Tag Archives: LS3/5A

ロジャース LS3/5A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 周知のように英国BBCの開発になるミニモニターだが、同局の認可をとってロジャースとオーディオマスターの2社から、製品が市販されている。大きさからいって、スケール雄大といった音はとても望めない反面、精巧な縮尺模型を眺める驚きに似た緻密な音場再現と、繊細な弦の響きなど、他に類のない魅力だろう。KEF303を、安心して家事のまかせられる堅実女房とすれば、こちらは少し神経質だが魅力的な恋人、か。

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ロジャースLS3/5Aは、コンパクトスピーカーシステムに属する小型のモニターで、ウーファー口径は10cm、これに2cm口径のドーム・トゥイーターを組み合わせた2ウェイ構成をとる。その外観の小ささからは異質の、、がっしりと絞った確度の高い音像が再現されるが、かといってその音像の明確さに触発されて音量をあげるには限度があることも否めない。

Speaker System (Mini type)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第31項・市販品をタイプ別に分類しながら(4) ミニスピーカーと小型ブックシェルフ」より

 たとえば書斎の片すみ、机の端や本棚のひと隅に、またダイニングルームや寝室に、あまり場所をとらずに置けるような、できるだけ小さなスピーカーが欲しい。しかし小型だからといって妥協せずにほどほどに良い音で聴きたい……。そんな欲求は、音楽の好きな人なら誰でも持っている。
 スピーカーをおそろしく小さく作った、という実績ではテクニクスのSB30(約18×10×13cm)が最も早い。けれど、音質や耐入力まで含めて、かなり音質にうるさい人をも納得させたのは、西独ヴィソニック社の〝ダヴィッド50〟の出現だった。その後、型番が502と改められ細部が改良され、また最近では5000になって外観も変ったが、約W17×H11×D10センチという小さな外寸からは想像していたよりも、はるかに堂々としてバランスの良い音が鳴り出すのを実際に耳にしたら、誰だってびっくりする。24畳あまりの広いリスニングルームに大型のスピーカーを置いて楽しんでいる私の友人は、その上にダヴィッド50(502)を置いて、知らん顔でこのチビのほうを鳴らして聴かせる。たいていの人が、しばらくのあいだそのことに気がつかないくらいの音がする。
 ダヴィッド5000とよく似た製品に、西独ブラウンのL100がある。しかしブラウンなら、これと価格のたいして違わないL200のほうが、大きさで無理をしていないだけ音に余裕が出てくる。ミニスピーカーのチャンピオンは、やはりダヴィッドだと私は思う。ちなみにダヴィッドの名は、巨人ゴリアテを見事に倒した例のダヴィデから名づけられている。
 ブラウンL300は、外径はL200の奥向きがわずかに増しただけだが、このサイズで3ウェイを収めた強力型で一聴の価値がある。ブラウンとヴィソニックは、ともに西独の製品特有の、カチッと引締まった気持のいい音がするが、どちらかといえばブラウンの音のほうがやや弾力的だ。
 これらの製品に音質の点ではおよばないが、おそらくいま世界最小のスピーカーは、フォステクス(日本)のG700だろう。またアイデンのCUBEは、アメリカ・オーラトーンを真似た正方形のサイコロ型で、これも場所をとらない点がおもしろい。ほかに国産の注目製品を左にあげておく。
 これら超小型スピーカーよりもひとまわりサイズを増して、そのかわり無理をせずにまとめた小型ブックシェルフの中に、いくつかおもしろい製品があって、もしスペースが許せば、超小型の意外性を別としてこちらのほうがやはり音の伸びが自然だ。
 ロジャース(英)のLS3/5Aは、英国BBCがモニターに採用しているだけあって、音のバランスが自然で、繊細な音の美しさでズバ抜けている。
 これよりさらに少々大きくなるが、国産のヤマハNS10M、その成功に刺激されて後を追ったダイヤトーン、オンキョー、デンオンはそれぞれに出来がいい。ヤマハとダイヤトーンがやや真面目な音。オンキョーとデンオンは弾みのある豊かな感じ。そしてこれらほど音をうるさく言わずに、食堂の片すみなどに気軽に設定する製品として、フォステクスのG11Nは目をつける価値がある。

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 小型モニタースピーカーだが、本格的音のイメージをもっている。しかるべき音量で鳴らす分には、質のいい歪みの少ない音が得られる。

チャートウェル LS3/5A, PM400, LS5/8 (PM450E)

チャートウェルのスピーカーシステムLS3/5A、PM400、LS5/8 (PM450E)の広告(輸入元:ノア)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

PM400

ミニサイズ・スピーカーのベストバイ

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶ」より

 どこまでが「ミニ」あるいは「超小型」で、どこからが「小型」なのかという明確な定義はできないが、購入する側からいえば、おおよそ次の三つの目的に分類できるのではないか。
 第一は、設置スペースに制約があったり、またはインテリアを重視した部屋作りのために、できるだけスピーカーの存在を目立たせたくない、等の目的から小さなサイズを要求する場合。この場合には、サイズが第一で、音質面は二義的になることもありうる。
 第二は、大型の装置を別に持っていて、サブ的に楽しみたいスピーカーを探している場合。したがって、場合によっては必ずしも小型である必要がないかもしれないが、しかし音質の点で良いものがあれば、できれば小さいに超したことはない、というようなとき。
 第三は、たとえばヴィソニック社の「DAVID50」のような、本当のみにサイズでしかも音質も素晴らしいという製品の場合、これと知らずに音を聴くと誰しもがびっくりする。そうした意外性を強調するには小さければ小さいほどよいし、しかし音質はその小ささからは想像もできないほど優れていて欲しい。そういうおもしろさを含めて購入する、いわばオーディオマニア的な発想から……。
     *
 こんな分類をしてみると、いまの第三の場合ですでに書いたヴィソニックのDAVID50は、まさにこの種の元祖として音質も耐入力も、こういうサイズとは信じ難い立派さで、ベストバイの最初に挙げられる。類機にADSとブラウンがあるが、価格と音質のバランスでダヴィッドが随一だ。
 第二のいわゆるサブまたはセカンドスピーカーとしての製品は最も数が多く、ヤマハNS10M、オンキョーM55、ロジャースLS3/5A、もう少し大きくてよければセレッションUL6、B&W・DM4えII、ジム・ロジャースJR149、JBL♯4301WX、ロジャース「コンパクトモニター」等が出てくる。
 第一のインテリア重視の面からは、たとえばタンバーグの「ファセット」やジョーダン・ワッツの「フラゴン」のようなユニークな意匠の製品に加えて、前項以前に示した各種から適宜取捨選択できる。
 最後にやや蛇足の感があるが、ミニブームに便乗してひどく性能のよくないスピーカーがいくつも市販されはじめたのには、いささかやりきれない。購入の際は要注意。

ロジャース LS3/5A

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

超小型モニターらしいし近距離でのフィデリティの高さは抜群だ。

ロジャース LS3/5A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

すばらしく品位の高い肌目のこまかさ。小造りながら独自の音の世界。

ロジャース LS3/5A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 今回のように、かなり本格的な大型・中型のモニタースピーカーと同時に比較試聴した場合には、どうしてもかなり聞き劣りするのではないかと想像していたが、意外に結果は良好で、むろんこれがいかにミニスピーカーとはいえ、イギリスBBC放送局で現用している正式の小型モニターのひとつなのだからそうおかしな音を鳴らすわけではないにしても、大型に混じってなお十分に聴きごたえのあるという点にびっくりさせられた。
 ただ、概してイギリス製の、しかも近年に開発されたブックシェルフ系の小型スピーカーは、一般にハイパワーにはきわめて弱い。この種のスピーカーにナマの楽器を眼前で聴くような音量を要求したら、まったく評価できないほどみじめな結果になるだろう。だいいちそんなパワーを放り込んだらこわれてしまう。だからもしそういう音量を鳴らすことをモニタースピーカーの条件としたら、このLS3/5Aなど落第生だろう。
 そういう次第で、本誌試聴室でも平均音量が80dB以下の、つまり家庭で鳴らしてもやかましくない程度の音量で試聴したことをお断りしておく。
 まずブラームスのP協。見かけよりは音のスケールはよく出る。オーケストラのハーモニィと響きがとても美しい。それは、ほんとうに美しい! といいたい感じで、やや弱腰で線が細い傾向はあるものの、従ってオーケストラをやや遠くの席で鑑賞するような響きではあるが、グランドピアノの響きを含めて、音がホールいっぱいにひろがって溶け合う美しさが音そのものよりも原音の持つ響きのエッセンスを聴かせるとでもいう鳴り方で楽しめる。ロス=アンヘレスのラヴェルなど、むしろ控え目な表現だが、フランス音楽の世界を確かに展開するし、バッハV協のヴァイオリンの独奏もバックのオーケストラの豊かな響きも、同じく演奏会場のややうしろで聴くような輪郭の甘さはあるにしても、十分に実感をともなって聴かせる。この点は他のすべてのプログラムソースについて共通の傾向で、いわばすべての音をオフマイク的に鳴らすわけなので、ピアノのソロや、とくにポップス系では音の切れこみや力や迫力という面で不満を感じる人は少なくないだろう。
 要するにこのスピーカーの特徴は、総体にミニチュアライズされた音の響きの美しさにあると同時に、輪郭の甘さ、線の細さ、迫力の不足といった弱点を反面にあわせ持っているわけだが、自家用として永く聴いているひとりの感想としては、小造りながら音の品位が素晴らしく高く、少なくともクラシックを聴くかぎり響きの美しいバランスの良い鳴り方が、永いあいだ聴き手を飽きさせない。メインスピーカーとしてはいささかものたりないが、日常、FMを流して聴いたり、深夜音量をおさえて聴いたりする目的には、もったいないほどの美しい音を鳴らすスピーカーだ。こういういわば音の美感あるいは品の良さが、残念ながら国産に最も欠けた部分のひとつといえる。

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 ロジャースのLS3/5Aは、モニタースピーカーとしては異例の小型なもので、ミニモニターと呼んでもいいだろう。こういう小型なモニターが、いかなるケースで必要とされるのかは、私も少々理解に苦しむのである。小型が場所をとらなくていいに決っているが、ここまで小型にしなくてはならない必然性はなんなのだろう。テープレコーダーのキューイングに、デット一体化して作りつける場合などを別にすれば、業務用としては、野外録音のポータブルでもない限り、必要性は思い当らない。しかし、それはそれとして、このスピーカーの音質は、キメの細かい、精緻なもので、品のいい魅力的なソノリティを聴かせてくれる。10センチ口径のウーファーと2センチ口径のトゥイーターの2ウェイシステムで、クロスオーバーは2kHzである。こういうシステムだから、大きなラウドネスは期待する方が無理で、小さな部屋でバランスのとれた音を楽しむという、むしろ、家庭用のシステムとしての用途のほうが強かろう。JBLの4301の項で述べたようにプログラムソースの制作のプロが、家庭用のスピーカーに近い状態でモニターとして、メインモニターと併用するというのが、本来の製作意図かとも思われるが、鑑賞用として優れた小型システムだと思う。

ロジャース LS3/5A

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきが、少し細すぎる。
❷もうひとつ力がほしいが、ひびきのくまどりがついている。
❸きわだたせはしないが、音色の特徴を鮮明に提示する。
❹低音弦のピッチカートがふくれすぎないよさがある。
❺細部の提示は鮮明だが、クライマックスの迫力という点で不足する。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像はひろがらない。まろやかなピアノのひびきに魅力がある。
❷音色的な対比が自然で、無理のないのがいい。
❸ひびきがふくれないよさはあるが、もう少し軽やかでもいい。
❹いくぶんひっこみがちなところが気にならなくもない。
❺木管のひびきの特徴をよく示し、さわやかだ。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位がきわだっていい。人物の動きがおもしろいようにわかる。
❷接近感は、かなりなまなましい。表情を過度にしないところがいい。
❸声が少し後ろにひいて、クラリネットが前にいることがわかってこのましい。
❹はった声は硬くならないが、まろやかさはいくぶんそこなわれる。
❺声とオーケストラのバランスがいいので、ききやすい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶すっきりと横一列に並んで、凹凸がほとんど感じられない。
❷声量の差をくっきりと示して、よくわかる。
❸残響をひきずっていないので、言葉がよくたつ。
❹さらひびきに軽やかさがあれば、一層ひきたつだろう。
❺しなやかに、自然にのびて、このましい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比は充分だが、音場的対比ではものたりない。
❷奥へのひきは申し分ない。すっきり中央からきこえてくる。
❸ひびきの浮遊感が必ずしも充分とはいえない。
❹前後へのへだたりはとれているものの、ひびきに軽やかさがほしい。
❺ピークでの一応の力は示すが、もう一歩というところだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひっそりとした、きめこまかなひびきのひろがり方はいい。
❷ギターはきわだって奥の方から、次第にせりだしてくる。
❸このひびきの特徴を示しはするが、きわだたせることはない。
❹ひびきに輝きがあり、ここで求められる効果を示す。
❺うめこまれないで、充分にききとれる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ひびきの上下のバランスがいいので、12減ギターの特徴がよく示される。
❷ツイン・ギターの効果がくっきりと示されている。
❸ことさらきわだつわけではないが、ひびきは乾いている。
❹中域のエネルギーが充分なためか、言葉のたち方がいい。
❺バック・コーラスのひろがりがよくわかる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ひびきが積極的に前にでて、力のあるのがいい。
❷誇張感はないが、かなりのなまなましさを示す。
❸音の尻尾も、必ずしも充分とはいえないが、まずまずだ。
❹反応はかなりシャープで、力強さも感じさせる。
❺両者の対比が無理なく自然なのがいい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶くっきりリズムを提示する。音場的なひろがりも感じさせる。
❷ブラスのひびきが金属的にならないのがこのましい。
❸積極的に前にでて、充分な効果を発揮する。
❹後方へのひきもよく、ひびきの見通しもいい。
❺バランスの点で問題が少ないので、めりはりがついている。

座鬼太鼓座
❶尺八がへだたったところでひびいている感じをよく示す。
❷音色的にも尺八のひびきの特徴をのぞましく示す。
❸この音が大太鼓の音であることはよくわかる。
❹スケール感はやはりかなりものたりない。
❺この音に求められる効果をつつがなく示す。

ロジャース LS3/5A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 いろいろの紹介記事ですでにご承知のようにイギリスBBC放送局が、出張録音や簡単なチェックのための超小型モニターとして開発した製品だが、今回はそういう背景は別として、JRやスペンドールと同じ条件で比較できるという点に興味があった。しかし同列に並べて聴きくらべてみると、価格が一ランク高いことを別にして、さすがに音の品位が違うとまず思わせる。このスピーカーはすでに自宅で半年以上使っているが、黒田恭一氏もどこかで書いておられたように、比較的近くに置いて正確に音像の中心に頭を持ってくると、あたかも眼前に精巧なミニチュアのステージが展開するかのように、音の定位やひろがりや奥行きが、すばらしく自然に正確に、しかも美しい響きをともなって聴こえるとても優秀な製品だ。今回の試聴では、設置条件をわざと違えて、JR149やSA1と同じ高さ(約50センチ)の台の上に並べて聴いたが、JRのアンビエンス効果も顔負けするほど音のひろがりもみごとだし、一音一音がいっそう磨きをかけられて底光りのする美しさに魅惑させられる。バランス的には中域をおさえてあって、大音量ではドンシャリ的に鳴る傾向があるので広い場所は避けたい。アンプ以前のクォリティをはっきり鳴らし分けるのは当然だから、十分に品位の高いカートリッジとアンプが必要。

既製スピーカーシステムにユニットを加えてマルチアンプでドライブする(その2)

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-1 マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ(ステレオサウンド別冊・1977年秋発行)
「内外代表パーツ200機種によるマルチウェイ・システムプラン」より

 このところ、ヨーロッパ系を中心として、国内製品のスピーカーシステムにも超小型の主に2ウェイ構成の製品が増加の傾向がみられる。その多くは、10cm口径程度のウーファーとソフトドーム型トゥイーターを組み合わせているがこの種のシステムは、ウーファーを追加してマルチアンプ方式で3ウェイ化するために大変な魅力的な存在である。追加するウーファーに専用アンプを用意する、2チャンネルのマルチアンプ化をおこなうのがもっとも好ましい方法であるが、そのバリエーションとして、最近復活しはじめた3D方式もある。低音の指向性がゆるやかなこと、波長が長いために左右チャンネルの位相の狂いが少ないことなどを利用して、低音だけは両チャンネルの信号をミックスして1本のウーファーで再生するのがこの3D方式である。
 超小型システムをベースとし、ウーファーを加える方法は、ベースとなるシステムがこの種の製品独特な音像定位のクリアーさとステレオフォニックなプレゼンスの再現に魅力があるため、わずかに追加したウーファーにより低音を補えば、かなりのフロアー型システムに匹敵するスケール感の大きい、それでいてプレゼンスのある音を再生することができるはずである。この場合には、スピーカーと聴取位置との距離は短いほうが超小型システムの特長が活かされる。
 小型のブックシェルフ型をベースとして、超小型システムと同じアプローチが可能だ。このタイプになれば、ウーファーの口径ももっと大きいものが使用可能で標準的に部屋にセットしてもさらに大音量でフロアー型の音が楽しめる。
 その他のバリエーションとしては、小口径シングルコーンユニットを採用した超小型や小型システムをベースとして、まずウーファーを追加して低音の改善を計り、その次にトゥイーターを加えて3ウェイ化するアプローチがある。広い帯域を中音ユニットに受け持たせるため安定した音が独特の魅力だ。

●スピーカーシステム
 パイオニア CS-X3
 ブラウン “Output Compact” L100
 ヴィソニック David50
●ウーファー
 KEF B139MKII
●プリメインアンプ
 サンスイ AU-607
●エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワーク
 サンスイ CD-10
●パワーアンプ
 低音域:サンスイ BA-2000
 中高音域:サンスイ AU-607(パワーアンプ部)

●スピーカーシステム
 ヤマハ NS-10M
 セレッション Ditton 11
 ロジャース LS3/5A
●ウーファー
 セレッション G15C
●プリメインアンプ
 マランツ Model 1180
●エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワーク
 パイオニア D-70
●パワーアンプ
 低音域:マランツ Model 170DC
 中高音域:マランツ Model 1180(パワーアンプ部)

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのロジャースがBBCの技術協力を得て開発した小型モニター・スピーカーで10cmのウーファーと2cmのドーム・トゥイーターを内蔵する。クロスオーバーは3kHzである。イギリスのスピーカーにはBBCモニターという規格や、そのテクノロジーに準じたものが多いが、いかにも、イギリスらしい端正な落着いたサウンドをもったものが多い。このシステムも、小型ながら誇張のない、大らかな音で、バランスが大変よい。

ロジャース LS3/5A

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 超小型の、ポータブル用モニターシステムで、英BBC放送のモニター用に採用されていることは、型番からも明らかである。本来の特長を活かすためには、低域をコントロールしてあるQUADの405パワーアンプなどがドライブ用に必要であり、しかも、1m以内の近接位置で聴かなければならない。ヘッドフォン的な聴き方だけに、組み合わせコンポーネントは高品質が要求され、さもなければ、見えるような臨場感は得られない。

ロジャース LS3/5A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 左右のスピーカーと自分の関係が正三角形を形造る、いわゆるステレオのスピーカーセッティングを正しく守らないと、このスピーカーの鳴らす世界の価値は半減するかもしれない。そうして聴くと、眼前に広々としたステレオの空間が現出し、その中で楽器や歌手の位置が薄気味悪いほどシャープに定位する。いくらか線が細いが、音の響きの美しさは格別だ。耐入力にはそれほど強い方ではない。なるべく良いアンプで鳴らしたい。

ロジャース LS3/5A

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 英国のスピーカーシステムには、モニターの名称をつけた製品が多いが、英国放送BBCで採用している正式なモニターシステムとしては、KEFのLS5/1Aがよく知られている。ロジャースのLS3/5AもBBCモニターとして採用されている超小型のシステムである。
 LS3/5Aは、低域はさほど伸びていないが腰が強くクリアーな低音であるために、聴盛上の不足はあまり感じない。また、2ウェイシステムであるがウーファー口径が小さく、トゥイーターとのクロスオーバーが低いために、中域がしっかりとしているのが特長である。ステレオフォニックな音場の拡がりは、英国の近代型システムの独得の魅力だが、このシステムも音像定位がクリアーでピシッと焦点を結んだように立上がり、まるで、音を聴くというよりは音像が見えるようにクッキリとしている。クォリティは大変に高く、アンプ、カートリッジのキャラクターをストレートに見せるあたりはやはりモニターである。