Daily Archives: 1980年6月15日 - Page 6

オルトフォン MC10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 考え方によれば、SPUのイメージをもっとも現代に伝えているモデルだ。無理のない帯域感と自然な表現は電力発電効率の高さのあらわれだ。

フィリップス RH541

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 フィリップスRH541はやや特殊なシステムで、コンパクトなエンクロージュアに18cmウーファーと2・5cmドーム・トゥイーターの2ウェイ。さらに実効出力30Wのパワーアンプを内蔵する。そしてウーファーのコーン紙の加速度検出によるモーショナルフィードバック方式によるドライビングである。個性的な音色だが、さすがに風格のあるムードを感じさせる。

オーディオテクニカ AT-150E/G

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 AT15Eの後継機種でシェルが付属する。ベリリウムカンチレバー、パラトロイダルラミネートコア採用で、現代MMの標準機。

オーディオテクニカ AT-32

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 逆V字型デュアルコイル方式のMC型で、シェル一体型のAT34の単体カートリッジだ。広帯域型で、音の粒子が細かくシャープだ。

KEF Model 303

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 KEF303は、英国のKEF社のシリーズ中、最もポピュラーなランクの小型ブックシェルフ。20cmウーファーと3・3cmメリネックス振動板採用のドーム・トゥイーターからなる2ウェイで、きわめて合理的なコストダウンモデルながら、その音の素晴らしさは特筆に値する見事なものである。大きいスケールの再生を望まなければ何にでも安心して使える傑作だ。

アントレー EC-10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 アントレー第2弾のMC型。スッキリとよく伸びたレスポンスと滑らかで繊細な音は、分離がよく、MC型ならではの緻密な高クォリティサウンドだ。

KEF Model 303

KEFのスピーカーシステムModel 303の広告(輸入元:BSRジャパン)
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

KEF

JBL D44000 Paragon

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 JBLの作るコンシュマーシリーズの最高峰。左右ワンペアのステレオ・スピーカーシステムである。ユニークなデザインは、機能美とクラフツマンシップの結合によるもので、家具としても特異な風格をもっている。JBLの最高級ユニットを内蔵した3ウェイ・6ユニット構成の再生するステレオ音場は、左右チャンネルの溶け合った独特な雰囲気。今や数少ない芸術的作品といって過言ではない。

ヴァイタヴォックス CN191 Corner Horn

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 本来ウーファーシステムで、38cmユニットをフォールデッド・フロントローディングホーン・エンクロージュアに収めたものだが、これに500Hzクロスオーバーでトゥイーターをつけて全帯域システムとする。その音は格調高い雰囲気に溢れている。クリプッシュホーンの数少ない成功例である。

エスプリ APM-8

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 角型平面振動板というユニークなユニットを4つ使った4ウェイの大型フロアーシステムで、ウーファーの実効面積は円形コーンの38cm口径に匹敵する。理想的ピストンモーションを追求して生まれたこのシステムが、多くの技術的困難を克服して、ここまでの音質にまとめられたことは立派だ。きわめて純度の高い音質で、バランスや質感のコントロールもよく整えられた注目すべき製品である。

アルテック A5

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 A7の上級モデルでユニット別もの。クロスオーバーがA7の1・2kHzに対しこれは500Hzで、ドライバー、ホーンはより大型、ウーファーも一層ヘビーデューティである。その大らかな再生音は他では味わえないもので、悠揚迫らぬ音の世界の魅力は、この劇場用システムを、あえて家庭で味わうという熱心なファンを生んできた。至近距離で聴いても音は必ずしも粗くない。

ロジャース LS5/8

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 パワーアンプ2台で各ユニットを独立駆動する2ウェイ・2ユニット構成のシステム。かなり大型のシステムだが、別売スタンドでフロアー型として使うのが本来。因みにパワーアンプはQUADの405である。やや完成度の点で不満を感じるが、それは商品としての形体の上であって、音のほうは品位が高い。決して男性的な迫力のある音ではないが、骨格もしっかりした解像力のある音。

JBL 4343B

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 JBLのプロシリーズ中の代表的製品。4ウェイ・4ユニット構成のワイドレンジ・ヴァージョンで、広い周波数帯域でかつその間が高密度で充実した再生音の厚味はみごとなものだ。SFG磁気回路採用の新型ウーファーになった、Bタイプにおける音の改善はかなり顕著で、低域から中域にかけて、よりしなやかに、そして全帯域にわたって、よりスムーズな連りを聴かせる。

アルテック Model 6041

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 同軸ユニット604−8Hにスーパートゥイーターとスーパーウーファーを加えた大型フロアー型。アルテックらしい明るく、たくましい音のハイエンドとローエンドを拡げ、一層表現力を増している。変形4ウェイといえるものだが、ジャズによしクラシックによし、能力的に優れているだけではなく、音楽の味わいを風格をもって伝える魅力的製品。

メリディアン M1

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 英国製の3ウェイ・3ユニット構成のフロアー型で、ドロンコーン付のエンクロージュアをもつ。そして、3ウェイの各帯域を独立して駆動する3台のパワーアンプと、帯域分割のためのエレクトロニック・クロスオーバーアンプを持ったマルチアンプシステムである。内蔵アンプの低域が80Wと少々パワー不足の感じがあるが、なかなか味わいのある雰囲気で音楽を聴かせてくれる。

JBL 4333B

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 3ウェイ・3ユニット構成のプレイバック・スタンダードといえる優れたモニターシステム。WXはウォールナット仕上げで家庭用にも違和感のないモデル。4面仕上げだからフロアータイプとはいい難く、しかるべき台、脚を必要とする。床にはベタ置きは成功率が低い。精緻で豊麗なサウンドはウェルバランスで、切れ込みの鋭さにもかかわらずうるさくない。低域は豊かに弾む。

JBL L300A

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 プロシリーズの4333Bのコンシュマーモデル。仕上げのよいオイルフィニッシュのウォールナット仕上げエンクロージュアは、ロープロファイルのフロアー型。ワイドレンジな再生音は緻密で豊麗。そのスケールの大きな再生音からすると、最もコンパクトにまとめられたシステムである。フェライトマグネット・ウーファーになってより改善された。

UREI Model 813

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 アメリカのプロ機器メーカーUREIが、アルテックの604−8Gを改造してシステム化したユニークなモデルだ。サブウーファーを追加、ホーンをUREI製に変え、タイムアライメントを施したネットワークを内蔵させている。適度なダンピングコントロールを施してたサブウーファーの働きで低域が豊かに、また歪の少ない高域が特徴。置き方によって音がかなり変るシステムだ。

アルテック 620B Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 世界的に普及している同社の604シリーズの最新モデル604−8Hを組み込んだスタジオモニターシステム。38cmの同軸型2ウェイで、タイプHは高域ユニットが改善され、歪の少ないマンタレーホーンをもつ。妥当なバランスだが、低域・高域ともマルチユニットのような伸びはない。しかし、その高い再生能力は使い手次第で大きな可能性をもっている。

タンノイ Super Red Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 英国のタンノイ社の伝統の技術を最新技術でリファインし、入念の作りで仕上げた同軸型2ウェイのモニターシステムである。定位、臨場感の再生の優秀さは今さらいうまでもないし、がっちりとした安定感のある音像定位には伝統の風格がある。このシステムはマルチアンプ駆動もできる設計で、エレクトロニック・クロスオーバーアンプも別売されている。

アルテック A7-X

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 その名のごとく本来は劇場PA用。しかし、その2ウェイ・ホーンによる独特の大らかな鳴り方と有効な響き方は、家庭用としても雰囲気の豊かな格調すら感じさせる魅力を発揮する。決してワイドレンジではないが、音楽に必要な帯域を美しく響かせ、小音量にもかなり緻密な解像力を聴かせるし、大音量には全く危なげのないのは陶然だ。高能率スピーカーらしいよさを十分に発揮する。

デンオン PMA-970

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 PMA970は、既発売のコントロールアンプPRA2000と、独自のA級増幅を出発点とした高能率A級増幅を採用したPOA3000の基本構成をドッキングさせたプリメインアンプである。
 基本回路構成は、2段のダイレクトDCサーボアンプ間にRIAAイコライザー素子を置く、MC型使用可能なハイゲインDC構成CR型イコライザーアンプとリアルバイアス回路に寄る高能率A級増幅の100W+100Wのパワーアンプの2段構成である。トーンコントロールはパワーステージ前後のサーボ回路を利用するという、シンプルで信号系路を短縮化できるタイプ。
 電源回路は大型トロイダルトランスと33000μF×2の電解コンデンサーによるパワー段電源、電圧増幅段用とイコライザーアンプ用に独立した別巻線を使う定電圧電源と左右共通、前後方向分割の3電源方式であり、各ユニットアンプ部の電源インピーダンスを低くする設計である点がセパレート型と異なる。
 PMA970は、独自のダイレクトDCサーボ方式が従来より改良されたために、基本的に音の粒子が細かく磨かれ、スムーズに伸びた帯域感とナチュラルな表情のセパレート型の魅力を受け継ぐが、エネルギー感と緻密さが加わり、余裕の感じられる豊かさが新しい魅力となっている。音場感的な拡がりとパースペクティブ、音像のクリアーさもトップランクのプリメインアンプに応しい見事さだ。

パイオニア Exclusive Model 3401W

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より 

本格的なコンプレッション・ドライバーを中・高域に用いた40cm口径ウーファーの3ウェイ・3ユニット構成のシステムである。その音のアキュラシーはあくまで厳格であり精緻である。再生能力の限界は推り知れないほど大きいが、家庭での使用は必ずしも容易ではない。プログラムソースのアラもすべて掘りだしてしまうほどだから。作り仕上げの高さも第一級である。

マランツ Sm-10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Sm10は、既発売のA級、AB級切替可能なMa5を2台並列とし、一枚のパネルに取付けたステレオパワーアンプだ。パワーメーターは省略されたが、BTL接続用入力を使用して350Wのモノ・ハイパワーアンプにできるのが魅力だ。

マランツ Sc-9, Sm-9

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Sc9は、そのフロントパネルのレイアウトからもわかるように、基本的に従来のSc7を発展、改良した、そのMKIIと考えてもよいコントロールアンプである。
 基本的な回路構成は、FET使用DC構成のMCヘッドアンプ、同じくFET・DC構成のイコライザーアンプ、中音を加えたターンオーバー可変の高・低音コントロールアンプとヘッドフォンアンプのオーソドックスなラインナップで、バイパススイッチによりトーンコントロールアンプを通さずにフォノ入力はダイレクトにプリアウトへ信号を送り出し可能である。また、トーンコントロールがREC OUTに切替使用できるのはSc7以来の特長である。
 回路は各ブロックごとに基本から再検討され、部品関係、配線材関係に新しいタイプが採用されているが、Sc7に比べ大きく変更しているのはモード切替スイッチ関係の基板を廃止し、直結方式としてセパレーション特性の改善を図ったこと、電源部の新設計の2点がある。MCカートリッジ用ヘッドアンプも新タイプになった。
 また、マホガニー材使用の木製キャビネットが標準装備となり、パネルフェイスにESOTECの文字が加わった。
 Sm9は、Sc9と同様に、従来のSm7をベースとしてリファインしたAB級動作150W+150Wのステレオパワーアンプである。
 主変更点は、パワートランジスターに高域特性が優れスイッチング歪が少ない新開発スーパーfTトランジスターの採用。電源部のコンデンサーに高周波特性が優れたコンピューターグレイドの大容量型が使われている他に、部品、配線材料の検討がおこなわれていることなどである。
 外装関係では、マホガニーキャビネットの標準装備、ESOTECシリーズになりメーターの色調が、高級機のSm1000と同様のブルー系に変った。
 Sc9とSm9のペアは、Sc7/Sm7がやや中域が薄く滑らかで、細かい粒立ちのワイドレンジ型であったのに比べ、安定したダイナミックな低域をベースとするアメリカ系アンプの魅力である。エネルギー感が充分にある中域、ナチュラルに伸びた高域をもつ、エネルギーバランスがフラットなタイプに変っている。音色は明るく活気があり、ステレオフォニックな音場感の拡がり、音像定位のシャープさも第一級のできである。とくに分解能が優れた印象は、主にSc9側のグレイドアップによるものであろう。