Monthly Archives: 6月 1979 - Page 3

ソニー XL-44(B), XL-40, HA-50

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーのカートリッジは新発足のソニーサウンドテック株式会社に移管されたが、その第一弾製品として7種類の新製品が発売された。今回は、そのうちMC型とMM型のカートリッジとMC型用ヘッドアンプを試聴することができた。
 MC型カートリッジXL44は、ブラック仕上げのXL44Bも用意されるというユニークなモデルである。発電方式は独自の8の字型空芯コイルを2個組み合わせたプッシュプル動作によるもので、巻枠となるアーマチュアは、どの方向にも動きがスムーズな円形であり電気的、機械的にバランスの優れた振動子としている。発電部は箱型構造の共振が少ないアルミダイキャスト製のヘッドシェルにダンプして組込んだシェル一体型を採用し、レコード盤面側のモールドが鮮やかなバイオレットに採色されているのがユニークである。
 XL44は、腰が強くソリッドな低域をベースとした安定感のある音が特長である。レスポンスは滑らかにコントロールされ、中域のエネルギー感も十分にある。
 MM型カートリッジXL40は、既発のXL45IIに最新の技術とノウハウを盛込み、大幅にコストダウンを計った新製品である。振動系は独自のカップ型ダンパーとテンションワイヤーの採用で振動支点を明確化し、ヘッドシェルは、XL44同様の箱型構造のアルミダイキャストシェルに組込む一体化防振構造であり、スタイラスホルダーは本体にネジ止め構造、本体のコイルには無酸素銅線採用。また、シェル内部配線はウレタン被覆リッツ線を使用するなど超高域まで伝送特性を伸した設計となっている。
 XL40の音は、音色が暖かく明るいタイプで、厚みがあり安定した豊かさが特長である。
 MC型カートリッジ用ヘッドアンプHA50は、既発売のHA55を受継いだ新製品である。入力はコンデンサーのない直結方式で、低域の位相回転がない。ゲインは26dB、周波数特性は6Hz〜1MHzと広帯域型であり、最大許容入力は100mVと高い。信号系は一切配線がなく、すべてプリント基板上で処理され、電源は定電圧型。スイッチ切替時のポップノイズ防止用のグランドショートタイプのミューティング回路を内蔵している。

アントレー EC-15

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 MC型専業メーカーとしてユニークな存在のアントレーから第3弾製品としてEC15が発売された。2重パイプ使用のステップドテーパーカンチレバー、高精度な粉末冶金法によるEU材の成型ヨーク、カーボンファイバー強化のボディなど新技術が応用され、高性能でローコスト化を実現している。昇圧トランスET100と組み合わせたEC15は、音の輪郭がシャープで活気があり、クリアーで、透明感があるハイクォリティな音を聴かせる。

オーディオテクニカ AT-30E/G

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カッターヘッドと相似形の動作をする独特なVM型カートリッジで定評があるオーディオテクニカには、デュアルムービングコイル型と名付けられたMC型カートリッジのシリーズがあるが、今回、新しくAT30E/Gが加えられた。
 新モデルは、従来のタイプとはV字型のコイル配置が逆になり、VM型と同様にレコード盤面と反対方向に取付けてあるのが特長で、これによりスタイラスノブをVM型同様に抜き挿しして針交換を可能としている。コイルは低損失銀銅線、磁気回路はサマリウムコバルト磁石使用で出力電圧は0・4mVと高い。また、オーバーハング微調整可能なアルミブロックQダンプシェルに取付けてあるのも特長。AT30E/Gは、MC型としてはダイナミックで力強い音をもちフレッシュな音が魅力である。

サテン M-117G, M-18G

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 空芯スパイラルコイルとゴムダンパーを使用しない独創的な発電方式と超精密工作で定評が高い、ユニークなMC型カートリッジをつくるサテンから新しくGシリーズの新製品が発売された。
 Gシリーズは、サテンで開発された 『音をこわさないステレオ』創りの技術に基づいて完成された製品で、サテンのトーンアームAR1、プリアンプPA1、メインアンプMA1、スピーカーシステムSP1など一連の製品と組合せて本来の性能を100%発揮するように作られているとのことだ。新シリーズは現在、M117G、M18G、M18GBなど5モデルがあり、外見上ではM117やM18と同様に見えるが、サテンのトーンアームからスピーカーシステムまでの一連の製品の完成によって、一段と音をこわす箇所を厳密に取除くことが、可能になったようで、この原因は一般におこなわれている動的歪やスルーレイト等を含め、非常にレベルが低く測定不能の領域のものと発表されている。
 今回は、M117GとM18Gを従来どおりのステレオサウンド試聴室のシステムを使って聴いたが、ともにローレベルの再生が明瞭であり、直線的に伸びる音の立上がりがシャープな見事な音をもっている。とくに、M18Gは一段とリアリティが豊かで格調が高く、昇圧トランスなどを必要としない高出力型MCカートリッジならではのダイレクトな音である。

ビクター T-X5

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的にはA−X5のペアとして開発されたFM/AMチューナーである。FM多局化に備えて高感度、高妨害排除型の設計で、狙った電波を追いかけ正確な同調点が確保できる独自のPTL検波回路、アンテナ入力が一定レベルより低くなると自動的にノイズを抑えるクワイティングスロープコントロール回路などを備える。

ビクター A-X5

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターからは、先きにBクラス動作に匹敵する高い電力効率とAクラス動作と同等のリニアリティをあわせもつパワー段と、半導体のもつ非直線性を改善した低歪率ドライバー段を組み合わせた、新開発のスーパーAサーキットを採用したステレオパワーアンプM7050が発売され注目を浴びているが、今回この新回路をプリメインアンプに導入した2機種の製品が新発売された。
 A−X5は、同系のデザインで100W+100WのパフォーマンスをもつA−X9のシリーズ製品として開発されたモデルであるが、70W+70Wのパワーをもちながら価格は1/2以下で、非常に高いコストパフォーマンスをもつことに特長がある。
 A−X9とA−X5は、パネル下側のヒンジ付パネルを閉めた状態では外観上ほとんど区別がつけがたいが、タテ長のバー型プッシュボタンスイッチの延長線上に溝が付き立体的なデザインをもつのがA−X9。これがないものがA−X5で両者を区別することができる。
 回路的なブロックダイヤグラムは、MC型カートリッジ用ヘッドアンプなしにダイレクトにMC型がゲイン切替で使用可能なハイゲインDCサーボイコライザーアンプとハイゲイン・スーパーA/DCパワーアンプの2段で構成するシンプルなもので最近ではプリメインアンプのひとつの動向となっているタイプである。したがって、TUNER、AUX、TAPEなどのハイレベル入力はパワーアンプに直接入力が加わるためSP・OUTまではカップリングコンデンサーがまったくない1アンプ構成の完全DCアンプになる。
 電源部は独立2電源・ダイレクトパワーサプライ方式と名付けられたタイプで、電源トランスの2次側を電圧増幅段用と電力増幅段用に分離して使い、各回路と直結させ広帯域にわたり電源インピーダンスを下げようとするものだ。
 機能は回路構成がシンプルであることにくらべて多機能型で、カンガルーポケット内側にイコライザー段サブソニックフィルター、TAPE−2用の入出力端子などを備えているのが特長である。
 A−X5は聴感上で十分にレスポンスが伸びきったワイドレンジ感と粒立ちが細やかで滑らかな音をもっている。エネルギーバランス的にはやや中域が薄いが、音色は明るく軽いタイプで、歪感が少ないためステレオフォニックな音場空間が奥深く拡がるのが特長である。

マグネパン MGII

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ついたて状の平板スピーカーで、このタイプの中では最も妥当なバランスを持っている。癖がなく、平面波による音が独特な音場をつくり出す。

アルテック A7-X

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 本来は劇場用の2ウェイシステムだが、難なく苦なくスケールの大きな、立派な音が得られる製品である。

エレクトロボイス Interface:D

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社のスピーカーの特徴は、明快さ繊細さよりも粘りのある重厚さ、たくましさにある。その点、好みのわかれるところかもしれないが、同社を代表する本機の力強い音は魅力だ。

アルテック Model 19

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の本格的ホーンシステムはプロフェッショナルユースとして開発され、実際に多くの劇場やPA用として使われているが、それを家庭用システムとした製品が本機だ。やはりホーン型ならではのトランジェントのよい、スケールの大きな音だ。

ソニー SS-G9

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の最高峰大型フロアー型4ウェイシステムで、豊かな堂々たる再生音が得られる。決して枯れた音ではなく、あくまで現代的な、生々しいリプロダクションが可能なスピーカーだ。

アコースティックリサーチ AR-9

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社初のトールボーイ・フロアー型で、両側面に取付けられた30cmウーファー、20cmミッド、ドーム型のミッドハイとトゥイーターによる4ウェイ5スピーカー構成。

アルテック 620A Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 決して生の音に近い音を再生するわけではないが、使い手次第で可能性の広がるスピーカーといえる。いかなるプログラムソースのファクターも忠実に伝えてくれることは確かだ。

スペンドール BCIII

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 BCIIのスケールアップ版といえ、相当パワフルな再生にも応えてくれる。BCIIはパワフルな再生は無理だが、その分瑞々しさでは勝る。

JBL L220

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社のニュージェネレーションともいえるトールボーイ型の新製品で、やはり輪郭の鮮やかな明るい音だ。

セレッション Ditton 662

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 基本的には先の66のグレイドアップ版で、多少現代的にすっきりと明るい音に変っている。やはり可能性の大きな立派なスピーカーだ。

ダルクィスト DQ10

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニークな形状を採用したダイナミック型スピーカーで、フェーズドアレー方式と呼ばれる、各ユニットのボイスコイル一を同一平面上に揃える方式がとられている。

タンノイ Arden

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 38cmHPDユニットを使った大型フロアー型で、堂々としたスケールの大きな再生が可能。最近ユニットとレベル調整が改良され、MKIIとなった。

セレッション Ditton 66

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 スケールが大きく、しかも小味な面ももつ立派なスピーカーだ。オールマイティさが最大の魅力。

KEF Model 105

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 音像・音場再現という点で優れたリプロダクションが得られるスピーカーだ。さすがに専門メーカーのキャリアがうかがえる実力派のシステムといえよう。

アコースティックリサーチ AR-10π

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 一時のARサウンドからするとずいぶん明るくなり、従来の重厚さに加えて音の抜けがよくなった。クラシック、ジャズを問わず実に立派な再生をしてくれる。

タンノイ Berkeley

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 デュアルコンセントリックユニットを使ったシステムとしては中型に属するフロアー型で、がっちりとした低域をベースに明快なきりっと締った中域から高域がバランスよくハーモニーをつくっている。最近改良され、MKIIになった。

ESS amt Bookshelf

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 先のLS4に比べ、低音の豊かさは足りないが、魅力的な高域が特徴。標準的なバランスの中に独特な高域が光るという感じだ。

テクニクス SB-8000

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 単体発売し好評を得ているリーフトゥイーターを、リファインして最高域に採用した4ウェイシステムの最新作。個々のユニットの優れた能力をフルに生かしてまとめられたワイドレンジ型だ。

オンキョー SL-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 60Wの出力をもつパワーアンプとローパスフィルターを内蔵したスーパーウーファーだ。内部の20cmドライバーにより38cm平面型ドロンコーンを駆動するという、音響変成器的動作をする。