Monthly Archives: 9月 1978 - Page 2

ヤマハ YP-D9

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 ここでも音像は大きい。オーケストラより声の方が積極的に前にでる。チェロのひびきが太くなる。リズムの切れは、もう少し鋭くてもいいだろ。低域の反応でいささかのにぶさを感じる。

●デンオンDL103Sで聴く
 一応すっきりした印象を与えるが、やはりここでも、音像は大きめだ。オーケストラの個々のひびきを、分解して提示する。ひびきの角を強調する傾向がなきにしもあらずである。

●シュアーV15/IVで聴く
 音像はふくれぎみだ。音をおしだしてくるような傾向がある。それでひびきの中味が充実すればいいのだろうが、その点で幾分ものたりないところがあるので、表面的な印象をききてに与えてしまう。

デンオン DP-80

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフォノモーターには、現在DP7000をトップモデルとして、DP6000、DP1700があるが、今回新しくDP80がシリーズに加わることになった。
 このニューモデルは、デザイン的には従来の製品よりもエッジを強調し、リジッドでよりメカニックな印象である。
 駆動用のモーターは、かなり大型の3相交流アウターローターサーボ型であり、当然のことながらDD方式である。このモーターはAC型であるため基本的にトルクムラが少なく、さらには3相モーターとなると逆転方向のトルクに対して働く回転磁界の3の倍数次高調波を打消す特長があって、よりSN比、ワウ・フラッター特性がよく効率も高くなるメリットがある。また、従来の同社モーターより一段とステーターの径を大きくし、この直径に適した極数を8極としたためスロットレスDCモーター同様の高い効率を得ている。
 サーボ方式は、デンオンが初期から手がけているターンテーブル内側に磁気コーティングをし、これに記録したパルスを回転検出用磁気ヘッドで検出するタイプで、これと9MHzの水晶発振器を基準とし分周した信号を位相比較するPLLクォーツロック型である。また、正回転、逆回転方向の駆動制御をしているため磁気ヘッド内部は2ヘッド構成で、方向検出用ヘッドがあることも特長だ。
 ターンテーブルは、直径30・8cm、重量3kgのアルミダイキャスト製だが、レコードをのせる上面ターンテーブルとモーターシャフトで固定される下面ターンテーブルをもった2重構造型で、両者はスプリングとダンピング材で連結してある。つまり、この構造により上面ターンテーブルは、プレーヤーベースから振動的にフローティングされており、上面の質量とスプリングのコンプライアンスでローパスフィルターを形成している。従って、外部振動に対しては、フィルター効果とダンピング材のエネルギー吸収でレコード面に伝わる振動は低減し、音響的なフィードバックにも効果があり、フィードバックマージンを大きくすることができる。
 その他の特長には、電子式ブレーキ、レーザーホログラフィ解析によるゴムシート、電源リレー採用による電源ON・OFFスイッチの除去のほか、プレーヤーベースがDP3000/6000と互換性があることがあげられる。

デンオン DP-50L

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 音像は大きめで、オーボエよりクラリネットのひびきの方がきわだつ傾向がある。総じて、たっぷりとはひびくし、こえにまろやかさもあるが、細部がさらに鮮明に示されればさらにこのましいだろう。

●デンオンDL103Sで聴く
 音像はほどほどで、ひびきに一種独特のなまなましさがある。このカートリッジのクールな性格がおさえられているのはいいが、もう少し細部が鮮明だと、さらに効果的だったのではないか。

●シュアーV15/IVで聴く
 ひびきそのものは薄味だが、音像がひきしまって、声のしなやかさがあきらかになるのがいい。誇張感がなく、声とオーケストラのバランスもこのましい。ただ、ひびきは、あくまでも薄味だ。

オーディオライフ C-2500S

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ムラード社製のECC83を六本使用した性能、音質重視設計の管球プリアンプである。機能はシンプル・イズ・ベストの方針で単純化されているが、使用部品は厳選された特註品が多く、例えば配線材はすべて純銀線といった徹底ぶりが見られる。

ローテル RC-5000, RB-5000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 19型ラックマウントサイズの分厚い黒色仕上げのパネルをもった大型のコントロールアンプとパワーアンプである。
 RC5000は、機能面で3系統のテープ入出力端子、同じく3系統で1系統はMC専用入力となるフォノ入力、各2段切替の高音、低音フィルター各3段切替のミューティングとラウドネスコントロールをはじめ、10素子のオクターブイコライザー、左右独立したマイクミキシング回路など、まったくのフル装備であり、AUX1の入力と出力は600Ωバランス型でキャノン端子を使用している。各アンプユニットはすべてDC構成で、電源部は3電源方式を採用している。
 RB5000は、定格出力500W+500Wの超弩級パワーを誇る大型のパワーアンプである。内部のコンストラクションは、左右対称に2個のDC構成パワーアンプを置くタイプで左右チャンネル間の干渉が動的にも静的にも無視できるほど少なくした設計である。パワー段はハイパワートランジスターを各チャンネル4個パラレルで使用し、特性の対称性が優れたダイアモンド回路応用のパーフェクトコンプリメンタリー方式と呼ばれるタイプで、AB級動作である。電源部は、超大型トロイダルトランスと22、000μFの電解コンデンサーが2組左右チャンネル用に使用されており、重量は53kg。機能面では、感度3段切替の対数圧縮型パワーメーターと各チャンネル8個のLEDを使用したピーク表示ランプ、アンプの電源投入後ウォームアップ完了を指示するスタンバイインジケーター、3系統のスピーカー端子、キャノン端子とRCA型ピン端子が切替使用できる入力端子がある。

テクニクス ST-8077 (77T)

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ST8077は新シリーズプリメインアンプの各モデルのペアとして使えるAM/FMステレオチューナーで、選局動作は指針にセットされた3個のLED表示のアクティブセンサーとアクティブサーボロックで確実におこなえるタイプ。機能は、電波の質を新ミューティングシステム、録音レベルチェック用発振器などがある。

テクニクス SU-8099 (Technics 99A), SU-8088 (Technics 88A)

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスのプリメインアンプの新世代は、インテグレーテッドDCシリーズのSU8080と8075の2機種の開発から始まったと考えられる。
 今回発売されたSU8099/8088/8077の3機種の新プリメインアンプは、インテグレーテッドDC&3DAシリーズと名付けられているように、インテグレーテッドDCシリーズを一段と発展させた内容をもつ製品である。ここでは、新シリーズ中SU8099/8088についてリポートすることにしたい。
 インテグレーテッドDC&3DAシリーズの名称のなかで3DAという文字の意味は、アンプの音質を決定づける3要素──歪、周波数特性、ダイナミックレンジを互いに関連づけて解析する3DA(3次元解析法)の意味である。これと音楽信号を使ってアンプの歪分析を可能としたI/Oディストーションアナライザーを使用し、ヒアリングテストの結果を科学的に裏付けながら理想の音質を追求して開発されたものが、この新シリーズのプリメインアンプとのことである。
 テクニクスによれば、先に述べたアンプの3要素と、最近話題になっているスルーレートの関連性では、まずスルーレートについては、いかに高い周波数まで歪なく出力が取り出せるかの意味からは、最大出力対周波数特性というデーターそのものがスルーレートを表現していることになり、ライズタイムでは、信号の立上がりの速さを示すことから、周波数特性が高域まで伸びていればライズタイムが良好ということになる。また、話題のTIM歪については、現在発生の要因が明確にされておらず、アンプという伝送系には高い周波数での伝送時間の遅れ(位相の遅れ)があるために、過度的な入力にたいしてNFが追いつかず、それが原因でTIM歪が発生するという理論では説明ができない。結論として、TIM歪こそ動的歪の代表といわれるが、実はアンプ内部でのクリップによる歪と判断せざるをえず、これを解決するためには、アンプの最大出力対周波数特性と再生周波数特性の両方をある条件に設定する必要がある。したがって動的歪の代表といわれるTIM歪も、周波数特性と出力という静特性を関連づけ管理すればその発生を防止できる、というが、その論旨の骨子である。このアンプの3要素を関連づけて管理する方法が3DAということになる。
 SU8099は、パワーアンプ部には高周波トランジスターの技術を活かして開発されたSLPT(スーパー・リニア・パワートランジスター)を採用し、大電流が配線中を流れるときに発生する磁界に起因する高域歪を防止するため、パワー段と電源をブロック化した新方式を採用している。出力は、120W+120Wで、テクニクスA2で開発したアクティブサーマルサーボ回路を採用している。
 機能面では、MCカートリッジ用プリプリアンプ、録音信号系をインプットセレクターから独立させたレコーディングセレクター、純電子式で応答性の速いFLパワーメーターなどがあり、入力セレクター、レコーディング、スピーカースイッチなどは配線の引廻しを短くするリモートアクションスイッチを採用している。
 なお、SU8088は基本構想をSU8099に置いたモデルで、出力は78W+78W。

Lo-D HA-8700, HA-7700

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 日立では、音質のよい再生をめざし、ワイドレンジ・低歪再生を目標に新しいパワーディバイスとしてパワーMOS・FETを開発し、すでにパワーアンプHMA9500に採用して高い評価を得ている。
 今回発表された2機種のプリメインアンプHA7700/8700にも、一般のバイポーラトランジスターにくらべて、周波数特性、電力利得が優れたパワーMOS・FETが採用された。
 HA8700は、90W+90Wの出力をもち、初段にローノイズ型ジャンクションFETを使った3段直結型MCヘッドアンプからイコライザー段、トーンコントロール段、パワーアンプまでを前代DCアンプ構成としている。電源部は、左右独立の電源トランスと大容量電解コンデンサーを使った左右セパレート電源方式である。機能面では、ターンオーバー周波数2段切替可能な高音と低音トーンコントロール、サブソニックフィルターミューティングスイッチをはじめ、ほぼフル機能であり、イコライザー出力をトーンコントロール段を通さずにパワーアンプに直結するメインダイレクトスイッチがある。また、使用頻度の少ないスイッチはフロントパネルの下部の扉内部に収納してある。
 HA7700は、出力70W+70Wでターンオーバー周波数切替とメインダイレクトスイッチを省略したジュニアモデル。

パーフェクション DA-5000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

3D方式専用フィルターDF3000の機能をもつフィルターとモノーラルパワーアンプを組み合わせたモデルである。パワーアンプは、ダイナミックパワー40W(8Ω)の定格であり、リアパネルのフィルター出力端子とパワーアンプ入力端子間のジャンパー線を取外せば、フィルターとパワーアンプは分離し、それぞれ単体として使用できる。なお、フロントパネルの入力端子は、リアパネルのPRE・INPUTと並列接続されている。

パーフェクション DF-3000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 3D方式のサブ・ウーファーシステムに使う専用のフィルターアンプである。
 機能的には、①超低音用ウーファーの高域をカットする、−10dBで55Hz、70Hz、95Hzとなる3段切替18dB/oct型のフィルター、②超低音を25Hz・−18dB/octでカットするサブソニックフィルター、③レベルコントローラー、④入力をメインシステムのスピーカー端子、コントロールアンプ出力端子に切替えられるインプットセレクター、⑤入力をコントロールアンプから受けた場合のみに動作し、メインスピーカーの100Hz以下を−18dB/octでカットするL・Rローカットスイッチ、⑥超低音用ウーファーの位相切替スイッチがある。

オーレックス ST-F15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 同調操作がマニュアル、オート、10局のプリセットの3種類が選択できるデジタル・シンセサイザーチューナーである。同調用回路素子には、1チップに1、700素子を納めたPLLシンセサイザー用LSIを開発し、オートチューニングを可能とし、チューナー制御用には記憶機能をもつ専用LSIを開発してFM局10局のプリセットができるようになった。中間周波増幅段には、波形伝送、群遅延特性の優れた新開発セラミックフィルターを採用している。

オーレックス SY-C15, SC-M15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のオーディオの話題となる新しいジャンルの製品に、超小型のコントロールアンプ、パワーアンプ、それに、チューナーをベースとした、いわゆるマイクロコンポーネントシステムがある。すでに、このクォータリー欄でも、テクニクス、ダイヤトーンの超小型コンポーネントを取上げたが、今回紹介するオーレックスの製品は、この種のものではもっとも早く発表された製品である。
 オーレックスのマイクロコンポーネントは、ステレオシステムにその名称をもつように、超小型で横幅が257mmに統一されたコントロールアンプSY−C15、パワーアンプSC−M15、AM・FMステレオチューナーST−F15を中心として、カセットデッキPC−D15、小型スピーカーシステムSS−S12W、さらに、スーパーウーファーで45Wパワーアンプを内蔵のSS−W51Sでシリーズを構成する、独立したコンポーネントシステムである。このなかで今回試聴できたのは、ベースとなるアンプとチューナーである。
 SY−C15は、超小型ながらコントロールアンプと呼ぶにふさわしい機能をもった製品である。機能面では、2系統のフォノ入力とコントロールアンプ出力を備え、高音と低音のトーンコントロール、サブソニックフィルター、ミューティング時にはイコライザー出力が直接コントロールアンプ出力となる特殊なミューティングスイッチをもつ。各ユニットアンプは、すべてA級動作の全段直結DC構成で、イコライザー許容入力は300mVである。
 SC−M15は、定格出力が45W+45Wで、BTL接続により90Wのモノーラルパワーアンプとしても使用できるDC構成のパワーアンプである。超小型パワーアンプのポイントである放熱効果を解決する目的で、いわゆるケース部分にアルミ合金を一体成型した接合部分のないアルミダイキャスト・モノコックボディを採用し、両側には羽根型の放熱フィンを一体化している。このボディのスペースファクターの良さを活かし、大型の電源用電解コンデンサーや増幅段用のタテ型フィルムコンデンサー、さらに厚さ70ミクロンのプリント基板などの大型部品の高密度実装を実現している。
 SY−C15、SC−M15のペアは、平均的な聴取レベルではまったく不満のないパワー感をもち、一連のオーレックスコンポーネントシリーズに共通する細やかさと滑らかさがあり、ニュートラルな色付けの少ない音をもっている。

アキュフェーズ E-303

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来のイメージを完全に一新したソフトで大人っぽい表情のデザインをもつプリメインアンプである。回路構成は同社オリジナルの完全対称型プッシュプルを全段増幅に採用し、DCアンプ構成、トーンコントロール段にはサーボ方式が導入されている。パワー段には、MOS・FETパラレルプッシュプルで130W/130Wの出力だ。E303は、音の粒子が細かく十分に磨かれているため、滑らかで柔かく、かつクリアな音をもっている。クォリティは十分に高く高級機としての完成度は高い。

トリオ L-07CII, L-07MII

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプに限らず、プリメインアンプを含めてアンプの分野では技術革新の店舗が非常に急速であることに特長がある。トリオのセパレート型アンプは、トップエンドにサプリームシリーズを置いているが、最新の技術が投入され話題を提供しているのはLシリーズの製品である。
 今回のL07CII/MIIは、アンプの高速応答性を改善することにより高域における動的歪を減少させたハイスピードパワーアンプL05Mの設計思想を受継ぎ、数多くのアンプ作りのノウハウを投入して開発された第2弾のハイスピードアンプだ。パワーアンプL07MIIはもちろんのことコントロールアンプL07CIIにもハイスピードアンプの思想が盛込まれている。
 ちなみに、トリオでいうハイスピードアンプの条件とは、スルーレートが100V/μs以上、ライズタイムが1μs未満、信号の正負のレスポンスが出力の大小にかかわらず同値であり、かつリンギングなどの波形の乱れがないことである。
 L07CIIコントロールアンプは、パネルデザインが大幅に変更され、より現代的な印象となっている。回路構成上の特長は、フォノ入力のイコライザー段がMC専用とMM専用が独立した2系統になっていること、内部構造が左右独立した配置であること、出力インピーダンスが10Ω以下と超低インピーダンスであることがあげられる。
 L07MIIモノーラルパワーアンプは、パワー段に高域特性が優れたEBTを採用し、特殊単一金属の高精度被膜抵抗、積層スチロールコンデンサー、低歪率特殊高性能電解コンデンサーなどを厳選し、高域特性が優れた前段設計とともにスルーレート170V/μs、ライズタイム0・55μsを得ている。定格出力は、10Hz〜100kHz/0・008%の歪率で、150ダブ区(8Ω)。
 L07CII/MII×2の組合せは、2台のパワーアンプをスピーカーシステムに近接した位置に置き、コードの影響を減らし、コントロールアンプからパワーアンプ間を専用シールド線で結合するという、業務用機器的使用法が標準である。この組合せは、ナチュラルに伸びたfレンジをもち伸びやかでスッキリとしたクォリティの高い音を聴かせる。音色は、ほぼニュートラルで、さしてスピーカーを選ばず、それぞれの個性を引出すのが魅力だ。

「ブラインドテストを終えて」

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 ブラインドテストだからといって特別のことはない。使い勝手だとか、あるいはみためのことだとかが問題になる場合ならともかく、そうではないときはいつだって、耳だけをたよりに試聴にのぞんでいるから、たとえプレーヤーシステムが別室にあって、どのプレーヤーシステムの音かわからなくても、どうということもない。
 もし、どのメーカーの製品かわかって、その値段を知って、、そうかなるほどというきき方がもしオーディオの専門家のきき方だというのなら、ぼくのきき方は、ついに専門家のきき方たりえない。ブラインドテスト──という言葉は、ともするとそのときのテスターを、目かくしをされた鬼ごっこの鬼のような気持にさせるのだろうか。鬼は、てぬぐいで目かくしをされているから、手さぐりで、つかまえた相手のあちこちをさわってみて、「あっ、ふとっているから、イサオちゃんだ」といったりする。
 おそらく、そういうあてっこのたのしみのために、ブラインドテストが行われるようだが、この場合はどうだったのだろう。
 すくなくともぼくは、鬼ごっこの鬼どころのはなしではなく、せいぜいモルモットにすぎなかった。聴覚だけをたよりにきいた。ききおぼえがあるものといえば、つかわれたレコードの音と、そしてそこでつかわれたカートリッジの音だけだった。イサオちゃんというプレーヤーシステムだけがふとっていて、腹がぷくっとふくれているかどうかなんて、もともとわからないのだから、それがイサオちゃんかどうかあてられるはずもなかったわけだ。
 ただ、このブラインドテストをして、俺の耳もたいしたことないな──と、もともとわかっていたこととはいえ、それをまざまざとみせつけられて、うんざりしたということはある。ブラインドテストは、二日にわけて行ったが、前日は、このましいプレーヤーシステムだと思い、○印をつけておいて、翌日、どうもものたりないところがあると思い、×印をつけたものがあったからだ。具体的にいえば、ビクターのTT101+UA7045+CL−P1Dだ。一方が○印で、もう一方が△印なら、まあ、ことはいかにも微妙だからと、自分にいいきかせることもできなくはないが、○と×とでは、極端で、自分を納得させるすべがない。
 たしかに、きいたレコードの性格は、少なからずちがっていた。一方はクラシックで、もう一方はジャズといった、それぞれのレコードにおさめられている音楽の性格がちがうということもある。それに、一方のレコードが通常のレコードで、もう一方がダイレクト・カッティングのレコードだったということもある。一方が大編成のオーケストラ・プラス・声のレコードで、もう一方がコンボのレコードということもある。つまり、さまざまな点でちがていた。だから、一方が○で、もう一方が×でもおかしくないんだ──といえばいえなくもないだろうが、どうも釈然としない。
 それで、俺の耳もたいしたことないな──という。自己嫌悪の色濃厚な独白となる。もともとたいした耳と思っていたわけではないのだが。
 プレーヤーシステムによる音の変り方は、かなり基本的なところでの変り方で、だからききとりやすいということも、また逆にききとりにくいともいえる。たとえばこれがカートリッジなり、スピーカーなりが変ったというのなら、それはレコードが変ることによって、きこえ方が大幅にちがい、こっちでよかったものが、あっちではよくなくなるということもあるが、プレーヤーシステムでの変り方は、もう少し基本的なところでの変り方だから、そういうことはあまり起らないはずである。
 にもかかわらず、一方で○印をつけ、もう一方で×印をつけたというのは、自分ではそれなりの理由がわからなくてもないが、やはり基本的なところでの変化をききのがしたためといわざるをえない。そのための、俺の耳もたいしたこと
ないな──という自己嫌悪の独白だ。
 プレーヤーシステムの音は、基礎の音だと思う。
 地震の際に、造成地にたてられた家が、もろくもこわれて、岩盤の上の家が、内部はそれなりに、棚がおちたり、あちこちこわれたりしているのかもしれぬが、外からみるかぎり、地震の影響などまるでないかのように立っているのをみたりする。さまざまなプレーヤーシステムの音をきいていて思ったのは、そのことだった。いかに立派な家でも、土台というか、基礎がやわでは、いかんともしがたい。
 今回のブラインドテストは、いってみればその普段目にみえるところを同じにして、さてこのおとは 岩盤の上の音か、それとも造成地の上の音かをききわけることを目的としていたのではなかったか。それぞれの音は、ぼくは岩盤の上の音だよ──と、せいいっぱいがんばっていた。しかし、本当に岩盤の上になりたっている音と、そうでない音とは、かなり明確にちがっていた。
 しかし、どこまでが土台に関係した音で、どこからが基礎とは関係のない音なのか、充分に判断できないこともあった。そのために、一方のレコードでは○印をつけ、もう一方のレコードでは×印をつけるというような、つまり混乱が生じたのだろうと思う。
 すぐれたプレーヤーシステムの音には、あぶなっかしさがなかった。ひびきは、すみずみまで、しっかりしていた。
 カートリッジやスピーカーでは、ひびきのキャラクターが、大きな問題になる。むろん、プレーヤーシステムの音にも、それぞれのキャラクターがあるが、カートリッジやスピーカーの場合のようには、問題にならない──というより、そのキャラクターのとわれ方がちかうように思う。あの家の屋根はトタンで、この家の屋根は瓦だというようなことは、誰にもわかるし、屋根をトタンにするか、瓦にするかは、おそらくその家の住人の好みに関係することだろうが、家を岩盤の上にたてるか、それとも造成地の上にたてるかは、好みとは別のところでのことといえるのではないか。
 ただ、プレーヤーシステムの音にも、カートリッジやスピーカーシステムの場合とは意味するところ微妙にちがうとはいえ、キャラクターがあるので、それにとらわれると、その音が岩盤の上の音か、造成地の上の音かを、ききそこなうことになる。
 そして、このブラインドテストに参加して、あらためて思ったのは、やはり、なにはさておいても、プレーヤーシステムに、それなりの投資をしないといけないなという、すでにわかりきったことだった。毎日の生活ということでいえば、岩盤の上の家での生活も、造成地の上の家での生活も、さしてちがいはないように思うが、やはりどこかで微妙にちがってくるのかもしれない。
 ぼくの今住んでいる家は、造成地というわけではないが、それでも前の道を大きなトラックが通ったりすれば、かなりゆれる。だからといって生活に不便をきたすほどではないが、やはりどっしりした家屋に住んでいるとは思いがたい。そういう家に住んでいると、あまり出来のよくないプレーヤーシステムでレコードをききつづけることによる心理的な影響をあなどれないなと思ったりする。

テクニクス SB-F2

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ミニスピーカーに関してテクニクスは、昭和40年のテクニクス1以来、SB30、最近のSB−X01などの製品化に見られるように十分のキャリアを持っている。今回発売された一連のFシリーズ小型ブックシェルフ型システムのなかで中間サイズの製品が、SB−F2である。ユニット構成は、広帯域ウーファーとテクニクス1以来のホーン型を使用する2ウェイ方式。エンクロージュアは、アルミダイキャスト製完全密閉型。ユニット保護用サーマルリレー付だ。また別売の取付角度可変型カベ掛け用金具、ユニークな三脚スタンドが用意されている。なお型番末尾に(K)の付くタイプはブラック仕上げ。

テクニクス SB-E100, SB-E200

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスのスピーカーシステムは、全製品にリニアフェイズを採用しているのが特長である。今回発売された新しいスピーカーシステムは、テクニクスのトップモデルSB10000とユニット構成が同系統の中音と高音にホーン型を使用したフロアー型の3ウェイタイプである。
 SB−E100は、トールボーイ型のバスレフ方式エンクロージュアの上部に中音と高音のホーン型ユニットが取付けられている。当然リニアフェイズ方式であるため、各ユニットは階段状に重ねてある。
 ウーファーは30cm口径、コーン紙材料はカナダ産針葉樹のクラフトパルプを中心素材とし、90dBの出力音圧レベルと100Wの耐入力をもつ。スコーカーとトゥイーターは、ホーンのノド部分から急激に角度が拡がるテクニクス独特のセクトラルホーンと同等なタイプのホーンが目立つ。ホーンのカットオフ周波数は、それぞれ600Hzと1、200Hz、クロスオーバー周波数は1、500Hzと6、500Hzである。
 エンクロージュアは板厚18mmのパーチクルボード使用、表面はローズウッド仕上げ、グリルはベージュ色のサランである。
 なお各ユニットには、高耐入力型を採用しているが、アンプの異常やクリッピング歪を発生すると高域成分が強くなり、スコーカー、トゥイーターには過大入力となり、ユニットを破損させる場合もあるため、サーマル保護リレーを高音、中音に設けてある。
 SB−E200は、エンクロージュアの形状がローボーイタイプを採用している点で、SB−E100と大きく違っている。また、ローボーイタイプではシステムとしての音の中心軸が低い位置にあるため、場合によっては何らかの台の上に乗せて使いたいこともある。このようなときに組み合わせる台として、SB−E200専用のスタンドSH−S200が別売で用意されている。
 SB−E100とE200は、システムとして近似したスペックをもっているが、トータルなバランスの優れている点ではE100、音の分解能の点ではE200に魅力がある。

サンスイ J11

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トールボーイ型のアルミエンクロージュアにミニサイズ初のドロンコーン方式を導入したユニークな製品。構成は10cm軽量コーン採用のウーファーとソフトドームトゥイーターの2ウェイで活気のあるキビキビとした伸びやかな音が特長。

Lo-D HS-5

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Lo−Dのスピーカーシステムは、メタル振動板を多く採用する点に特徴があるが、この新製品も20cmメタルコーンユニットと35mmチタン振動板採用のメタルコーントゥイーターを組み合わせた2ウェイ構成のシステムである。エンクロージュアは密閉型で、横にするとB5サイズの雑誌と同じになるコンパクトサイズでブラックメタリック仕上げだ。ウーファーは2層のアルミ合金箔の中間を発泡樹脂でダンプした厚さ約2mmの3層構造の振動板を採用し、高域共振は新開発ピークコントロール回路で制御している。クロスオーバーは1、100Hzと低く、アッテネーター付。

Lo-D HS-55

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今回新しくLo−Dから発売されたスピーカーシステムは、従来の同社の製品とはかなりイメージを一新した、コンセプトの異なった製品のように思われる。
 まず、ユニット構成を30cmウーファーベースとし、大型のトゥイーターというよりはハイフレケンシーユニットと呼ぶにふさわしいタイプを組み合わせた2ウェイシステムであることがあげられる。
 ウーファーユニットL304は、高能率・高耐入力設計で、コーン紙は、表面を硬く、裏面は密度を小さくして剛性と適度な内部損失をもたせたタイプで、深いコルゲーションが施されている。磁気回路は、外径140mmφの大型フェライトマグネットを採用し、センターポールに銅のショートキャップを取付けた、Lo−Dアクチュエーターによる低歪化がおこなわれている。
 トゥイーターは、ダイアフラムに直径35mmのチタン振動板を使い、磁気回路には外径90mmφのフェライトマグネットを採用している。アルミダイキャスト製のホーンは、エクスポネンシャルカーブをもち、長さ235mm、開口径は100mmで、開口部には、ダンパー材で不要の振動を抑えた音響レンズが組み合わせてある。
 ネットワークは、ウーファー用コイルに低歪のコアを使い、コイルをワニス真空含浸して内部まで固定し、振動を防止している。なお、トゥイーター用コンデンサーはフィルム型である。エンクロージュアはバスレフ型で、バッフルボード、リアボードはカラ松を主材料とした三層構造パーチクルボードである。
 HS55は、クロスオーバー周波数が1、500Hzと低い2ウェイ型であり、能率も高いため、活気のある明快でストレートな音を聴かせる。細部のニュアンスを細かく、柔らかく聴かせた従来のLo−D製品とは一線を画した鳴り方であり、音楽を積極的にかの沁むファンに好適なものだ。

ヤマハ PX-1

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 力強いひびきをぐっと前におしだすというタイプのプレーヤーシステムではなさそうだ。しかし、ここできけるさわやかな、よごれをすっかり洗いおとしたようなひびきは、実にチャーミングだ。ここできけるひびきは、ついにぼてっとしたり、ふやけたり、重くひきずったり、あるいはかげったりしない。きいての印象がさわやかなのは、おそらく、そのためと思える。
 その方向で徹底させようというなら、デンオンDL103Sということになるだろう。木管楽器がかさっているところでの、個々の楽器のひびきを、ききてがその気になりさえすれば、充分にききふけることができる。このプレーヤーシステムの音にも、一種独特の品位が感じられる。よごれた音を、まちがってもきかせることはなさそうだ。
 ただそのために、用心深くなりすぎた音になってしまっているということはいえるだろう。これでさらに、一歩ふみこんで力強いひびきをきかせる積極性を身につければ、プレーヤーシステムとしての魅力を倍加させることになるのではないか。

ソニー PS-X9

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 このプレーヤーシステムは、どうやら、中域の音を、しっかり、あいまいにならずに、しかもそのエネルギー感をあきらかに示すところに特徴があるようだ。むろん、中域の音をしっかり示すのは、とてもこのましい。そのためと思うが、このプレーヤーシステムできいた音は、いずれのカートリッジの場合も、あいまいさから遠くへへだたったところにあって、しっかりしていた。
 くっきりしたひびきをきかせてくれたが、できることなら、さらに鮮明であってほしいと思わなくもない。ただ、その点については、デンオンDL103Sでかなりの成果をあげたことを考えあわせると、しかるべきカートリッジをつかうことで、かなりカヴァーできるはずである。ベーシックな部分がいかにもしっかりしているというきいての印象がある。あぶなげは、まったくないし、ひよわさもない。
 オルトフォンMC20でピッチカートが、くっきり示されて、しかも大きくふくらまないあたりに、このプレーヤーシステムの基本性能のよさが示されていたといえるだろう。

ビクター SX-7II

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昭和47年にはじまったSX3以来のビクターのSXシリーズは、完全密閉型のエンクロージュア形式を採用した、いわゆるアコースティック・サスペンション方式と中域以上のユニットにソフトドーム型を採用した典型的なブックシェルフ型システムである点に大きな特徴がある。最近では、ブックシェルフ型のエンクロージュアにバスレフ型を使用するタイプが増加し、ブックシェルフ型は完全密閉型のエンクロージュア形式が主流であるとした時期は、すでに過ぎた感がある。しかし、アンプ関係の性能が急激に向上し、一方、プログラムソース側のディスクでもダイレクトカッティング、PCM録音などに代表されるグレイドアップがおこなわれていることを背景にして考えると、本来のスペースファクターが優れたメリットをもつ高級ブックシェルフ型、それも現在にいたるブックシェルフ型全盛期に得た技術、ノウハウ、新素材を投入した新しい時代の製品の登場は期待されていたものと考えられる。
 今回発売されたスX7IIは、SXシリーズトップモデルとして定評が高く、すでに約4年半のロングセラーを続けてきたSX7の設計思想を受継ぎながら、内容的には完全にユニット単体からネットワーク、エンクロージュアのユニット配置にいたるすべてを一新した新製品だ。
 SX7とくらべると、30cmウーファーは、フレームのダイキャスト化、マグネットの強化、ボイスコイル径の大型化、ダンパー材質の変更がある。ドーム型スコーカーでは、フレームのダイキャスト化、ボイスコイルに純アルミ・エッジワイズ巻とボビンをアルミ材に変更、バックチェンバーの容積の増大などがあり、トゥイーターもフレームのダイキャスト化、ボイスコイルの軽量化と磁気回路のギャップを狭くしての磁束密度の増加などがある。
 ネットワーク関係では、トゥイーターのローカット、スコーカーのハイカットとローカットにエポキシ樹脂で固めた空芯コイル、スピーカーユニットと直列に入るコンデンサーに3種類のメタライズドマイラー型の使い分け、配線材に無酸素銅の使用などがあげられる。
 エンクロージュア関係では、ユニットの配置を左右対称型とするとともに、相対的位置の変更、バッフルボードとリアボード材質をダグラスファー合板からダグラスファー・ランバーコア材への変更がある。
 30cmコニカルドーム付ウーファー、7・5cmソフトドーム型スコーカー、3cmソフトドーム型トゥイーターのクロスオーバー周波数は、450Hz、4kHzで、インピーダンスは4Ωである。
 SX7IIは、スムーズに伸びた周波数帯域をもち、音色が明るく、かなりダイナミックな音を聴かせる。ソフトドーム型は立上がりのシャープさに問題があることが多いが、十分に見事な印象であり、音場感もスッキリと拡がり定位も明瞭だ。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より
 見事なプレーヤーシステムというべきだろう。それぞれのカートリッジのチャーミング・ポイントを、無理なく、自然に、ひきだしている。このカートリッジには、こういうところもあったのかといったようなこと(たとえば、シュアーV15タイプIVできけた弦楽器のひびきのなめらかさなど)も、思ったりした。
 余分なひびきがまといついてしまうとか、どこかで誇張されるというのは、とりもなおさず、そのプレーヤーシステムに、無理、背のびがあるからだろうが、そういうところをまったく感じさせないプレーヤーシステムだった。ひとことでいってしまえば、それだけプレーヤーシステムとして安定しているからということになるだろう。
 今回試聴したプレーヤーシステムの中で、きわだってすぐれていた。ただ、もし、これで、低い方の音が、もう一歩ふみこんできて、積極的にその力感を示せば、本当にいうことがないのだが、その点で、多少上品にすぎたかなと思わなくもない。このみがきあげられた、よごれのないひびきは、実に魅力的だったということにいささかのためらいもない。

ビクター TT-101 + UA-7045 + CL-P1D

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 なかなか積極的だ。奥の方でひっそりとひびかせるというより、前の方に押しだして、そこで明るくひびかせようとする傾向がある。力の提示にも不足していない。ひびきそのものはあたたかい。決して寒色系ではない。したがって、あたたかい、あるいはまろやかなひびきを持ち味とするカートリッジと組みあわされたときには、そっちの方向に走りすぎて、音像を肥大させかねない。
 こう書いてくると、いかにもくせの強いプレーヤーシステムのように思われかねないが、そうではない。むしろ、積極的にカートリッジのキャラクターをいかすタイプのプレーヤーシステムというべきで、ただ、場合によっては、スギタルハオヨバザルガゴトシになることもないということだ。
 積極的だということは、力強いひびきへの反応にもすぐれているということで、それは、このプレーヤーシステムのきかせる音がしっかりした土台の上になりたっているからと考えることができるだろう。ひびきが幾分肥大しても、ひびきの輪郭があいまいにならないというのは、いいことだ。