サンスイのスピーカーシステムSL5、SL7の広告
(ステレオ 1970年4月号掲載)
Monthly Archives: 3月 1970 - Page 2
サンスイ SL-5, SL-7
ヤマハ YM-50B
ダイヤトーン DS-22B, DA-33U
JBL 375, 537-500
トリオ ST-5700 (IDS5700)
SME 3009
瀬川冬樹
ステレオ 4月号(1970年3月発行)
「世界の名器」より
英誌「グラモフォン」にSMEという聞き馴れないブランドのピックアップ・アームの広告を見たのは、10年以上も昔のことだったろうか──。どういうわけかイギリスという国は、古くから変わった形やユニークなメカニズムのピックアップを生む国である。ざっと思い出しても、フェランティ、リーク、B・J、デッカ……割合新しいところではオーディオ&デザイン、トランスクリプター等々……。
それぞれに独創に富んだ名品の中で、ひとりSMEだけか、アメリカや日本の、オーディオ・マニアをはじめとする国際的な名声と王座をかちえたというには、それなりの理由が十二分にある筈だ。
むろんSMEも、発表当初から現在のようなあかぬけた姿をしていたわけではなかった。その初期の製品3012型は、朝倉昭氏がサンプルとして入手されたものあたりが、日本で最も早かったものではないかと思う。現品を見せて頂いてからすでに10年の時が流れているが、当時のものは、現在のナイフ・エッジ支持部の三角形の山が無く、円筒をちょん切っただけのような素気ない形をしていたし、記憶がまちがっているかもしれないが、アームはアルミでなくステンレス・パイプだったように思う。キューイング・リフターのレバーの把手は、球形の黒いベークライトで、この形などは今のものよりわたくしは好きだ。それにしても、このアームは構造も動作もこれまでにない新しい考え方がとり入れられて、現物を手にしても、複雑な操作箇所のすべてを理解するまでには、かなりの時間を必要とした。
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SMEが、このきちがいじみたほどのめんどうな構造にもかかわらず、広くオーディオ・マニアに受け入れられたというのは、その広範な操作のひとつひとつが、極めて合理的、機能的に調整できて調整後の動作が非常に安定していることが第一にあげられる。とくに、ユニバーサル・アームの最大の問題点であったカートリッジ交換のシステムとして、それより以前にオルトフォンがすでに自社のアームに使っていた(つまりオルトフォン規格の)スクリュー・バヨネット・コネクターをそのまま採用したので、初期のSMEには、オルトフォン製の(指かけの裏にメイド・インデンマークの刻印のある)黒いプラスチックのシェルがついていたことをご承知のかたもおいでだろう。
どういう理由があったにしても、SMEがオルトフォン方式を「頂いた」ことは結果として甚だ賢明だったわけで、その後にもいろいろなカートリッジ交換法が発明されているものの、取付寸法以外にはカートリッジの寸法の規格というものの殆んどない現状で、あらゆるカートリッジを自由に交換するにはこのSME/オルトフォン方式が最も合理的であることに異論がないと思う。
その後ほどなく、SMEは現在のアロータイプの独特のアルミ合金プレス・ヘッドシェルに変わり、さらに現在のようなスクリーン状の超軽量シェルに変わった。この孔あきシェルも、最初の製品は今よりも薄く弱い材料で孔の数も多く、指先でひねりつぶせるほどキャシャだったが、すぐに共振などの悪弊に気がついたらしく現在のものに改められているが、しかしわたくしは内外のごく一部のハイコンプライアンス・タイプの製品を除いた多くのカートリッジに対して、現在の製品でもまだ軽量化のゆきすぎと強度の不足を感じている。またアーム本体についてみても、最近の製品になると製造工程をいわゆる「合理化」したのだろうが、やや量産製品的なラフさと、バランス・ウェイトまわりの使いにくさがあって、ウェイトが分割されていた以前の製品の方に、最盛期の完成した姿がみられるように思う。近ごろのものを分解してみると、ボール・ベアリングに MADE IN JAPAN と刻印されていて驚かされたりするが、むろん本質的な性能そのものは、少しも落ちるどころかいまや安定した製品として、安心して使うことができる。
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さきにふれたヘッドシェル・コネクターをはじめ、針圧印加オモリ部分に針圧目盛を設けたこと、ラテラル・バランサー、インサイドフォース打消しのバイアス機構、オイル・シリンダー利用のアーム・リフター、アーム・ベースをスライディングすることによってトラッキングエラーを修整することなど、あらゆる部分が、これ以後のわが国のユニバーサル・アームにいかに多くの影響を及ぼしたかについては、ここで改めてふれるまでもない。
ところでそきユニバーサル(万能)アームだが、すでに拙稿「オーディオ・ソフトウェア講座」の中でも述べたように、SMEのユニバーサリティとは、一個のカートリッジに対して徹底的に合わせ込んでゆくその多様な可能性の中から一個の「完成」を見出すための、つまり五徳ナイフ的な無能に通じやすい万能ではなく、単能を発見するための万能だといえるのだと思う。その操作のために、アームの物理的特性を十二分に知る必要があるわけだ。
などといいなから筆者自身が、多くのカートリッジを交換するとついSMEの便利さに寄りかかりたくなるし、、調整が難しいと説きながらそういうときにはずいぶんいい加減ないじりかたをしてしまう。逆にいえば、やはりそれほど便利なユニバーサル・アームでもあり、ラフな調整でも結構安定に動いてくれるだけの適応性も併せ持っているわけで、そうでなくては、これほど多くの人たちに愛用される理由がない。
なおSMEは COID(英国工業デザイン協議会=1944年設立の政府機関)が毎年選定するデザインセンター賞で、1962年度の10点の商品のひとつに選ばれている。受賞当時のものは、さきにふれた円筒形のサスペンションとオルトフォン型シェルつきの旧型の♯3012型であった。設計者は A. Robertson Aikman と W. J. Watkinson である。
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