−MOS型FETを使用し、バリコンはエアーギャップが広い局部発振器内蔵型8連を採用し、アンテナ入力回路がシングル、段間がトリプル、トリプルチューニングとしている。なお、局部発振はバッファーアンプ付である。
 IF段は、帯域3段切替で、ワイドでは6ポールLC集中型フィルター、ノーマルでは、12ポールLC集中型、さらにナローでは、4素子3段のセラミックフィルターを使い、ワイドとノーマルにはバッファーアンプが入る。また、IF段は、10・7MHzの第1IFと水晶発振器による1・93MHzの第2IFをもつダブルコンバート方式で、これは中間周波数の約10倍の周波数特性が要求されるパルスカウント方式の検波段で、パルス変換を容易にすると同時に、相対周波数偏位をあげて検波効率を高め、SN比を上げる目的があるためである。
 パルスカウント方式の検波段は、直線検波が可能なため歪みが少なく、調整箇所がないため、安定度が高い特長がある。直線性の優れている利点は、多少の同調ズレがあっても歪率が悪化せず、シンセサイザーやAFCで周波数をロックする必要がない。
 MPX部は、トリオ独自のDSDC方式で、ビートを抑えるPLLループ応答切替、ノルトン変換した7素子ローパスフィルターを使うキャリアリークフィルターがある。オーディオアンプは、差動直結オペレーショナルアンプで、300%の過変調時でも歪の劣化は少ない。
 機能面では、80dBまでの信号強度が読める直線目盛のシグナルメーター、38kHz検出型マルチパスメーター、デビエーションメーター、2段切替のミューティングレベル、2系統のアンテナを切替使用できるアンテナ切替スイッチなどがある。
 本機は、現時点の高級チューナーとして頂点に位置する音質と性能をもっている。とくに音質は、オーソドックスなもので、最近聴いたチューナーのなかでは抜群である。選局のフィーリングは優れているが、繊細な同調ツマミの動きにダイアル指針が敏感に反応しない点が大変に残念である。

ソニー ST-A7B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 長らくの間高級チューナーの発表がなかったソニーから、同社のトップモデルのプリメインアンプTA−F7Bの発売と同時に、ペアチューナーST−A7Bが発売されることになった。
 パネルフェイスでの特長は、何といっても受信周波数をデジタルで表示するディスプレイの採用であろう。本機では、受信周波数は、一般の横行ダイアルでチェックする他に、独立したデジタルディスプレーで正確な受信周波数を読み取ることができる。つまり、ダブルに表示をするわけだ。
 FMフロントエンドは、デュアルMOS型FETのRF増幅、デュアルFETによるバランスドミキサーと5連バリコンの組合せである。局部発振は、水晶を基準発振器として100kHzおきにロックするタイプで、精度が高く、刑事変化、温度変化による同調ズレが皆無に近く、正確な同調点を保つことが可能である。なお、ロック状態はロックインジケーターで確認可能である。IF段は、帯域2段切替型で、ノーマルではユニフェイズフィルター、ナローでは、さらに選択度を重視したユニフェイズフィルターが加わる。MPX部は、PLL・ICにデュアルFET使用の差動2段のプリアンプを設け、PLL・ICの出力をプリアンプに負帰還する構成で、ビート音を除く、ビートカットフィルターを備えている。オーディオアンプは、電源部に定電圧の±2電源を採用した音質重視設計である。なお、完全に独立したAMチューナー部をもち、FMダイアル右端に、専用ドラム型ダイアルが組み込まれている。
 本機は、ダイアル系がスムーズなため、選局のフィーリングは、さすがに高級機らしい印象である。放送局の同調点は、ロックインジケーターでも確認できるが、ダイアル指針が同調時には上下2段のLEDが発光し確認は容易である。音質は、大変にプリメインアンプTA−F7Bに似ており、粒立ちが細かく、豊かで軽い感じの中低域と伸びやかな高域が特長である。

マランツ Model 150

岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 今もってマランツ10Bの名は、高級オーディオ・ファンの間でしばしば口にされる。この幻を絶つことは今回のマランツにとっての最大の課題のひとつであった。モデル150がデビューしたときの米誌の評はこの辺の事情を思わずして語っており、しかもその上で10Bを越える性能と、その音の誕生に両手を挙げて喜んでいる、というのが目に見えるほどだった。
 事実、モデル150は、10Bの時代より一層過密なFM電波を望み通り選び、楽しむことのできる性能と特性とを具えた数少ない高級かつ低歪チューナーの最大の傑作だ。今回、多くの製品があふれる中で「オーソドックスな機構による真の低歪チューナー」を選ぶとすれば、このモデル150のみだ。

アキュフェーズ M-60, T-100

岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 アキュフェーズのブランド名でケンソニックからスタートして、もはや数年の月日がたつ。ケンソニックの名は伝統の深からざるオーディオ業界にあってもなおもっとも日が浅い。それだけに、一流ブランドとしての成り立ち、あるいは信頼を勝ちとるための努力はなみのものではなかったろう。
 それにしても僅かな期間に世界的に高い製品評価と高級メーカーとしての信頼とを得たのは十分にうなずける根拠を容易に求められる。そのひとつは高級機種のみを限定して製造することであり、その二は一応発表した製品は決して競合すべき新型を出さず、また中止もしないということだ。
 この一流品たる資格の基本条件たる二つの点を当事者たるメーカーが製品発表の事前にはっきりと明言しているというケースは、めったにあるものではないがアキュフェーズの場合がこれだ。高級製品メーカーとしての見識と誇りの高さとを知らされ、それが信頼への深いきずなとしてユーザーとメーカーとを結びつけている。
 プリアンプC200と共に最初に発表したパワーアンプP300こそケンソニックの名を世界に知らしめた最初のアンプであり、その時にペアーとなるべきチューナーとして出たのがT100である。
 この三機種こそ、アキュフェーズブランドの名を代表するべき3つの象徴といってもさしつかえなかろう。しかしこの後のハイパワー時代の急激な拡大に伴ってパワーアンプはさらに、2倍のパワーアップを図った国産初と思われる300Wの大出力を秘めたモノーラルパワーアンプ、M60となった。そこでP300に代ってM60がアキュフェーズ・ブランドの旗頭となったのだ。M60は、300Wのハイパワーながら、その価格28万円を考えると、今日はっきり国際的な市場を視点としてもなお価格的に妥当なものであろう。
 日本製アンプが、日本国内市場でごく割高なる価格をつけられた海外製アンプと競争でき得るとても、当事国では日本製アンプが、あまりに高価になり過ぎる例が多い中でアキュフェーズ製品はすべて価格的に国際市場のどこにおいても十分に納得でき得る価格であるという点は、見逃せない大きな特徴であり、この点こそがアキュフェーズ製品が国際的な意味からも優秀製品であることの、もっとも大きな理由だ。
 ケンソニックの中核がかつてはトリオの主脳陣であったことはよく知られており、さればチューナーの文字通り開発者としてアキュフェーズのチューナーもまた大いに期待できる製品だ。その期待は海外の評価が早くも、T100デビュー早々に、「FMチューナーのロールス・ロイス」という賛辞で示された。アンプ同様、豪華な仕様と風格とはその底知れぬ深い完成度を感じさせ、そのまま製品の高い品質への信頼感へもっとも大きな支えとなっているからだ。

QUAD 33, 303, 405, FM3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 創設者のP・ウォーカーは英国のオーディオ界でも最も古い世代の穏厚な紳士で、かつて著名なフェランティの協力を得てオーディオの開拓期から優秀な製品を世に送り出していた。ロンドンから一時間ほど車で走った郊外にあるアコースティカル社は、現在でもほんとうに小さなメーカーで、QUADブランドのアンプ、チューナーとコンデンサースピーカーだけを作り続けている。
 QUADは、なぜ、もっと大がかりでハイグレイドのアンプを作らないのか、という質問に対してP・ウォーカーは次のように答えている。
「もちろん当社にそれを作る技術はあります。しかし家庭で良質のレコード音楽を楽しむとき、これ以上のアンプを要求すればコストは急激にかさむし、形態も大きくなりすぎる。いまのこの一連の製品は、一般のレコード鑑賞には必要かつ十分すぎるくらいだと私は思っています。音だけを追求するマニアは別ですが……」
 こうした姿勢がQUADの製品の性格を物語っている。
 管球アンプ時代から、QUADはアンプをできるかぎり小型に作る努力をしている。ステレオプリアンプの#22は、それ以前のモノーラル・プリアンプと全く同じ外形のままステレオ用2チャンネルを組み込むという離れわざで我々をびっくりさせた。必要かつ十分な性能を、可能なかぎりコンパクトに組み上げるというのがQUADのアンプのポリシーといえる。
 この小さなアンプたちはデザインもじつにエレガントだ。ブラウン系の渋いメタリック塗装を中心にして、暖いオレンジイエローがアクセントにあしらわれる、というしゃれた感覚は、QUAD以外の製品には見当らない。このデザインは、どんなインテリアの部屋にも溶け込んでしまう。ことに、プリアンプとFMチューナーを一緒に収容するウッドキャビネットは楽しいアイデアだと思う。
 必要にして十分、と言っていたQUADも、一年前にパワーアンプの新型#405を発表した。100W×2というパワーをこれほど小さくまとめたアンプはほかにないし、そのユニークなコンストラクションは実に魅力的でしかも機能美に溢れている。
 アメリカや日本のアンプのような贅を尽した凄みはQUADの世界にはないが、33、303のシリーズの音質は、どこか箱庭的な、魅力的だがいかにも小づくりな音であった。405はその意味でいままでのQUADの枠を一歩ひろげた音といえる。この小柄なシャーシから想像できないような、力のある新鮮な音が鳴ってくる。クリアーで、いくらか冷たい肌ざわりの現代ふうの音質だ。アメリカのハイパワーアンプと比較すると、ぜい肉を除いた感じのやややせぎすの音に聴こえる。そして、405の音を聴くと、QUADはおそらく33よりも一段階グレイドの高いプリアンプと、やがてはチューナーも用意するのではないかと想像する。しかしそれはあくまでも良識の枠をはみ出すことのない、QUADらしいコンパクトな製品になるにちがいない。

ソニー ST-A7B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 現在の高級チューナーとして、とくに驚異的な内容を誇る製品ではないが、デザイン、性能、機能などの総合的なバランスが大変に優れたモデルである。
 デザインは、ソニー製品の特徴である機能美をもったもので、仕上げも入念であり、各コントロールのフィーリングも一流品らしくコントロールされている。最近の高級チューナーといえば、シンセサイザー方式の導入や、水晶発振器の信号を基準として局部発振回路を100kHzおきにロックする、クリスタルロック方式が採用されることが多いが、シンセサイザー方式の重心周波数がディジタル表示される未来志向型といった感じはかなり面白いが、スイッチを使っておこなう選局は実感が薄く、どうも選局をしたという感覚的な確認が乏しい。
 ST−A7Bでは、クリスタルロック方式を採用し一般的な走り幅が広いダイアルをもちながら、シンセサイザーチューナー的な、ディジタル周波数ディスプレーをもっているのが大変に楽しいところである。たしかに、選局ということだけでは不要かもしれないが、チューニングツマミを回して選局するという、かなり人間的な感覚と、新しい世代のチューナーを象徴するようなディジタルディスプレイと共存は、まさしく趣味としてのオーディオならではのものといった印象である。また、とかく高級チューナーは、FM専用とする傾向があるなかに、完全に独立したAMチューナー部があり、FMダイアルの片隅みに小型のダイアルが目立たず付いているのも好ましい。

ヤマハ CT-7000

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ヤマハは、新プリメインアンプのCA2000、1000IIIで、ソフィスティケートしたアンプという表現をPRに使っているが、この表現にもっとも応わしいものは、ヤマハならずともオーディオ製品のなかでCT7000をおいて他にないであろう。開発時点で、時代を先取りした高度な性能、機能を洗練されたデザインの内に収め、仕上げ、加工精度などの細部をみても別格のものがある。現在のヤマハのコンポーネントシステムのなかでも、このモデルは隔絶した位置にあるが趣味のオーディオ製品としてこれ以上いいしれぬ魅力を秘めたモデルはあるまい。

パイオニア F-73

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パネルサイズは、一連の新製品と共通なラックマウントサイズの横幅と、77系より一段寸法が小さい高さになっている。リアパネル両側は、端子類やコードを保護するために一段飛出した保護ガードになっている。FMフロントエンドは、高周波増幅1段、4連バリコン使用であり、中間周波増幅段は帯域が2段に切り替わる。検波段はクォドラチュア方式、MPX分は、パイロット信号オートキャンセラー内蔵PLL・ダブルバランスNFB方式である。なお、レベルチェック用440Hz50%変調の発振器が内蔵されており、エアチェック時の録音レベルが設定できる。
 関連製品として、ラックサイズの4トラックオープンリールデッキRT701、カセットデッキCT97、キャスター付オーディオラックJA−R1Sがある。

ヤマハ CT-V1

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 CA−V1のペアチューナーとして開発されたモデルだが、内容的にはCT−7000で使った選択度と歪率を両立させる微分利得直視法導入のIF段等X1同様の高SN比、低歪率のNFB型PLL・MPX回路を採用し、機能面では、333Hz録音レベル較正発振器内蔵。操作面では、滑らかで精密な機構を備えている。

ビクター JT-V45

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このチューナーは、一連のプリメインアンプと任意にペアが組めるように、性能と機能を重視してAMを除き、FM専用機として開発された特長がある。RF1段増幅バッファー付局発回路と7連バリコン使用のフロントエンド、PLL、MPX部などを採用し、機能面では、333Hz基準レベルとピンクノイズ発振器の内蔵、正確な同調点を保持するチューニングホールド回路、左右チャンネル独立型出力レベル調整があり、操作性がよい同調機構を備えている。

トリオ KT-7700

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 チューナーの新製品では、性能重視型のFM専用機が増加しているが、このKT−7700も、同様なポリシーで開発されたニューモデルである。
 ダイアルスケールは、読取り精度が高いミラー付ロングスケールで、シグナルとチューニングメーターとマルチパス兼放送局の変調度を指示するデビューションメーターがビルトインしてある。フロントエンドは、局部発振回路組込みの7連バリコンを使ったRF2段タイプで、選択度2段切替型のIF部は、12素子セラミック型と8ポールLC集中型フィルター採用である。MPX部はFETによる復調スイッチング回路を使う低歪率設計であり、オーディオ部は、差動直結±2電源オペレーショナルアンプを使い、ローパスフィルターには7素子ノルトン型を採用するなど、高性能なFM専用チューナーに応わしい新技術が各ブロックに導入されている。

パイオニア TX-8900II, TX-8800II

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 共通の特長は、新開発の4種類のパイオニア専用高集積度ICを採用することで、各ブロックごとをこのICで固め、従来のディスクリートでは得られぬ高SN比、低歪率、高域周波数特性改善を実現している。また、2機種ともに本格的なWIDE・NARROWの選択度切替型IF部をもつ音質重視設計であり、TX−8900IIでは、業界に先がけて、村田製作所と共同開発のIF用SAW(表面弾性波)フィルターを採用し、歪みの改善に優れた性能を発揮している。
 TX8900IIは、RF増幅2段と混合にデュアルゲートMOSFETを使い局部発振はバッファー付5連バリコン使用のFMフロントエンド、バンド切替とSAWフィルター採用のIF段、超広帯域直線検波器、新開発MPX用PLL・ICに特長がある。
 機能面では、エアチェックに便利な2個のICを使ったREC・レベルチェック信号内蔵、マルチパス端子とスピーカーにより、音で聞けるオーディオマルチパススイッチ、スライド式メモリーマーカーなどを備えている。

ラックス L-30, T-33

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプとしては、突然、昨年秋のオーディオフェアで発表されたジュニア機である。外観上は、80シリーズ以前の木枠を使ったフロントパネルをもつために、ラックスファンにと手は80シリーズよりも親しみやすいかもしれない。パワーは、35W×2とコンシュマーユースとしては充分の値で、回路面や機能面でも、従来のプリメインアンプを再検討して実質的な立場から省略すべき点を省略し、価格対音質の比率をラックス的に追求して決定した、いわば気軽にクォリティの高い音で音楽を楽しめるアンプである。
 L30のペアチューナーとしてつくられたのがT33である。価格は、抑えられたが、回路的には最新技術が導入されているとのことで、実用電界強度を表示する信号強度表示ランプがあり、FMミューティング、ハイブレンドを備えている。

オーレックス ST-720

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 シンセサイザー方式のFMチューナーとしてはオーレックスの第2弾製品である。価格的には、複雑な構成のために10万円をわずかにこしてはいるが、デジタル表示の未来志向型のチューナーとしては、充分に魅力的な価格であるの楽しい。
 選局は、カード式の変形ともいえる4組のFMユニット(周波数メモライザー)の内部にFMピンボードを規定に従ってあらかじめ希望局の周波数に合わせてセットすれば機械的に周波数はメモリーで気、このユニットにラベルを貼り局名を表示できる。
 マニュアルは、10MHzの桁で70か80を選択し、1MHzと0.1MHzは8、4、2、1を加算して0〜9を選択する方式で、最初は難解に思われるが慣れれば明解であるため、問題はない。プリセットチャンネルスイッチは4個のFMユニット用と、マニュアル用の5組あり、マニュアルはあらかじめセットしておけば、第5のFMユニットとしても使用できる。ファンクションとしては、国内の放送バンド以外の周波数をマニュアルでセットした場合になどに、点滅して警告するチューニング・エラー表示ランプやエアチェックのレベルセッティングの目安となる50%変調と100%変調に相当するレベルの信号が出力端子に出せるエアーチェック・レベルスイッチなどを備え、この種のチューナーに、ふさわしいものとしている。

デンオン TU-355

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、同社のPMA−255と組み合わせるFM専用チューナーである。フロントパネルは、チューナーとしては、横長型のスライドレールダイアルを廃して、2個の大型レベルメーターをもつ、個性型チューナーTU−500をベースにしている。TU−500と比較して変更されたのは、2個のレベルメーターが、フロントパネル左側に並んでセットされた点と、センターチューニングメーターが独立したことだ。
 TU−355のダイアルは、窓の部分こそ小型だが、直径12cmのドラムを採用しており、目盛りの全走行長では、28・3cmと長く、200kHzごとに等間隔目盛りであり見やすいタイプである。ダイアルの回転機構は、ステンレスシャフトと合金軸受の組合わせでフィーリングは、スムーズである。
 2個のレベルメーターは、それぞれ、チューナーの出力レベルを指示するが、左側は信号強度計として兼用している。メーター切替スイッチは、3段切替型で、リアパネルにあるエキスターナル端子からの信号を指示することも可能である。この場合には、フロントパネルにあるエキスターナル・アッテネーターを使い−30dBから+33dBまで、つまり、24・5mVから、34・6Vまでの指示が可能でエキスターナル端子の入力インピーダンスが200kΩ以上あるために、簡易な測定器としても利用できる。
 フロントエンドは、5連バリコン使用で、高周波一段増幅、段間トリプルチューンの同調回路とデュアルMOS・FETの組合わせ、信号系と制御系を二分割した2系統のIF段、PLL採用のMPX部のほか、オーディオアンプは2段直結NF型である。
 このチューナーは、音質的には、TU−500よりも、音の粒立ちがよく比較をすると、ややクリアーで抜けがよい。

サンスイ TU-7900, TU-5900

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 価格ランクこそ異なっているが、新しい2機種のチューナーは、好みにより、3機種のプリメインアンプのいずれともペアにできる。デザイン的には、TU−9900のイメージを受け継ぎ、性能面では実用上もっとも影響力が大きいSN比50dB時の感度向上にポイントが置かれている。
 TU−7900は、RF段にデュアルゲートMOS型FETと複同調回路をもつ4連バリコン使用のFMフロントエンド、低歪化と選択度を両立させるフェイズリニア・セラミックフィルターを採用したFM・IF段、それに、PLL方式のMPX部をもつ、オートノイズキャンセラー、FMアンテナ入力を抑えるアッテネーターをフロントパネルに備えている。

トリオ KT-7700, KT-5500

トリオのチューナーKT7700、KT5500の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

KT7700

セクエラ Model 1

瀬川冬樹

月刊PLAYBOY 7月号(1975年6月発行)
「私は音の《美食家(グルマン)》だ」より

世界のオーディオ界を、アッといわせたかつての名チューナー、マランツMODEL10Bを作った技術陣がセクエラという別会社をつくって製作した最新のチューナーである。現代エレクトロニクスの粋を集めて作ったこのセクエラ・MODEL1は、128万円。もちろん、周波数帯域は、日本のそれに、本国アメリカで修整されている。オシログラフのさまざまな波形が、聴く楽しみと同時に見る楽しみをもつけくわえている。

マランツ Model 120B

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 モデル10B以来のスコープディスプレイをもったマランツのトップ機種である。パネルフェイスの印象は、米国うまれのためか、最近の国産機とは異なるが、華やかである。

トリオ KT-9007

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 FMチューナーでは定評がある、いかにもトリオらしい機種である。多用途の指示メーターも面白いし、とくに、ある種の空間を意識させるようなステレオの音場感が特長だ。

ビクター JT-V6

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ローコストチューナーのなかでは、抜群のパフォーマンスと操作性をもった機種である。受信性能、同調のフィーリングなどは、らくに1ランク上の機種に匹敵する。