Tag Archives: LS101

トリオ LS-101

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 すべての音にやや響きをつけ加えるという感じから、あるいはヨーロッパ系のスピーカーの良さを手本にしているのか、と思われる。DS261と較べるとその点がまず対照的で、三菱がすべての音に抑制を利かせて音の輪郭をかっちりとくまどってゆくのに対して、トリオの音には手綱をゆるめた自在さが聴きとれ、華やかさ、明るさを感じる。そういう音色のせいか、音像の定位は比較的シャープだが奥行きが出にくい傾向があり、やや張り出しぎみの平面上に定位する。ただ、音の響きのつき方は、たとえばフルートのソロでいえば息の漏れる音が少々サワサワとノイズっぽくなる傾向で、中~高域にもう少しまろやかで滑らかな磨きをかけて欲しい気がする。そういう音のせいだと思うが、このスピーカーは、価格的にはやや不相応の品位の高いアンプやカートリッジで鳴らしてやらないと、右の傾向が裏目に出やすく、組合せに失敗すると、汚れっぽい音を出すことがありそうだ。しかしこういう、弱点スレスレのところでまとめた音は国産には珍しいといえそうだ。

採点:85点