フィデリティ・リサーチのトーンアームFR54の広告
(ステレオ 1972年11月号掲載)
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フィデリティ・リサーチ FR-54
フィデリティ・リサーチ FR-5EX
フィデリティ・リサーチ FR-54
岩崎千明
電波科学 12月号(1971年11月発行)
「実戦的パーツレビュー」より
FRというブランドで、高級マニアの間でひろく親しまれているカートリッジとアームのメーカーであるフィデリティ・リサーチが、久しぶりにアームの新形FR54を発売した。
ステレオ業界の中でも、メーカーの数の多いこの分野では、急速に進む技術開発に加え、宣伝的な要素もあって新製品の発表がかなり早いサイクルでなされているのが通例である。
この中にあって、FRは体質的に共通点のあるグレースとともに、新形発表のチャンスの少ないメーカーである。
ひとたび市場に送った製品はこれを基に新技術を加えて、いつの時代においても、性能上の高い水準に保つべく努力を積み重ねていく、といった姿勢をくずさない。これは、国内メーカーに少なく、海外メーカー、特に歴史のある老舗によくみられる特長である。
これが、商業ベース上メーカーとして好ましいかどうかは別として、自社の技術に自信と誇をもっていなければ保つことのできないのは確かな事実だ。
そして、この色彩を一段と濃く持っているのがFRなのである。
こう語れば新製品FR54は、同社の従来の軽量級アームFR24とは、全然違ったアームであることがお判りだろう。
FR24が軽針圧用と、最初から銘うってカートリッジ自重が2grから12grの範囲と使用目的をしぼっているのに対し、FR54は自重4grから32gr、つまり市販カートリッジ中もっとも重い、オルトフォンSPU/GTさえう装着使用できる数少ない万能形の高級アームである。ただ、はっきりしておきたいのは、万能形であっても、無論その性能は、FR24そのものの高感度など動作を上まわるこそすれ、決して下まわるということはない。
つまり、カートリッジのトレース特性さえ十分に優れていれば、このアームはなんと0.7grで普遍的カッティングレベルのレコードを完全にトレースすることができる。それはシュアV15IIにしろ、ADC25にしろ、エンパイアにしろ、オルトフォンM15にしろ、さらにFR5Eにしても、このアームの組合せにより、最良コンディションで動作してくれることを約束するのである。
オルトフォンといえば、このFRの新形アームは、オルトフォンの新しいアームと、あらゆる無駄を廃した現代的デザインの共通点を感じる。
2つ並べてみると、オルトフォンがゆるやかに彎曲するSカーブを打出しているのに対して、このFRは、ストレートな直線を組み合わせたS寺アームである。その組合せも、FRならではの実に美しい組み方が、メカニックな中にも品格と優雅なたたずまいをかもし出しているのである。
FRのこの姿はすでに2ヵ月前から広告写真で知っていたのだが、現物を前にすると、とうてい写真の上では感じとられ得ない気品に圧倒される。
欧州オーディオ界にあってずば抜けた技術と伝統とを誇るオルトフォンのアームと並べてみると、両者とも、風格と精密技術の粋を感じるが、FRの方には、それに加えて気品の高ささえただよい出ているのが感じられる。オルトフォンの、冷徹なはだを強調したメタリックなタッチとは対称的といえよう。
さて、シンプルなデザインの美しさにふれすぎたが、このFR54の真髄は、そのアーム本来の再生にもある。
アームをFR24からFR54に換えて、針を音溝に落すときにこそ、このアームが発売されたもうびとつの理由が判るに違いない。メーカーの追究する音楽再生の技術の、限りない向上が4年間の間に、2つのアームを出すべき態勢というか、責任というかを育ててきたのであろう。
このFR54によって、まるでカートリッジはその低域から中域に及ぶ中声域全般にわたって音の豊かさと深さとが加わって、ソロの圧力がひときわ冴える、といってもいいすぎではなかろう。尋ねてみると、このアームの質量分布は、音楽再生の目的で、今まで以上に留意されて設計されたときく。
軸受けまでのアーム自体が6mm径から10mm径に改められたのは、単に万能の目的だけではなかったとみた。
ハウリングというディスク演奏上の宿命的欠陥も、このアームは格段と押さえることができ、使いやすくなったというのもうなづけられる。
使いやすいといえば、カウンターウェイトのロックが、FR24と違ってアーム上の小さなポッチを押すだけで外れて、回転調整できるようになったのも、小さいことなのだが、大きな進歩だ。
フィデリティ・リサーチ FR-5, FR-5E
フィデリティ・リサーチ FR-5, FR-5E
フィデリティ・リサーチ FR-5, FR-5E
フィデリティ・リサーチ FR-5
フィデリティ・リサーチ FR-5
フィデリティ・リサーチ FR-5, FR-1MK2
フィデリティ・リサーチ FR-24MK2
フィデリティ・リサーチ FR-5, FR-5E
フィデリティ・リサーチ FR-1MK2
瀬川冬樹
ステレオサウンド 12号(1969年9月発行)
特集・「最新カートリッジ40機種のブラインド試聴」より
スクラッチノイズがよくおさえられ、聴感上の歪みも少ないし、音のバランスも良い。適度の奥行きもあるし、やわらかく、温かいきれいな音で、特にピアノの高域など、いわゆる粒の立ったというのか、タッチの明瞭な独特の美しさも感じられる。強いてあげるべき欠点も無いし、おそらく計測上の特性も相当に良いという製品なのだろうか、どういうものか聴き終わった後の印象が稀薄で、個人的には食指の動きにくい音であった。たとえば、ここにもう少しシャープな切れ味を求めたい。生き生きとした躍動感が欲しい。特にピアノやジャズでは、低域の締まりがやや不足しているし、中音域がもっと充実していて欲しい。フォルティシモでやや音が伸びきらない点も気になった。
オーケストラ:☆☆☆☆
ピアノ:☆☆☆☆★
弦楽器:☆☆☆★
声楽:☆☆☆☆
コーラス:☆☆☆★
ジャズ:☆☆☆★
ムード:☆☆☆★
打楽器:☆☆☆★
総合評価:75
コストパフォーマンス:80
フィデリティ・リサーチ FR-5E
瀬川冬樹
ステレオサウンド 12号(1969年9月発行)
特集・「最新カートリッジ40機種のブラインド試聴」より
聴感上では中高域がややひっこみ気味で、ハイ・エンドのしゃくれ上がった特長のある音をもっているが、総じて美しいつやっぽい音質に魅力が感じられる。合唱の項目の点数だけがよくないのは、大編成のオケと混声合唱というように音の厚みを要求される曲であるのは、前記の特性の傾向ゆえか、多少ドンシャリ的な、中音域の薄っぺらな音になってしまったからで、この辺がこのカートリッジの弱点らしい。従って、時間をかけていろいろなレコードでテストすれば、あるいはもっと点数が下がるかもしれないが、今回のテストに限っていえば、歪みの少ない柔らかく美しい音、切れ込みの良いよく抜けた分離の良さ、独特のツヤっぽさ等、一応上位にランクされてよい製品のようだ。
オーケストラ:☆☆☆☆★
ピアノ:☆☆☆☆
弦楽器:☆☆☆☆★
声楽:☆☆☆☆★
コーラス:☆☆☆
ジャズ:☆☆☆☆★
ムード:☆☆☆☆★
打楽器:☆☆☆☆
総合評価:85
コストパフォーマンス:90
フィデリティ・リサーチ FR-5, FR-5E
フィデリティ・リサーチ FR-5
菅野沖彦
スイングジャーナル 6月号(1969年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
カートリッジが再生装置の入口として大切なことは今さらいうまでもない。確実にレコードの音溝に刻まれた振動を検出して、素直に電気エネルギーに変換するのが役目である溝を針がたどって、そのふれを発電素子に伝えるという点ではどのカートリッジも同じ方法によっている。つまりカンチレパーといわれるパイプの棒の先に針がついていて、その反対側にマグネットなりコイルなりあるいはその他のエネルギ一変換に必要な物体がついているわけだ。その材質や形状には各設計者の意図や技術が反影していて千差万別だが、基本構造には変りがない。この振動体を弾性体て支えて、針先が常に所定の位置を保つようになっているがこれをダンパーといっている。これらを総称して振動系というが、この振動系の設計製造がカートリッジの特性をほぼ決定するのである。これを電気エネルギ一に変換する変換系にはいろいろな方式があるが、まず振動系が正しく働かなければ、そのあとにいかなる忠実な変換系を用意してもまったく無意味である。MMとかMCとか、あるいは光電子式とかいったカートリッジの種類はすべて変換系についての分類であるが、こうしたタイプの差だけをもってどれがよいか悪いかを決めこむことは出来ないという理由がここにある。
フィデリティ・リサーチというピックアップ専門メーカーは従来その代表作FR1シリーズで高い信頼を得てきたメーカーである。FR1は改良型MK2になってますます力を発揮し、最高級カートリッジとして広く認められている。このFR1系はMC型であったから、FRといえばMCカートリッジという印象をもっておられる方もあるだろう。同社は古くからMM型の開発もしていたらしいが、製品として市場に登場するのはこのFR5が初めてである。MM、MCというタイプの違いこそあれ、FRの専門メーカーとしてのキメの細い設計製造技術は、まず振動系の完成度の高さに特徴があると思われ、このMM型の出現には大きな期待が寄せられた。
MM型はMC型に対して使用上いくつかの利点をもっている。まず、出力電圧が高く、そのまま普通のアンプに接続できること、次に針先の交換が容易であることなどである。商品として大量生産向きであることもひとつのメリットだが、これはメーカー・サイドの問題である。そして、このFR5はMM型とはいえ、本体内のコイルのターンニングが特殊で、あまり量産向きではない。このMM型はいかにもFRらしい、こった設計でマニア向けの高級品といえる。磁性体の歪については、すでにFRT3という整合トランスで立証済の高い技術力をもつFRだから低歪率のMM型カートリッジの出現となったのも不思議ではない。ここへくると話は変換系の問題になるのだが、水準以上の振動系が出来上ると変換系の直線性も問題になってくるのである。ひらたくいえば、正確に楽器をたたくテクニックが完成してこそ次に音楽性の問題がでてくるようなものだ。もっとも音楽性のない奴はテクニックも完成しにくいように、カートリッジも変換系と振動系は密接な関係があって実際には2つを分けて考えるのが難しい。ある種の変換系では振動系を理想的にもっていけないという制約もある。その点、MC、MMといった方式では非常に高度なものを実現化できるのである。FR1の追求によって生れた高い機械的技術と磁性歪に関する豊富な資料が生んだこのFR5はMMカートリッジに新風を吹きこむものだ。
音質は非常にクリアーで歪が少ない。これはジャズのプログラム・ソースに対してはパンチの欠けた弱々しい印象につながる場合もあるかもしれない。特にある種のルディ・ヴァン・ゲルダーの録音のように、どす黒い凄みのある音には品がよすぎるようだ。しかし、物理的に歪の少い高度な録音、たとえばボブ・シンプソンのO・ピーターソンの録音とかコンテンポラリーのロイ・デュナンのものなどには真価を発揮する。のびきった高域特性が保証するシンバルのハーモニックスの美しさ、デリケートな息使いの手にとるような再現が見事であった。
フィデリティ・リサーチ FR-1MK2
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1968年10月発行)
「ベスト・セラー診断」より
フィデリティ・リサーチ、略してFRというイニシアルは、マニア間で高く評価されているカートリッジ、トーン・アームの専門メーカーである。FRは社長が技術者で、会社というよりは研究所といったほうがよいような性格のため、広く大衆的な商品はつくっていない。この社の代表製品はFR1と呼ばれるムービング・コイル型のカートリッジで、昨年MKIIという改良型を発表して現在に至っている。この欄でもカートリッジを何回かとりあげ、そのたびに、再生装置の音の入口を受持つ変換器としての重要性については詳細に解説されている。そして、現状では理想的なカートリッジというものの存在が理論的には成立しても、実際の商品となると困難だというのが偽らざる実状のようである。つまり、物理特性をみても、あらゆるカートリッジがあらゆるパターンを示し、皆それぞれ専門家によって慎重に開発され製作されているのに……と不思議になるくらいである。ましてやその音質、音色となるとまったく千差万別で、どれが本当の音かは判定不可能といってもよい。一般にはレコードの音がどうであるべきかという基準がない(そのレコードを作った人でさえ本当のそのレコードの音を知ることはむずかしい)から音質や音色を感覚的に受けとって嗜好性をもって優劣を判断することにならざるを得ないわけだ。
話は少々ややこしくなってしまったが、そういう具合で良いカートリッジというものを、いずれも水準以上の最高級品の中から見出すことはむずかしいのである。FR1MKIIは、そうした高級品の中でも、一段と明確に識別のできる良さをもっている。それは高音がよくでるとかどぎついとか、低音が豊かだとかいった、いわば外面的な特質ではなく強いて表現すれば透明な質といった本質的な音のクォリティにおいてである。FR1の時代には、かなり外面的な特長もそなえていて、音の色づけ、いわゆるカラリゼイションを感じさせるものがあった。それにもかかわらず質的なクォリティの良さを高く評価されていたのだが、MKIIとなってからは、そうしたカラリゼイションも一掃され本当に素直な本来のクォリティが現れてきた。そしてつけ加えておかなければならないことは、FRT3というトランスの存在についてである。ムービング・コイル型は出力インピーダンスが低く、一般のアンプのフォノ入力回路にはトランスかヘッド・アンプを介して接続しなければならない(例外もある)。これがMC型のハンディで、そのヘッド・アンプやトランスの性能が大きく問題とされた。せっかく、本来優れた変換器であるMC型が、その後のインピーダンス・マッチングや昇圧の段階で歪を増加させたのでは何にもならないからである。同社が最近発売したFRT3というトランスはコアーとコイルの巻き方に特別な設計と工夫のされた恐しく手のこんだもので、その歪の少なさは抜群である。FR1MKIIはFRT3のコンビをもってまったく清澄な音を聴かせてくれるようになった。FRT3は他のMC型カートリッジに使っても、はっきりその差のわかる歪の少ないもので、少々高価ではあるけれど、マニアならその価値は十分認められるであろう。
FR1MKIIの音は恐らくジャズ・ファンの中には物足りないと感じられる人もいるかもしれない。しかし、そう感じられる人は、きっと歪の多い、F特の暴れた装置の音で耳ができた人だと断言してもよいと思うのである。私が優秀だと思うカートリッジはすべて、そういう傾向をもっているが、それは決して何かが足りないのではなく、何も余計なものがないのである。そして、そうしたカートリッジから再生される音はやかましくはないけれど、迫力がないということは絶対にない。これはぜひ認識していただきたいことだ。
フィデリティ・リサーチ FR-34S
岩崎千明
ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より
24型軽針圧アームを一般用として作り、使いやすくモデル・チェンジしたのがこの34型。特筆すべきは、アーム・ペースにSME型のスライド機構をとり入れ、シェル交換時のアーム実効長の変化に対応できるようにした点で、新しい魅力だ。
フィデリティ・リサーチ FR-24
岩崎千明
ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より
軽針圧用として、針圧2gまで0・1gづつのクリック・ストッパーつきのユニークな加圧機構と、超仕上げによるずばぬけた高感度。アーム質量を減らした8ミリ径の細身のパイプ・アームで、デビュー以来、高級マニアにこぞって愛用推薦されるという、まさにベスト・ランクのアームのひとつだ。機構的にややデリケートな所もあるが、クリティカルな軽針圧用ということで、やむをえないともいえよう。
フィデリティ・リサーチ FR-1
岩崎千明
ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より
今や、あまりにも有名な、トップ・グレードのコイル型カートリッジ。普通のMC型がコイルの巻芯に鉄片やマグネットを用いているのに対し、これは空芯なので、理論的にも完全なMC型。もっとも、それだから音が良いというよりもこの社の製品のすべてにいえる、きわめて密度の高い工作と技術が、このずばぬけた高性能を生んでいるのであろう。最近HiFiパーツにハンド・メイクのクラフトマン・シップが見直されているが、FRの製品、特にこのMC型カートリッジこそ、その良い現れといえるのではなかろうか。製品は、ひとつひとつが高度の熟練技術者によって仕上げられているといった感じで、メーカーの良心が、使用にひしひしと感じられる。透明な音という言葉はこのカートリッジのためにあるといえよう。願わくば、TRヘッド・アンプより安定して経済的なはずのマッチング・トランスを早く出して欲しい。
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