既製スピーカーシステムをマルチアンプでドライブする(JBL D44000 Paragon)

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-1 マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ(ステレオサウンド別冊・1977年秋発行)
「内外代表パーツ200機種によるマルチウェイ・システムプラン」より

 JBLのD44000パラゴンは、現在の大型スピーカーシステムとしては異例な性格をもった、極めてユニークな製品である。
 ステレオのスピーカーシステムは、一般的には左右チャンネルそれぞれ専用のスピーカーシステムを使う方法が標準であるが、パラゴンでは、左右チャンネル用のスピーカーシステムを一体化して使う構想で設計されている。構造上では、独立した左右対称型のフロントロードホーン型エンクロージュアを金具を使用して中央部分で結合し、デザイン的には、中央から左右に円弧状のカーブをもつ反射板で連続して、このまま家具として置いても素晴らしいオブジェとして眺められるユニークな完成度の高さが感じられる。しかも、エンクロージュアは、床面の影響を避けられるように、脚で床から離れているため、音楽的な面での処理も完全である。
 JBLには、かつて、このパラゴンのシリーズ製品として、同じ構想に基いた小型のミニゴンシステム、各種のユニットによりバリエーション豊かなシステムができるメトロゴンがあった。このシリーズのもうひとつの特長として、2チャンネルステレオでは、とくに左右スピーカー中心の音が弱くなり、実体感が薄れる点を補うために、エンクロージュア前面にある円弧状の反射板に主に中音ユニットの音を当て、その反射を左右のスピーカーに対して第3の音源として利用していることがあげられる。
 2チャンネルステレオでは、中央の音が弱く感じられない程度に左右のスピーカーシステムの間隔を調整することが、ステレオフォニックな音場感を再生する基本である。しかし、左右スピーカーの位置にある音源は、直接スピーカーからの音を聴くために、仮りにこれを実像とすれば、スピーカーの内中央の音源は、そこに定位をしたとしても、虚像にたとえることができる。パラゴンに採用された反射板を利用して第3の音源をつくる方式は、中央の音もスピーカーからの反射音を聴く実像である点が大きな特長である。
 パラゴンは、このように音響的に特殊な方式を採用しているため、最適リスニングポイントの範囲は一般のスピーカーシステムよりも狭く、制約がある。おおよその位置は、両側のトゥイーターの軸上を延長した線の交点あたりで、かなりスピーカーシステムと最適リスニングポイントの距離は近い。
 パラゴンを巧みに鳴らすキーポイントは低音にあるが、特にパワーアンプが重要である。ここではかつて故岩崎千明氏が愛用され、とかくホーン型のキャラクターが出がちなパラゴンを見事にコントロールし、素晴らしい低音として響かせていた実例をベースとして、マルチアンプ化のプランとしている。このプランにより、パラゴンを時間をかけて調整し、追込んでいけば、独得の魅力をさらに一段と聴かせてくれるだろう。

●スピーカーシステム
 JBL D44000 Paragon
●コントロールアンプ
 クワドエイト LM6200R
●エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワーク
 JBL 5234(×2)
●パワーアンプ
 低音域:パイオニア Exclusive M4
 中音域:パイオニア Exclusive M4
 高音域:パイオニア Exclusive M4

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