瀬川冬樹
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
新製品発表会当日の、新宿ショールームでのデモンストレーションでは、小粒ながら際立った新鮮な音で魅力的な印象を残した。そのあとすぐに、自宅に借りて試聴させてもらったサンプルも、基本的な印象が変らなかったので、本誌前号(第43号、161ページ)にも、ベストバイ・パーツのひとつとして推選した。
ところが今回はどうもイメージが違う。試聴会当日のサンプルでは、周波数レンジ、とくに高音域が非常にスムーズによく延びていると感じたが、今回のものは、とりたててハイエンドが延びているというようには聴きとれない。音楽の表情を生き生きと彫り込んでゆく感じだったのがどこか表情が固い。たとえば弦や木管や女性ヴォーカルがやや骨細に聴こえる。言いかえると音の響きあるいは空間にひろがってゆくような鳴り方がもう少し欲しく思われる。
置き方等をくふうしてみた。まず台はやや低め(約20cm)で背面は壁にぴったりつける方がよい。ポピュラー系ではレベルコントロールを指定の幅いっぱいまで上げた方がかえって音に冴えが出てくる(ただしクラシックの弦ではやかましくなる)。カートリッジは455EやオルトフォンよりシュアーのV15/IIIの方が総体にバランスがよくなるタイプ。アンプではSQ38FD/IIが非常に相性が悪く音が古めかしくこもるので、新しい傾向のTRアンプに限るように思った。
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