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ケンウッド LSF-777

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ケンウッドの新しいLSFシリーズの上級機。下に555、333が存在する。UDと称するユニット・レイアウトを採用して、点音源の理想を追求したという、要するに、リスナーの耳に到達する時間を全帯域にわたって揃える思想であって、そう目新しいものではない。しかし効果はその自然な音触に現われている。

ケンウッド DPF-5002

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ケンウッドのシステム・シリーズの一つで27cm幅のCDプレーヤー。下に5002もある。このメーカーの製品はターゲットとする対象がマニア層であるように、よく練られているもので、商品の性格や価格に比して音質がいい。ディジタル回路も機構も入念なもので、量産機らしからぬこだわりがあるお買得なものだ。

BOSE 363

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 好評の全帯域小型システム121は優秀なボーズの鋳型ユニット技術の結晶といえる製品だが、これは、さらにユニークなfレンジ・エクスパンダーを追加して高・低域の帯域拡張を実現したシステムだ。同社のヒット製品「ウェストボロー」の展開であるが、単体としても評価出来る傑作である。

BOSE 505WB

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 アクースティマス・ベースボックスが3チェンバーになって、低音はスムーズに山谷がなくなりグレードが上がった。ステレオ・エブリウェア理論によるサテライトシステムと3ピースからなるボーズ特有のオリジナリティのある製品。豊かな音場はユーザーのセンスでさらに効果が上がる。このクラスでは圧倒的な量感だ。

ソニー CDP-XA50ES

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 好評だったXA5ESに代わる今年の新製品である。光学系固定式メカニズムなど、前作の基本的特質は踏襲しているが、ユニークなのは高域のフィルターの切替えが出来るようになったこと。これはCDの画一性が失った趣味性の埋め合わせ的な発想であろう。それはともかく基本性能の優れた聴き応えのある音だ。

ソナス・ファベール Concertino

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 イタリアのソナス・ファベールの最新製品で同社のシリーズの中では最も安価な部類だが、作りも音も立派な小型スピーカーシステムだ。なんといってもバランスが見事で、音楽を安定感のある響きで鳴らす。小型ながらたっぷりした肉づきのある質感が好ましい。感度もこのサイズとしては高くて使いよい。

タンノイ Canterbury 15

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 タンノイの15インチ口径デュアルコンセントリック・ユニットのよさが素直に生きたシステム。オーソドックスなバスレフタイプのエンクロージュアに納められてたもので、同社のプレスティッジ・シリーズのスタンダード的存在といっていいだろう。普遍性をベースに築かれた、風格と存在感の大きな名器である。

ジェネシス Genesis V

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 元インフィニティの創始者アーニー・ヌデールが主宰する新しいメーカーの製品。付属専用アンプによるMFBドライブの超低音再生から、リングリボン・スーパートゥイターの最高域に至る広帯域再生能力が、美しいデザインと比較的コンパクトな仕上げのエンクロージュアに納められている高級システムである。

オーディオ・フィジック Medea

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 非ピストニックモーションのマンガー・ユニット、BWTを使ったシステム。同時期にBWTをシステム化したステラ・エレガンスと対比されるが、まったくの別物。BWTのよさはここでも生きているが、こちらはマンガー研究所の推奨設計に近く、マンガー・ユニット3本による独特の放射設計だし、低域はMFBアンプ駆動だ。

JMラボ Grande Utopia

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 フランスのJMラボの大作。ユニットメーカーの力を発揮した超弩級システムで、美しいエンクロージュアのセンスはさすがにお国柄である。タンノイのキングダムと音も雰囲気も対照的で興味深く、オーディオの特質を物語るかのようだ。優れた変換特性に支えられた広帯域で高品位な現代的サウンド。

アクースティックラボ Stella Elegans

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ボレロ・シリーズでお馴染のスイスのアクースティックラボが、ドイツのマンガー研究所で開発したBWTというユニークな非ピストニックモーション・ユニットを使ってシステム化に成功したもの。PCCという特殊電子回路でウーファーを調整し、このBWTの自然な音触を生かした秀作。素晴らしいフロアー型システムだ。

アンセム PRE 1

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ソニックフロンティア社のニューブランドで、管球式のプリアンプである。フォノイコライザーを内蔵し、電源はセパレートタイプでデュアル・モノ構成。ハイエンド機並みのこだわりを見せる。パーツも高品位なものが使われていて、音もしっかりして温かい。輸入品で25万円は安いと思う。仕上げは高いとはいえないが。

サンスイ C-2105 Vintage

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 最高級プリアンプC2302ヴィンテージで4年前に素晴らしい成果を上げ好評を博している同社だが、その経験を生かした新製品である。この製品も、熟達と入念な設計、高品位パーツ、そして、よく練られた機構などにより、鮮度と緻密感の優れた音を再生する。価格も妥当であり、価値の高い製品である。

マッキントッシュ C40

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 このメーカーのコントロールアンプこそ真の意味でのコントロールアンプで、中点でオフになる5ポイントのトーンコントロールや豊富な入出力とモード切替えなど、一度使うとやめられない多機能で使いやすい製品だ。フォノイコライザーも標準装備している。例のグラスパネルのイルミネーションは最高の視認性を持つ。

アキュフェーズ C-275

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 同社の最高級プリアンプC290同様のバランス伝送アンプ。出力には対称型のブリッジフィードバックによるフローティング・バランス出力回路を採用するなど、そのジュニア・モデルに相応しい実力機である。リモコンでもコントロール可能な使いやすいものである。フォノイコライザーはオプションである。

デンオン DA-S1

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 DP−S1とペアで開発されたD/Aプロセッサーで、究極のアナログ波形を目指すALPHAプロセッサーを搭載する。DP−S1とはST−GenLockによりマスター・クロックでの同期運転が可能だ。したがって本来はペアで使うのが理想的。もちろん、DAC単体としても極めて高性能多機能で、音質も素晴らしい。

ワディア Wadia 27

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 X64・4の系統に属する64倍リサンプリング型だが、リアル24ビットの入力と変換能力を持つ最高級機である。この未来型DACに相応しくリアパネル・アッセンブリーはモジュール化され機能拡張に備えている。エネルギッシュで緻密なサウンドは、従来のワディアをさらに超える次元を感じさせるものである。

エソテリック D-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ティアック製最高級DACでD2のヴァージョンアップ・モデル。ペアになるトランスポートはP2sだ。入力〜出力の20ビット処理とジッターの40dB低減が注目される。同軸がRCA、BNCの2系統、光はSTリンクが標準。他にXLR端子のAES/EBUがある。高品位な音質は滑らかで厚みのあるもの。

アキュフェーズ DC-61

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ディジタルプロセッサー単体として開発された製品。一体型CDプレーヤー、DP75のSFCを発展させて搭載し、リサンプリングは44・1kHzと48kHzが選択可能。片チャンネル6個の20ビットDACによるMMB方式を採用。同軸はRCA2、BNC1とTOS光入力にも対応する。

エソテリック P-30

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ティアックの高級ブランドのCDトランスポートである。軽くテーパーしたアルミダイキャスト・ターンテーブルによる安定した回転構造には世界的に定評がある。DSRLL回路によるジッターを100分の1に減らす対策も注目される。価格以上の高品位な再生音が得られる優れたトランスポートである。

デンオン DP-S1

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 SシリーズとしてはDACのDA−S1とペア開発されたプレスティッジ商品である。アルミの砂型鋳物シャーシの重量級のトランスポートである。ディジタル信号の完全で安全な読み取りを目標として、音圧や光による外乱にさえも配慮した、パーフェクト主義思想が徹底している。CDは完全に密閉されて演奏される。

タンノイ Kingdom

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 私の好きなスピーカーひとつでありながら、いまだかつて、自分のものにしたことのない憧れの存在がタンノイのシステムである。その最高峰が昨年発売されたキングダムだ。その時々のメディアが持っている録音帯域特性を備えることが私の再生オーディオの理想的条件のひとつであるのだが、キングダムは、この要求にたいするタンノイの回答といっていい製品だろう。デュアルコンセントリックユニットを広帯域で使い、上下にスーパー・ユニットをプラスしたものであることがそれを明瞭に物語っている。タンノイのなかでもっとも広域なシステムであり、タンノイらしさと現代的なワイドレンジを見事に両立させた成功作であると思う。ステレオイメージは同軸型らしい明確さであり、自然な音色と音触に、長年のキャリアによる風格さえが溢れている。説得力のある楽音のリアリティだ。中低域から中域にかけての高密度で厚い質感は得難いものであり、音楽表現の豊かさに寄与していることを強く感じる。したがって高域と低域をここまでワイドに伸ばしても、しっかりとした音の造形感や表現の豊かさは微塵も損なわれていない。伝統的なダイナミック型ダイレクトラジエーターとして高い完成度を持ったシステムで、むかしのタンノイのようにジャズやピアノに不満が残るといったことはもはやない。しかし、音と形の持つ、この品位と堂々の威容は、古典から浪漫にかけての、もっとも実り多きヨーロッパ音楽芸術の再生機として理想的と感じられる気品と豊麗さに満ち溢れている。こういうシステムと共存して、居住まいを正して音楽を鑑賞するという真面目さこそが、いま、レコード音楽とオーディオ文化が失いかけているものだ。イギリスでも、いまや数少ない重厚長大なスピーカーシステムであろう。いま、私ももっとも気になっているシステムの一つであるプラチナム/エアーパルス3・1もイギリス人の作品だが……。軽薄短小オーディオとは別次元の世界である。

タンノイ GRF Memory/TWW(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 GRFメモリーは、もっとも代表的な現代タンノイである。15インチ口径のデュアルコンセントリックユニットを、無理なく余裕ある変形バスレフ型エンクロージュアに納めていてユニットの音の特徴が素直に生きている。このモデルは現在の充実したプレスティッジ・シリーズの基礎を開拓した製品であることは、GRFメモリーの名称にも表れている。アンプは同じ英国の新進メーカー、アルケミストのプリアンプAPD21ASS、そしてパワーアンプも同社のAPD20ASSを使う。じつに魅力的なセパレートアンプのコンビネーションで、陰影と彫琢が深く音楽が躍動する。CDプレーヤーはクォード77CD。音色が人肌に温かい音だが、繊細感や精緻感にも優れている。トータルとして味わい深く雰囲気が豊かな音に大きな満足感が得られるはずである。レコード音楽が立派な音楽的実体験のできる世界であることの可能性を実感できるであろう。

「オーディオの流儀」

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう」より

 私のオーディオの基本姿勢は、客観と主観、物理特性と感性のバランスです。つまり、評価基準として科学技術と美学の2つのバランスが必要です。スピーカーにたいしても、物理的には周波数帯域と直線性などの点でメディアと同水準の特性を要求します。録音されている周波数/ダイナミックレンジが出ないものは不満です。残念ながら、ほとんどの市販製品がそうですが!? 感性的には私の好みに合うスピーカーは必ずしも一つではないし、同じ設計思想によるものとも限りません。好きな食べものが一つでないのと同じです。スピーカーを個性や癖で安易に分類するのは危険ですが、この世に無個性なスピーカーはないので、聴き手の音響的、音楽的嗜好との接点は大切です。私は、演奏者の「気」の感じられるような、血の通った、精緻かつ豊潤な音が好きです。嫌いなのは、刺激的で、冷たい、機械的な音と、病的で脆弱な音。そして、使い手の調整不備による変則的な帯域バランスです。

タンノイ Stirling/TWW(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 タンノイのプレスティッジ・シリーズの最下位を担い、きわめて好評なのがこのスターリングである。本誌でこれにサブウーファーとスーパートゥイーターを付加してキングダムに挑戦したことがあるが、勝るとも劣らぬ好結果を得たものであった。したがって、キングダムのミニマムコスト版として、これ以外にない。価格はキングダムの1/8である! 本当はアンプを驕りたいところだが、そこを抑えてプリメインアンプで鳴らそう。ラックスマンのL507sはよく練れた音であり、ドライブ能力も高い。スターリングの感度なら十分なパワーであるし、この艶のある音は美しく楽しい。CDプレーヤーもラックスの新製品D700sでデザインと音の統一感を求めたい。アンプとCDプレーヤーのトータルが43万円とスピーカーシステムの44万円にほぼ等しい理想的な価格配分となった。バランスのよい本格派の入門システムとして広くお勧めしたいシステムだ。