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ヤマハ NS-15

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 明晰な音色の分離が鮮かなスピーカーで高音のタッチは実にリアルに再現される。打音や擦音の立上がりが極めてよく、リアルである。中音域に多少引っかかる癖のあるのが気になるが、全体に大変優れたシステムだと思う。低域は、やや硬く、のびが不足する気もするが、音像の実在感が鮮かで抜群のリアリティをもっている。繊細な緻密な味わいという点ではもう一つ物足りなさがなくもないが、生き生きとした音の浮彫りが見事。

パイオニア CS-810

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 全体に音の抜けが悪いし、中高域の連続性もスムースではなくバランスが悪い。音質的には部分的によさも感じられるが、全体に統一されていないことは、システムとしては高く評価出来ない。オーケストラの量感も貧弱だし、かといって小味な室内楽でもまとまりが悪いから音楽にならない。ジャズの場合も音がやせていて演奏者たちの息吹が伝わらず、死んだ音になる。結局、音づくりの派手なポピュラーのソースでしか、納得がいかなかった。

クライスラー CE-2a

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 明るく柔らかく、よく前へ音が出て気持がよい。ただ、ベルリン・フィルのような充実した渋味のある音色には、やや軽い味つけがされて気にならないでもない。恐らく、重厚な音を望まれるクラシック・ファンには向かないだろう。反面、明るい南欧風の好みにはぴったりで、とてもよく鳴り響く。そして、ぎりぎりの所で暴れがおさえられているのも音づくりが巧みである証しだ。中域の軽い鳴きがおさえられ、重い低音感が加われば完全だ。

エトーン ES-1100M

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 緻密なクオリティではないが、よくまとめられたシステムだ。高音は多少甘美な癖があり、中域にも軽い鳴きがあるが、それほど気になるものではない。全体に量感のある再生音でスケールが大きい。オーケストラではなかなか雰囲気の生々しい音で効果的。その反面、内的な質の高さを要求される室内楽や声楽で切れ込みの甘さが感じられ、もう一つ充実した締まった音が欲しい。低音域は明晰で、ベースの音程もクリアーである。

ラックス 30C74

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラのスケールはよく再現される量感豊かなスピーカー。しかし、音色的には品位が高いとはいえず、高域が繊細ながら、甘美な味つけがある。また、低域はよく鳴るが明解さの点で、やや濁りがあって不満だ。音程が明瞭に聴き分けられない嫌いがあり音量だけで押しまくる傾向がある。また、ピアノが後へ引っ込むような印象もあり、衝撃音に、もう一つトランジェントの点で不十分なところがあるような気がした。

ダイヤトーン DS-34B

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 全体にまず感じられたのは、にぎやかな音という印象だ。中高域に汚れがあってどぎつさが耳につく。それでいて、ジャズの再現には中域の腰の強さとねばりが足らず、ガッツが不足する。高域の華麗さは少々化粧が濃すぎる感じで、もう少しおさえて自然なバランスでありたい。オケのテュッティが濁るので騒々しいわりに迫力がないし、ヴォーカルではざらついて暖かさがない。ジャズのシンバルのスティック・ワークだけがリアルに聴こえた。

エトーン ES-1100

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 ピラミッド型にまとまったバランスは聴きよく、安定したものだ。解像力にやや不満があるが、豊かな低音に支えられた重厚な響きはベルリン・フィルの雰囲気をよく伝える。しかし、中音域がもう少しバランス上豊かであればさらによくなると思われる。音質は癖の少ないほうで、高音の甘い味が気にすれば気になる程度。他面、強い魅力のあるシステムでもない。ジャズのベースは快調で、よくのび、音程も明解。

ティアック LS-360

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 音のクオリティは決して高くはない。緻密でマッシヴな音質ではなく、どちらかというと甘く柔軟な質である。バランスはよくとれていてあらゆるソースに無難な再生音を聴かせてくれる。オーケストラでは中低域の切れ込みにもう少し明解な解像力が欲しいが、全体に美しいまとまりがあってナチュラルであった。ジャズでは、やや軽く平面的な印象があり、もっと密度の高い締まった音で迫るものが欲しい気がする。

テクニクス SB-2510 (Technics6)

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 ベルリン・フィルの内声部が引っこんで、栄養失調のやせっぽちオケと化してしまった。音がひ弱で充実感が不足し、迫力や説得力に欠ける再生音としかいいようがない。音づくりの派手なレコードでは、ソースの個性でもつが、まともな録音ではどうも淋しい音となるようで、特に中音域の充実を考えるべきではないかと思う。試聴レコードの中ではピアノが一番問題が多く、腰の弱い力のない打音はリアリティのない再生しか得られなかった。

サンスイ SP-2002

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラの再生では中音域に多少鳴きが感じられた。もう少し中域が締まると、このシステムはかなり高度なものだと思う。全体の音のまとまりがよく、量感もあるし、緻密さもある。ジャズの切れこみ、迫力も十分でベースの音程も明晰、シンバルのリアリティもよい。インパルシヴなピアノやヴァイヴは派手な音に聴こえるが、これは中音域のキャラクターだろうと思う。この辺の暴れが、また、ある種のソースでは魅力となることもある。

ビクター BLA-E30

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 すっきりとした明るい音は美しい。切れ込みも良く、バランスも整っている。ただ、音に余裕がなく、オーケストラの量感、ステレオフォニックな陰影の再現には、やや不満があって音が平板である。しかし、傾向としては弦楽器を主体としたクラシック・ムードに向き、しなやかな高域は魅力的である。ジャズのような極度なオン・マイク・セットによる音の解像力となると中域の締まりが不足し、音のやせた印象が出てくる。

サンスイ SP-200

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 中域が充実したシステムだが、プログラム・ソースによってはやや、盛り上りが過ぎる嫌いがなくもない。オーケストラのテュッティでブラスの音がやや、ガーガーとうるさい印象で鳴るのが耳障り。しかし、全体にクオリティがよく、再生音は力強い。広いDレンジにも余裕ある対応を聴かせ、ジャズの近接マイクによるアタックにも鋭い立ち上がりと余裕のある響きを聴かせる。室内楽の緻密な質に対する要求にはやや、高域の品位が物足りない。

パイオニア CS-A77

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 低音域が不明瞭で解像力が悪い。にぶく音程がはっきりしない。中音域はレベル的には盛り上がり気味ではあるが、質が良くなく、抜けが悪い。マッシヴな再生音を臨んでも無理で、なんとなくムードで聴くほかはないようだ。。割れ鐘のような音がする。これは、単にバランス上の問題だけではないようで、クォリティに不満がある。好みといえばそれまでかもしれないが、これは、少々はみ出しすぎているように思える。

フォスター FCS-300

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 低域ののびが不足し、また、中高域のまとまりや連続性もよくない。音のキャラクターが荒く、きめの細かい、緻密な再生音は期待できない。ベルリン・フィルが安っぽい音になってしまったし、源のしなやかな美しさも出てこない。ジャズのベースの音もしまりがなくだらしのない響きとなる。価格から考えても同クラスの他製品の間で占める位置はどうしても低くならざるを得ない。残念ながらもう一歩というところである。

ビクター BLA-304

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラの内声部が引っこみ、やせた音になる。そのためかどうか、プレゼンスの再現も不充分で、オーケストラの雰囲気に空間感がない。これはステレオ再生では大変不利であり、また音楽のスペクトラムの中核である中域が引っ込むのはまったくまずい。ジャズではこれが致命傷といってよく、ジャズ音楽の本質が生きない。中域不足はバロックのアンサンブルなどでは一種クールで端正だが、ジャズには全く不向きという他ない。

テレフンケン TE-200

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 表情豊かというか、個性的といおうか、快適な音が印象的。適度に油の乗った充実感があり、長く聴いていると耳について気になりそうな音色が、こういう試聴では効果をあげる。つまり、巧みな音づくりなのである。華麗な音色、人為的なバランスがどんなソースにもそれなりの効果をあげるから不思議である。中高域の硬さ、レンジの狭さが不満として残るが、極めて印象的なスピーカー・システムであった。

パイオニア CS-7

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 大変まともなバランスがとられていて、いかなるプログラム・ソースにも妥当な音楽的バランスを聴かせてくれるスピーカー・システムだった。音質は、やや軽く安手の感じは残るけれど、他面、明るくおだやかで疲れない音だ。ジャズの再生では、締まり、深み、力感などの面でもう一歩の不満がかんじられるが、まともにソースの情報を伝えてくれるので、聴いていて気持がよい。強い魅力には欠けるかもしれないがオーソドックスな製品だ。

ビクター BLA-E20

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラのテュッティの再現ではややスケールが小さく、プレゼンスが不足する。しかし、ポピュラーものでの味つけは効果的で甘さとシャープさが巧みに交錯する。軽やかな中域が親しみやすいキャラクターを作っているのだろう。価格も二万円を切るようだし、このクオリティなら相応のものといえるのかもしれない。室内楽やクラシックのヴォーカルには当然のことかもしれないが質の緻密さの点でかなり物足りない。

ダイヤトーン DS-22B

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 バランスのよくとれたシステムで音色も切れ込みもよい美しいもの。再生音のスケールは大きくないが緻密なクオリティで好ましい。オーケストラやジャズでは小じんまりした感じはあるが音がよく立ち、生き生きしている。ピアノのクオリティが、やや不安定なのが気になったが、この他はすべてスムーズに通った。透明度も高くよく抜けるシステムだ。抜ける感じは何によるものかは全体の問題としてきわめて興味深く、また難しい問題だと思う。

トリオ 400M

菅野沖彦

スイングジャーナル 2月号(1969年1月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ターンテーブルの新製品としてトリオの400Mを選定したことはコスト・パーフォーマンスの高さによるといってよいだろう。つまり、対価格性能が優秀だから、これはお買徳といってよい。ターンテーブルの重要性については周知のことだが、他のパーツの特性が向上すればするほど、また優秀なターンテーブルへの要求も高まってくるのである。ターンテーブルにいい加減のものを使ったのでは、どんなに優れたカートリッジやアーム、そしてアンプやスピーカーを使っても絶対に優れた音質を得ることはできない。これにはいろいろな理由があげられるが、もっとも問題となるのは回転ムラつまりワウ・フラッターである。現在ターンテーブル単体として市場にでているものはいずれも実用上問題にならない程度の回転の均一性が確保されてはいるが、回転ムラは音程の不安定をもたらすので再生音の品位を下げる。もちろん音楽的にも正しいピッチが保たれないことは致命傷であるが、音程の不安定として感じられるほどひどいワウ・フラは論外で、そこまでいかなくても、音質のしまりがわるい、ダンピングがわるいという全体的な音色としてもきいてくるのだから注意すべきことだろう。次に問題なのが振動である。モーターの回転に起因する振動がターンテーブルに伝わってはカートリッジから雑音として再生されてしまうので手に負えない。
 ところで、こうした問題の解決には、まず優秀なモーターの開発がなければならない。静かで、回転力の強い、回転速度の均一なモーターによってのみ期待するターンテーブルの性能が得られる。しかし、それと同時に、モーターからターンテーブルへの動力伝達機構の重要性も忘れられない。この動力伝達機構としては現在、ゴム・アイドラーによりターンテーブルの内縁を駆動するリム・ドライブ方式と、特殊化学製品のベルトによりターンテーブルをプーリー駆動するベルト・ドライブ方式の2つがある。動力伝達方式について考える時、1つはいかにロスや障害を少なく正確に動力を伝えるかという考え方がある。モーターの回転速度を正しく減速してターンテーブルを回転させるためにできるだけ単純な機構がよいわけだ。2つには、動力伝達機構をいかに巧みに利用してこれを一種のショック・アブソーバーとしてモーターの振動を吸収してしまうかという一石二鳥的考え方である。トリオの400Mは明らかにこの一石二鳥的考え方の上にたって設計されたもので、アイドラー方式とベルト方式の両方を兼ねて、ベルト・アイドラー方式という呼び方をしている。これには有名なトーレンスのターンテーブルなどもあるが、結果的には優秀な特性が得られている。ターンテーブルはアイドラーによってリム・ドライグされるが、アイドラーはモーター・シャフトとは断絶され、ベルトによっておこなわれている。ベルトがターンテーブルにかけるものより短かいものですむし、速度変更が確実容易(アイドラーの上下による)にできる。重量の大きなターンテーブルを使用し、フライホイール効果を積極的に利用するという考え方もマニア向きといえるだろう。大型のフルパネルは大変重厚なイメージで仕上げも美しい。この価格でできるイメージではなく、同価格の他製品と比較すると圧倒的な風格をもっている。欲をいえば、ターンテーブル・シャフトの加工精度にもう一歩という感じだが、これは最高級品に要求するシビアーな見方であろう。4万円以上の製品とつい比較してしまうというのも、この製品がいかに高いコスト・パーフォーマンスをもっているかがわかるだろう。必ず大型のしっかりしたケースで使うこと。

パイオニア CS-10

菅野沖彦

スイングジャーナル 2月号(1969年1月発行)
「SJ推薦ベスト・バイ・ステレオ」より

 CS10というスピーカーをごぞんじだろうか。パイオニアがだしている優秀なスピーカー・システムであろ。ただしお値段のほうも大分高い。
 このスピーカー・システムは、ブックシェルフ・タイプといって、現在のスピーカー・システムのタイプの中でもっともポピュラーなものである。初期のブックシェルフ・タイプはたしかに小型で、縦においても横においても使える四面仕上であったが、その後、形が大きくなり重さも増して、現実には本棚へおいて使えるようなものばかりではなくなった。このCS10も、四面仕上げであるが、重くて大きい。約25kgあるから、ちょっとした棚では支持できない。
 ところで、肝心の音であるが、このスピーカー・システムの音質について語ることは大変むずかしい。ベスト・バイとして選んでいるのだから決して悪いものではなく初めに述べたように優秀品であるにはちがいない。では何がむずかしいかということになるのだが、音の性格について、音質と音色という2つの面に分けて語らないと説明がつかないのがこのシステムの音だろうと思う。音質と音色は本来切っては考えられるものではなく、むしろ同義語として扱ったほうが混乱はないが、ここでは便宜上分けて使わせていただくことにしたい。
 まず音質についてだが、低域から高域にかけての周波数特性ののび、そしてその性格は大変すばらしい。しいていえばごく低いところが小型密閉箱のためにやや物足りないが、通常音楽の再生にはまったく問題ないところまでのびている。途中の山谷は大変少なく、フラットに近い特性は、特定の音を強調することがない。特に高音域は並はずれた指向特性のよさとともに非常によい。歪は適確な帯域分割とユニットの設計により大変少なく、ドーム型スコーカー、トゥイーターを使っているために多くの利点をもつ。特に小型密閉箱にありがちなウーハーの音圧によるスコーカーやトゥイーターへの位相干渉は構造上まったく心配がない。3ウェイが理想的に動作して、すっきりした再生音となっている。つまり音質としては大変バランスのよいもので、物理特性として優れていることがわかる。
 次に音色的なものだが、同じような周波数特性、各種の歪率など測定データーが似ていても、音がちがうものはざらにある。特にスピーカー・システムの場合は、箱の設計、材料、工作などは微妙に音色を変える。また、この密閉型の箱にハイ・コンプライアンスのウーハーを入れたタイプ(オリジナルは米国のAR)は一種特有の音色傾向をもつ。ダンプがきいて音がきわめてしまりがよいその反面抜けが悪く、音が前へ豊かに出ないという印象もつきまとう。スコーカーがドーム型のダイレクトラジエーションによるものだけに歪は非常に少ないが、派手な音圧感がない。つまり、ユニットのタイプによっても音色がちがうことも事実である。コーン型、ホーン型、ドーム型など、それぞれちがった音色傾向をもっていることは事実である。
 このようにスピーカー・システムの音についての評価はむずかしいが特にCS10はむずかしい。それはいいかえれば、あまりにも他のスピーカーと異った次元の音の良さがあるからかもしれない。私の好きなスピーカー・システムとして推薦するが、決して派手さや、刺激性のある音ではないことをお断りしておく。使用ユニットといい箱といい、ふんだんにぜいたくをした最高級品である。

アルテック 419A

菅野沖彦

スイングジャーナル 1月号(1968年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 アルテックといえばオーディオに関心のある人でその名を知らぬ人はあるまい。アメリカのスピーカーといえば、アルテックとジムランの名がすぐ浮ぶ。ジムランはもともとアルテックから分れた会社で、アルテックがプロ用機器をもっぱら手がけジムランが家庭用を主力にしていることもよく知られている。もっとも、このプロ用と家庭用なる区別は、なにによってなされるのかははなはだ不明瞭であって厳重な規格や定義があるわけではない。しかし、現実にその両者の差は優劣ということではなくて、製品のもっている特長、個性に現れているといってよいだろう。
 ところで、スピーカーというものは、音響機器の中でももっともむづかしいものであることはたびたび書いてきた。つまり、優劣を決定するのに占める物理特性のパーセンテージがアンプなどより低いのである。直接空気中に音波を放射して音を出すものだけに使用条件や音響空間の特性も千差万別で、そうした整備統一も容易ではない。そして音質、音色の主観的判定となると実に厄介な問題を包含しているわけだ。それだけに、業務用、一般用という区別はスピーカーにとって大きな問題とされる。業務用スピーカーといえばモニター・スピーカーといったほうが早く、モニター・スピーカーとはなにか? という論議は時々聞かれる。
 モニター・スピーカーはよくいえば基準になり得る優れた特性のスピーカーというイメージがあるし、逆にひねれば味もそっけもない音のスピーカーというイメージにもなるのではないか。
 この辺がモニター・スピーカーとは何かという論議の焦点だ。私としては、モニター・スピーカーと鑑賞用スピーカーの区別は音質や音良の面ではつけるべきではなく、良いスピーカーはいずれにも良いと考えている。強いてモニター・スピーカーに要求するとすれば、許容入力であって、少々のパワーでこわれるものはモニターとしては困る。実演と同次元で再生することが多いから、かなりの音量をだすことが必要なのである。ただし、許容入力は常に能率とのバランスで見るべきで、同じ20ワットの入力でも能率が異れば出しうる音量はまったくちがってくる。この点、アルテックのスピーカーはすべて大変能率がよく、許容入力も大きい。絶対の信頼感がある。そしてさらにその音質は音楽性豊かというべき味わいぶかいものだ。
 今度発売される419Aというユニットは30cmの全帯域型で、きわめて独創的なものだ。バイフレックスといって2つのコーンが一体になったような構造で1000Hzをさかいに周波数を分担している。この2つのコーンはそれぞれ異ったコンプライアンスと包角をもっており、さらにセンターにアルミ・ドームのラジエターで高域の輻射をしている。これは30cmスピーカーとしては小型なパイプダクト式のキャビネットに収められ〝マラガ〟というシステムとして発売されるという。
 私の聴いたところでは実に明晰な解像力をもっていて音像がしっかりときまる。固有の附随音が少く、抜けのよいすっきりとした再生音であった。マッシヴなクォリティは他のアルテックのスピーカーに共通したものだ。また能率のずばぬけてよいことも特筆すべきで.大音量でジャズを肌で感じるにはもってこいのスピーカーであろう。モニターとして鑑賞用として広く推薦したい製品。
 欲をいうならば最高域が不足なので、同社の3000HトゥイーターをN3000Hネットワークと共にブラスすると一段と冴えると思う。

コーラル BETA-10

菅野沖彦

スイングジャーナル 11月号(1968年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 コーラル音響といえば日本のオーディオ界では名門である。昔は福洋音響といって、スピーカー専門メーカーとしての信頼度は高かった。数々の名器はちょっと古いアマチュアならば記憶されているだろう。私自身、当時はずい分そのスピーカーのお世話になった。型番はもううろ覚えだが、たしかD650という61/2インチのスピーカーは大いに愛用した。810という8インチもあった。当時はインチでしか呼ばなかったが今でいう16センチ、20センチの全帯域スピーカーであった。トゥイーターもH1いうベスト・セラーがあった。福洋音響は当時のハイ・ファイ界のリーダーとして大いに気を吐いたメーカーだ。そして最近コーラル音響という社名に変更し住友系の強力な資本をバックに大きく雄飛しようという意気込みをもってステレオ綜合メーカーとしての姿勢を打ちだしてきている。
 ところで、そのコーラル音響から新しく発売されたユニークなスピーカーがBETA10である。BETAシリーズとして8と10の2機種があるが、主力は10だ。まずユニットを一目見てその強烈なアマチュアイズムに溢れた容姿に目を見はる。白色のコーン紙。輝くデュフィーザー。レンガ色のフレーム。強力なマグネットは透明なプラスチック・カヴァーで被われている。これはマニアの気を惹かずにはおかないスタイリングで、キャラクターこそちがえ、例のグッドマンのAXIOM80のあのカッコよさに一脈通じるものを感じたのは私だけではあるまい。オーディオ製品のような人間の感覚の対象となるものについては、形も音のうちというものであり、この心理はマニアなら必らずといってよいほど持ち合わせている。形はどうでも音がよければという人もいるが、同時に、まったくその反対の人さえいる。コーラルがマニアの気質をよく心得て、細部にまで気をつかって、いかにも手にしたくなるようなスピーカーをつくったことは、今後のこの社の積極的な姿勢を感じさせるに充分で、事実、その後、かなり意欲的なデザインによるアンプも発売されている。
 さて、BETA10の音はどうか。それを書く前に、スピーカーというもののあるべき姿にについて述べておかなければなるまい。音響機器中、スピーカーはもっとも定量的に動作状態をチェックしにくい変換器である。つまり、直接空気中に音を放射するものだけに、使われる空間の音響条件は決定的に影響をもたらす。装置半分、部屋半分ということがいわれるが、たしかに部屋が音におよぼす影響はきわめて大きい。これは録音の時のホールとマイクロフォンの関係に似ていて、電気工学と音響工学の接点であるだけにさまざまなファクターを内在しているわけだ。理論的な問題は別として、ある音源に対して最適なマイクロフォンを無数のマイクロフォンの中から選択して使っているというのが現状だが、これは、いかに問題が複雑で、理論や計算通りにいかないかを物語っているものであろう。マイクロフォンは使う人の感覚によって選ばれる。それに似たことがスピーカーにもいえる。スピーカーほど感覚的に選ばれる要素の強いものはない。それだけに選びそこなったら大変で、正しいバランスを逸脱することになる。BETA10こそは、まさにそうした危険性と大きな可能性を秘めたスピーカーであり、たとえてみれば暴れ馬である。その質はきわめて高く大きな可能性を秘めている。しかし、うっかり使うとたちまち蹴飛ばされる。使いこなしたらこれは大変魅力的なスピーカーだ。その点でも、これは完全に高級マニア向の製品で、これを使うには豊富な経験と知識、そしてよくなれた耳がいる。我と思わん方は挑戦する価値がある。こんなに生命感の強く漲ったタッチの鮮やかな音はそうざらにない。

フィデリティ・リサーチ FR-1MK2

菅野沖彦

スイングジャーナル 11月号(1968年10月発行)
「ベスト・セラー診断」より

 フィデリティ・リサーチ、略してFRというイニシアルは、マニア間で高く評価されているカートリッジ、トーン・アームの専門メーカーである。FRは社長が技術者で、会社というよりは研究所といったほうがよいような性格のため、広く大衆的な商品はつくっていない。この社の代表製品はFR1と呼ばれるムービング・コイル型のカートリッジで、昨年MKIIという改良型を発表して現在に至っている。この欄でもカートリッジを何回かとりあげ、そのたびに、再生装置の音の入口を受持つ変換器としての重要性については詳細に解説されている。そして、現状では理想的なカートリッジというものの存在が理論的には成立しても、実際の商品となると困難だというのが偽らざる実状のようである。つまり、物理特性をみても、あらゆるカートリッジがあらゆるパターンを示し、皆それぞれ専門家によって慎重に開発され製作されているのに……と不思議になるくらいである。ましてやその音質、音色となるとまったく千差万別で、どれが本当の音かは判定不可能といってもよい。一般にはレコードの音がどうであるべきかという基準がない(そのレコードを作った人でさえ本当のそのレコードの音を知ることはむずかしい)から音質や音色を感覚的に受けとって嗜好性をもって優劣を判断することにならざるを得ないわけだ。
 話は少々ややこしくなってしまったが、そういう具合で良いカートリッジというものを、いずれも水準以上の最高級品の中から見出すことはむずかしいのである。FR1MKIIは、そうした高級品の中でも、一段と明確に識別のできる良さをもっている。それは高音がよくでるとかどぎついとか、低音が豊かだとかいった、いわば外面的な特質ではなく強いて表現すれば透明な質といった本質的な音のクォリティにおいてである。FR1の時代には、かなり外面的な特長もそなえていて、音の色づけ、いわゆるカラリゼイションを感じさせるものがあった。それにもかかわらず質的なクォリティの良さを高く評価されていたのだが、MKIIとなってからは、そうしたカラリゼイションも一掃され本当に素直な本来のクォリティが現れてきた。そしてつけ加えておかなければならないことは、FRT3というトランスの存在についてである。ムービング・コイル型は出力インピーダンスが低く、一般のアンプのフォノ入力回路にはトランスかヘッド・アンプを介して接続しなければならない(例外もある)。これがMC型のハンディで、そのヘッド・アンプやトランスの性能が大きく問題とされた。せっかく、本来優れた変換器であるMC型が、その後のインピーダンス・マッチングや昇圧の段階で歪を増加させたのでは何にもならないからである。同社が最近発売したFRT3というトランスはコアーとコイルの巻き方に特別な設計と工夫のされた恐しく手のこんだもので、その歪の少なさは抜群である。FR1MKIIはFRT3のコンビをもってまったく清澄な音を聴かせてくれるようになった。FRT3は他のMC型カートリッジに使っても、はっきりその差のわかる歪の少ないもので、少々高価ではあるけれど、マニアならその価値は十分認められるであろう。
 FR1MKIIの音は恐らくジャズ・ファンの中には物足りないと感じられる人もいるかもしれない。しかし、そう感じられる人は、きっと歪の多い、F特の暴れた装置の音で耳ができた人だと断言してもよいと思うのである。私が優秀だと思うカートリッジはすべて、そういう傾向をもっているが、それは決して何かが足りないのではなく、何も余計なものがないのである。そして、そうしたカートリッジから再生される音はやかましくはないけれど、迫力がないということは絶対にない。これはぜひ認識していただきたいことだ。

スペックス V-500A

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1968年9月発行)
「SJ選定〈新製品〉試聴記」より

 ターンテーブルが再生装置の中で占める重要性は大きい。レコードをのせて回転させるのが役目だが、もし悪いターンテーブルだと、再生音に決定的な打撃を与える。どんなに他の部分がよくてもなんにもならない。縁の下の力持ちである。
 ターンテーブルは回転が正確でなければ音楽のピッチが変る。つまり速ければ音は上り、遅ければ下る。33 1/3R.P.M.という回転速度は絶対に正確に保たれなければならない。そして、いかに1分間単位では33 1/3回転になっていても、その間で速い遅いという回転ムラがあっては困る。これをワウといって、ワウがあると音程がフラつき音楽にならない。また、もっと細かいムラのことをフラッターというが、大変聴きずらい。ワウやフラッターは絶無にこしたことはないが、実際には0・15%以下なら問題ない。ワウやフラッター、そして回転速度はターンテーブルのもっとも大切な条件で、これがひどく悪いと音が不安定になるわけだが、それほどではなくても音質に大きな影響を与える。また迫力のある音は絶対に期待できない。
 次に大切なのは雑音の発生の有無である。モーターの回転によってターンテーブルを回すのであるからこの機械的な運動に振動はつきものである。カートリッジの針はレコードの溝の細かい振れを音に変えるものだから、ほんのわずかの振動も逃さず音にする。だから、モーターやターンテーブルがごくわずかでも横振れや縦振れの余計な振動を発生すればこれが針に伝わり雑音となる。いわゆるゴロというのがこれである。データとしてはS/N○○dbという表示をする。40db以上は必要。この2つの条件を満足、かつ、強い回転力の得られるものがよいターンテーブルである。回転力の強さと振動発生とは相対するものであるだけにレコードの演奏に必要な回転力の最小値の決定は難しく大切な問題だ。
 今度スペックスから発売された新製品V500Aはこれらの条件を完全に満たしてくれながら、買いやすい価格とコンパクトなまとめが特長の優秀なものだ。従来、こういう単位商品として売られるターンテーブルは取付がやっかいだった。もちろん、ターンテーブル、アーム、カートリッジとバラバラに買って、1つのケースに取付けプレーヤーを構成することは特に工作に自信があるとか、好きな人でなければ無理なのだが、それにしても、モーター取付けに際してあけなければならない穴のパターンが複雑過ぎた。雲型の複雑な形に板を切り抜くことは容易ではなかったのである。これが本当はそれほど難しくないプレーヤーの製作を困難なものにしていたといえるだろう。V500Aは単純な矩形の穴をあけるだけだから実にやりやすい。自分で作りたいという熱心なマニアには大変有難いはずだ。本誌としても選定新製品としてターンテーブル単体を扱うのにはいろいろ問題があったらしい。SJ誌の読者は技術誌の読者とちがい、自分で手をつける人は少ないだろうということからカートリッジやスピーカーのようには簡単に扱えないターンテーブルについては随分考えられたという。しかし、この程度に扱えるものなら、むしろ作る楽しみを味わうよいチャンスにもなり得るだろうと思う。また、単体で売られているアームとの自由な組合せで自分の思う最上のプレーヤーを組むことができるのだから、既成のプレーヤー・システムを買ってくるのとは別の喜びがある。
 V500Aは小型強力モーターの使用で振動が少なく、2重ターンテーブルの合理的な設計で大変スムースである。ベルト・ドライヴ機構にも独創的なアイデアが生かされ実に使いよい。フル・パネルとしては最も小型。高さも最小限におさえられている。プロ級の性能をもちながら実用的に整理された好ましい製品だ。