タンベルグ TL5010

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 これよりランクが下のTL2510がなかなか良い鳴り方をしていたので(28号参照)、これにスケール感や音のゆとりが加わればさらに良いだろうと期待して聴いた。キャビネットもウーファーのユニットもひとまわり大きくなっただけに、中低域にふくらみが出てよく響く。がその鳴り方は少しばかり楽天的で低音楽器を締りなくさせる。中域から高域にかけての強調感のない滑らかな美しい響きは2510と共通の特徴で、弦や声のハーモニクスをきれいに漂わせるが、全体の感じはハイファイ型というよりはヨーロッパの上質な電蓄の人工的美しさで、キャビネットなど適度に鳴っているのでハイパワーを送り込まれたら決定的に弱点をあらわにする。オーケストラも耳あたりの良さからいい気持になってつい音量を上げると、ハイレベルでは合奏が濁ってしまうし、本質的に線の細い腰の弱い音質だから打音の系統に弱さをみせ、ハイパワーでは音がつぶれ気味になる反面、中高域にやかましさが出てくる。おさえかげんの音量での甘く柔らかな響きの快さをとるスピーカーといえる。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆

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