Category Archives: ソニー/エスプリ - Page 7

ソニー TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 肌ざわりの柔らかい、むしろトロリとした味わいといいたい印象さえある滑らかな音を聴かせるというのが第一印象だが、しかし決して弱腰の柔らかい甘さではなく、どちらかといえば音像をきりっと引き締めてゆく傾向の、芯のしっかりした、明快であいまいなところのない解像力の良い音といえる音にトゲトゲしさやきつさがなく、やれッ主で生き生きした表情を持っているが、しかし一見当りの柔らかな音の中に、ときとして意外に腰の強い骨ばった感じさえ抱かせる硬質な音をくるみこんでいるらしく、たとえばアメリンクやバルバラの声でいくぶん頬骨の張った感じに聴こえることがあった。Aクラスに切換えるとわずかに線が細くなるが、基本的な傾向は変らない。

ソニー TA-E88

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の骨格はたいへんしっかりしている。少なくともそういう表現をまっ先に思いつかせるほど、かなり硬質の音といえそうだ。バランス的にみて中低音域から重低音域にかけての支え、あるいは豊かさが不足ぎみに思われ、そのことがいっそう音を硬く感じさせるのかもしれないが、それにしてもたとえばベートーヴェンの弦楽四重奏でも、弦の音がどこかPAでも通したように人工的に聴こえ、かなりきつく、一本調子で色気がない。アメリンクの声にもやさしさが足りない。それらにかぎらずどうも音の姿をことさら裸にしてむき出して聴かせる傾向があって嬉しくさせない。MCヘッドアンプの音は、高域がよく伸びて解像力は上るが音の支えが弱く、ニュアンスが減る。

ソニー TA-E86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のバランスという面では音域内での過不足もことさら指摘しにくいし、質感も滑らかで耳ざわりの悪い音を鳴らさない。ウォームな音の中にも現代的な反応の鋭さもある。ただ、アメリンクの独唱で、声自体がやや張り出す反面、伴奏のピアノはむしろ音像がことさら後に引いて、タッチも暗い感じがするというように、コントラストが強く聴こえた。また、「SIDE BY SIDE3」のベーゼンドルファーの音の丸みと艶が不十分で、打音がどこか輪郭だけのように聴こえる。MCヘッドアンプの音は、MC20に対しては切れ込みは良くなるが素気なくなる傾向。DL103Sでは解像力はトランスより良くなるが骨ばる傾向で、どちらかといえば乾いた音と聴きとれた。

ソニー TA-E88

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーソドックスにまとめられた、かなりマジメな音をもつコントロールアンプである。聴感上での帯域バランスはかなりワイドレンジ型で、バランス的には、低域がおだやかであり、中域はやや薄く、中高域から高域では硬質な面があるようだ。この硬さは♯510Mのキャラクターかもしれない。
 付属のMC型ヘッドアンプは、MC20ではMCA76よりも全体にソフトで甘い音となり、トータルバランスはこの方が安定感があり好ましいが、表現が少しパッシブな傾向となる。103Sでは、高域がスッキリと伸び、中域がカッチリと引締り、音の表情もMC20よりは明らかに一段と伸びやかとなり、情報量の増した音となる。

ソニー TA-E86

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、中域の充実感とエネルギー感ではリファレンスの組合せ(LNP2L+510M)に一歩を譲るが、細やかさと滑らかさでは、むしろこのコントロールアンプとのほうが優れた面を聴かせる。聴感上での周波数レンジはワイドレンジ型で、バランス的に中域が薄い傾向をもち、ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるが、音源は遠く感じられるタイプである。付属のMC型ヘッドアンプは、MC20でMCA76よりも全体にバランスが低域側に偏った安定型となり、低域の分離も向上する、やや硬質な音だ。103Sでは、かなりダイレクトな音源に近い音となり、一種のドライさがある音になる。

ソニー TA-E88 + TA-N7B

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソニーにかぎらずどのメーカーの製品でも、概してパワーアンプよりもコントロールアンプの方に、そのメーカーの音が色濃く反映される傾向がある。この組合せでも、それぞれの単体のところでも書いたことだが、いくぶんアクの強さ、あるいは押しの強さを感じさせる音の傾向はE88の方に多く感じられ、N7Bの方は基本的にそれと似ているがE88よりはナイーヴな面を持っている。この両者を組み合わせた音は、やはりE88の個性が支配的になり、たとえば菅野録音の「サイド・バイ・サイド3」のピアノトリオを例にあげると、ピアノの打鍵音をかっきりと際立たせ、ベースのピツィカート、そして前半をコードで支えるギターの音などを、ひとつひとつ、目鼻立ちをはっきりさせながら楽器の存在を強調する感じで聴こえる。これに限らず、録音されている音の姿をひとつひとつあらわにしてゆく傾向があって、そのことが、曲によって少々分析的にすぎるようなイメージを抱かせる場合もあった。

ソニー TA-E86 + TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 名作と謳われたプリメインアンプTA1120の頃から、ソニーのソリッドステート・アンプの音には、本質的にかなり冷徹というか、やや無機質的な、整ってはいるがどこか突き放した冷たさを私は感じていて好きになれなかった。新しい製品になるにつれて、それもごく最近になって、かなり大幅に変身を試みはじめたようで、中でもこの86シリーズは、とてもバランスがよく滑らかで柔らかな肌ざわりを持っていて、一聴した印象では少し前までのソニー製品とは思えないほどだ。だが、柔らかいといっても決して女性的な弱腰の音ではなく、むしろ一見柔らかな音の中に、意外にコントラストのきつい芯の強さがくるみこまれていると感じとれる。そのことは、たとえばシェフィールドのレコードで、一見ウォームな丸みのある、しかし現代ふうの反応の鋭い音でリズムセクションのきちんと整った中から、テルマ・ヒューストンの声がぐっと張り出してきこえるという一例からも聴きとれた。

ソニー TA-N7B

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかな、寒色系のクリアーな音をもつパワーアンプである。聴感上での周波数レンジは、組合せで予想したよりもナローレンジ型となり、低域は重くおだやか型、中低域はやや薄く、中域から中高域はソリッドで硬質な面があり、高弦では輝きが過剰気味に再生される。音の表現はかなりマジメ型で、表情を抑える傾向があり、音の反応も早さと遅さがあってバランスが悪くなるが、リファレンスコントロールアンプLNP2L,またスピーカーシステムの4343と、かなりミスマッチの印象が強い。やはり本来のN7BのペアコントロールアンプはE7Bであり、トータルバランスは数段優れていると思う。

ソニー TA-N86

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソリッドで引き締った音をもつパワーアンプである。聴感上では充分に広い周波数レンジを感じさせ、バランス的にはかなりフラットレスポンスで凹凸が少なく、音色では、低域が軽くソフトであり、中低域は粘った印象があり、中域にはソリッドな硬質さがある。音の鮮度はかなり高いタイプで、表情にはフレッシュな魅力がある。
 ステレオフォニックな音場感は、左右方向・前後方向のパースペクティブともによく広がるが、音源はかなり近づいた印象となる。音像のまとまりはよく、輪郭の線もかなりクッキリとしてシャープさがある。低域は、やや厚み不足を感じさせることもあるが、定格パワーからは充分な力をもつと思う。

ソニー ECR-400

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 全音域に亙って周到にコントロールされたという作り方は、いかにもソニーの他のオーディオ機器にも通じるこのメーカー特有の姿勢が聴きとれる。レインジの広いことではスタックスよりもやや上かもしれない。ただ、ECR400の場合には、ヒス性のノイズがやや強調されて一種の色あいを感じさせるところから、高域に意図的に個性を持たせているのではないかと感じる。そのためかスタックスよりも音に力を感じるが、反面、いくぶん重いというか、むしろや湿っぽい感じの音に聴きとれて、ナマの演奏で感じられる演奏者の心の弾みや、楽器の持つ明るい色彩感や音の艶が、一様にハーフトーンの暗い感じの色に塗りつぶされるように思った。パワーにはかなり強い。やや大ぶりなソフトなイヤパッドと頑丈なヘッドバンドは、プロ用のヘッドフォンのような感じで、ハード好みのヤングジェネレーション好みのデザインに思える。

ソニー ECR-500

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 レインジの十分に広いこと、そして低音から高音に至るまできわめて周到にコントロールされて聴感上のバランスがよく、どの音域にも少しも強調感や欠落感のないところは、国産品中随一といっていいぼとで、ECR400がいくらかクセを感じさせたのに対して、これこそまさにソニーの音、と思わせるところはさすがだ。ただ、ECある400のところでも書いたように、音のひと粒ひと粒が、何となく湿り気を帯びたように、その湿った結果として重さを感じさせるように、どこか梅雨空を見上げるような印象があって、聴いているうちに、もっとスカッと晴れ上った、明るい艶のある音にあこがれたいという気持になってくる。言いかえれば音楽が積極的にこちらに働きかけてくるというのではなく、どこかよそよそしくつき放して分析しているような気分にさせられる。パワーには強いこと、創りのしっかりしていることはECR400について書いたと同じ良さだ。

ソニー TA-E88, TA-N88

ソニーのコントロールアンプTA-E88、パワーアンプTA-N88の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

TA-E88

ソニー PS-X9

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プレーヤーシステムは、ダイレクトドライブ型フォノモーターが実用化されて以来、FG型サーボの第2世代、さらに、クォーツロックの第3世代と性能が向上し、現在のトップランクの製品では、まったく完成期に入ったかのように感じられる。性能的に見ても、聴感上においても頂点に達し、もはやプレーヤーシステムが、コンポーネントシステムのネックになるとは考えられないというのが実情である。しかし、一部では、精密な機械加工による精度をもつ、まったくサーボシステムをもたない旧タイプのフォノモーターを使ったシステムのほうが、現在のクォーツロックのフォノモーターのものよりも聴感上で明らかにメリットがあるとの声も絶えないのは事実である。
 たとえば、業務用として定評のあるEMTのTSD15を、一般のプレーヤーシステムとEMT927stとで比較試聴したとしよう。当然のことながら同じTSD15なのに、結果としての音は、カセットデッキの音と2トラック・38センチの音ほどに隔絶した差、誰しも驚くほどの違いが出てくる。この意味では、アンプにたとえれば、現在のプレーヤーシステムは、プリメインアンプの範囲にとどまり、高級セパレート型アンプに匹敵する製品は皆無といえよう。
 今回ソニーから発表されたPS−X9は、まさしくセパレート型アンプのランクにある待望された大型製品である。
 直径38cm、重量2・8kgの大型ターンテーブルは、トルクムラによる振動がない起動トルク7kg/cmの大型リニアBSLモーターでダイレクトドライブされ、サーボ系は、マグネディスク検出方式に加えて、クリスタルロック機構付である。プレーヤーベースは、モーターとトーンアームを他の部分から隔離したアルミ鋳造フレームによるフローティング機構を備え、アルミダイキャスト製の固定フレームからゲル状の高粘性体のインシュレーターで懸架されている。また、モーター部は軸受部分が砲金製、モーターハウジングが鋳鉄製である。
 トーンアームは高感度で剛性が高い軸受ブロックとパイプには剛性アルミ合金と炭素繊維をラミネートした材料を採用し、内部のリード線には高域損失が少ないリッツ線を、シェル固定には前後2箇所で締めつけるネックシリンダー機構をもつ。
 カートリッジはマグネシュウムシェルと一体化したXL−55Pro、電源はパルスロック型で、MCヘッドアンプとフォノイコライザーが内蔵されている。なお、トーンアームはオートリフター機構付である。
 PS−X9に各種のカートリッジを使い、内蔵アンプを使用せず、ダイレクトにコントロールアンプに接続して試聴してみると、安定感があり重厚な低域をベースとして、テープの2トラック・38センチ的な雄大なスケールをもったダイナミックな音に変貌した。

ソニー TA-F6B

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TA−F6Bは、プリメインアンプの電源に最初にパルスロック電源を採用した注目の製品である。MCヘッドアンプ、DC帰還付イコライザー、新開発のドライバー用IC採用のDCパワーアンプなどに特長があり、対数圧縮型の大型パワーメーターを装備している。

ソニー TA-N88, TA-E88

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一般にオーディオ用パワーアンプには、Aクラス動作、Bクラス動作といったアナログ増幅法が採用され、電力増幅素子の出力側がスピーカーと電源の間に置かれ、素子の内部抵抗を変化させて負荷であるスピーカーに流れる電力をコントロールしている。この場合、電源からの電力はスピーカーのなかだけではなく、増幅素子によっても消費され電力の損失になるが、PWMアンプのようなデジタル増幅器では、扱う信号はパルスであるため、増幅素子は単純にオンかオフの動作しかない。つまり、デジタル増幅器では、増幅素子はスイッチの役目を果たすことになり、オンのときには抵抗値がゼロ、オフのときには無限大であれば、すべての電力が負荷であるスピーカーに供給されることになる。したがって、アンプの効率は100%になるはずだが、実際にはオンのときに抵抗値がゼロにならないため、効率は80〜90%になる。
 オーディオ信号をデジタル変換するためには、500kHzの搬送波をオーディオ信号で変調し、PWM波としておこない、これをデジタルアンプで電力増幅をし、フィルターで搬送波を除去し、もとのオーディオ信号を取出している。このタイプを採用した製品としては、米インフィニティのしプがある以外はなく、国内では、数年前からソニーで研究され、試作品として発表されたことがある。
 TA−N88は、これをベースとして製品化された国内最初の製品であり、電源にも高能率のパルスロック方式のスイッチングレギュレーターを採用しているため、画期的な超小型で160W+160Wのパワーを得ている。
 TA−E88は、PWNステレオパワーアンプ、TA−N88と組み合わせるプリアンプとして開発された製品である。本機のコンストラクションは、完全に2台のモノアンプを前後に並べ、入力端子から出力端子までの信号経路は最短距離を一直線にとおるように配置されている。機能は単純型でクォリティ重視の設計であり、各ユニットアンプは入力コンデンサーのないダイレクトカップリングのDCアンプ構成で、低雑音LECトランジスター採用のMC用ヘッドアンプを内蔵している。各使用部品は物理的にも聴感上でも厳選されている。
 この組合せの音は、従来のソニーのアンプとは一線を画した、滑らかで、明るく、伸び伸びとしたものであり、デジタルアンプ然とした冷たさがないのが好ましい。適度の暖かさがあるのは特筆すべき点である。

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年12月号掲載)

SS-G7

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年10月号掲載)

SS-G7

ソニー SS-G7

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 周波数レンジは十分に広い。帯域内での目立った凹凸もなくよくコントロールされている。指向性も悪くない。音の濁りや歪みは感じられない。大音量でもくずれたりせず、小音量でも細かな音がよく聴きとれる。……こうして耳をいわば測定器のように働かせて聴くかぎり、平均点以上の点数をとる。しかし少なくとも私には、音楽的にいって聴きどころのよく掴めないスピーカーだ。たとえばクラシック。ベートーヴェンの序曲やブラームスのP協では、ダイヤトーンほどではないにしても中~高域に硬質の芯があって、弦のしなやかなトゥッティが聴こえてこない。高域端に爽やかさがないのが一層その感じを強める。低音域の一部で、こもるといっては言いすぎだが箱の中で音の鳴る感じがわずかだがあって自然さを損ねる。F=ディスカウでは、MIDレベルをやや絞ると一応彼の声らしくなるが、バルバラのシャンソンでバックの伴奏とのあいだに奥行きが感じられず同一平面で鳴る感じが強い。ジャズやポップスでは、どうも音が濁って重い感じで、スウィングしない。聴き手の心が弾んでこない。4500Qのようなクセの強いカートリッジで強引にドライブしてやると、多少のおもしろみは出てくるが……。置き方はいろいろ試みたが、ごく低い(約8cm)台に乗せ、背面は壁から離す方がよかった。

ソニー SS-G7

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきはいきいきとしていてはえる。
❷スタッカートはたっぷりひびいているが、鋭さは不足ぎみだ。
❸フラジオレットの特徴は明らかになっている。
❹低音弦のピッチカートは、たっぷりして、あいまいにならない。
❺クライマックスでの迫力はなかなかのものだ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きい。ひびきに力のあるのがいい。
❷音色対比は充分だが、ひびきにキメこまかさがほしい。
❸室内オーケストラによるひびきの軽やかさが不足している。
❹このフレーズの特徴は示すが、すこしせりだしすぎる。
❺各楽器の音色は示すものの、キメはあらい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶セリフの声のまろやかさがたりない。
❷接近感は示すが、プライの声が太くなりすぎる。
❸オーケストラのひびきのとけあい方が充分でない。
❹はった声はかたくなる。もう少しまろやかでもいいだろう。
❺個々のひびきがばらばらになりがちだ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像が大きいので、メンバーの並び方を感じとりにくい。
❷声量をおとすと、さらに言葉がもやっとする。
❸残響を切りおとしされていないので、細部はききとりにくい。
❹バリトン、バスが強調されがちなので各声部のバランスが悪い。
❺一応ひびきはのびているが、効果的とはいえない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的なコントラストは充分についている。
❷力をもってシンプルなメロディーがクレッシェンドする。
❸浮遊感はあるものの、音がばらばらにきこえる傾向がある。
❹ひびきのひろがりという点で、多少ものたりないところがある。
❺ふくれあがり方は力があっていいが、ピークでひびきが濁る。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひろがりはとれているものの、透明感がとぼしい。
❷ギターの音像は大きめで、さらにくっきりしてもいい。
❸ひびきが充分な効果をあげない。他のひびきにうめこまれがちだ。
❹この音は、かなりきわだってきこえて、アクセントをつける。
❺充分にききとれ、ひびきに変化をもたせている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶過渡にスケールの大きいひびきで開始される。
❷サウンドの厚みは、多少これみよがしに示される。
❸一応の効果は示すものの、すっきりぬけでてくるとはいえない。
❹ドラムスは、力強いが、シャープとはいいがたい。
❺バックコーラスでは言葉はたつが、とけあわない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ペデルセンの音像がきわめて大きい。
❷指の動きは不自然なほどに誇張されて示される。
❸音の尻尾はなまなましく示されている。
❹力強いが、こまかい音の動きが鮮明とはいいがたい。
❺音像的、音量的に差が大きすぎる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスはたっぷりひびくが、アタックがシャープとはいえない。
❷ブラスは派手なひびきでつっこんでくる。
❸フルートを大柄なひびきで前面におしだしてくる。
❹音の見通しは悪くないが、トランペットはいきない。
❺リズムは一応の切れを示して、はなやかにまとめる。

座鬼太鼓座
❶尺八がきわだって大きく感じられる。
❷ひびきにかなり艶があり、尺八らしさがとぼしい。
❸力をもった音でくっきりときかせる。
❹大きさは充分に示すが、もうひとつ力強さがほしい。
❺大太鼓の消えていく音とよくバランスしてきこえる。

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年9月号掲載)

SS-G7

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年8月号掲載)

SS-G7

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年7月号掲載)

SS-G7

ソニー SS-G7

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フロアー型エンクロージュアにおさめられた3ウェイの本格派である。ソニーのスピーカーとしては、いろいろな点で新しい技術的アプローチが見られ、スピーカー作りのソフト・ウェアの研鑽が実ったシステムである。ゆったりとした余裕ある再生音で、音楽の表現をよく生かして鳴る。堂々とした製品だ。

ソニー PS-8750

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックサーボ・ターンテーブルとして早くから登場したシステムである。数々の新技術をとり入れてまとめられた、いかにも機械といったイメージが表面に出すぎているのが、個人的には少々好みに合わないが、実質性能は高く評価できる。スタティックバランス型トーンアームも、適応性の広いユニヴァーサルタイプとして、音質的にバランスもよい。やや生硬な音になるのは、見た目からくる先入観かもしれない。

ソニー TC-K7

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 新しくモデルナンバーがシンプルになって登場した一連のコンポーネント中で、このK7は、事実上のソニーのカセットデッキのトップモデルである。操作系は、スイッチ型のプランジャーコントロールで快適に動作し、オプションのリモートコントロールも使用可能である。走行系は安定で、そのためカセットにおきやすい音質のゆれが少なく、ソリッドでスッキリした、いわば、カセットデッキの標準的な音が特長である。