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オンキョー Integra A-817D

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 アンプの出力の+側と−側から2系統のサーボをかけるオンキョー独自のWスーパーサーボ方式を採用したプリメインアンプ、A817、815に改良が加えられ、それぞれモデルナンバー末尾にDのイニシアルの付いた新モデルに発展した。
 改良の主なポイントは、Wスーパーサーボを一段と強化して、歪みの原因となる超低域成分や電源部アースインピーダンスに起因する雑音成分を40dB以上も抑えたこと。これは100倍以上も強力な電源部を使ったことに相当する効果であるとのことで、従来の50倍から2倍アップしたものだ。この結果、中低域での音の分解能が一段と向上したとのことである。
 また、DCアンプ特有のスピーカーへのDCリークも、強化されたWスーパーサーボの副次的なメリットとして−100dB以上も抑圧し、スピーカー振動板の偏位がなくリニアリティノよ五百とが得られる。Dタイプとなってパワーも増加し、A815Dが55W+55W、A817Dが75W+75Wになった。
 基本構成は従来と同様で、ハイゲインイコライザーアンプとハイゲインパワーアンプの2アンプ構成。トーンコントロールは、特別なトーンアンプを使わずパッシブ素子だけで構成するダイレクト・トーン方式で、オンキョー独自の回路設計である。
 パワーアンプは、普遍的なBクラス増幅と各社各様の発展型高能率Aクラス増幅が最近では一般化しているが、オンキョーでは高能率Aクラスに多いバイアス可変方式を避けて、Bクラス増幅ながらAクラスなみのリニアリティをもち、バイアス変動のないリニアスイッチング方式を採用している。このあたりは、各社ともに何を重視してアンプ設計をおこなうかというポリシーの現れるところでそれぞれ一長一短が存在するだけに、どの方式を結果の音としてユーザーが支持するかにつきるところだ。
 MC20MKIIとDL305を用意して聴く。音の粒子が滑らかに磨かれ、独特のスムーズさのあるしなやかなワイドレンジ型の音だ。微妙に薄化粧をしたようなこの音は大変に美しく、音場感は少し遠くに拡がる。総合的にDL305がマッチするが、MC20MKIIともどもゲインが不足ぎみでMM型を標準に使いたいアンプだ。

オンキョー Integra A-817D, Integra T-416

オンキョーのプリメインアンプIntegra A817D、チューナーIntegra T416の広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

A817D

オンキョー Integra A-817

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 ひとクラス下のA815をいっそう磨き上げたという音質で、基本的には、独特の透明感を感じさせるオンキョー独自のトーンを受け継いでいる。大掴みにいって、気持の良い聴きごたえのある音を聴かせるアンプ。音の透明感とあいまって、二つのスピーカーの間にできる音像が一種独特の雰囲気描写をもって、特にデリケートな音の余韻の部分を美しく楽しませる。どちらかといえば、いくぶんウェットかつ女性的といえる性質。表示パワーは70Wと必ずしも大きくないが、相応の力強さを聴かせる。
●カートリッジへの適応性 4000DIIIで「ニュー・ベイビィ」をプレイバックした場合、エムパイアのカートリッジとシェフィールドの録音それぞれが、乾いた明るさを特徴とするのに対して、そこに軽い湿り気を感じさせる。VMS30/IIでクラシックの管弦楽を鳴らした場合には、弦のオーバートーンの爽やかな繊細さで、聴き手を魅了する。同じカートリッジで「サンチェスの子供たち」を鳴らすと、このレコードで望みたい乾いた力の部分がやや女性的に表現され、一種独特のカラーを聴かせる。聴き手によって、かなりはっきり好き嫌いが別れるだろう。エラック794Eの場合、傷んだレコードをトレースしても歪みっぽさは耳につきにくい。
 このアンプのフォノ入力はMM/ハイMC/MCの3点切替えになっていて、オルトフォンのような低出力低インピーダンス型はMCポジションで使うことになっているが、ハイ成分の混入するやや耳につくノイズがあり、MC30を生かすまでには至っていない。デンオンDL303では、本質的にカートリッジとアンプの性格に一脈通じるところがあるために、良い面も聴かせるかわり、いくぶん細く、中~高域の方にエネルギーの寄る感じが出てくる。ノイズも少なく、実用になるが、ハイMCのポジションではややゲイン不足で、MCポジションで使うことが必要。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bカスタムのようなタイプのスピーカーとこのアンプは、かなり性格的に違うためか、アルテックをうまく鳴らすタイプではなく、そのことから、このアンプを生かすにはスピーカーを選ぶ必要があるだろう。
●ファンクションおよび操作性 この価格帯としては操作機能が多く、キメ細かい作り方をしている。トーンコントロールはA815同様、オンキョー独特のボリュウムと連動したタイプで、ボリュウムを12時位置より上げるにつれて利き方は少なくなっていくので、使いこなしに注意が必要。総じて、スイッチ類のノイズもよく抑えられ、感触もよく、さすがに手なれた作り方のアンプといえる。フォノ聴取時のチューナーからの音洩れもない。
●総合的に オンキョーのアンプ独特音色にはやや好き嫌いがあるかもしれない。ポップスを乾いたサウンドで楽しもうという人には違和感を与えるだろうが、反面、独特のウェットな雰囲気を望む人には魅力的な存在。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:2-
7. スピーカーの特性を生かすか:2-
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中