オンキョー Integra A-817

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 ひとクラス下のA815をいっそう磨き上げたという音質で、基本的には、独特の透明感を感じさせるオンキョー独自のトーンを受け継いでいる。大掴みにいって、気持の良い聴きごたえのある音を聴かせるアンプ。音の透明感とあいまって、二つのスピーカーの間にできる音像が一種独特の雰囲気描写をもって、特にデリケートな音の余韻の部分を美しく楽しませる。どちらかといえば、いくぶんウェットかつ女性的といえる性質。表示パワーは70Wと必ずしも大きくないが、相応の力強さを聴かせる。
●カートリッジへの適応性 4000DIIIで「ニュー・ベイビィ」をプレイバックした場合、エムパイアのカートリッジとシェフィールドの録音それぞれが、乾いた明るさを特徴とするのに対して、そこに軽い湿り気を感じさせる。VMS30/IIでクラシックの管弦楽を鳴らした場合には、弦のオーバートーンの爽やかな繊細さで、聴き手を魅了する。同じカートリッジで「サンチェスの子供たち」を鳴らすと、このレコードで望みたい乾いた力の部分がやや女性的に表現され、一種独特のカラーを聴かせる。聴き手によって、かなりはっきり好き嫌いが別れるだろう。エラック794Eの場合、傷んだレコードをトレースしても歪みっぽさは耳につきにくい。
 このアンプのフォノ入力はMM/ハイMC/MCの3点切替えになっていて、オルトフォンのような低出力低インピーダンス型はMCポジションで使うことになっているが、ハイ成分の混入するやや耳につくノイズがあり、MC30を生かすまでには至っていない。デンオンDL303では、本質的にカートリッジとアンプの性格に一脈通じるところがあるために、良い面も聴かせるかわり、いくぶん細く、中~高域の方にエネルギーの寄る感じが出てくる。ノイズも少なく、実用になるが、ハイMCのポジションではややゲイン不足で、MCポジションで使うことが必要。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bカスタムのようなタイプのスピーカーとこのアンプは、かなり性格的に違うためか、アルテックをうまく鳴らすタイプではなく、そのことから、このアンプを生かすにはスピーカーを選ぶ必要があるだろう。
●ファンクションおよび操作性 この価格帯としては操作機能が多く、キメ細かい作り方をしている。トーンコントロールはA815同様、オンキョー独特のボリュウムと連動したタイプで、ボリュウムを12時位置より上げるにつれて利き方は少なくなっていくので、使いこなしに注意が必要。総じて、スイッチ類のノイズもよく抑えられ、感触もよく、さすがに手なれた作り方のアンプといえる。フォノ聴取時のチューナーからの音洩れもない。
●総合的に オンキョーのアンプ独特音色にはやや好き嫌いがあるかもしれない。ポップスを乾いたサウンドで楽しもうという人には違和感を与えるだろうが、反面、独特のウェットな雰囲気を望む人には魅力的な存在。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:2-
7. スピーカーの特性を生かすか:2-
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中

Leave a Comment


NOTE - You can use these HTML tags and attributes:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください