井上卓也
ステレオサウンド 69号(1983年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より
ダイヤトーンの新世代のスピーカーシステムは、大型フロアーシステム、モニター1で採用された、アルミハニカムコアにスキン材を両面からサンドイッチ構造にしたハニカム・コンストラクション・コーンの低域ユニットに、新開発のDUD(ダイヤトーン・ユニファイド・ダイアフラム)構造のダイアフラムとボイスコイルボビンを一体成形したドーム型ユニットを組み合わせ4ウェイ構成としたDS505がその第一弾だ。そして翌年のDS503、これに続くフロアー型DS5000と一年一作のペースで、そのラインナップを充実させ、デジタルプログラムソースに対応するハイスピードのサウンドを追求し続けてきた。
今回、発売されたDS1000は、型番そのものはDS5000系を受継いではいるが、その内容は従来のシリーズとは、異なった構想に基いて開発されたオリジナリティにあふれた新製品である。
開発の基本構想は数年にわたりモディファイを繰り返し、発展改良が加えられ完成期を迎えた、ハニカム・コンストラクション・コーンやDUDの娠動系をベースとしている。それをもとに、ユニットの原点ともいえるフレームに代表される機械的な構造面を見直し、従来よりも一段と優れた振動系の特徴を積極的に引き出し、性能が高く、音質が優れたユニットをつくり、これを従来のエンクロージュアの大小で製品の位置付けを決める手法ではなく、ダイヤトーンスピーカーシステムの出発点の主張である、小型高密度設計アコースティックサスペンション方式の小型エンクロージュアに収納しようというものである。
エンクロージュアは放送モニター2S305で実績のある、回折効果を抑えて中音域を改善し、ディフィニッションが優れ、音質定位が明確な特徴をもつラウンドバッフルを、コンシュマー用システムとして最初に採用している。バッフルボード上には、従来モデルのようにレベルコントロール、サブパネルなどがない。これらは固有共振をもちバッフル面の振動やウーファーの背圧により駆動され、中域から高域にわたり一種のパッシブラジエーターとなる。その不要輻射を生じ音を汚していた部分を全廃し、ダイレクトプリント方式でデザイン処理を施しているのである。
この部分の不要輻射による音質の劣化は、かねてより指摘していたことだが、やっとDS1000において初採用されたことは大変に好ましいことだ。ちなみに、どのスピーカーシステムに限らず、アッテネーターツマミ、パネルなどをガムテープなどでマスキングして聴いてみていただきたいものだ。想像を絶するほどの音質改良の効果は、誰にでも容易に聴き分けられるだろう。
現状のシステムで、重要なバッフル板に余分な穴を開けデザイン上でのアクセントとすることは百害あって一利なしの典型だ。優れたユニットの性能、音質を劣化させる重要なファクターと知るべきである。
ユニット構成は、27cmカーブドハニカムコーン採用ウーファー、5cmと2・3cmDUDチタンドーム型の中、高域ユニットの3ウェイ方式だが、各フレーム部分は完全な剛体構造の新設計である。低域用フレームは、振動板の反作用を受ける磁気回路の反動をフレーム自体で受けるDMM方式が特徴。ちなみに一般的フェライト磁石の磁気回路は、国内製品では構成部品は接着材で固めてあり強度的に不足しているが、海外製品は基本的に前後プレートをネジで強固に結んで固定しているのが原則である。JBLはもとより、古いボサークでさえネジ締めを行なっている。つまり反動を受ける磁気回路が宙ぶらりでは仕方ないわけだ。
中高域ユニットも、従来型のように磁気回路をフレームで受ける方式ではなく、前プレートに振動系を直接マウントし、この部分でバッフルに取付けるダイレクトマウント方式が単純明解な処理である。
詳細は省くが、とにかくスピード感、反応の鋭さ、早さは、このシステムの異次元の魅力である。設置方法、使用機器にわずかでも不備があれば、それを音として露呈するシビアさは物凄い。まず、これを正しく使いこなすことができれば、その腕は第一級であろう。恐ろしい製品の登場だ。
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