黒田恭一
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より
●デンオンDL103Sの基本的性格
味もそっけもない──という否定的ないい方も、多分、不可能ではないだろう。ことさらひびきの表情をきわだてるタイプのカートリッジではないからだ。ただ、このカートリッジのきかせる音は、いつでも、大変に折目正しい。いつまでたっても、足をくずさずに、正座しつづける男のようだ。しかし、語尾を笑いであいまいにしてしまう男のはなしより、しっかりした声でいうべきことを、しかも感情をおさえぎみにはなす男の方が信用できると思うこともなくはない。しっかりしていて、あいまいさを残さない。どちらかといえば寒色系の音で、ひびきの角をしっかり示す。見事なカートリッジだ。
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