ソニー CDP-553ESD + DAS-703ES

井上卓也

ステレオサウンド 77号(1985年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ソニーのCDプレーヤーのトップモデルは、業務用を除き、CDP701、CDP552ESDに続き、第三世代の新製品CDP553ESDに交代することになった。これに伴い、CDセパレートシステム用のD/Aコンバーターユニットも第二世代のDAS703ESに置換えられた。
 まずCDP553ESDから眺めてみよう。基本型は、第二世代のCDP552ESDを受継いだハイスピード・リニアモーター・トラッキング・メカニズムに特徴があるが、機械的振動とCDプレーヤーの音質の相関性が検討された結果、光学ピックアップ駆動メカニズム系に、新開発のセラミック緩衝材を採用した『セラデッドシャーシ』の採用と電気系のデジタル回路からアナログ回路へのノイズ混入を防ぐフォトカップラーを使った光学式トランスファー方式の採用が大きなポイントである。
 CDプレーヤーのシャーシに、ディスク信号読取り時に機械振動が加わった場合、サーボ信号中のエラーが増加しサーボ補正電流を乱し、この影響が電源を介してオーディオ信号を劣化させるが、音質を向上するためには、振動しにくく、振動が起きても減衰の早い材料や構造をメカニズムに採用する必要がある。
 一般的に振動をコントロールするためには、ゴムなどの柔らかな材料を使い振動を吸収させる方法が行われるが、他に、異種材料を重ねて振動を制御する方法もあり、今回は、光学ピックアップ駆動メカニズムの金属シャーシをセラミック樹脂ではさみ込むアウトサート成形法を採用するとともに、CDディスクを支えるチャッキングアームにも、金属と樹脂の二重構造を採用し振動源を抑える方法がとられている。これに加えて、外部からの振動を防ぐ特殊なインシュレーターを使った防振構造までも採用されている。
 電気系で音質劣化の原因となるところはパルスを扱うだけに数多く存在するが、ここではデジタル系のジッター成分とビ−トノイズを減らすためにD/Aコンバーターのクロックを基準に全デジタル系の信号処理を行う『ユニリニアコンバーターシステム』の採用、左右チャンネル間の位相差を低減する左右チャンネル独立のD/Aコンバーター採用、デジタルフィルターと一次ディスクリート・アナログフィルターの併用などフィルター回路をはじめ、デジタル系とアナログ系電源を分離した6系統独立安定化電源や選び抜かれたオーディオパーツなど細部にいたるまでの音質重視設計が施されている。また、より高度な要求に応えるためのデジタルセパレートシステム用のデジタル出力端子も備えている。
 機能面は、20キーを使った20曲までのダイレクト選曲と20曲までのメモリーとRMS機能、5パターンが選べるフルリピート機能、内蔵のマイコンがランダムに演奏曲を選定するシャッフルプレイなどをはじめ、大型ディスプレイ上で選曲したトラックナンバーをグラフィックに表示するミュージックカレンダーなど、最先端をゆく多彩な機能は見事である。
 デジタルセパレート方式のためのD/AコンバーターユニットDAS703ESは、電気的に分離独立したデジタル部とアナログ部の間を光伝送方式で結ぷ新技術の採用による性能向上が計られ、CDP553ESDはもとより、新しくデジタル出力端子を設けたPCMプロセッサーPCM553ESDとも組み合わせ可能だ。また将来のシステムアップに対応したデジタルテープモニタ−端子を備え、サンプリング周波数は3種類の自動選択が可能である。
 CDP553ESDは、歴代のソ二−のトップモデルCDプレーヤーが、それぞれの時代のリファレンスモデルであったと同様に、性能、機能、音質、操作性など、どの点をとってもリファレンスモデルに相応しい傑出した内容を備えている。メカニズムの動きは節度感があり、正確で、かつ敏速に動作をする。まさに、キピキビとした小気味よい動きである。音の傾向は整然と整理された音を聴かせるソニータイプの典型であり、曲間でチェックする残留ノイズの質と量ともに、さすがに低く、見事の一語につきる。SN比が優れているために、音場感情報は豊かであり、CDディスクを出し入れしてセンターリングの精度を試してみると、音の差は少なく、これは機械的な精度の高さを物語るものだ。
 DAS703ESと併用すると一段と鮮度感の高いCDサウンドが楽しめる。価格的にはかなり高価だが、結果の音質向上はこれならではの音の世界というしかあるまい。デジタル系のコードは種類により音が大幅に変わるため標準コードを使いたい。

Leave a Comment


NOTE - You can use these HTML tags and attributes:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください