Lo-D HA-8700, HA-7700

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 日立では、音質のよい再生をめざし、ワイドレンジ・低歪再生を目標に新しいパワーディバイスとしてパワーMOS・FETを開発し、すでにパワーアンプHMA9500に採用して高い評価を得ている。
 今回発表された2機種のプリメインアンプHA7700/8700にも、一般のバイポーラトランジスターにくらべて、周波数特性、電力利得が優れたパワーMOS・FETが採用された。
 HA8700は、90W+90Wの出力をもち、初段にローノイズ型ジャンクションFETを使った3段直結型MCヘッドアンプからイコライザー段、トーンコントロール段、パワーアンプまでを前代DCアンプ構成としている。電源部は、左右独立の電源トランスと大容量電解コンデンサーを使った左右セパレート電源方式である。機能面では、ターンオーバー周波数2段切替可能な高音と低音トーンコントロール、サブソニックフィルターミューティングスイッチをはじめ、ほぼフル機能であり、イコライザー出力をトーンコントロール段を通さずにパワーアンプに直結するメインダイレクトスイッチがある。また、使用頻度の少ないスイッチはフロントパネルの下部の扉内部に収納してある。
 HA7700は、出力70W+70Wでターンオーバー周波数切替とメインダイレクトスイッチを省略したジュニアモデル。

パーフェクション DA-5000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

3D方式専用フィルターDF3000の機能をもつフィルターとモノーラルパワーアンプを組み合わせたモデルである。パワーアンプは、ダイナミックパワー40W(8Ω)の定格であり、リアパネルのフィルター出力端子とパワーアンプ入力端子間のジャンパー線を取外せば、フィルターとパワーアンプは分離し、それぞれ単体として使用できる。なお、フロントパネルの入力端子は、リアパネルのPRE・INPUTと並列接続されている。

パーフェクション DF-3000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 3D方式のサブ・ウーファーシステムに使う専用のフィルターアンプである。
 機能的には、①超低音用ウーファーの高域をカットする、−10dBで55Hz、70Hz、95Hzとなる3段切替18dB/oct型のフィルター、②超低音を25Hz・−18dB/octでカットするサブソニックフィルター、③レベルコントローラー、④入力をメインシステムのスピーカー端子、コントロールアンプ出力端子に切替えられるインプットセレクター、⑤入力をコントロールアンプから受けた場合のみに動作し、メインスピーカーの100Hz以下を−18dB/octでカットするL・Rローカットスイッチ、⑥超低音用ウーファーの位相切替スイッチがある。

オーレックス ST-F15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 同調操作がマニュアル、オート、10局のプリセットの3種類が選択できるデジタル・シンセサイザーチューナーである。同調用回路素子には、1チップに1、700素子を納めたPLLシンセサイザー用LSIを開発し、オートチューニングを可能とし、チューナー制御用には記憶機能をもつ専用LSIを開発してFM局10局のプリセットができるようになった。中間周波増幅段には、波形伝送、群遅延特性の優れた新開発セラミックフィルターを採用している。

オーレックス SY-C15, SC-M15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のオーディオの話題となる新しいジャンルの製品に、超小型のコントロールアンプ、パワーアンプ、それに、チューナーをベースとした、いわゆるマイクロコンポーネントシステムがある。すでに、このクォータリー欄でも、テクニクス、ダイヤトーンの超小型コンポーネントを取上げたが、今回紹介するオーレックスの製品は、この種のものではもっとも早く発表された製品である。
 オーレックスのマイクロコンポーネントは、ステレオシステムにその名称をもつように、超小型で横幅が257mmに統一されたコントロールアンプSY−C15、パワーアンプSC−M15、AM・FMステレオチューナーST−F15を中心として、カセットデッキPC−D15、小型スピーカーシステムSS−S12W、さらに、スーパーウーファーで45Wパワーアンプを内蔵のSS−W51Sでシリーズを構成する、独立したコンポーネントシステムである。このなかで今回試聴できたのは、ベースとなるアンプとチューナーである。
 SY−C15は、超小型ながらコントロールアンプと呼ぶにふさわしい機能をもった製品である。機能面では、2系統のフォノ入力とコントロールアンプ出力を備え、高音と低音のトーンコントロール、サブソニックフィルター、ミューティング時にはイコライザー出力が直接コントロールアンプ出力となる特殊なミューティングスイッチをもつ。各ユニットアンプは、すべてA級動作の全段直結DC構成で、イコライザー許容入力は300mVである。
 SC−M15は、定格出力が45W+45Wで、BTL接続により90Wのモノーラルパワーアンプとしても使用できるDC構成のパワーアンプである。超小型パワーアンプのポイントである放熱効果を解決する目的で、いわゆるケース部分にアルミ合金を一体成型した接合部分のないアルミダイキャスト・モノコックボディを採用し、両側には羽根型の放熱フィンを一体化している。このボディのスペースファクターの良さを活かし、大型の電源用電解コンデンサーや増幅段用のタテ型フィルムコンデンサー、さらに厚さ70ミクロンのプリント基板などの大型部品の高密度実装を実現している。
 SY−C15、SC−M15のペアは、平均的な聴取レベルではまったく不満のないパワー感をもち、一連のオーレックスコンポーネントシリーズに共通する細やかさと滑らかさがあり、ニュートラルな色付けの少ない音をもっている。

アキュフェーズ E-303

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来のイメージを完全に一新したソフトで大人っぽい表情のデザインをもつプリメインアンプである。回路構成は同社オリジナルの完全対称型プッシュプルを全段増幅に採用し、DCアンプ構成、トーンコントロール段にはサーボ方式が導入されている。パワー段には、MOS・FETパラレルプッシュプルで130W/130Wの出力だ。E303は、音の粒子が細かく十分に磨かれているため、滑らかで柔かく、かつクリアな音をもっている。クォリティは十分に高く高級機としての完成度は高い。

トリオ L-07CII, L-07MII

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプに限らず、プリメインアンプを含めてアンプの分野では技術革新の店舗が非常に急速であることに特長がある。トリオのセパレート型アンプは、トップエンドにサプリームシリーズを置いているが、最新の技術が投入され話題を提供しているのはLシリーズの製品である。
 今回のL07CII/MIIは、アンプの高速応答性を改善することにより高域における動的歪を減少させたハイスピードパワーアンプL05Mの設計思想を受継ぎ、数多くのアンプ作りのノウハウを投入して開発された第2弾のハイスピードアンプだ。パワーアンプL07MIIはもちろんのことコントロールアンプL07CIIにもハイスピードアンプの思想が盛込まれている。
 ちなみに、トリオでいうハイスピードアンプの条件とは、スルーレートが100V/μs以上、ライズタイムが1μs未満、信号の正負のレスポンスが出力の大小にかかわらず同値であり、かつリンギングなどの波形の乱れがないことである。
 L07CIIコントロールアンプは、パネルデザインが大幅に変更され、より現代的な印象となっている。回路構成上の特長は、フォノ入力のイコライザー段がMC専用とMM専用が独立した2系統になっていること、内部構造が左右独立した配置であること、出力インピーダンスが10Ω以下と超低インピーダンスであることがあげられる。
 L07MIIモノーラルパワーアンプは、パワー段に高域特性が優れたEBTを採用し、特殊単一金属の高精度被膜抵抗、積層スチロールコンデンサー、低歪率特殊高性能電解コンデンサーなどを厳選し、高域特性が優れた前段設計とともにスルーレート170V/μs、ライズタイム0・55μsを得ている。定格出力は、10Hz〜100kHz/0・008%の歪率で、150ダブ区(8Ω)。
 L07CII/MII×2の組合せは、2台のパワーアンプをスピーカーシステムに近接した位置に置き、コードの影響を減らし、コントロールアンプからパワーアンプ間を専用シールド線で結合するという、業務用機器的使用法が標準である。この組合せは、ナチュラルに伸びたfレンジをもち伸びやかでスッキリとしたクォリティの高い音を聴かせる。音色は、ほぼニュートラルで、さしてスピーカーを選ばず、それぞれの個性を引出すのが魅力だ。

「ブラインドテストを終えて」

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 ブラインドテストだからといって特別のことはない。使い勝手だとか、あるいはみためのことだとかが問題になる場合ならともかく、そうではないときはいつだって、耳だけをたよりに試聴にのぞんでいるから、たとえプレーヤーシステムが別室にあって、どのプレーヤーシステムの音かわからなくても、どうということもない。
 もし、どのメーカーの製品かわかって、その値段を知って、、そうかなるほどというきき方がもしオーディオの専門家のきき方だというのなら、ぼくのきき方は、ついに専門家のきき方たりえない。ブラインドテスト──という言葉は、ともするとそのときのテスターを、目かくしをされた鬼ごっこの鬼のような気持にさせるのだろうか。鬼は、てぬぐいで目かくしをされているから、手さぐりで、つかまえた相手のあちこちをさわってみて、「あっ、ふとっているから、イサオちゃんだ」といったりする。
 おそらく、そういうあてっこのたのしみのために、ブラインドテストが行われるようだが、この場合はどうだったのだろう。
 すくなくともぼくは、鬼ごっこの鬼どころのはなしではなく、せいぜいモルモットにすぎなかった。聴覚だけをたよりにきいた。ききおぼえがあるものといえば、つかわれたレコードの音と、そしてそこでつかわれたカートリッジの音だけだった。イサオちゃんというプレーヤーシステムだけがふとっていて、腹がぷくっとふくれているかどうかなんて、もともとわからないのだから、それがイサオちゃんかどうかあてられるはずもなかったわけだ。
 ただ、このブラインドテストをして、俺の耳もたいしたことないな──と、もともとわかっていたこととはいえ、それをまざまざとみせつけられて、うんざりしたということはある。ブラインドテストは、二日にわけて行ったが、前日は、このましいプレーヤーシステムだと思い、○印をつけておいて、翌日、どうもものたりないところがあると思い、×印をつけたものがあったからだ。具体的にいえば、ビクターのTT101+UA7045+CL−P1Dだ。一方が○印で、もう一方が△印なら、まあ、ことはいかにも微妙だからと、自分にいいきかせることもできなくはないが、○と×とでは、極端で、自分を納得させるすべがない。
 たしかに、きいたレコードの性格は、少なからずちがっていた。一方はクラシックで、もう一方はジャズといった、それぞれのレコードにおさめられている音楽の性格がちがうということもある。それに、一方のレコードが通常のレコードで、もう一方がダイレクト・カッティングのレコードだったということもある。一方が大編成のオーケストラ・プラス・声のレコードで、もう一方がコンボのレコードということもある。つまり、さまざまな点でちがていた。だから、一方が○で、もう一方が×でもおかしくないんだ──といえばいえなくもないだろうが、どうも釈然としない。
 それで、俺の耳もたいしたことないな──という。自己嫌悪の色濃厚な独白となる。もともとたいした耳と思っていたわけではないのだが。
 プレーヤーシステムによる音の変り方は、かなり基本的なところでの変り方で、だからききとりやすいということも、また逆にききとりにくいともいえる。たとえばこれがカートリッジなり、スピーカーなりが変ったというのなら、それはレコードが変ることによって、きこえ方が大幅にちがい、こっちでよかったものが、あっちではよくなくなるということもあるが、プレーヤーシステムでの変り方は、もう少し基本的なところでの変り方だから、そういうことはあまり起らないはずである。
 にもかかわらず、一方で○印をつけ、もう一方で×印をつけたというのは、自分ではそれなりの理由がわからなくてもないが、やはり基本的なところでの変化をききのがしたためといわざるをえない。そのための、俺の耳もたいしたこと
ないな──という自己嫌悪の独白だ。
 プレーヤーシステムの音は、基礎の音だと思う。
 地震の際に、造成地にたてられた家が、もろくもこわれて、岩盤の上の家が、内部はそれなりに、棚がおちたり、あちこちこわれたりしているのかもしれぬが、外からみるかぎり、地震の影響などまるでないかのように立っているのをみたりする。さまざまなプレーヤーシステムの音をきいていて思ったのは、そのことだった。いかに立派な家でも、土台というか、基礎がやわでは、いかんともしがたい。
 今回のブラインドテストは、いってみればその普段目にみえるところを同じにして、さてこのおとは 岩盤の上の音か、それとも造成地の上の音かをききわけることを目的としていたのではなかったか。それぞれの音は、ぼくは岩盤の上の音だよ──と、せいいっぱいがんばっていた。しかし、本当に岩盤の上になりたっている音と、そうでない音とは、かなり明確にちがっていた。
 しかし、どこまでが土台に関係した音で、どこからが基礎とは関係のない音なのか、充分に判断できないこともあった。そのために、一方のレコードでは○印をつけ、もう一方のレコードでは×印をつけるというような、つまり混乱が生じたのだろうと思う。
 すぐれたプレーヤーシステムの音には、あぶなっかしさがなかった。ひびきは、すみずみまで、しっかりしていた。
 カートリッジやスピーカーでは、ひびきのキャラクターが、大きな問題になる。むろん、プレーヤーシステムの音にも、それぞれのキャラクターがあるが、カートリッジやスピーカーの場合のようには、問題にならない──というより、そのキャラクターのとわれ方がちかうように思う。あの家の屋根はトタンで、この家の屋根は瓦だというようなことは、誰にもわかるし、屋根をトタンにするか、瓦にするかは、おそらくその家の住人の好みに関係することだろうが、家を岩盤の上にたてるか、それとも造成地の上にたてるかは、好みとは別のところでのことといえるのではないか。
 ただ、プレーヤーシステムの音にも、カートリッジやスピーカーシステムの場合とは意味するところ微妙にちがうとはいえ、キャラクターがあるので、それにとらわれると、その音が岩盤の上の音か、造成地の上の音かを、ききそこなうことになる。
 そして、このブラインドテストに参加して、あらためて思ったのは、やはり、なにはさておいても、プレーヤーシステムに、それなりの投資をしないといけないなという、すでにわかりきったことだった。毎日の生活ということでいえば、岩盤の上の家での生活も、造成地の上の家での生活も、さしてちがいはないように思うが、やはりどこかで微妙にちがってくるのかもしれない。
 ぼくの今住んでいる家は、造成地というわけではないが、それでも前の道を大きなトラックが通ったりすれば、かなりゆれる。だからといって生活に不便をきたすほどではないが、やはりどっしりした家屋に住んでいるとは思いがたい。そういう家に住んでいると、あまり出来のよくないプレーヤーシステムでレコードをききつづけることによる心理的な影響をあなどれないなと思ったりする。

テクニクス SB-F2

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ミニスピーカーに関してテクニクスは、昭和40年のテクニクス1以来、SB30、最近のSB−X01などの製品化に見られるように十分のキャリアを持っている。今回発売された一連のFシリーズ小型ブックシェルフ型システムのなかで中間サイズの製品が、SB−F2である。ユニット構成は、広帯域ウーファーとテクニクス1以来のホーン型を使用する2ウェイ方式。エンクロージュアは、アルミダイキャスト製完全密閉型。ユニット保護用サーマルリレー付だ。また別売の取付角度可変型カベ掛け用金具、ユニークな三脚スタンドが用意されている。なお型番末尾に(K)の付くタイプはブラック仕上げ。

テクニクス SB-E100, SB-E200

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスのスピーカーシステムは、全製品にリニアフェイズを採用しているのが特長である。今回発売された新しいスピーカーシステムは、テクニクスのトップモデルSB10000とユニット構成が同系統の中音と高音にホーン型を使用したフロアー型の3ウェイタイプである。
 SB−E100は、トールボーイ型のバスレフ方式エンクロージュアの上部に中音と高音のホーン型ユニットが取付けられている。当然リニアフェイズ方式であるため、各ユニットは階段状に重ねてある。
 ウーファーは30cm口径、コーン紙材料はカナダ産針葉樹のクラフトパルプを中心素材とし、90dBの出力音圧レベルと100Wの耐入力をもつ。スコーカーとトゥイーターは、ホーンのノド部分から急激に角度が拡がるテクニクス独特のセクトラルホーンと同等なタイプのホーンが目立つ。ホーンのカットオフ周波数は、それぞれ600Hzと1、200Hz、クロスオーバー周波数は1、500Hzと6、500Hzである。
 エンクロージュアは板厚18mmのパーチクルボード使用、表面はローズウッド仕上げ、グリルはベージュ色のサランである。
 なお各ユニットには、高耐入力型を採用しているが、アンプの異常やクリッピング歪を発生すると高域成分が強くなり、スコーカー、トゥイーターには過大入力となり、ユニットを破損させる場合もあるため、サーマル保護リレーを高音、中音に設けてある。
 SB−E200は、エンクロージュアの形状がローボーイタイプを採用している点で、SB−E100と大きく違っている。また、ローボーイタイプではシステムとしての音の中心軸が低い位置にあるため、場合によっては何らかの台の上に乗せて使いたいこともある。このようなときに組み合わせる台として、SB−E200専用のスタンドSH−S200が別売で用意されている。
 SB−E100とE200は、システムとして近似したスペックをもっているが、トータルなバランスの優れている点ではE100、音の分解能の点ではE200に魅力がある。

サンスイ J11

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トールボーイ型のアルミエンクロージュアにミニサイズ初のドロンコーン方式を導入したユニークな製品。構成は10cm軽量コーン採用のウーファーとソフトドームトゥイーターの2ウェイで活気のあるキビキビとした伸びやかな音が特長。

Lo-D HS-5

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Lo−Dのスピーカーシステムは、メタル振動板を多く採用する点に特徴があるが、この新製品も20cmメタルコーンユニットと35mmチタン振動板採用のメタルコーントゥイーターを組み合わせた2ウェイ構成のシステムである。エンクロージュアは密閉型で、横にするとB5サイズの雑誌と同じになるコンパクトサイズでブラックメタリック仕上げだ。ウーファーは2層のアルミ合金箔の中間を発泡樹脂でダンプした厚さ約2mmの3層構造の振動板を採用し、高域共振は新開発ピークコントロール回路で制御している。クロスオーバーは1、100Hzと低く、アッテネーター付。

Lo-D HS-55

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今回新しくLo−Dから発売されたスピーカーシステムは、従来の同社の製品とはかなりイメージを一新した、コンセプトの異なった製品のように思われる。
 まず、ユニット構成を30cmウーファーベースとし、大型のトゥイーターというよりはハイフレケンシーユニットと呼ぶにふさわしいタイプを組み合わせた2ウェイシステムであることがあげられる。
 ウーファーユニットL304は、高能率・高耐入力設計で、コーン紙は、表面を硬く、裏面は密度を小さくして剛性と適度な内部損失をもたせたタイプで、深いコルゲーションが施されている。磁気回路は、外径140mmφの大型フェライトマグネットを採用し、センターポールに銅のショートキャップを取付けた、Lo−Dアクチュエーターによる低歪化がおこなわれている。
 トゥイーターは、ダイアフラムに直径35mmのチタン振動板を使い、磁気回路には外径90mmφのフェライトマグネットを採用している。アルミダイキャスト製のホーンは、エクスポネンシャルカーブをもち、長さ235mm、開口径は100mmで、開口部には、ダンパー材で不要の振動を抑えた音響レンズが組み合わせてある。
 ネットワークは、ウーファー用コイルに低歪のコアを使い、コイルをワニス真空含浸して内部まで固定し、振動を防止している。なお、トゥイーター用コンデンサーはフィルム型である。エンクロージュアはバスレフ型で、バッフルボード、リアボードはカラ松を主材料とした三層構造パーチクルボードである。
 HS55は、クロスオーバー周波数が1、500Hzと低い2ウェイ型であり、能率も高いため、活気のある明快でストレートな音を聴かせる。細部のニュアンスを細かく、柔らかく聴かせた従来のLo−D製品とは一線を画した鳴り方であり、音楽を積極的にかの沁むファンに好適なものだ。

ヤマハ PX-1

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 力強いひびきをぐっと前におしだすというタイプのプレーヤーシステムではなさそうだ。しかし、ここできけるさわやかな、よごれをすっかり洗いおとしたようなひびきは、実にチャーミングだ。ここできけるひびきは、ついにぼてっとしたり、ふやけたり、重くひきずったり、あるいはかげったりしない。きいての印象がさわやかなのは、おそらく、そのためと思える。
 その方向で徹底させようというなら、デンオンDL103Sということになるだろう。木管楽器がかさっているところでの、個々の楽器のひびきを、ききてがその気になりさえすれば、充分にききふけることができる。このプレーヤーシステムの音にも、一種独特の品位が感じられる。よごれた音を、まちがってもきかせることはなさそうだ。
 ただそのために、用心深くなりすぎた音になってしまっているということはいえるだろう。これでさらに、一歩ふみこんで力強いひびきをきかせる積極性を身につければ、プレーヤーシステムとしての魅力を倍加させることになるのではないか。

ソニー PS-X9

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 このプレーヤーシステムは、どうやら、中域の音を、しっかり、あいまいにならずに、しかもそのエネルギー感をあきらかに示すところに特徴があるようだ。むろん、中域の音をしっかり示すのは、とてもこのましい。そのためと思うが、このプレーヤーシステムできいた音は、いずれのカートリッジの場合も、あいまいさから遠くへへだたったところにあって、しっかりしていた。
 くっきりしたひびきをきかせてくれたが、できることなら、さらに鮮明であってほしいと思わなくもない。ただ、その点については、デンオンDL103Sでかなりの成果をあげたことを考えあわせると、しかるべきカートリッジをつかうことで、かなりカヴァーできるはずである。ベーシックな部分がいかにもしっかりしているというきいての印象がある。あぶなげは、まったくないし、ひよわさもない。
 オルトフォンMC20でピッチカートが、くっきり示されて、しかも大きくふくらまないあたりに、このプレーヤーシステムの基本性能のよさが示されていたといえるだろう。

ビクター SX-7II

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昭和47年にはじまったSX3以来のビクターのSXシリーズは、完全密閉型のエンクロージュア形式を採用した、いわゆるアコースティック・サスペンション方式と中域以上のユニットにソフトドーム型を採用した典型的なブックシェルフ型システムである点に大きな特徴がある。最近では、ブックシェルフ型のエンクロージュアにバスレフ型を使用するタイプが増加し、ブックシェルフ型は完全密閉型のエンクロージュア形式が主流であるとした時期は、すでに過ぎた感がある。しかし、アンプ関係の性能が急激に向上し、一方、プログラムソース側のディスクでもダイレクトカッティング、PCM録音などに代表されるグレイドアップがおこなわれていることを背景にして考えると、本来のスペースファクターが優れたメリットをもつ高級ブックシェルフ型、それも現在にいたるブックシェルフ型全盛期に得た技術、ノウハウ、新素材を投入した新しい時代の製品の登場は期待されていたものと考えられる。
 今回発売されたスX7IIは、SXシリーズトップモデルとして定評が高く、すでに約4年半のロングセラーを続けてきたSX7の設計思想を受継ぎながら、内容的には完全にユニット単体からネットワーク、エンクロージュアのユニット配置にいたるすべてを一新した新製品だ。
 SX7とくらべると、30cmウーファーは、フレームのダイキャスト化、マグネットの強化、ボイスコイル径の大型化、ダンパー材質の変更がある。ドーム型スコーカーでは、フレームのダイキャスト化、ボイスコイルに純アルミ・エッジワイズ巻とボビンをアルミ材に変更、バックチェンバーの容積の増大などがあり、トゥイーターもフレームのダイキャスト化、ボイスコイルの軽量化と磁気回路のギャップを狭くしての磁束密度の増加などがある。
 ネットワーク関係では、トゥイーターのローカット、スコーカーのハイカットとローカットにエポキシ樹脂で固めた空芯コイル、スピーカーユニットと直列に入るコンデンサーに3種類のメタライズドマイラー型の使い分け、配線材に無酸素銅の使用などがあげられる。
 エンクロージュア関係では、ユニットの配置を左右対称型とするとともに、相対的位置の変更、バッフルボードとリアボード材質をダグラスファー合板からダグラスファー・ランバーコア材への変更がある。
 30cmコニカルドーム付ウーファー、7・5cmソフトドーム型スコーカー、3cmソフトドーム型トゥイーターのクロスオーバー周波数は、450Hz、4kHzで、インピーダンスは4Ωである。
 SX7IIは、スムーズに伸びた周波数帯域をもち、音色が明るく、かなりダイナミックな音を聴かせる。ソフトドーム型は立上がりのシャープさに問題があることが多いが、十分に見事な印象であり、音場感もスッキリと拡がり定位も明瞭だ。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より
 見事なプレーヤーシステムというべきだろう。それぞれのカートリッジのチャーミング・ポイントを、無理なく、自然に、ひきだしている。このカートリッジには、こういうところもあったのかといったようなこと(たとえば、シュアーV15タイプIVできけた弦楽器のひびきのなめらかさなど)も、思ったりした。
 余分なひびきがまといついてしまうとか、どこかで誇張されるというのは、とりもなおさず、そのプレーヤーシステムに、無理、背のびがあるからだろうが、そういうところをまったく感じさせないプレーヤーシステムだった。ひとことでいってしまえば、それだけプレーヤーシステムとして安定しているからということになるだろう。
 今回試聴したプレーヤーシステムの中で、きわだってすぐれていた。ただ、もし、これで、低い方の音が、もう一歩ふみこんできて、積極的にその力感を示せば、本当にいうことがないのだが、その点で、多少上品にすぎたかなと思わなくもない。このみがきあげられた、よごれのないひびきは、実に魅力的だったということにいささかのためらいもない。

ビクター TT-101 + UA-7045 + CL-P1D

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 なかなか積極的だ。奥の方でひっそりとひびかせるというより、前の方に押しだして、そこで明るくひびかせようとする傾向がある。力の提示にも不足していない。ひびきそのものはあたたかい。決して寒色系ではない。したがって、あたたかい、あるいはまろやかなひびきを持ち味とするカートリッジと組みあわされたときには、そっちの方向に走りすぎて、音像を肥大させかねない。
 こう書いてくると、いかにもくせの強いプレーヤーシステムのように思われかねないが、そうではない。むしろ、積極的にカートリッジのキャラクターをいかすタイプのプレーヤーシステムというべきで、ただ、場合によっては、スギタルハオヨバザルガゴトシになることもないということだ。
 積極的だということは、力強いひびきへの反応にもすぐれているということで、それは、このプレーヤーシステムのきかせる音がしっかりした土台の上になりたっているからと考えることができるだろう。ひびきが幾分肥大しても、ひびきの輪郭があいまいにならないというのは、いいことだ。

パーフェクション DS-15A

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 3D方式のスーパーウーファーシステムをいち早く製品化したパーフェクションの一連のシステムのなかのウーファーシステム。エンクロージュアは密閉型。シリーズ製品には、25cmユニットのDS10A、30cmユニットのDS12Aがある。

デンオン DP-7700

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 ひびきそものに、一種の品位とでもいうべきものがある。決して粗野にはならない。それぞれのカートリッジのよさを無理なくひきだしているという印象である。その意味で、実にまとまりのいいプレーヤーシステムだ。あぶなげがまるでない。
 今回の試聴で用いたようなレコードには、よくフィットして、はなはだ好印象をいだいたのだが、さらにエネルギー感を求められるような音楽の場合には、このプレーヤーシステムの品位が、幾分マイナスに働くということもなくはないようだ。それは、このプレーヤーシステムの音が、ひびきを前に押しだすようなタイプのものではないことと、関係があるかもしれない。
 折目正しさ、破目をはずさない──というのは、たしかに、なににもかえがたい美点で、その美点は、このプレーヤーシステムのものだ。したがって、ききては、そこで安心して、きこえてくる音に対応できる。そういうききてを安心させるというのは、実は、なかなかむずかしいことだということを、ここで思いだすべきかもしれない。

ビクター IK-380

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 大型バスレフ・エンクロージュアに強力型の38cmウーファーを組込んだシステムで、スーパーウーファー方式と一般的なマルチウェイ方式のウーファーの両方に使用する目的で開発された製品である。
 ビクターから指示されたスーパーウーファーの使用法は、チャンネルデバイダーCF7070の90Hzのクロスオーバー周波数でメインシステムと分割し、さらにグラフィックイコライザーSE7070の25Hz、45Hz、50HzをMAX,他をすべてMINとしてパワーアンプを通して、IK380をドライブするというものだ。この例に従って使用したIK380は、音色が比較的軽く、明るい低音が得られ、同社のS300クラスに好適のスーパーウーファーシステムと思われる。

オンキョー SL-1

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のスピーカーシステムの話題に欠かせないのがスーパーウーファーシステムである。既存のスピーカーシステムの最低域を増強するこの方式は非常に効果的で、うまくバランスがとれたときには格段にスケール感が優れた音を聴くことができる。
 しかし、専用ネットワーク、パワーアンプ、スーパーウーファーなどのコンポーネントの選択から始めると、現在でも製品も少なく、誰にでも容易におこなえるものとは思われない。このSL1は、本来のスーパーウーファーシステムの名称のように、コンプリートなシステムとして開発された点にオリジナリティがある。
 構成は、エンクロージュア内部が二分割され、内側にドライブ用20cmユニットがあり、一般のウーファーユニットに相当する位置にジュラルミン板とゴムシートを使った平盤上のパッシブラジエーターが配置される独特の方式である。このドライバーと38dm口径のパッシブラジエーターは相互の共振を利用して、30〜50Hzがほぼフラットであり、上側も下側もシャープにレスポンスが落ちるバンドパス特性を得ている。
 エンクロージュア下部には、低域特性が優れ、効率が高く発熱量が少ないPWM方式の60Wパワーアンプと、カットオフ周波数60Hz、70Hz、PASSが選べるフィルターが組込まれている。
 使用例は、メインシステムのパワーアンプのスピーカー端子から信号を得る方法で、3D方式と各チャンネルごとにSL1を1台ずつ使う2種類が選択でき、プリアンプやチャンネルデバイダーから信号を受ける方法とあわせて3種類があり、大変にヴァーサタイルな設計で、中級以上のブックシェルフ型と組み合わせると3D方式で素晴らしい効果が得られた。

マイクロ DQX-1000 + MA-505S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 恰幅がいいというべきか、全体的にたっぷりひびく。だからといって、さまざまなひびきが押し出されてくるというわけではない。そのために、まろやかなひびきは、まろやかに、なめらかに示されて、このましい。その点にこのプレーヤーシステムのチャーミング・ポイントがあると考えるべきだろう。
そのひびきのまろやかさが、シャープなひびきと十全に対比されたときに、まろやかさの魅力をつつがなく示しうるということも、どうやらいえるように思う。とりわけ、低域のひびきが、もう少し筋肉質になるというか、ひきしまるというか、くっきりすると、恰幅のよさがさらにはえるのではないか。メロウなひびきと、骨っぽいひびきとの対比が、もう一歩という印象だ。
 全体にまろやかに傾くというのは、それはそれで、ききやすさにつながるということもいえなくもないが、細部の音の動きのすべてをききとろうとするときに、多少のむずかしさがある。おっとり、ふっくらしたひびきが、ときには、きりりとひきしまったら、さぞや立派なひびきになるのだろうが。

ラックス PD441 + フィデリティ・リサーチ FR-64S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 シュアーV15タイプIVで感じられるひろびろとした音場感は、なかなか特徴的だった。それに、3つのカートリッジで共通して感じられた、ひびきがついに脂っぽくならないところも、このプレーヤーシステムのこのましい点としてあげられるだろう。したがって、ここできけるひびきは、決してごりおしにならず、さわやかだ。
 それにさらに、腰のすわった、とりわけ低域での力感のあるひびきが加われば、全体としてのひびきの説得力は、一層ましたと思われるが、その点では幾分ものたりなさを感じた。
 おそらく、そのことと無関係ではないはずだが、「ナチュラルなバランス)がたもたれているにもかかわらず、ひっそりとした印象をぬぐいさりがたかった。もっともそれは、かならずしも弱点とはいいがたい。積極的すぎて、きいての印象が騒がしくなるより、よほどこのましいということも、いえるにちがいない。まとまりのいいプレーヤーシステムだが、もう一歩ふみこんできてものをいってほしいなというのが、率直な感想だった。

「ブラインドテストを終えて」

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 ディスクの再生では、プレーヤーシステム、アンプ、スピーカーシステムがシリーズに接続され、それぞれのコンポーネントの置かれた位置と機能の違いが、各コンポーネント固有の音の変わり方をすることになる。
 一般には、システムのもっとも出口の位置にあるスピーカーシステムが、その扱うエネルギー量も多く、メカニズムを利用した電気エネルギーを音響エネルギーに変換するというトランスデューサーでもあるために、それをセットする部屋の条件も加わって、各コンポーネントのなかでは結果としての音をもっとも大きく左右する部分とされている。
 また、中間に位置するアンプは、入力として加えられた微弱な電気信号を増幅し、スピーカーシステムをドライブするだけの電気エネルギーとして出力に出す純粋な電気の増幅器であるために、物理的な計測データを基としての解析がメカニズムをもつトランスデューサーよりも容易であり、本来はエレクトロニクスの技術が進歩すればするほど製品化されたモデル間の音違いが少なくなるはずである。しかし、現実には、入力、出力ともにトランスデューサーであるカートリッジやスピーカーシステムと結合されるとなると、計測時のように入出力に定抵抗が接続された状態とは異なった動作をなすことになり、これが音の違いとなっている。また、エレクトロニクスの技術の製品であるだけに、回路を構成する部品の改良、それを使った新しい素材にマッチした回路設計という反応が、非常に短いインターバルで繰返される結果、ほぼ半年毎により計測データの優れた新製品が開発され、聴感上でも音の変化がいちじるしいため、現実には話題が絶えず、もっとも注目される部分だ。プレーヤーシステムは、コンポーネントのもっとも入口の部分に位置している。そのため、ディスクにカッティングされている情報量の50%しか電気信号に変換できないとすれば、アンプ、スピーカーシステムにどのような高性能のコンポーネントを使ったとしても、結果として聴かれる音は最大限50%にしか過ぎないことになる。このように非常に重要な位置にありながら、アンプ、スピーカーシステムにくらべて、なぜかさほど重要視されない傾向が強いようだ。
 それというのも、プレーヤーシステムが、それぞれ独立したコンポーネントと考えてもよいカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターと、それを取り付けるプレーヤーベースで構成されているからだろう。そのため、単体のカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターの性能、音の違いは問題にされることはあっても、トータルなシステムとしての音の変わり方についてはあまり問題にされず、それが問題にされだしたのはつい最近のことといってもよい。
 簡単に考えれば、スピーカーシステムやアンプの分野では、相当に高度なアマチュアがどのように努力しても、メーカー製品以上の性能、音質をもつものを作ることは不可能といってもよいが、ことプレーヤーシステムにおいては、優れたカートリッジ、トーンアーム、フォノモーターを選択すれば、強固なプレーヤーベースを作るノウハウさえ持てば、メーカー製品を凌ぐ性能と音質をもったシステムをアマチュアが自作できる、唯一のジャンルであるためだろう。
 ちなみに、ステレオサウンド別冊「ハイファイ・ステレオガイド」を見ても、プレーヤーベースの頁には、オーディオメーカー以外の会社から異例に多くの製品が発売されており、プレーヤーシステムの特異性を示している。
 プレーヤーシステムのジャンルでも、最近では、トータルなシステムプランから開発された、メーカでなくては作れない製品がその数を増し、次第にスピーカーシステムと同様にプレーヤーシステムとして完成されたものが主流となってきつつある。たとえば、オートマチックプレーヤーシステムは、メーカーならではできないプレーヤーシステムである。
 今回の特集はプレーヤーシステムであり、プレーヤーシステムの重要性を確認する目的から、本誌では珍しくブラインドテストが行われることになった。この方法には、当然長所短所があるが、ある部分では、平均的な試聴とは異なった製品の実体に触れることができるのは事実である。実際に、スピーカーシステムやアンプでブラインドテストをしたために、ひとつの印象として捉えていた製品に、より多くの新しい可能性を見出すことはよく経験することである。
 ブラインドテストは、出てきた音に聴き手がどのように反応するかである。つまり、単純に考えれば、モルモットそのものにいかになりきるかということができる。したがって、モルモットの置かれる条件が結果を大きく左右することになる。たとえば、傾いた机の上に置かれれば、それを基準として反応するほかはない。
 今回のブラインドテストは、聴く人数の面から、試聴室の長手方向にスピーカーシステムをセットして行なったが、それにしても左右のスピーカーとテスターとの相対位置は、中央付近を除いて相当に異なるため、このあたりが結果としての発言内容の差と密接に結びついている。私の位置は左端で、左チャンネルのスピーカーのやや外側である。この位置では、リファレンスとしたEMTのプレーヤーシステムも、ややバランスを崩した状態であり、現在のコンポーネントでもっとも重要視される、ステレオフォニックな音場感の広がりと定位、音像の問題はチェックポイントとはなりえず、聴感上でのバランス、音色、音楽の表現能力などが判断基準となっている点に注意されたい。
 結果としては、テスト機種のなかには、つねに試聴室で、また個人用として使用している製品が含まれていたが、それらの製品名を試聴結果から当てることはできなかった。たとえば、現在のフォノモーターの水準からはかなり劣るはずのガラード301・SME3012のシステムすら判別不可能で、モルモットとしては正しく反応していたつもりだけに残念という感が強いが、この反応で正しかったと思っている。
 各テスト機種は、先入感がないだけに、かなり大幅に結果としての音、音楽を変えて聴かせてくれた。それは、低域、中域、高域といった、いわば聴感上での周波数特性的なバランス、帯域の広い狭いをはじめ音色的にも当然違いがある。また、カートリッジのMC型、MM型による差が少ないものの、差を大きく出すものといった違い方もある。さらに、音楽そのものが相当に変わってしまうこと、これは大変に重要なことである。これに、ステレオフォニックな音場感、定位、音像などの要素を加えれば、各テスト機種の違いはさらに拡大されるはずである。やや表現を変えれば、プレーヤーシステムでの音の変わり方を情報量的に捉えると、テープデッキでの、カセットデッキ、4トラックオープンリールデッキ、2トラックオープンリールデッキに対比させることができる。結果として製品がわかったプレーヤーシステムとメモを突合わせてみると、一般的な傾向として、大型で重量級の製品ほど2トラックオープンリール的な音をもっているように思われる。たしかに、物理的にも感覚的にも、ディスクにカッティングされている音溝の凹凸は非常に細かいものと思われやすいが、実際にカートリッジを手に持って、直接ディスクの音溝に触れさせてみると、指に感じる反応の激しさで音溝の凹凸による抵抗がどのように大きいかを知ることができるが、これからもフレーヤーシステムは予想以上に機械的な強度を要求されていることがわかるはずだ。これは、当然のことながらフォノモーターのトルクについても同じことがいえる。測定データからも音溝の抵抗でサーボ系がどのように反応しているかを知ることができるであろう。
 このように音が大幅に変わること自体が、プレーヤーシステムの選択の尺度をさらに厳格にしなければならないことを物語っていることになる。かつて、プレーヤーシステムをもっとも優先的に考えるべき論旨があったが、これは現在でも変わることはなく、他のコンポーネントが優れているだけに、プレーヤーシステムでの音の変化がクローズアップされるべきだと感じた。