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マイクロ MR-411

岩崎千明

スイングジャーナル 10月号(1969年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 マイクロ精機がいよいよ発売したレコード・プレイヤーMR411。「いよいよ」という言葉に、ふたつの意味がある。ひとつは永い間、ファンの間で普及価格でありながらグレードの高いプレイヤーが待たれていたことに対する「いよいよ」である。のこるもうひとつはファンの方には直接は関係ないかも知れないが、プレイヤーに進出したマイクロ精機のメーカーとしての意欲と期待である。
 最近、ステレオの進歩と、その需要層の拡大滲透が急速になされた結果、メーカーサイドの努力もあるがセパレート・ステレオ全盛期からプレイイヤー、アンプ、スピーカーの孤立パーツを組み合せるいわゆるコンポーネント・ステレオ期に大きく方向転換が行われつつある。
 そのため、アンプ、スピーカーにくらべて、レコード・プレイヤーの部門に優秀製品があまり多くはないこともファン側からは物足りなかった市場状況であった。
 そのため、依然として昔ながらのアーム、ターンテーブルを組み合せる形式を取らざるを得ない現状である。つまり専門メーカーのアームやターンテーブルの方が大メーカー・ブランドのプレイヤーにおけるアームやターンテーブルなどよりも、品質の上でより優れていると一般に信じられており、それを裏書きするかのような個々の製品が市販されているのはたしかな事実なのである。
 さて、マイクロ精機はアーム、カートリッジから出発してターンテーブルMB400とMB800をベルト・ドライブ方式のさきがけとしてティアックに続いて市販して成功を収め着々とプレイヤー部門の地盤を築き上げてきた。特に最近は輸出に加え大メーカーの下請けとしての業績も大いに上って躍進の著しいプレイヤー関係メーカーであり、この業界においての真の意味で量産体制の確立した数少ないメーカー規模をもっている。
 アームにしろ、カートリッジにしろ量産のなされ難い製品を大量生産すれば、それなりの設計技術や設備が必要であり、そのため、この業種は大きく育たないといわれてきたのをくつがえすほどに成長したのがマイクロ精機なのである。
 そして、市販のアームの中でマイクロの77シリーズがロングベストセラーを続け、さらに昨年発表したカートリッジM2100シリーズがベストセラーとなった。量産設備のととのったこのメーカーのムラのない品質に加え価格から考えられない高性能はベストセラーと始めから約束されていた。
 この高品質を結集したのが、今月発表のMR411プレイヤーなのである。
 しかも、このプレイヤーにみせるマイクロ精機の意気込みを製品の価格から推測できるのである。
 39、800円というこのプレイヤーの価格を聞いたとき、私はかたらわの編集部F君に「これはハタ迷惑の製品だネ」と話かけた。というのも同業メーカーにとって、このプレイヤーは大きな驚異になるに相連ないし今後の製品に大さな影響を与えるのが目に見えているからてある。ちょうど、昨年発表したM2100がその後の市販カートリッジの価格のオピニオンリーダーとなったのとも似ている。
 MR411のシンプルで抵抗なく受けいれられるフラットなデザインはその内部に眼を向けると裏ぶたにクロスした補強材に、メーカーの製品に対する細かい配慮を確められる。従来の薄いベニアの裏ぶたがしばしばハウリングの原因となっていたことに対する新機構だが、重いモータボードと共に注目してよい。
 最後にその再生音の品質だが、安定したトレースと素直なくせのない再生能力に定評あるM2100と77Hの組合せは「ロリンズ・オン・インパルス」の太い豪快なテナーを期待通りゆとりをもって楽々とSJ試聴室に響かせた。

クライスラー CE-1ac

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1969年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 スピーカー・システムの傑作が登場した。クライスラーCE1acがそ だ。最近の音響製品の中で、注目すべき商品だと思う。このスピーカー・システムを初めて見る時、まず、そのかっこよさに目を奪われるだろう。そのかっこよさは表面だけのものでは決してなく、細部に至るまで、ものを創る人の細かい神経と愛情の通った入念な仕上による本物のかっこよさなのである。サランネットをつけないで裸で使う時のことを考えて、バッフル板の表面は美しく仕上げられ、紗をかけられたオリーブ色のウーハーを基調にメカニカルな美しさに満ちたデザインである。サランネットといえば、これが色ちがいが3枚も付属していて部屋や好みに応じて選択できるようになっているのも心憎いかぎりだ。しかし、このサランの色は私個人としてはどれもあまり感心しないもので、このシステムはサランをはずして裸で使うのがベストである。音質上もそのほうが断然よろしい。ウーハーの周囲はレザー張り、上半分は艶消し黒色仕上げで、2個のアッテネ一夕ーを中心に美しいレター・プリントが施されている。後面には、チャンネル・システム用のダイレクト・インプットとネットワーク使用の2種のインプットが美しく並び、その切換スイッチもターミナルも上等だ。オーディオ機械作りのアマチュアリズムとプロ精神が見事に調和した作品という雰囲気が溢れている。
 さて肝心の音だが、これだけの入念な外装仕上げをする心が音をおろそかにする筈はない。真に美しい外観というものは機能を象徴するものであるし、本来、メカニズムのデザインというものは、そうしたものでなければならない。このCE1acの音のまとめには、クライスラーのスタッフはALTECをモデルにしたといっている。ウェスターン・エレクトリック時代からの澄んでのびやかな音の流れをくんでいるアルテックのシステムの本領は大型ホーン・システムによるのだが、その音を、小型ブックシェルフで追求しようという、まことに虫のよいぜいたくな欲求から、このスピーカー・システムは生れたのである。したがって、音質はアルテック系の大型システムのもつ、抜けのよさを狙いながら、システムの構造は、ARをモデルにしている。そもそも、アメリカにおけるアルテックとARという両者は、互いに大変意識し合っているライバル同志で、そのセオリーの点で、また、音質の点でも、対照的な存在である。一言にしていえば、アルテックの音は先程から何度も書いたが、透明である。ARの音は締って無駄がない。このCE1acは、構造的にアコースティック・サスペンションの完全密閉型、つまリAR型も採用しているので、その低音域の充実した締りはこのタイプ共通のものをもっている。そしてバランス的には、中音域から高城にかけての抜けがよいので、たしかにアルテックに共通したキャラクターなのだ。SJ試聴室では、アルテックのA7システム(箱は同社設計の国産だ)を標準システムとしておいてあるが、これと切換えてみて、その音域バランスにはかなり似通った個性を認めた。また、私個人、自宅でゆっくり試聴する機会にも恵まれたが、標準になるバランスをもちながら、音に味があってアトラクティヴである。周波数特性だけフラットなシステムには、時として音の生命感のない、つまらないものが多いが、このシステムには個性があって音楽が生きるのである。29、900円という価格とのバランス上からも価値のある商品であると思う。さんざんほめそやしたが、かといって、さらに欲をいえばいえなくもない。高域の甘美な味わいがもっとソリッドで品位の高い音になればなおよい。とにかくこの製品は、最近のヒット商品とするに足るすばらしいもので、私の録音したレコードも録音した当人として納得のできるバランスて、しかも音楽の生命溢れる再生が聴かれたことをつけ加えておこう。

オンキョー Integra 701, Integra 713

オンキョーのプリメインアンプIntegra 701、Integra 713の広告
(スイングジャーナル 1969年10月号掲載)

Integra701

ラックス SQ707

ラックスのプリメインアンプSQ707の広告
(スイングジャーナル 1969年10月号掲載)

SQ707

オンキョー E-83A, E-154A, F-500

オンキョーのスピーカーシステムE83A、E154A、F500の広告
(スイングジャーナル 1969年10月号掲載)

E154

ビクター ARM-1000

ビクターのトーンアームARM1000の広告
(スイングジャーナル 1969年10月号掲載)

ARM1000

ビクター GB-1B

ビクターのスピーカーシステムGB1Bの広告
(スイングジャーナル 1969年10月号掲載)

GB1B