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セレッション Ditton 33

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ひびきが薄い。ピッチカートは音が糸の上をわたっているかのようだ。
❷ひびきはふくらみがちで、本来の力に不足する。
❸フラジオレットのひびきがその特徴を強調する。
❹多少これみよがしに第1ヴァイオリンがひびく。表情を誇張ぎみだ。
❺高音弦が幾分メタリックにひびき、迫力に欠ける。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、かなり大きくふくらむ。
❷音色的特徴を拡大して示す傾向がなくもない。
❸ひびきがふくらみすぎる。もう少しキメ細かさがほしい。
❹ひびきの特徴を示しはするが、これみよがしになりがちだ。
❺ソロをとる楽器がきわだって前にでる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声は風呂場の中のようにきこえて自然でない。
❷接近感をこれみよがしに示すが、音像は大きい。
❸うたった声も風呂場の中のようだ。クラリネットは音色を誇張する。
❹声のなめらかさがなく、はった声はメタリックになる。
❺ひびきをばらばらに示して、とけあう感じが不足する。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の音がふくらみがちで、鮮明さに欠ける。
❷あたかも声が余分なひびきをひきずってきているかのようだ。
❸言葉のたち方が充分でないところがある。
❹ひびきに軽やかさがたりないので、明瞭とはいいがたい。
❺のびてはいるが、自然なのびとはいいがたい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比を、これみよがしに示すにとどまる。
❷奥へのひきはとれるが、クレッシェンドに自然さが欠ける。
❸浮遊感は一応示すが、提示される空間は、むしろ横にひろがりがちだ。
❹前の音と後の音との間で質的に違うところがある。
❺ピークでは硬く、メタリックなひびきになりがちだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびきは、かすかとはいいがたく、かなり積極的だ。
❷ギターの音像が大きいので、せりだしてくる効果がいきない。
❸ひびきに力がないので、空虚さがついてまわる。
❹きわめて特徴的なひびき方をする。このひびきがきわだつのは事実だが。
❺くっきり、きわめて特徴的にくっきり示される。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶バスが強調されがちで、そのためにさわやかさに欠ける。
❷ここで求められる効果は示すが、いかにもひびきが重い。
❸ひびきが充分に乾いているとはいいがたい。
❹ドラムスのひびきは、ひきずりがちでシャープさがたりない。
❺言葉がもう少しすっきりたってくれた方がいい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像が極端に大きい。ひびきに力がほしい。
❷いくぶん拡大気味に示すが、なまなましいとはいいがたい。
❸音の尻尾は充分に示すものの、それがスケール感の提示にはならない。
❹反応がさらにシャープなら、より一層の迫力をうみだせるのだろうが。
❺音像的な対比の点で少なからぬ問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきのひろがりは示すが、ドラムスのつっこみに鋭く反応してほしい。
❷太くひろがってきこえてくるので、本来の効果から遠い。
❸大きく横にひろがるものの、はりだすわけではない。
❹もうひとつひきが充分でない。ひびきの目がかなりつんでいる。
❺ひびきがさらにこりっとするといいのだろうが。

座鬼太鼓座
❶尺八は比較的近いところにいる。音像も大きい。
❷脂っぽくなっているわけではないが、かなりふくれている。
❸きこえる。音の輪郭はさだかでなく、ぼやけがちだ。
❹ひびきはひろがるものの、力感の提示で不足する。
❺このひびきに硬質なところがあるとさらに効果的なのだろうが。

セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 柔らかく暖かい、適度に重厚で渋い気品のある上質の肌ざわりが素晴らしい。今回用意したレコードの中でも再生の難しいブラームス(P協)でも、いかにも良いホールでよく響き溶け合う斉奏(トゥッティ)の音のバランスも厚みも雰囲気も、これほどみごとに聴かせたスピーカーは今回の30機種中の第一位(ベストワン)だ。ベートーヴェンのセプテットでは、たとえばクラリネットに明らかに生きた人間の暖かく湿った息が吹き込まれるのが聴きとれる、というよりは演奏者たちの弾みのついた気持までがこちらに伝わってくるようだ。F=ディスカウのシューマンでも、声の裏にかすかに尾を引いてゆくホールトーンの微妙な色あいさえ聴きとれ、歌い手のエクスプレッション、というよりもエモーションが伝わってくる。バルバラのシャンソンでも、このレコードのしっとりした雰囲気(プレゼンス)をここまで聴かせたスピーカーはほかにない。こうした柔らかさを持ちながら〝SIDE BY SIDE〟でのベーゼンドルファーの重厚な艶や高域のタッチも、決してふやけずに出てくるし、何よりも奏者のスウィンギングな心持ちが再現されて聴き手を楽しい気持に誘う。シェフィールドのパーカッションも、カートリッジを4000DIIIにすると、鮮烈さこそないが決して力の弱くない、しかしメカニックでない人間の作り出す音楽がきこえてくる。床にじかに、背面を壁に近づけ気味に、左右に広く拡げる置き方がよかった。

セレッション Ditton 66

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは遠くひびく。全体的に遠い。
❷低音弦の動きに鮮明さと張りが不足している。
❸各楽器のひびきのとけあい方は悪くない。
❹第1ヴァイオリンがたっぷりひびくところはいい。
❺一応のもりあがりは示すが、細部くっきり型とはいいがたい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像が大きく、たっぷりひびく。
❷音色対比は充分で、よくとけあう。
❸室内オーケストラのものとしては、ひびきが重すぎる。
❹一応の特徴は示すが、さわやかとはいいがたい。
❺音色の特徴をきわだたせる傾向がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像はかなり大きい。吸う息、吐く息を誇張しがちだ。
❷接近感はききとりにくい。残響をひっぱりすぎるためだ。
❸オーケストラと声とのとけあい方は悪くない。
❹はった声のかたくならないのはいいが、鮮明さに欠ける。
❺各々の音色を充分に示すものの、鮮明さが不足だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像が大きいので、横一列の並び方がききとりにくい。
❷ひびきがひきずりがちなため、音楽の鮮明さが不足する。
❸かなりたっぷり残響をひっぱっているので、細部は不鮮明だ。
❹各声部のからみあいは、はっきりしにくい。
❺最後のひびきは一応ひっぱられている。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ポンという低い音のひびき方が鈍い。
❷後方へのひびきのひきは、一応とれている。
❸もう少しひびきに浮遊感がほしい。
❹前後のへだたりはとれているが、音ののびに自然さがない。
❺ピークで示される迫力はなかなかのものだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびきにもう少し透明感がほしい。
❷ギターの音像があまりに大きすぎる。
❸ひびきが大きくふくらんで、本来の効果を発揮しえない。
❹かなりこれみよがしにめだってひびく。
❺他のひびきの中にうめこまれてしまっている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶いかにも豊満にひびきすぎて、異色だ。
❷重厚ではあるが、このグループのサウンドらしからぬものがある。
❸必ずしも乾いているとはいいがたい。
❹ドラムスの音像は大きく、力を強調する。
❺声は総じてうめこまれがちで、効果的とはいえない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はきわめて大きいが、力強いとはいいがたい。
❷指の動きのみならず、息づかいまでもきかせる。
❸幾分誇張ぎみに音の尻尾をきかせる。
❹力を感じさせるが、こまかい音の動きに対しては問題がある。
❺音像的な対比は自然でないところがある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶重くひびくドラムスに切れの鋭さがほしい。
❷ブラスのつっこみは、力強くはあるが、輝きに不足している。
❸きわめて積極的に前方に張りだしている。
❹音の見通しがよくないので、トランペットの効果はいきない。
❺もう少し鋭くリズムが刻まれると、めりはりがつくだろう。

座鬼太鼓座
❶比較的近くできこえるので、距離感がない。
❷さらに脂っぽさがなくなれば、尺八の特徴が示せるだろう。
❸ききとれるものの、末広がりのひびきではない。
❹力感ゆたかなきこえ方がして、迫力はある。
❺きこえる。しかし大太鼓の消え方は示せていない。

セレッション UL6

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ローボーイ型プロポーションをもつ小型なシステムである。構成は、セレッションの伝統を感じさせる、いわゆるドロンコーンを使った2ウェイ方式だが、このシステムの音色は、かなり明るく軽やかである。小型システムの弱点である許容入力は、かなり大きく、のびやかに飽和感のない音を聞かせるあたりは、新しいスピーカーらしい魅力である。

セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 仕事先に常備してあるので聴く機会が多いが、聴けば聴くほど惚れ込んでいる。はじめのうちはオペラやシンフォニーのスケール感や響きの自然さに最も長所を発揮すると感じていたが、最近ではポピュラーやロックまでも含めて、本来の性格である穏やかで素直な響きが好みに合いさえすれば、音楽の種類を限定する必要なく、くつろいだ気分で楽しませてくれる優秀なスピーカーだという実感を次第に強めている。

セレッション Ditton 15

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリスのセレッションのシリーズは、現在このディットンとULの二種を柱にしているが、ディットンシリーズのほうが、伝統的な渋さと風格をもち、ULは明るく分離のよいサウンドだ。この15はディットンシリーズ中最小のシステムで、2ウェイ・2スピーカーにドロンコーンつきである。小味な魅力。

セレッション UL6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーの音をどうしたら、人の感覚に美しく響かせることが出来るかをよく心得たセレッションらしい傑作だ。スピーカー作りのキャリアのベテランが、家庭で音楽を聴くという目的を十二分に知りつくして作り上げたコンパクトながら、堂々とした音の再生も可能なシステム。品位の高い音の風格が感じられる。

セレッション UL6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリスの小型スピーカーの中に、えてして高域の細いやや腺病質的な音質があるが、セレッションの製品にはそういう弱点が少なく、中域のしっかりした上品な艶のある音色で、音楽をとても生き生きと聴かせる。この小さい箱を見た目の印象からは驚くほどの低音も出る。ごく質の良いセカンドスピーカーが欲しいと相談されたら、一〜二に推したい。

セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 イギリスの製品の中では総じて温かく穏やかな音をねらうのがセレッションの特徴だが、66は中でも豊かで厚みのある、スケールの大きい音を聴かせる。リークやタンノイの硬質な艶は持っていないし、スペンドールBCIIの自然なワイドレンジよりももう少し意識的にふくらみをつけた音だから、ちょっと聴くとシャープさに欠けた、おっとりした音に聴こえるが、管弦楽曲やオペラをわりあいに音量を上げて鳴らしたときの、少しのやかましさもなくそれでいて音の実体感豊かな、身体を包みこむような快い響きは、ほかに類似のスピーカーがちょっと思い浮かばない独特の世界だ。決して鋭敏なタイプでないが柔らかい響きの中にも適度の解像力を保ち、抑えこんだ感じが少しもないのにあばれるのでなくほどよい色づけで、これがイギリス人のいうグッドリプロダクションかと納得させられるような練り上げられたレコードの世界を展開する。ただ、国内プレスに多い乾いた音のレコードでは、この良さは聴きとりにくいかもしれない。

採点:94点

セレッション UL6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 外形の小さいこと、それに価格を頭に置いて聴くと、小型らしからぬ低音の厚みやスケールの豊かなことに驚いてしまう。といってもたとえばアルゲリッチの新しい録音(36号120ページ)を鳴らすと、グランドピアノの実体感を鳴らすのはとても無理なことがわかる。が、その点を割引いても、十分広い全音域に亘って上品な艶と品位を保って、イギリス製品にありがちの中域の薄手なところも感じられず、みごとなバランスで聴き惚れさせる。あまり神経質でないところがいい。しかしそれでいて、トーンコントロールでハイを上げるとおもしろいほど敏感に反応するし、カートリッジやアンプの音色の違いにも正確に応える。私個人の聴き方からすると、EMTのような解像力の鋭いカートリッジや、そういう傾向のアンプでドライブする方がいっそう音が生きてくる。大きさから考えても、ピアノの再生能力から考えてもサブ(セカンド)スピーカー的な存在だが、しかしそれではもったいないと思える程度のクォリティを示す。

採点:91点

セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音の暖かさ穏やかさという点で、むろん25や15と同じ血であるにしても、もっと自然なバランスに仕上っていて、オーケストラやオペラなどに威力を発揮する注目製品。

セレッション Ditton 15

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 柔らかい音ながら、キラリと光る輝きがあるのは、やはり長年にわたる英国系スピーカー独得のキャラクターである。小型システムながらのびのびした低音が好ましい。

セレッション Ditton 25

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 独特のトールボーイのプロポーション。本質的には特性を重視したワイドレンジの設計なのに、鳴ってくる音には、良質の電蓄に磨きをかけたような穏やかな響きが聴きとれる。

セレッション HF1300MKII

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 英国系のスピーカーシステムに、もっとも多く採用されている定評のあるユニットだ。滑らかで、緻密な音質は、大変に素晴らしく他社のウーファーとも幅広くマッチする。

セレッション Ditton 15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 セレッションらしい品のいい音で、普及型にもかかわらず、高品位なクラシック音楽の再生にも満足感が得られる。国産の同価格クラスにない雰囲気のある音が聴ける。

セレッション Ditton 25

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 さすがにDitton15の兄貴分だけあって、トータルな性格は、よく似てはいるが、充分にあるスケール感は、2ランクばかり上といっても過言ではあるまい。

セレッション Ditton 15

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 セレッションらしい品のいい音で、普及型にもかかわらず、高品位なクラシック音楽の再生にも満足感が得られる。国産の同価格クラスにない雰囲気の或る音が聴ける。

セレッション HF1300MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリス製のスピーカーシステムに比較的多く採用されている実績のある、適応範囲の広いトゥイーター。BBCモニターの高域はこれの改良型。高域のレインジはそう広くない。

セレッション Ditton 66, ギャラクトロン MK16, MK160, シネコ MK2002

セレッションのスピーカーシステムDitton 66、ギャラクトロンのコントロールアンプMK16、パワーアンプMK160、シネコのアナログプレーヤーMK2002の広告(輸入元:成川商会)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

narikawa

セレッション Ditton 44

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 セレッションとしてはわりあいに新しい製品だが、デザインの共通性からみればディットン15や25などのロングセラー製品と一連の系列を整え直したという印象。というのも、この音はディットン25のところでも言ったように、いわゆる現代の高忠実度再生用のスピーカーというよりも、ヨーロッパの伝統的な電蓄のどこか古めかしい、しかし何とも息の通うソフトな響きを先ず聴かせるからで、そういうつもりで評価してそれを承知で買うのでないと期待外れという結果になる。たとえば、いわゆるハイファイ・スピーカー、或いはモニター・スピーカーのような音の切れこみや解像力はディットン44には無い。低音も多少ボンつくような鳴り方で、男声などふくらむ傾向がある。が、弦のアンサンブルもピアノのコードも、全く無理なく自然に溶け合いよくバランスして、安定で、ウォームで、それでいてよく唱う。つまり現代ふうのシャープな音とは正反対に、渋い、マットな質感で、目立たないが永く聴いて味わいの出てくるという音質だ。レベルコントロールが無いので置き方をくふうしてみたが、せいぜい30cm以下の、あまり高くない台に載せる方が良かった。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆★

セレッション Ditton 25

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ずいぶん以前から聴き馴染んだスピーカーだったが、今回の製品では外装デザインが変り、音質も少しだが変っていると聴きとれた。何よりもまず、暖かい音、穏やかな音、心温まるようなしみじみとした鳴り方が特色だ。言いかえればこういう音は、いわゆる高忠実度スピーカーの、透徹に音を分析してゆく完璧さとは逆のゆき方。イギリスには、ハイ・フィデリティに対応するグッドリプロダクションという言葉があるがまさにそのものを思わせる。実に快い安心感に身をまかせておける。何とも豊かな気持になってゆき、ハイがどうのレインジがどうのという聴き方を一切放棄したところからでなくてはこの鳴り方の魅力は説明しにくい。ヨーロッパには古くから良質の電気蓄音機の作り方の伝統があり、音楽のバランスを決してくずしたりすることなく、しかもプログラムの欠点を露わにしたり耳を刺激したりするような鋭い音を注意深くとり去って、良識ある姿勢を保ったこういう鳴り方が、ハイファイ・スピーカーの──たとえばKEF♯104の閃くような鳴り方に対して一方に厳として存在している。このスピーカーは、床の上に直接置いた方がバランスがいい。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆

セレッション Ditton 15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 中程度以下の音量で、ことに小編成の曲やヴォーカルなどを鳴らすかぎり、ひとつひとつの楽器や音像をくっきりと彫琢するように、磨かれた艶を感じさせる彫りの深い音で鳴る。低音の量感はあまり豊かとは言えないがキャビネットの共鳴や中低域の濁りが注意深く除かれて透明で鋭敏な音を聴かせる。スキャンダイナのA25MkIIと比較してみたが、ディットンとくらべるとA25の方が聴感上は高域が延びたように聴きとれ弦合奏などで目の前が開けたようにひろがるが、音像は平面的。ディットンは音像が近接した感じで立体的に聴こえる。たとえばヴォーカルでは、妙な言い方だがA25は唇を横に開くように広がり、ディットンは唇をとがらしたように前に張り出すようにも聴こえる。ただ、ハイパワーには弱みをみせ、「第九」などトゥッティでは音がのびきらないしユニゾンの各声部がきれいに分離しなくなる。なお今回のものは従来何度もとりあげたものと外装が変わり、音のバランスも以前のタイプより穏やかになっている。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆

セレッション Ditton 15, Ditton 25, ゴールドリング 800 Super E

セレッションのスピーカーシステムDitton 15、Ditton 25、ゴールドリングのカートリッジ800 Super Eの広告(輸入元:成川商会)
(ステレオ 1972年11月号掲載)

Celestion

セレッション Ditton 15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 本誌14号の組合せ特集のときにも、割合に好感の持てる音質だと感じたが、今回あらためてテストしてみて、輸入品のこのクラスのスピーカー・システムの中でも一~二といっていいほど良くできたスピーカー・システムであることが感じられた。なによりもまず、中低域が豊かであたたかく、コーラスなどでも混濁しないで、美しいハーモニイを聴かせるあたりに魅力がある。音全体にツヤがあり、ダイナコがホール・トーン的に距離感を持って響くのに対して、こちらは楽器がぐっと近接する感じが対照的だ。音域をやたらと広げるよりも、音の響きの美しさに重点を置いた作りかただ。実際の使用にあたって、トーン・コントロールで音のバランスをやや補整した方がいいと思われるあたり、スーパー・リントン等と一脈通じるところもあり、サブスピーカーとして上手に使いこなしたい製品。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★★
独奏:★★★
声楽:★★★★
音の品位:★★★★★
音のバランス:★★★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★★★
コストパフォーマンス:★★★★
(特選)