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ダイヤトーン DS-1000ZX

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 高密度・密閉型システムの魅力を集大成した本格派の音は、価格を超えて実力の高さを物語る証し。ナチュラルに伸び、スムーズにつながる広帯域型のレスポンスは、中域のエネルギー感、密度感の高い点に注目すべきだ。アンプに関しては、懐は深いが、グレードの差は的確に出すため音質検討時には要注意。

ダイヤトーン DS-1000ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS1000ZXは、磁気回路のプレート部でユニットを取り付けるダイレクトマウント方式の中・高域、磁気回路とフレームを強固に結合するDMM構造の低域というように、メカニズム的に従来のユニット構造を大幅に改善したユニットを採用し、’83年登場したDS1000系の最新モデルだ。同じユニット構成で改良に改良を加え、メカニズムとして十分な熟成期間を経ているだけに、一段と豊かさを増した印象だ。3ウェイならではの緻密さとエネルギー感のある中域を中心にした音のクォリティの高さが魅力。聴感上でのSN比も高く、音のディテールの優れた再生能力と奥深く見通しの良い音場感情報の豊かさは、このクラスとしては例外的なパフォーマンスを備えている。華やかさは少ないが、ダイヤトーンらしい信頼性が高いという印象は、まさにベストセラーモデル中のベストセラーと確信させられる。

ダイヤトーン DS-200ZA, DS-600ZA, DS-800ZA, DS-1000ZA, DS-2000ZA

ダイヤトーンのスピーカーシステムDS200ZA、DS600ZA、DS800ZA、DS1000ZA、DS2000ZAの広告
(サウンドステージ 26号掲載)

Diatone

ダイヤトーン DS-1000Z, DS-2000Z, DS-800Z, DS-600Z, DS-200ZA

ダイヤトーンのスピーカーシステムDS1000Z、DS2000Z、DS800Z、DS600Z、DS200ZAの広告
(サウンドレコパル 1994年夏号掲載)

DS1000Z

ダイヤトーン DS-1000

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「クォリティオーディオの新世代を築くニューウェイヴスピーカー」より

 ダイヤトーンスピーカーシステムの当初からの伝統的なコンセプトともいうべき、小型高密度設計の思想を現在に伝えるモデルが、このDS1000である。
 外観上は、この価格帯のシステムとしてひとまわり小型であり、サイズが重要な商品価値とすれば、物足りない印象を受けることもあるだろう。しかし、エンクロージュア形状に、回折効果を抑えて音場感情報が豊かなラウンドバッフル構造を採用しているあたりは、放送モニター2S305のイメージを残した、高性能タイプらしい主張が感じられる。
 基本的な構想は、新世代のダイヤトーンシステムとして開発されたDS505以来培われてきたハニカムコンストラクションコーンとDUD構造が、すでに完成期を迎えたことをひとつの契機として出発している。つまり、ユニット全体の完成度をさらに一段と高める目的で、ユニットを構造面から再検討し、見直すというアプローチである。
 この構造面からの検討というのは、逆に考えれば、独自の材質と構造をもつハニカムコンストラクションコーンやDUD構造の潜在的能力をさらに引出そうという意図でもある。つまり、従来構造をベースに検討された振動系の可能性の限界が、新しく、理論的に合理化さされた構想を土台とすれば、さらに未知の領域にまで発展する可能性があることを意味している。
 ウーファーフレームは異例に大型で、磁気回路全体を覆い、後から磁気回路をフレームに強固に保持する構造が特徴である。
 現在の国内製品では、磁気回路とフレームはネジ止めされているが、それは、前側のプレートとフレームのみであり、磁石とボールを含む後側のプレートは、接着材で固定されているのが普通だ。
 磁気回路とフレームの重量は、振動系の重量よりは圧倒的に大きく、振動系の動きに対しての反動は無視できる値とするのが常識的な様子である。しかし、海外製品を見ると、アルテック、JBL、タンノイなどでは、前後のプレートは、磁石を間にはさんでネジ止めされ、そして、前側のプレートとフレームが別のネジで固定されるという構造である。このあたりは、機械的な部分に伝統的な強みをもつ彼等らしい確実な手法である。
 このタイプを一段と発展させ、フレームで磁気回路を抑え込む構造がDS1000のウーファーの特徴だ。
 中域と高域ユニットは、ウーファーとは異なった手法である。いうなれば、シンプル・イズ・ベストの考え方による単純化が行われている。従来は、ユニットをエンクロージュアに取付けているフレームにまず振動系を取付け、さらにこれを磁気回路に、ネジ止めしていたわけだが、DS1000では、磁気回路の前側のプレートそのものをフレームとし、これに振動系を取付けるという単純化がなされている。振動系にとっては、支持されている位置が、磁気回路自体なのか、間接的なフレームなのかの違いだが、この差は大きく、高速応答性面での改革が果されている。
 音としての基本ラインは、ワイドレンジ高速応答タイプのサウンドであるが、中、高域ユニットのSN比が向上し、いわゆるダイレクトで、シャープなDUDボロンドームのキャラクターと従来いわれていたものの大半が実はフレーム関係の共振や共鳴が原因であったことが判かったようだ。
 一方、土台を受持つウーファーは、余裕があり、安定感が増し、音が鮮明になったことが特徴だ。また、音場感的な空間情報の量が大幅に増大したことは、このDS1000独自の特徴で、これは新しい次元への展開を予感させる。
 使いこなしのポイントは、まず関連機器のメインテナンスが先決条件であり、システム系の問題点を、サラッと音として聴かせるため、これをスピーカー自体のキャラクターと誤認することが多いであろう。
 試聴時でも、置台は平均的な左右間隔、前後位置も基準位置としたままで、CDプレーヤーの置きかた、アンプの位置決めなどの差が、かなりクリアーに聴きとれた。とくにアンプ系の筐体構造面から生じる機械的な共振や共鳴は、中域から中高域のメタリックな響きとなってかならずと言っていいほど音に出るため、細心の注意が必要である。
 置台の間隔は、ブロックの幅2/3程度が底板に重なる位置、前後方向は、中低域の量感で伸びやかに鳴るように、中心からやや後に偏った位置が良かった。このシステムも、響きの美しさを引き出す意味においては、ブロックよりも、木製ブロックかキューブを是非とも使いたい。ブロックの場合には、上にフェルトを敷く必要があり、またブロックの孔の部分、および床とスピーカー底板の間の空洞には、吸音材を入れ、中域から高域の良い意味での高い分解能、ハイスピード応答の魅力を引き出したい。、本来の意味でのハイスピードとは、ナチュラルな反応のしなやかさと鮮度感であり、むしろ、物足らないほどの印象を受けることもあるだろう。
、ネジ類の増締めは、順序を追って適度を守って行えば、反応はかなりシャープに変化をする。とくに、スピーカーターミナル部分の増締めは、全体に音が静かになり、音場感の空間情報量が確実に増す。しかし、取付けネジが木ネジのため、取扱いに注意が必要なことは他のモデルと共通の要点だ。
 左右は、メーカー推奨のLRでよい。アッテネーター、バッジなどのオーナメントがいっさいないため、この部分での問題は生じないが、サランネットを取付けると平均的システム+αの範囲に留るため、質的な要求度が高いときには、ネットは取り外したい。
 コード関係は、大きくその影響を受けるため、OFCやLC−OFC系の同軸タイプで追い込みたい。少しのキャラクターを残しても情報量の豊かさが重要で、あとは置台の選択と、台上でのわずかな位置調整で、バランスの修整は比較的に安易である。

ダイヤトーン DS-1000

井上卓也

ステレオサウンド 69号(1983年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 ダイヤトーンの新世代のスピーカーシステムは、大型フロアーシステム、モニター1で採用された、アルミハニカムコアにスキン材を両面からサンドイッチ構造にしたハニカム・コンストラクション・コーンの低域ユニットに、新開発のDUD(ダイヤトーン・ユニファイド・ダイアフラム)構造のダイアフラムとボイスコイルボビンを一体成形したドーム型ユニットを組み合わせ4ウェイ構成としたDS505がその第一弾だ。そして翌年のDS503、これに続くフロアー型DS5000と一年一作のペースで、そのラインナップを充実させ、デジタルプログラムソースに対応するハイスピードのサウンドを追求し続けてきた。
 今回、発売されたDS1000は、型番そのものはDS5000系を受継いではいるが、その内容は従来のシリーズとは、異なった構想に基いて開発されたオリジナリティにあふれた新製品である。
 開発の基本構想は数年にわたりモディファイを繰り返し、発展改良が加えられ完成期を迎えた、ハニカム・コンストラクション・コーンやDUDの娠動系をベースとしている。それをもとに、ユニットの原点ともいえるフレームに代表される機械的な構造面を見直し、従来よりも一段と優れた振動系の特徴を積極的に引き出し、性能が高く、音質が優れたユニットをつくり、これを従来のエンクロージュアの大小で製品の位置付けを決める手法ではなく、ダイヤトーンスピーカーシステムの出発点の主張である、小型高密度設計アコースティックサスペンション方式の小型エンクロージュアに収納しようというものである。
 エンクロージュアは放送モニター2S305で実績のある、回折効果を抑えて中音域を改善し、ディフィニッションが優れ、音質定位が明確な特徴をもつラウンドバッフルを、コンシュマー用システムとして最初に採用している。バッフルボード上には、従来モデルのようにレベルコントロール、サブパネルなどがない。これらは固有共振をもちバッフル面の振動やウーファーの背圧により駆動され、中域から高域にわたり一種のパッシブラジエーターとなる。その不要輻射を生じ音を汚していた部分を全廃し、ダイレクトプリント方式でデザイン処理を施しているのである。
 この部分の不要輻射による音質の劣化は、かねてより指摘していたことだが、やっとDS1000において初採用されたことは大変に好ましいことだ。ちなみに、どのスピーカーシステムに限らず、アッテネーターツマミ、パネルなどをガムテープなどでマスキングして聴いてみていただきたいものだ。想像を絶するほどの音質改良の効果は、誰にでも容易に聴き分けられるだろう。
 現状のシステムで、重要なバッフル板に余分な穴を開けデザイン上でのアクセントとすることは百害あって一利なしの典型だ。優れたユニットの性能、音質を劣化させる重要なファクターと知るべきである。
 ユニット構成は、27cmカーブドハニカムコーン採用ウーファー、5cmと2・3cmDUDチタンドーム型の中、高域ユニットの3ウェイ方式だが、各フレーム部分は完全な剛体構造の新設計である。低域用フレームは、振動板の反作用を受ける磁気回路の反動をフレーム自体で受けるDMM方式が特徴。ちなみに一般的フェライト磁石の磁気回路は、国内製品では構成部品は接着材で固めてあり強度的に不足しているが、海外製品は基本的に前後プレートをネジで強固に結んで固定しているのが原則である。JBLはもとより、古いボサークでさえネジ締めを行なっている。つまり反動を受ける磁気回路が宙ぶらりでは仕方ないわけだ。
 中高域ユニットも、従来型のように磁気回路をフレームで受ける方式ではなく、前プレートに振動系を直接マウントし、この部分でバッフルに取付けるダイレクトマウント方式が単純明解な処理である。
 詳細は省くが、とにかくスピード感、反応の鋭さ、早さは、このシステムの異次元の魅力である。設置方法、使用機器にわずかでも不備があれば、それを音として露呈するシビアさは物凄い。まず、これを正しく使いこなすことができれば、その腕は第一級であろう。恐ろしい製品の登場だ。