ダイヤトーン DS-700

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 表情は硬く、プログラムソースには正確に反応を示すような音を聴かせるスピーカーだ。
 聴感上の帯域バランスは、必要にして十分に伸びたタイプで、中域のエネルギーも不足せず、音声感情報に関しても問題は少ない。このように真面目な性格と、価格に見合うクォリティを備えてるのは立派である。プログラムソースでは、平均的には過不足なく、それらしく聴かせるのが長所だ。ただ、残響成分がタップリとしたソースの場合には、残響成分が過剰に再生されるので全体にペタっとした軟調の表現となり、音色が暗く、箱鳴り気味の低音になることがあるようだ。アンプは、同じ性格で、正統派の音をピシッと聴かせるタイプが必要だ。

エレクトロボイス Sentry30

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 低域抑えた、やや音の粒子が粗い硬質な音の聴かれるシステムである。試聴には、ビクター・SX500II用のスタンドを流用したため、音軸が聴取位置と合わない面もあるようで、むしろ、壁面にピッタリとつけたセッティングをして、このシステムの持っている全域型シングルコーン的メリットを活かせる方向がいいと思われる。
 聴感上での帯域バランスは、低域のレスポンスが抑えられ、エネルギー的にも余裕がないために、直接音成分が多く聴かれ、カ行やサ行の発音が乾き、ザラツキ気味になりやすく、それは4種類の試聴用プログラムソースに共通の結果である。聴取位置がSS試聴室左側奥のため、定在波による影響と考えても、不可解な音である。

私的な音に潜むもの

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「Music Consolette 偶然の結晶を求めて」より

知的洗練で無駄を削ぎおとし、自らの希求する世界にストイックによりそわせた装置の音は、無造作に高価な物ばかりを寄せ集めた表面的な超弩級システムからは聴くことができない独自の世界をかもし出すものだ。自分の音やそれにまつわる話を、照れながらぽつりぽつりと語ってくれた言葉には、語り尽くせないもどかしさの余韻というものがある一方、言葉にしてしまえばその瞬間から致命的にそこなわれてしまうようなとてもデリケートなニュアンスが、そこで鳴った音楽の中に染み込んでいたような気もしている。個人的によく知ってる人から初対面の方まで、その音を僕が分析的に聴いて勝手なレッテルを貼るのではなく、ちょっとした文学的作品のページをめくっていくような気持ちで接した。それはなにかのテストリポートを書くときの意識をとどめたままでは感じることができないような、貴重な体験だった。そうした私的空間で素敵な音に接する機会を与えてくださったことを、この場を借りて一言お礼を言っておきたいと思う。

ミッション 781

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 音の輪郭の線を太く描き出し、一種独特の抑えの効いた個性の強い音を聴かせるスピーカーである。
 聴感上での帯域バランスは、やや重く暗い印象の低域と金属的な輝きのある中高域がコントラストを保つタイプである。全体としては、ややナローレンジであるが、中域のエネルギーを抑えた2ウェイならではのまとまり方だ。
 プログラムソースに対しては、このスピーカー独自の個性が強く、積極的に使いこなす場合には、組み合わせるアンプの選択が最大のポイントとなりそうだ。その意味では、今回試聴に使ったアンプは、スピーカーの個性とは対極をなすもので、水と油の印象がつきまとい、残念な結果となった。

NHT Model 1

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 鈍いスピーカーでは、とってつけたように人工的なエコー感でべったりとおおわれたようになる録音でも、嫌味なく再生しうる透明感がある。
 音の輪郭は硬質だが線が細いために固いという印象にはならず、むしろ繊細でやわらかなイメージをつくっている。声には、淡白さともいえる微妙なニュアンスもでかかっていた。
 音像の実体感を強調するより、全体の響きの綺麗さをねらっているようで、たとえば、シンバルのアタック感は弱まるが、パッと水面に石を投げ込んだ時にひろがる波紋のように、ディスパーションをとても爽やかに表現していた。サックスの響きは、やや上品すぎるか。

アコースティックエナジー AE2

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 プロアック同様、イギリスの注目株。顔つきは正反対で、真っ黒けでそっけないが、音は見かけによらず無骨さは微塵もない。一見スタティックな面があるや、とおもわせるほど、響きに定着感のよさがあり、ブレたり浮き上ったりしない、安定した音像定位が得られる。情緒的な色艶をやや抑制するが、各楽器のまわりには曖昧なもやつきがなく、すっきりと広がる響きのディスパーションパターンが綺麗に再現された。やわらかい音はやわらかく、硬い音は硬く、きちんと描き分けることのできる数少ないスピーカーで、どちらかに偏る傾向もない。
 ニュートラルなモニターとして有用。家庭用としても見た目を気にしなければ特選。

NHT Model 1

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 本機は軽量級の柔らかい、それなりに反応の速いしなやかな音を聴くことのできるスピーカーシステムである。
 基本的には、やや腰高な柔らかい低域と滑らかではあるが適度にスパイシーな輝きのある高域が魅力で、薄味な面はあるが聴きやすい音が特徴であろう。
 プログラムソースに対しては、少し距離感を隔ててスピーカーの奥に音場が広がる。また、音の輪郭を細く滑らかに聴かせ、直接音成分よりも間接音成分を多く引き出す傾向があるため、クリティカルな表現よりも、それなりに、軽く聴くための音にまとめてあるのがメリットといえる。しかし、組合せのアンプの選択は、意外に苦労させられそうな印象である。

推薦

スペンドール SP2/2

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 やや箱の響きが重いと感じる。特に中低域から低域にかけてややボンつくようなこもり感が、どうしても気になってしまう。たぶん試聴で使用した置き台との相性、あるいはアンプやCDプレーヤーとのマッチングが致命的に悪かったのかもしれない。弦も響きがドライで、ピアノも左手の低い音域がかぶり気味になる。アタックののびも頭打ちで平板なのだ。こんなはずはない。高域はトランジェントがやや穏やかに過ぎ、このクラスとしてはディティールの再現性がもう少しあってもいいのではないか、の不満ばかりだ。本機そのものが不調だったのかもしれず、不本意な結果だった。しかし、これは純粋に僕の嗜好と生理的にミスマッチだったのかもしれない。

AKG K1000

菅野沖彦

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 オーストラリアのAKGは、ヘッドフォンやカートリッジ、そしてマイクロフォンで世界中で高い評価を得ているトップブランドである。音楽の国オーストリア、特にウィーンやザルツブルグで、馴染みの深いこの国の香り高い文化がAKG以外には音の面ではあまり知られていないのはむしろ淋しい気がする。事実、このブランド以外の音響メーカーなきに等しいようで、私の音楽やオーディオの知人たちに聞いても、彼らが挙げるブランドはたいていドイツかスイスのものだ。オーストリアで使われているオーディオ機器は日本製品かアメリカ製品、そして、イギリス製がヨーロッパ製なのである。つまり、オーストリアではヨーロッパ製でよいのであって、ことさら、オーストリア製に対するこだわりはない。ヨーロッパの中でも、それほど独自な音の美感覚や音楽性をもっているウィーンのことだから、その感覚や伝統がオーディオに生きてきたら、さぞ魅力的なものが生まれるに違いない……と思うのは私だけだろうか? 彼らにとってオーディオ機器は機械であって、音の美にかかわるものとは思っていないようにさえ考えられる。しかし、何人かのウィーン在住のオーディオマニアを知っているが、彼らはオーディオ機器の音の美しさや魅力を単に機械の物理特性の問題だけでは考えていない。
 ところで、AKGは今までにもヘッドフォンには意欲的な開発性をもち続けてきたが、今回のK1000はあえて前置きに長々と書いたように、オーストリア製にふさわしい製品で、その美しい音の質感は、決してスピーカーからは聴くことのできないものだ。特に弦楽器の倍音の自然さとそこからくる独特な艶と輝きをもつ、濡れたような音の感触は、従来の変換器からは聴き得ない生々しさといってもよいだろう。こうして聴くと、CDソフトには実に自然な音が入っていることも再認識できるであろう。生の楽器だけが聴かせる艶っぽさを聴くことのできる音響機器は、ヘッドフォンしかない(特に高域において)と思っていたが、この製品はさらにその印象を強めるものだった。
 デザインは、内部的にも外観的にも大変ユニークなものである。NdFeマグネットをラジアルに配したオープン型磁気回路と、16〜17世紀のヴァイオリン製作者達に使われたニスの薄膜塗装を施した4層レイヤーのダイアフラムをユニットとした完全なオープン型ヘッドフォンだ。電極にも磁気回路にも通気性が阻はばまれることがないため、キャビティによる音色やレゾナンスが極めて少ないことが、この音の自然さに貢献しているのであろう。本来ヘッドフォンは、スピーカーに対してクローズド型でこそ性能を発揮するものともいえるが、このK1000は、そうした観念を完全に打ち破る、新しいヒアリングシステムとしてのジャンルをつくっている。A級パワーアンプのスピーカー端子に接続して聴くことが推奨されていることからも、独特なコンセプトがわかる。

エレクトロボイス Sentry30

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 低域を比較的たっぷり聴かせる英国系のスピーカーに比べると、この引き締った中低域からローエンドにかけてのニュアンスは、量的に不足感をいだきやすい。しかし、よく聴いてみると、張りのつよい明快な表現で音像の立体感をくっきりとマクロ的に押し出し、サックスの実体感はサイズを忘れさせる。シンバルのアタックにも凝縮されたエネルギー感が乗る。反面、弦の繊細感がややドライのタッチになるが、音楽そのものに求心力をつけてくれるために、ムードに流れず、のめり込んで聴く、といった聴き方には、ジャンルを超えた適応性を持つかもしれない。しなやかで柔らかな音や、透明感に富んだ洗練された音を求める人には、やや不向き。

ローランド E-660

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「SS TOPICS」より

ローランドから業務用デジタル・パラメトリック・イコライザーが登場して、すでに一年以上の月日が流れた。その間、一部のオーディオマニアから、これは相当に面白い補助機器だという話を耳にする機会が増えた。
 そこで、今回このE660デジタル・パラメトリック・イコライザーを実際に数日間にわたり自宅で試してみることにした。
 そもそもこういう製品は、どういう目的で使用するのかという使い手自身の意識、認識を明確にし、機器のもつメリット、デメリットを秤にかけて、なお使い込む価値ありということでなくては、途中で放棄してしまいかねない種類のものだと思う。
 かつて、音響条件の劣悪な環境で両チャンネルで66素子のグラフィックイコライザーを採用し、音のバランスを整えることで、安心して音楽が聴けたという、ありがたい恩恵を受けたことがあったが、やがてもう少しバンド数が少なく、簡単に音楽のバランスを整えることのできる機器に変更した。それはルームアコースティックを調整するということより、むしろ積極的に自分が望む音のバランスを作ってみたいという発想からだった。その時の経験から感じていたことだが、一般的なアナログ回路によりイコライジングが宿命的にもつ位相のずれ、いわゆるフェイスシフトがどうしても気になるのだ。
 今回試聴したE660は、デジタル化された演算によって周波数をコントロールするものであり、フェイズシフトが事実上皆無という点で、コントロールを加えることにより音像定位が不明瞭になったりすることがないのが特筆できよう。
 こうした製品は余分なものだと頭ごなしに否定する人や、ある種のアレルギーを持ってる人には勧めにくいが、一度試してみると、何か違ったオーディオの側面が見えてくるかもしれない。デジタル化されたメリットは、実際の使用にあたって、たとえば今回使用したソニー/CDP-R1a+DAS-R1aとの間にデジタル接続が可能であることをはじめ、本機はD/Aコンバーターを内蔵しているのでデジタルアウトを装備したあらゆる機器とのデジタル接続が可能である(アナログ接続も無論可能で、キャノン端子によるバランスデンソーも可能)。
 昨今、デジタル・プリアンプの登場も取り立たされており、近未来的なフルデジタル・システムの可能性の一端を垣間見ることができる。
 実際の音だが、なにしろコントロールに際して、まるっきりフェイズシフトを伴わないと言う事実には、耳がなれるまでやや戸惑いを覚える。
 まるで人工的に整理整頓され、こざっぱりと片づいた感じのする音場感は、これまでに耳にしたことがない感覚だ。ミクロ的に言えば、かすかに硬質なタッチがつく場合もあるとはいえ、メリットを活かす方向で使いこなしができれば、これは物凄い武器となるに違いない。既成のイコライザーに不満をもっている方には必聴の製品だ。

メリオワ The Melior One

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 カナダのミュージアテックス・オーディオ社より、同社の〝マイトナー〟及び〝メリオア〟ブランドのCDプレーヤー、アンプにひき続き、メリオワ・ブランドから新たにスピーカーシステム/メリオアOneが登場した。
 一見エレクトロスタティック型のように見えるがこれは平面振動板を持った完全なるダイナミック型スピーカーである。
 平面振動板というと、かつての国産スピーカーで大流行したような、分割振動を抑制した剛性の高いダイアフラムに、ハイコンプライアンスエッジを組み合わせたユニットを思い出す。しかし、メリオアOneに採用されているユニットは全くその対極に位置するような構成をもっている。
 薄いダイアフラムの素材は、マーチン・ローガンの一連のスピーカーと似たようなマイラーフィルムの透明な膜で、パリッとしたある程度の硬さを持ったものだ。しかもエッジ部分はリジッドに固定されていて、一定のテンションで、ピンと張られ、膜の中心に貫通固定されたボイスコイルが前後にピストンモーションするようになっている。メーカー側はそのために自然な球面波が作られると説明してもいる。球面波になぜこだわるのかというと、平面波では、音像が遠のきがちになり、距離感がやや曖昧になる傾向があるからだ。
 正面から見て、ダイアフラムの反対側には、一辺が1cm程度の格子上に組んだスリットがあり、そのスリット上に薄いフェルトを貼付することで、ピーク性の音が出ないようにコントロールしている。
 どうやらメリオアOneは、ダイアフラムが分割振動することを積極的に音造りに活かしたアプローチがされているらしく、特に低域の音像が陽炎的な浮遊感をともない、オーケストラの再現に独特な広がりをつけてくれるのだ。
 事実は定かではないが、音の印象からすると、この水面のごとくフラットなマイラー膜は、分割共振を起こし、ユニット正面からも逆相成分の音を少なからず放射しているように聴ける。そのことが広がり感を演出しているらしいのだ。
 そうした、やや特殊な面もあるとはいえ、バロック系の古楽器オーケストラなどでも高弦群の定位は綺麗だし、音の漂いには、独特の浮遊感がついて楽しい。フルレンジユニットでネットワークを持たないが故の鮮度感もある。さらっとした軽やかな繊細感はないが、響きにある種の緊迫感がつく点もいいと思う。
 スピーカーのインピーダンスが過度に下がることがないから、大袈裟なパワーアンプを用意しなくても鳴ってくれる。ソースを選ぶ使いにくさはあるが、貴重な個性をもった製品であり、高価格ではあるが、一聴に値するスピーカーではないかと思った。

チャリオ HiperX

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 同じイタリアながらソナースファベルともずいぶんちがって、これは相当にアクの強い響きを持った製品。なにしろ、中高域におそろしくテンションの高い張出しのようなものがあって、かん高い感じの鳴り方をする。個人的にはもっとも苦手とする音だ。およそ繊細という表現からはほど遠い、不太くて硬質な線で音像をたくましく描き出す。エージングによってどれほどの変化があるか興味のあるところだ。はたしてこの音が、ひよわな音が嫌いな人にも好まれるのものなのかどうか、僕にはよくわからない。インフィニティの対極にある、押し出しの強さを持った好事家向きの超個性的サウンド。エンクロージュアとスタンドの仕上げは絶品だ。

ジェフ・ロゥランド・デザイン CONSUMMATE

菅野沖彦

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 ロゥランド ・リサーチから、ジェフ・ロゥランド・デザイン・グループと社名変更した米国コロラド州コロラド・スプリングスにあるこの会社は、高級アンプのメーカーとしての定評を確立した。まだ10年足らずしか社歴はないが、その間に発売したアンプの高品位、高信頼性が今日を築いたことはもちろんである。見るからにハイクォリティなアンプにふさわしい作りの確かさは、新進の小メーカーにありがちな信頼性への不安を感じさせなかった。新社名となってからの製品には、トップクォリティに加えて、操作性に実用的な配慮を見せ、家庭で使う趣味製品としての総合デザインの完成度を指向するコンセプトが明瞭に打ち出されてきたと思う。
 新登場のコントロールアンプ/コンスメイトにも、当然、このことがはっきり現われており、若干未消化な部分は残しているが、エンスージアスティックなオーディオファイルが満足するクォリティを実用的な操作性にマッチさせる努力が結実した製品である。たとえば、そのボリュウムコントロールはマイクロプロセッサーによるコントロールで200段階の抵抗切替を行なうものだが、アップダウンはノーマルとハイスピードの両方のコントロールが可能であるし、ストアによって各インプットのレベルを聴感上バランスさせることもできるといった具合である。前面パネル上のプッシュボタンによって行えるほかに、別売のリモートコントローラーによっても操作できる。
 入力は3本のバランスと、同じく3本のアンバランスを持ち、イン/アウトともにRCA、XLR両コネクターが使用できる。電源はセパレートタイプで、ほぼ同サイズの筐体を上下二段重ねて使える。もちろん、左右に水平においてもよいが、縦に重ねてもフラックスの悪影響を受けないとメーカーは保証している。
 電源部はデュアルトロイダルトランスによる左右独立で、レギレーションはACラインフィルターにより十分配慮がなされ、極めてクリーンで安定した電源供給を実現している。回路的にはNFBを嫌ったクラスAのシンプルなもので、高品位パーツやディバイスの選択と洗練されたコンストラクションによってピュアナシグナルパスに努めたFET構成アンプである。
 音はかなりクリアーで繊細の極みだが、決して冷たくもないし神経質でもない。ざらついた輝かしさや鋭いエッジの立つことを好まないロゥランドらしいまとめ方だ。コントラストの強い音ではなく、照明なら、適度なレフレックス効果が利いたソフトなグラデーションである。このムードが、冒頭に記したクリアーと両立するわけだから、これは本物のクリアーさなのだ。なお、フォノイコライザーは後日別売りで発売されるとのこと。

ダイヤトーン DS-700

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 先に聴いたビクターの優等生的な音にも、少し色がついていたことを教えてくれるような、蒸留水的な透明感がある。ヴォーカルの口元も小さくなり、音場の空間、とくに天井の高さがスッと増して、部屋全体の空気が軽くなったような気がする。高域にエネルギーが分布する楽器群の音像が引き締ってタイトだが、低域が時として脹らみ気味になるようだ。部屋との相性の問題か。弦はウェットで、やや人工的な艶や、光沢感が乗るが、ピアノのアタック感や、シンバルのエネルギー感には実体感がある。ウッドベースの質感が音程の上下でややニュアンスを変えてくるような感じがあり、この辺りが、スタガー駆動の難しさかもしれない。

ワーフェデール Coleridge

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 デザインの小粋さがそのまま音になったみたいな、とても素敵なスピーカーだった。
 ほどよく明るく、情感たっぷりの女声は、子音の抜けもよく、品のいい華やぎがつく。
 ふんわりとやわらかくひろがる音場感は、中低域から低域にかけての豊かな量感と、中域の張りをやや緩めたバランスのためだろう。ホールの中ほどでゆったり聴いているような気分にさせる。そうした距離感の提示のせいで、直接音成分のエネルギー感はやや弱まるものの、各パートが放射する響きの拡がり具合がとてもきれいに聴こえ、やがて一つに溶け合っていく様は、このサイズとしては異例の描写力だと思う。伝統の底力とはこういうものだろう。説得力がまるっきり違う。

セクエラ Metronome7 MK II

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 とても懐かしい感じのする音だ。からっと乾いた軽い音で、今日的な水準からするとややナローであり、高域も低域もそれほどのびていない。部屋がデッドになったような鳴り方がする。弦の響きはややマットな傾向で、艶やうるおい、色彩の精緻さに欠ける。キース・ジャレットのあの知的で、クールな世界に耽溺するような部分や、ウェットで感傷的な要素をすげなくやりすごし、情緒に溺れず距離をつけて表現するのは一つの個性かもしれない。少なくとも、ディティールの精緻さや透明感を第一に望む人向きではないようで、おおらかな素朴な響きが欲しい人向きだ。
 ユニット配置の特殊さからくる音の広がりを生かすため、セッティングには要注意。

アカペラ Fidelio

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 聴取位置に対して、かなり高い位置にユニットを取り付け、上下方向の角度が可変という基本構造と、ダブルボイスコイルウーファーとホーン型トゥイーターを組み合わせた非常にユニークな面の多いスピーカーである。
 全体に抑制の効いた安定度のある音と独特な明解さのある質感に優れた中域で聴かせる個性的な音だ。音の細部は、クッキリと硬い線で描かれ、細部にこだわらず真面目な、質感の優れた音が聴かれる。
 左側に寄った聴取位置では、独自の脚部の反射音が影響し、少し位置を変えてもバランスが変ってしまう。ほどよくライブネスのある広い空間で聴いたときに進化を発揮する音だと考えられる。

ミッション 781

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 コストの枠の中で、知的に音をまとめてみせる、英国製品ならではの見識を感じさせる。音楽の情緒的な振幅の大きさにも追従できる表現力があり、音像を輪郭だけなぞっておしまいにしてしまわない密度をもつ。
 特にピアノの実体感は立派だ。
 弦は新品ということもあって、うっすらと硬質なニュアンスが乗るが、エージングで解消できるレベルだ。シンバルワークのディティールを精緻に描きだしてくる方ではないが、エッジが丸くつぶれることはない。ウッドベースはやや暗く粘る印象があるものの、ポリプロピレンのウーファーとしてはよくコントロールされている方だと思う。音場はやわらかくおだやかに奥に広がるタイプだ。

ビクター SX-500II

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 音場の透明感が、さすがにこのクラスになると一段向上する。国産機らしくまんべんなく物量と手を入れられた優等生的な音だ。ビクターの伝統か、国産の中では音色が明るく色彩感に富み、かといって、油っぽさが少ない品のよさもある。音像定位にも正確さが出てきて、センターで聴く限り、ジャック・デジョネットの精妙なシンバルワークにおいて、サイズも音色も異なるいくつかのシンバルを叩きわけている様子がよくわかる。各楽器の位置関係の描写力が、国産で9万円というここへきてやっと出てきたということか。マルサリスのスタジオ録音では、冒頭の声の掛け合いがリアルで、遮蔽板の存在がみえそうなほど、音場の再現性が高まっている。

逃げ込む場所

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「Music Consolette 偶然の結晶を求めて」より

「悪いけど、夜中にしてくれないか。そう、二時でどうだ?」
「なぜ?」
「昼夜完全に逆転しているんだよ」
 彼はまるで僕の来訪を拒絶するようにそう言った。
「そうじゃないんだ、俺だって会いたいさ。つもる話もあるしね。だけど、来週から地球の裏側に行って過酷な現場の仕事をしなきゃいけないのさ。その準備を今からしているんだ。時差ボケの調整をこっちにいるときにやっちまわないといけないんだ」
 彼は、とある大手の建築会社の土木設計課に所属している建築エンジニアだった。
 去年結婚してすぐに女の子が生まれた。
「ほら、家にいるとさ、悪気はないわけだけど、子供の泣き声がうるさい。判るだろう?」
 というわけで、僕は彼の仕事場から車で五分ほどの場所にあったワンルームマンションに、夜中の二時に出かけることになったのだ。
 そこは彼の隠れ家だった。
 ワンルームの狭い部屋だったが、深夜に及ぶ仕事のせいで、片道二時間もかかる郊外に長期ローンでマイホームを買いこんだ彼にとってはどうしても必要な場所だった。
AM1:45。
 都会のコンクリートジャングルを走りぬける。
 朝の人の洪水が嘘のように、しんと静まりかえったオフィス街はまるで廃墟のように暗く、凍りついたような沈黙が氷河のようにあたりを圧していた。
 まだ冬の尾を引く深夜の空気にひきかえ、彼の部屋は朝の地下鉄みたいに生温かくよどんでいた。なにしろドアを開け中に入ったとたん煙草のけむりが目にしみ、わけの判らない匂いがしてくらくらした。
 よく見ると、ドラフターの脇には食べかけのカップラーメンが箸をつっこんだまま忘れられたように放置してある。
「今、窓あけるよ」察した彼はすぐにそう言った。
「すごいな、まるで受験時代を思い出すよ」
「仕方ないんだ」
 肩をすくめそう言うと、彼はくしゃくしゃになったワイシャツのポケットからねじれた煙草を取り出し火をつけた。
「時々女房が掃除に来てくれるけどね」
 そう言って笑う。
 やがてコーヒーの香りが空気を入れ換えた部屋の中にゆっくりと広がっていく。
 彼は真っ白い磁器のコーヒーカップとソーサーを一組、テーブルの上に並べポットから熱いコーヒーを注いだ。
「情けないけど俺はミルクにしとく」
 そう言って、彼はコンパクトな冷蔵庫からミルクのパックを取り出すとストローをつかって子供みたいにそれを飲んだ。
 ドラフターの向こうに小さなスピーカーがおいてあった。
「ボーズじゃない?」
「ああ」
「嫌いだったんじゃないの、たしか?」
「これはちょっと違うんだよ、ま、いいから聴いてくれよ」
 それはヨーロピアンデザインの、真新しいイル・ソーレだった。
 軽いものからいこうかな、と言って、スパイロジャイラのライツ・オブ・サマーというアルバムをかけた。
 たしか、相当にワイドレンジを意識した音作りがされた、すっきりした響きのCDのはずだ。
「ボーズはナローで、脂ぎった音がするから嫌いだ」と言ってた彼。
 トップシンバルの軽い響きで始まるその曲。僕は音が出た瞬間びっくりした。
 たしかにさらっとした軽い響きでハイエンドがすっきり伸びてとても綺麗なのだ。
 それに、凄い低音。
 CDプレーヤーとFMチューナーを内蔵したアンプ部のデザインも奇妙にあか抜けしている。
「ボーズもずいぶん洗練されただろ?」と彼。
「たしかに」音も見た目も、とても洗練されていた。
 綺麗によく広がる透明感があった。
 ボーズじゃない。僕はそう思った。
 しかし、よく聴くと、音には国産にはない粘り気がきちんと残っていて、アメリカを感じさせるものもたしかにある。かつての黒っぽい雰囲気からホワイトカラーのヤッピーになった。スーツを着込んだボーズの音なんだ。これは。
「クラシックだって、ちゃんときけるんだ」
 そう言って彼が次にかけたのは、なんオワゾリール盤のバッハ管弦楽組曲だった。
 彼はシャドーベースの裏に手をいれ何ごとかをおこなった。
「?」と僕。
「少しだけハイを落としてみたんだ。トーンコントロールがついてるんだね」
 なるほど、ヒリヒリしがちな弦の響きがいっぱいくわされたみたいに、ちゃんと鳴っているではないか。
「ディテールがしっかりしているし、響きが脂っこくなくて、ちょうどいいんだ。俺の好きなECM系のジャズだってきりっと引き締めて、すっきり鳴らしてくれる」
 たしかに、キース・ジャレットのトリオによるスタンダードナンバーはその透明できりっとした音楽の構築がしっかりと出ていた。彼は僕の驚いた顔をみて、楽しそうに言った。大人が無邪気な子供にもどる瞬間だ。
 ここはビジネススーツに身を送るんだ戦士、俗称「おとうさん」が現実から逃避し、ひそかに自己回復および療養を果たすための場であった。

このボーズ・イルソーレシステムの核となるのは、スリムなデザインが新鮮な、ミュージックコントローラーLS4810であり、CDプレーヤーおよびFM/AMチューナーとプリアンプ機能を持つ。これは2系統の出力を持ち、2セットのスピーカー部を駆動できる。
パワーアンプを内蔵したパワード・アクースティマストスピーカーシステム、PAM5、サテライト・スピーカー(5.7cmフルレンチ2本使用)とアクースティマス・ベースボックス(16cmウーファー2本使用)からなる。
ベースボックスにはパワーアンプが内蔵され、独立したボリュウムとトーンコントロールを持っている。
別売のリモコンは一般的な赤外線方式とは異なり、FMバンド帯域の信号を使用しており、障害物に対して強いという特徴をもっている。

デンオン DCD-3500RG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 適度に緻密で安定感のある中域を中心に、ナチュラルな帯域バランスと標準的な音場感の再現能力、明快な音像定位が聴かれるリファレンスモデル的な内容の音は、昨年発表された時点とは格段の差のグレードアップである。聴取位置は中央の標準的位置である。ロッシーニは柔らかい雰囲気型の音で、音像は奥に定位する。安定度は充分にあるが密度感が不足気味で、ウォームアップ不足だ。Pトリオは、安定感のある帯域バランスと芯のしっかりした音で、 一種の重厚さめいた印象が特徴。ブルックナーは厚みのある安定した、いわば立派な音だが、斉奏では混濁気味。平衡出力ではホールトーンはたっぷりとあるが表現が甘く、コントラスト不足の音で、かなり音量を変え、セッティングを少し変えた程度では変化がなく、再生系との相性の問題がありそうだ。ジャズは、低域が腰高で安定せず、全体にモコモコとした一種の濁りのある音とプレゼンスでまとまらない音だ。

メリディアン 206

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 英国、ブースロイド・スチュワート社よりすでに発表されている200シリーズコンポーネントは、201プリアンプを核として204FMチューナータイマー、205モノーラルパワーアンプ、209リモートコントロールユニットから構成され、そのデザインや機能のユニークさで話題を集めていた。
 今回同シリーズ中の、プリアンプ機能をあわせ持つCDプレーヤー/207MKIIの派生モデルとして、このプリアンプ機能を排し、よりコンプリートな単体CDプレーヤーシステムとして、音質や機能の細部をリファインしたCDプレーヤー/206が登場した。
 従来通り、エレクトロニクス部とCDトランスポート部を独立した筐体に納めているが、使い勝手の向上を期して、ジョイントバーで結合された一体化構造をとる。
 従来通り、D/Aコンバーターは16ビット4倍オーバーサンプリングを採っているが、ディスクユニット部は最新のフィリップス製CDM4を採用している。
 メカニズムおよびサーボ部は、3ポイントサスペンション(ゴム系緩衝材のソルボーテン)によってフローティングされ、振動による悪影響を排除している。
 出力は3系統あり、固定アナログ、同軸デジタル、および光デジタル出力を備え、より組合せの自由度を増している。
 見慣れたとはいえ、やはりこのデザインの美しさは、単に個性的と言うレベルをつきぬけ、メカニカルの機能美と趣味線の高さを高いレベルで融合させている。
 過度にコスメティックな要素でゴテゴテと飾りたてるのではなく、洗練と簡素化を究めたより純粋な意味でのインダストリアルデザインのあるべき姿の良い見本となっていると思う。
 これは、北欧のB&Oと並び、究めて貴重な存在であり、わが国にも、そろそろこういったコンセプトの瀟洒なシステムが登場してもよいような気がする。
 音質についても同様なことがいえる。そこには、あざといメリハリ強調型の紋切り的音作りは皆無で、落ち着いた穏やかな表現がまず印象に残る。
 従来の弾力性のあるやや暖色系の暖かさは引き継いでいるが、よりニュートラルで中立的といえる大人っぽさを仕上げの要素に含んでいるように聴けた。
 中庸を得た破綻のなさが、どんな装置に組み入れても、全体のバランスを掻き乱すことなく、安心して使用できる汎用性を高めたといえよう。
 プリアンプ機能を省略したために回路がシンプルになり、電気的に洗練された結果だろうが、明らかに響きの透明感や音場の再現性の向上が聴き取れた。

ビクター SX-700

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

小型2ウェイ方式に、低音専用のサブウーファーシステムを独立したキャビティ採用で組み合せ、トールボーイとしてまとめた手堅い手法の製品である。柔らかく量感があり、ほどよく反応が速いサブウーファーを加えた低域の豊かさは、この製品の特徴であり、この部分をどうこなすかがアンプの実力の問われるところ。

セレッション SL6Si

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

英国系の小型2ウェイシステムを代表する、適度に反応が速くプレゼンスの良い音と、メカニカルでわかりやすいデザインが巧みにマッチした製品である。Siに発展して中域の薄さが解消され、低軟、高硬の性質は残っているが、小型システムの、音離れが良くプレゼンスの良い特徴も併せて、総合的な完成度はかなり高い。